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特集2

つくばフォーラム2023に見るIOWNとアクセスネットワーク技術

総合エンジニアリングに向けて

NTT西日本が取り組むオンサイト業務のデジタル化、街・社会のデジタル化の取り組みを通じて、総合エンジニアリングに向けて社会に提供するNTTならではの世界観、おもてなしを確立しデジタルシティズンシップの獲得に向けたロードマップを紹介します。

猪俣 貴志(いのまた たかし)※
NTT西日本 常務取締役
※現、サクサ株式会社

NTT西日本の新たな取り組み

NTT西日本がホテル事業を始めることをご存じでしょうか。2024年1月に開業予定ですが、福井県坂井市三国湊エリアで、11社で共同設立した「株式会社Actibaseふくい」という会社で、サステナブルな地域観光の実現に向けて「観光流通プラットフォーム*1」を中心に、地域への観光誘客やストレスフリーな観光の実現、観光DX(デジタルトランスフォーメーション)等に取り組んでいきます。その中では、三国湊エリアの歴史的・文化的観光資源を活用し、ホテル、レストランは当時の三国湊の伝統的な建築方式「かぐら建て」の町家を改修し、分散型ホテル、町家レストランとしてお客さまをお出迎えします。また、ホテルフロントはNTT局舎を活用し、地産地消に取り組んでいきます。このホテル事業から学ぶことは、Actibaseふくいのサービスは、地域住民も含めたサービススタッフが提供するおもてなし、世界観に対してお客さまが期待して観光に来られる、つまりはお客さまと対等な立場にいる形態となっています。また比較して、普通のホテルはお金を払えば、サービススタッフがお客さまの要望にこたえる縦の関係となっています。したがって、日本のおもてなしとは、より良いものをつくる“better”ではなく、他とは違うものを提供する“different”の世界こそがおもてなしだと思っています(図1)。私たちが総合エンジニアリング会社をつくる目的としては、おもてなしの世界、“different”の世界をどのように提供していくのかが鍵となります。
今後インフラ事業の価値を社会全体へ還元していくには世界観をどのように見せていくのかが非常に重要となります。NTT西日本が総合エンジニアリングにより提供する世界観について、3つのSTEPが考えられます。STEP1は稼働のシェアリング、データのシェアリングによる業務コストの効率化である「デジタルシェアリング(“手法”を変える)」、STEP2はそのデータをAI(人工知能)等と連携させ業務改革を実行する「デジタルトランスフォーメーション(“業務”を変える)」、そして最終的なSTEP3として、世界観を提供するためには市民権をどう得るかを実現する「デジタルシティズンシップ(“社会”を変える)*2」を達成していくこととなります(図2)。

*1 観光流通プラットフォーム:NTTビジネスソリューションズが提供する観光事業者向けサービス。施設入場券等の観光商品と、多数のオンライン販売チャネルを接続するもの。
*2 デジタルシティズンシップ:デジタルツールとして利用者に認められ、一般的なものとして根付くこと。

オンサイト業務のデジタル化

2017年から導入している「フィールド・アシスタント*3(FA)」でオンサイト業務のデジタル化についてみていきます。元々は社員の生産性を向上させるために導入しました。地図のダッシュボードは災害対策の支援で見知らぬ場所を行く際に、オンサイト技術者を視える化により支援しています。また、スキル管理については、技術者の経験値、資格の取得状況を把握し案件レベルに応じた技術者アサインを実現しています。加えて、技術がない社員に対してもFAをハブとしてリモートサポートを提供することで技術的サポートを実現しています。これにより、ネットワーク、アクセス、宅内、ビジネス、個々にしか対応できなかった故障修理を複合化し、スキルのシェアリングを実施することでSTEP1のデジタルシェアリングを実施しています。
次にSTEP2のデジタルトランスフォーメーションとしては、2019年にNTT東日本、通信建設会社の皆様にも導入させていただいていること、さらなる利用拡大に向けてヒアラブルデバイスを活用したリモート支援強化、2022年には現地作業の自動化、安全・見守りの機能を拡張しています。しかし、今のままではNTT西日本社内を含む導入会社の皆様も、最大限の有効活用ができていない状態かと思います。まさに市民権を得られていない状態です。今後、オンサイト業務をお持ちのお客さまにFAを提案し活用していただくためには、それぞれの会社に合わせた個社別サポートが必要となります。当然、各会社は独自のDX施策を進めており、独自のシステムを保有しています。FAを導入した際に、それぞれのシステムと連携が必要不可欠となりますが、それをNTT西日本が提供するビジネスチャットelgana*4をハブとして各システムと連携させることで、個社別のサポートを実現していき、STEP3のデジタルシティズンシップ、市民権を獲得していきたいと思っています。

*3 フィールド・アシスタント:さまざまな案件、および作業者の位置を地図画面上に表示し、統制担当者によるリアルタイムかつ直感的な手配を実現。発生した案件の近くにいる作業者の位置や状況、各自のスキルや装備等の調整に必要なすべての情報をダッシュボードに集約。
*4 ビジネスチャット elgana:NTTグループ公式のビジネスチャット。

