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特集2

つくばフォーラム2023に見るIOWNとアクセスネットワーク技術

新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ

本稿では、今年3月に商用サービスを開始したIOWN1.0の成果と、それに続くIOWN2.0、3.0、その先への未来について紹介します。本記事は、2023年5月17〜18日に開催された「つくばフォーラム2023」における、川添雄彦NTT代表取締役副社長の基調講演を基に構成したものです。

川添 雄彦(かわぞえ かつひこ)
NTT代表取締役副社長

新中期経営戦略:IOWNによる新たな価値創造(構想から実現へ)

2019年5月にIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を発表してから4年が経ち、IOWNの知名度も高まりました。新しい中期戦略の核となっているのは、まさにこのIOWNです。
中期経営戦略の基本的な考え方は、「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために。」であり、ポイントの1つは「地球」を意識していることです。これはもはやNTTグループだけの話ではなく、私たちは地球とともに持続可能な事業を展開していかなければなりません。発表した当時はIOWNのサービス開始を2030年と考えていましたが、大阪・関西万博が2025年に決まったことで5年前倒して2025年にしました。しかし、それでもまだ遅いという意見もあり2023年3月に商用サービスを開始しました。

ゲームチェンジをめざして

かつて日本が世界の中で大きな役割を果たしていた時代は、「質の論理」が中心でした。現実世界にあるものが価値を提供する中で、質が問われた時代でした。
その後に起きた変化が「数の論理」の時代です。まさにインターネットがそのものを示しています。たくさんのデータを集めてマーケティングデータにし、さらにその市場を大きくして数を集める時代、これが今も続いている数の論理の世界です。
この数の論理から次に続くのは「価値の論理」の時代であろうと思います。世界に散在するさまざまな価値観、幸福、いろいろなものを認め合い本当にリスペクトできるものになるからこそ、我々人類が幸せに暮らせるというところに振り返り、単に数だけではない時代にしていくべきと考えます。その際、技術として何が必要かを考えると、可能な限りそのベースとなるもの、それが光です。
例えばインターネットに代表される、人間が意図的につくったような考え方をいったん全部忘れ、もう一度基礎的なところに戻ることが求められています。まさにこれを担うのがIOWNで、このIOWNを使って次の時代5G(第5世代移動通信システム)から6G(第6世代移動通信システム)をめざしたいと考えています(図1)。

効率化のためのデジタル化→価値を生み出すデジタル化

デジタル化が重要だとよく言われますが、このデジタル化には2種類あると思います。1つは効率を高めるためのデジタル化です。しかし、それだけでは私たちが直面している課題を解決し、限界を打破するようなイノベーションにつなげるのはなかなか難しく、新しい価値を生み出すようなデジタル化をめざさなくてはなりません。
データセンタ事業はNTTグループにとって非常に重要な領域ですが、ここで使っているデータ量あるいは消費電力も爆発的に伸びています。汎用AI(人工知能)、生成AIといったAIの出現はさらにこれを加速しています。ChatGPTをはじめとする生成AIは、汎用的であっても専門的なところに対して非常に良い精度で対応できることを証明しました。これは本当に脅威で、データ量は爆発的に増えてしまいます(図2)。
NTTが長年考えていたのは、光の技術、光のポテンシャルです。電気と光を比較した際の違いですが、例えば情報をa地点からb地点に伝えるために距離を伸ばしたとき、当然電気の場合は必要とするエネルギーがかかります。動作周波数を上げてもそれに伴い電気の場合はエネルギーが増えますが、光の場合はほとんど消費電力が増えず必要とするエネルギーは変わりません。そこで、情報伝送における伝送の部分に光技術を適用します。この技術は、まさに「つくば」がその発信の拠点となって世界に広まり、日本は世界一の光ファイバ普及国になりました。NTTの研究所がこの光に注目したのは1960年代ですが、もう1つめざしたのはデータ処理にも光を使うというアプローチです。NTTが世界で初めて光トランジスタの発明に成功し、データ処理にも光を使うことの可能性からIOWN構想の発表に至りました。

IOWNの利点

IOWNは、低消費電力化100分の1、大容量・高品質といった125倍の伝送容量、低遅延200分の1という非常に夢と将来性のある技術ですので、すべて完成させてから提供するのではなく、どんどん成熟する中身に従ってその都度の成果を出していくことに方針を変えました。そして、まさに構想から実現へ、2023年3月16日にAPN IOWN1.0サービスを開始しました(図3)。

