グループ企業探訪
金融・決済業務の深い知見と高い技術力でお客さまの信頼を得る
NTTデータ フィナンシャルテクノロジーは、NTTデータのビジネスの中核である金融業界関連システムの開発・維持を担う会社だ。電電公社時代から培ってきた金融業界の業務に関する知見と高い技術力でお客さまの信頼を得ている事業と、それを実現するうえでの人材育成に対する思いを植木英次社長に伺った。
NTTデータ フィナンシャルテクノロジー 植木英次社長
金融業界の専門的な業務ノウハウを礎に多くの基幹系システムを開発
◆設立の背景と会社の概要について教えてください。
NTTデータ フィナンシャルテクノロジーは、NTTデータの金融分野の開発子会社であるNTTデータシステム技術とNTTデータ・フィナンシャルコアが、2022年4月に統合されて設立されました。
NTTデータシステム技術は、日本銀行のシステムをオンラインで結ぶための国家プロジェクトにNTTが参画・受注したことをきっかけとして1985年にNTTのシステム子会社「NTTシステム技術」として設立され、1988年にNTTデータの子会社として引き継がれ、2002年にNTTデータシステム技術に社名を変更しました。一方、NTTデータ・フィナンシャルコアは、クレジットカード決済のプラットフォームである「CAFIS」や、電話やインターネットにより残高照会や振込など金融機関の窓口に行かなくても実行可能とするサービスである「ANSER」の開発体制強化のために1998年に設立されたNTTデータネッツと、主に地方銀行向けのバンキング勘定系PKGである「BeSTA」を使った「地銀共同システム」の開発をきっかけにバンキング開発体制強化のために2000年に設立されたNTTデータフィットが、2009年に統合されてNTTデータ・フィナンシャルコアとなりました。
近年、金融自由化による新規参入、規制緩和による業容の変化、低金利による収益悪化、キャッシュレス化やデジタル化の推進等、金融業界を取り巻く環境は激しく変化するとともにますます厳しいものになっています。このようなお客さま環境の変化の下、勘定系等基幹系を中心としたコアビジネス領域の深化・拡大はもちろんのこと、今後の成長に向け新ビジネス領域にもチャレンジしていくことが重要です。社会問題化しているIT人材不足を乗り越えて、リソース拡大並びにリソースシフトをしていく必要があり、グループ内の金融関連のシステム子会社を統合して、これらに対応していくことを目的として新会社を設立しました。
NTTデータグループとして、NTTデータは企画機能を強化することで新しいサービスの創出に注力し、NFTはお客さま業務や新技術を身に付けながら成長を促進するとともに、NTTデータが企画する新サービス創出においては、当社が保有するお客さまの業務やシステムに関する知見や技術的ノウハウを連携させることで新しいサービス創出につなげていくつもりです。
◆具体的にどのような事業展開をしているのでしょうか。
基本的にはNTTデータが金融系のお客さまに提供しているシステムやプラットフォームについて、その開発から維持まで一貫して行っています。売り上げ規模で90%以上がNTTデータと連携したビジネスとなっています。金融業界といってもその領域は多岐にわたり、かつ提供するシステムも大規模でその領域ごとに業務も異なるため、顧客軸を意識した事業部と、技術・ソリューション軸を強みとした事業部でビジネス拡大をめざしています(表)。
激動の金融業界のお客さまに付加価値を提供できる人材育成
◆事業を取り巻く環境はどのような状況でしょうか。
前述のとおり、金融自由化による新規参入、規制緩和による業容の変化、低金利による収益悪化等、金融業界を取り巻く事業環境はこれらを要因とした競争激化もあり、ますます厳しいものになっています。また、キャッシュレスの推進やデジタルトランスフォーメーション(DX)の普及に対応していくために、クラウド、セキュリティ、AI、RPA(Robotic Process Automation)といった新しい技術への対応やDXに関するさまざまな知見も必要となっています。
当社にはエンジニアを中心として約1800名の社員がおり、NTTデータには高度なスキルやノウハウを有するコンサルタントもいます。こうした人たちがお客さまへのコンサルティングからシステム構築・維持をサポートしますので、お客さまには安心してお任せいただけると思います。さらには共同センタやプラットフォームサービスをご利用のお客さまには、私たちがニーズを先取りした対応を行っていくことになりますので、大きな付加価値になると思います。