街・社会のデジタル化

インフラ設備のデジタルシェアリングとして、MMS(Mobile Mapping System)*5の走行で、道路構造物をはじめとしたさまざまな空間情報を収集し、ドローンでは、点検が困難な橋梁添架設備や鉄塔など従来は特殊車両を活用してきた個所の点検を効率的に実現しています。またスマートフォンでは、社員がカメラを活用して情報収集を実施し、インフラ設備のシェアリングを開始しています。ただし、点検に関しては人が見て判断している状況であり、点検フェーズをDXしていく必要があります。今後はAIプラットフォームを構築しAPI(Application Programming Interface)連携することで、自社で収集したデータとSaaS(Software as a Service)にて他事業者も利用できる環境とすることをめざしていきたいと思っています(図3)。例えば、MMSでデータを収集するにあたり、自社の電柱だけを情報収集するというわけにはいきません。電力柱、防犯灯、信号柱などさまざまな情報が手に入ります。加えて、走行していれば、ガードレール、道路の陥没状況も撮影されます。ドローンによる橋梁撮影においても、自社の管路設備だけではなく、電力、水道、ガス等の管路の撮影もされます。これを私たちが錆の点検等の解析をしてプラットフォーム上でレポーティングしていくことで、DXを進めたいと考えています。ただし、これもインフラ事業者に閉じたトランスフォーメーションとなってしまっています。
今後IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の先に4Dデジタル基盤*6の導入があると思っています。これは「緯度・経度・高度」のみならず、「時刻」の情報を用いて未来予測を実現させていくものです。例えば、社会インフラの協調保全、道路交通の整流化、都市アセットの活用、環境・防災に向けたデータができる予定です。そこで時刻データを活用した事例として、NTT西日本が運営するQUINTBRIDGE*7でオープンイノベーションを実施した際に、スタートアップの会社から提案を受けたものを紹介します。空き家情報を世間に販売していきたいというものです。デジタルシェアリングで家の情報を収集しますが、屋根が朽ちている、庭が雑草まみれという状況は確認できますが、それだけでは本当に空き家であるか判断できません。そのデータに加えて、スマートフォンの利用状況、その他のインフラ設備の利用状況を時間軸で活用できれば空き家の特定率が向上すると想定されます。空き家の特定率が上がれば、地方自治体が使用できるようなデータになってくるはずです(図4)。地方自治体に利用していただくことで、市民権を得ることができると思っています。もう1つの事例として、住民参加アプリ「みんスマ*8」で収集した情報を4Dデジタル基盤と連携することにより、より付加価値の高い情報を生み出し提供することで市民権を得られる機会になっていくと思っています。

*5 MMS:NTTインフラネットが提供する車両に各種の計測機器を組み合わせて搭載し、地形・地物等を移動しながら計測を行い3次元データを作成します。
*6 4Dデジタル基盤:ヒト・モノ・コトのさまざまなセンシングデータをリアルタイムに収集し、「緯度・経度・高度・時刻」の4次元の情報を高い精度で一致・統合させ、多様な産業基盤とのデータ融合や未来予測を可能とする基盤。
*7 QUINTBRIDGE:NTT西日本が大阪・京橋で企業・スタートアップ・自治体・大学などとの架け橋となり、幾多(100以上)の新規事業の共創や地域課題の解決をめざすオープンイノベーションの場。
*8 みんスマ:NTTデータが提供する住民参加型アプリ「みんなスマートシティ」の略。まちで撮った写真をその場に残すことで、まちのみんなとシェアすることができ、まちの「良いところ」を教えあったり、暮らしの「困った」を相談し合ったり、あなたのまちがもっと楽しくなっていく、まちを楽しくする新しい仕組みの1つ。

総合エンジニアリングに向けて

今回、「総合エンジニアリングに向けて」というタイトルで本稿を作成していますが、NTTフィールドテクノの社員には総合エンジニアリング会社になろうと伝えています。NTT西日本、NTT東日本の設備系組織は今後どのように総合エンジニアリング会社に変わっていくかが非常に重要となります。ただし、私たちが一方的にデータをシェアリングする、私たちの稼働をシェアリングするだけではなく、各社が実施しているDXといかに連携していき、さらにNTTならではのシティズンシップ、世界観をどのように提供していくか、“better”ではなく“different”の世界観を総合エンジニアリング会社で提供できるかが大切となります。今回、紹介した事例は一例にすぎません。今後皆で“different”の世界観をつくっていければと思っています。

猪俣 貴志

総合エンジニアリングに向けて、NTTならではの世界観を提供していくことが非常に大切となります。この「ならではの世界観」を生み出すために、NTTグループ全体で素晴らしい価値創造をしていきましょう。

問い合わせ先

NTTフィールドテクノ
ネットワークデザイン部 企画部門 企画担当
TEL 06-6490-1109
E-mail nw-kikaku-soukatsu@west.ntt.co.jp

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