APN IOWN1.0 サービス開始

オールフォトニクス・ネットワーク(APN)は、エンド・ツー・エンドで光接続していくものです。すべて光でつなぐことにより、低遅延の実現だけでなく「OTN Anywhere」という端末装置によって遅延時間をコントロールすることもでき、遅延レベルを確定できる機能が付きました(図4)。
また、このAPNのサービス提供に先駆けていくつかの実証実験を行いました。未来のエンタテインメントサービスとして音楽やeスポーツ、お笑いライブというかたちでこのIOWNの効用を多くの方々に感じていただくイベントが開催され、エンタテインメント系のユースケースが紹介されました。APNが提供する低遅延の内容について2月に行われた未来の音楽会で実証した例を紹介します。東京と大阪を結んでのクラシックのコンサートは、ファイバで700kmもの遅延時間が、コンサートを行っている舞台上の楽器間3mの遅延時間と一緒でした。これは先ほど説明した遅延時間を確定できることにより、アプリケーション側での待ち合わせやバッファも不要となることから200分の1の遅延を達成できパフォーマンスが発揮できたということになります。
APN IOWN1.0のサービスをご利用いただき一緒に新しいビジネスを切り拓くことを前提に進めている企業・団体の皆様を紹介します(図5)。
データセンタにおいて、NTTグループは現在グローバルマーケットシェアで第3位です。この事業をさらに発展させていくために、IOWNの技術によってまさに2030年からカーボンニュートラルを実現する営みを続け、エネルギーを減らす取り組みを同時に進めていきたいと考えています。

IOWN2.0 その先へ

IOWN2.0は、ネットワークとコンピュータの2つの領域にかかわっていきます。

■ネットワーク

今回IOWN1.0 APNサービスを開始し、ステップ2では県間通信をはじめ電力効率を13倍に向上、さらにステップ3では電力効率を100倍にすることをめざしています。
2024年度以降は主要都市間を結び、2026年度以降は日本中の必要な所にはどこにでも、ご要望がある場所に対してビジネスベースで提供して行く予定です。併せて、このつくばで今進めている「多段光ループアクセス」という技術をAPNの展開の中でぜひ実現していきたいと思っています(図6)。

■コンピュータ

2023年6月にIOWNの技術の代表格である光電融合技術を担う新会社「NTTイノベーティブデバイス株式会社」を設立します。この会社がめざしているのは、実際に私たち自身が使うネットワークの中だけではなく、コンピュータ全般に対して使える以下の光電融合技術を提供していくことを計画しています。
・IOWN2.0 ボード接続用光電融合デバイス: IOWN2.0ではボード間の光接続を実現することにより、装置の低消費電力化・パフォーマンス向上を図ります。
・IOWN3.0 チップ間接続用光電融合デバイス: IOWN3.0ではチップ間の接続にまで光電融合デバイスを導入していくことでさらなる低消費電力化が可能となります。
・IOWN4.0 チップ内(ダイ間)接続用光電融合デバイス: IOWN4.0はチップ内の導波路も光でつなぎ消費電力100分の1という消費電力の向上が見込めます。
この技術によりコンピュータのアーキテクチャは、まずディスアグリゲーテッドコンピューティング、次にメモリセントリックと大きく変わっていき、AIやロボットを動かすうえでも非常に重要な基盤となっていきます。IOWNというベースとなる技術をつくるとともに、その上のさまざまなサービス、アプリケーション、プラットフォームを含め今後5年間で3兆円の投資をしていきたいと思います(図7)。

IOWN Global Forum

IOWNは、2020年1月にGlobal Forumをつくり、現時点で120組織・団体に加盟していただいています。デファクトとデジュールの両立をめざし、世界にもう一度日本が大きく貢献できる存在になるよう努力して、新しいかたちの経済安全保障につながればと考えています。競争や争いではなくお互いに必要な役割を果たし、特定の国の技術だけに依存するのではなく世界の複数の企業と連携して大きなビジョンを共有し、一緒にエコシステムとして成り立たせたいと思っています。

川添 雄彦

IOWN構想は大変大きな構想で、決してNTTグループ単独ではできません。皆様にもより一層のご協力、ご理解をいただき、NTTグループとともに地球全体が幸福につながるよう、IOWNを進めたいと願っています。

問い合わせ先

NTTアクセスサービスシステム研究所
企画担当
TEL 029-868-6020
FAX 029-868-6037
E-mail aslab-ml@ntt.com