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特集1 主役登場

国際標準化動向特集

NTTグループの標準化ハブをめざして

(左から) 小鯛、 山本、長尾

長尾 慈郎/小鯛 航太/山本 浩司
NTT研究企画部門
標準化推進室

標準化推進室の役割は読んで字のごとく、NTTグループの標準化を推進することですが、ここでは2つの役割に分けて紹介します。

■NTTグループの標準化活動の方針立案、関係者間の調整

標準化は、「どれでも同じように使える・つながる(互換性、相互接続性)ことを保証するための規定」というイメージが強いかもしれませんが、標準化の役割はそれだけではありません。その1つがビジネスの安定化です。昨今の変化の激しい世界情勢の中にあって、ビジネスを安定的に継続することは企業にとって非常に重要で難しい課題となっていますが、標準化はビジネスの安定化に貢献できるツールの1つでもあります。
身近な例を挙げると、無線LANの機器を購入するとしたら、特殊な事情がない限りほぼすべての方がIEEE 802.11準拠の製品を選択されると思います。むしろ準拠していない製品を探すことのほうが難しいかもしれません。これをビジネスの側からみると、IEEE 802.11という標準によってユーザの無線LANに対するニーズや市場の動向を予測しやすくなるといえます。さらに、例えば次世代の標準に自社の得意な分野を盛り込むことができたら、ビジネスを有利に進めることができるようになるかもしれません。このように標準化は、ビジネスを有利に進めるための戦略的に重要なツールにもなり得ますので、ときには国際的な激しい競争の対象になることもあります。
このような理由から、標準化推進室は、標準化を通じてNTTグループのビジネスの安定的な発展に貢献することを目的の1つとして、標準化活動を戦略的、効果的、効率的に進めるための方針立案、調整等を行っています。また、そのために各種標準化団体の活動状況を収集し、情報を流通させるハブ機能も担っています。これはもう1つの役割にもつながっています。

■各種標準化団体等に対する窓口(代表)

標準化推進室の大きなもう1つの役割は、各種標準化団体等に対するNTT(またはNTTグループ)の代表としての役割です。ITU(国際電気通信連合)などのデジュール国際標準化団体、TTC(一般社団法人情報通信技術委員会)などの地域・国内標準化団体、3GPPなどのデファクト(フォーラム)標準化団体など、数多くの団体の窓口となっています。実質の標準化活動はその分野のエキスパートに進めてもらいますので、各団体において標準化を所掌する委員会等の委員はエキスパートに就任してもらいます。一方で、各団体の運営等にかかわる委員会等が設置されていることも多くあり、これらには標準化推進室が参画する場合が多くあります。活動内容はさまざまで、役員選挙や交代にかかわる処理から機関紙の企画・編集まで、多岐にわたります。こうした活動を通じて各団体の動向を把握することで、前述した活動方針立案にも役立てています。

■標準化活動の機運の高まりと今後の方針

このように標準化推進室は、名称に「標準化」という言葉が含まれていますが、標準化活動を実際に行っているわけではなく、実質の標準化活動を進めてもらっているエキスパートの皆様の活動をサポートしたり、各種標準化団体の運営にかかわったりして、NTTグループの標準化活動を裏から支えています。
こうした活動において大変大きな動きが2022年にありました。国連の電気通信標準化を所管する専門機関であるITU-Tの局長に、日本政府が擁立したNTT出身の尾上誠蔵氏がITU加盟の193カ国による投票(選挙)によって選出されたことです。2023年から局長に就任され、ご活躍されています。選挙に向けては出身母体であるNTTも選挙チームを組み、尾上氏を強力にサポートしました。標準化推進室はNTTグループ会社の連携体制を確立するなど、選挙チームの中核として重要な役割を果たしました。日本政府によるITU-T局長候補擁立は、政府が国際標準化を重要視していることの表れであり、さらに尾上氏が見事当選されたことで日本国内における国際標準化強化の機運が高まっています。標準化推進室としてはこの機会を逃すことなく、NTTグループの標準化活動体制のさらなる強化、活性化に取り組んでいきたいと考えています。
NTTグループの標準化活動に関して問題、課題、疑問があったら標準化推進室に相談すれば解決する、そのためにも普段から標準化推進室に情報を共有しておこう、そんな頼れる存在をめざして、これからも社内外の情報収集や関係構築を進め、NTTグループの標準化を推進していきたいと考えています。