その意味で、私たちの1800名近くのエンジニアはまさに当社の強みであり、財産でもあります。お客さまのご期待にしっかりとこたえ、付加価値を提供していくためには、人材確保・育成によりエンジニアの価値を高めていくことが、今後も継続していく経営課題だと認識しています。幸いなことにNTTデータグループとして人材育成プログラムがあり、いい環境がありますので、これを最大限活用して絶え間なく人材育成に取り組んでいくつもりです。
◆今後の展望についてお聞かせください。
事業概要にもありますが、私たちの事業は金融分野に広く深くかかわっています。金融分野の事業はNTTデータにおいては、電電公社の時代からの歴史がある重要なビジネスであり、当然90%以上がNTTデータとの連携ビジネスである当社に対してNTTデータの期待とそれに伴う責任は大きなものとなります。したがって、それにこたえていくためのパワーとスキルの基盤をより盤石なものとしていくことに注力していきます。NFTは設立後約1年しか経過していませんが、会社統合の目的を一刻でも早く成就させるためにも、この取り組みは重要なものです。
とはいえ、当社には技術もノウハウも人材もあるので、こうした取り組みの延長として技術等の適用領域を広げて、残りの10%の当社独自のビジネスも拡大していきたいと考えています。
担当者に聞く
金融業界で得た知見で地域活性化をサポートする新ビジネス創出
テクノロジー&ソリューション事業部
青木 滋さん
◆担当されている業務について教えてください。
テクノロジー&ソリューション事業部の技術戦略企画担当で、NTTデータ フィナンシャルテクノロジーが持つ専門的な技術、ノウハウを活用して、新ビジネス創出を行っています。NTTデータとの連携による新ビジネス創出がメインではありますが、私が参加していた社外のコミュニティにおける縁があって、NTTデータ フィナンシャルテクノロジーとして栃木県様の地域活性化関連施策を担当しています。
地方銀行や信用金庫といった地域の金融機関は、経済のプロとして顧客企業の生産性向上の支援をすることで、地域経済を活性化させることに課題意識を持っています。このためにはデジタル化やその先のDXがキーとなるのですが、その人材がほとんどいないので、業務知識もあり日頃からお付き合いのある当社との連携になります。一方で、栃木県様は、①サービス業の生産性向上による企業の活性化、②商店街・商工会議所といった団体をベースとした地域活性化という2つの側面から課題解決に取り組んでいます。こちらもデジタル化やDXがキーとなるので、自治体、地域の企業、NTTデータ フィナンシャルテクノロジーによる連携プログラムを走らせています。当社としては、ソリューションやサービスの提供もありますが、それ以上にお客さまにおけるこれらの利用支援をとおして、生産性向上やDXに向けてお客さまの自立自走をめざしています。自立自走がないことには継続的な活性化につながらないからです。
NTTデータにしてもNTTデータ フィナンシャルテクノロジーにしても大企業とのお付き合いはあるものの、地域の中小企業とのお付き合いはほとんどありません。大企業と中小企業の間にはビジネス環境をはじめさまざまなギャップがあり、当然課題も異なってきます。オフィスで考えていてもそのギャップにすら気付くことができません。現地に飛び込んでいくことが大切で、最近ではオフィスの外にいる時間のほうが長くなっていますが、リモートワークのおかげで効率的に仕事ができます。
◆今後の展望について教えてください。
まずは、お客さまの自立自走に向けて足しげく現場に入っていくことに注力します。そして、これを1つの成功事例としてほかへの展開を図っていきたいと思います。そして、複数の事例の中で共通的な項目をプラットフォーム化、パッケージ化していくことで新たなビジネスの創出につなげていきたいと思います。
Xon Opsでシステムの故障対応力強化
決済イノベーション事業部
山田 裕央さん
◆担当されている業務について教えてください。
決済イノベーション事業部第二担当ではCAFISを中心とした決済システムの開発・保守・システムオペレーションを行っています。私はその中でも特に、故障対応力強化を目的とした保守・運用改善プロジェクトに取り組んでいます。
CAFISのようなシステムはトラブルが発生するとその社会的影響が非常に大きなものとなります。この影響を小さくするためにはトラブルを未然に防ぐことが最重要なのですが、トラブルをゼロにすることは不可能です。そこで、トラブル発生時には原因分析を行い、暫定対処を含めて速やかに復旧させなければなりません。
原因調査は各種の警報やシステムからのメッセージを解析しながらり(罹)障個所や現象、原因等を分析し、それにより対処方法を検討していきます。システムからのメッセージは膨大な量になり、トラブルと直接関係ないものまで含まれています。その中から必要なメッセージを抽出し、他の警報情報等と合わせて解析することで、原因特定に至ります。そして、その原因と過去の事例等を対比させながら、あるいは有スキル者の過去の経験等に立脚して対処方法を決めて、それを現場と共有しながら対処していきます。この説明でもお分かりかと思いますが、このプロセスを実行するには多大なる稼働と高度なスキルが要求され、復旧までの時間が長時間化する要因でもあります。トラブルが複雑なものであれば、この時間はさらに延びます。
そこで、プロジェクトでは有スキル者のナレッジを蓄積し、複数チームの固有ナレッジを活用しながら警報検知・メッセージ抽出から原因特定までのプロセス・対応を可視化し、必要情報のみを関係者で共有するシステム「Xon Ops(エクソンオプス)」を開発しました。Xon Ops導入前後で、当該プロセスに要した時間が半分以下になり、不要メッセージが大幅に削減されたことにより、運用担当の稼働も15%以上削減されました。
◆今後の展望について教えてください。
当面はNTTデータグループ内のシステムにXon Opsを広めていくことが中心となります。システムの運用・保守を担当する人は、トラブルを発生させないことや正確なオペレーションに気を遣うため、綿密な行動パターンをとる傾向が強くなります。トラブル時のメッセージには実際に必要のないものも多数あり、Xon Opsがその取捨選択をしている、つまり多くのメッセージを捨てていることに驚きと感覚的な抵抗を示されることが多いのですが、実際の利用者の評判はすこぶるいいので、その紹介とともにとにかく一度使っていただくことをとおして普及を図りたいと思います。その先にはNTTデータグループ外のお客さまへの拡大を視野に入れていくことになりますが、Xon Opsのチームとしては「システムトラブルで困っている人をなくしたい」との思いを一貫して持っており、困りごとのある方がいらっしゃればぜひ意見交換させていただきたいと思っています。
問い合わせや詳細は、下記URLをご参照ください。
■ URL:https://landing.xonops.com/?utmsource=ntj&utm_medium=web&utm_campaign=lp2023_2
ア・ラ・カルト
■VRリモート会議
リモートワークがすっかり世の中に定着してきましたが、NTTデータ フィナンシャルテクノロジーも多くの人がリモートワークをしているそうです。リモート会議もよく行われているのですが、その中であるチームがVR(Virtual Reality)リモート会議をしているそうです。あるメンバーがVRゴーグルを買ってきてやってみようということになり、毎朝の朝会、およびその他の会議は必要に応じて実施しています。音声も立体感を持って聞こえ、他のリモート会議ツールと比べて、相手が近くにいるような感じになり、親近感がわいてくるとのことです。それほどまでの没入感もあるため、会議が終わってゴーグルを外すと、パソコンに向かって話していたつもりが実は壁のほうを向いていた、といったこともあるそうです。
■日替わりで景色が変わるオフィス
本社はJRの浜松町駅のすぐ前にあるのですが、山手線に新しくできた「高輪ゲートウェイ」駅の近くにもオフィスがあるそうです。付近は再開発の最中で、次々と新しいビルが建築されたり、新橋−横浜間に国内初の鉄道を通すため1870年に着工された「高輪築堤」の遺構が発見されたり、日替わりでその景色も変わっているそうです。この景色の変化を楽しみにして、品川駅からわざわざ歩いてくる社員もいるそうです。近くには、線路の下を通るトンネルの高さがあまりに低く、屋根にランプのあるタクシーや、自転車に乗ったままで通過できない、背の高い人がかがんで通るという「お化けトンネル」もありますが、これがなくなるとのことで寂しさを覚えている社員もいるようです。