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グループ企業探訪

第265回 株式会社NTT ExCパートナー

ヒューマン・キャピタル分野を中心にEXの向上を通じてCXの高度化に貢献する会社

NTT ExCパートナーは、ヒューマン・キャピタル改革の知見を余すことなくお客さまへ提供することを目的に、NTTビジネスアソシエとNTTラーニングシステムズが経営統合することで、2023年7月に誕生しました。「Employee Experience(EX)の向上」を通じ、「Customer Experience(CX)の高度化」等への貢献を社名に託し、お客さまの持続的成長、ひいてはSDGsやサステナブルな社会の実現をめざす思いを矢野信二社長に伺いました。

NTT ExCパートナー
矢野信二社長

BPOからコンサルティングまで幅広い分野でNTTグループの共通系業務を支えつつ、お客さまおよび社会課題の解決に貢献

■会社の概要について教えてください。

NTTグループの新しい人事制度改革、人的資本に関する社会課題の変化、人材分野におけるテック企業の躍進など激変する事業環境の中で、新しい価値創造の実現をめざすことを目的として、2023年7月1日にNTT ExC(エクシ―)パートナーをスタートさせました。
NTTビジネスアソシエの持つ人事制度・システム設計構築・オペレーションに関する企画・実行力等のケイパビリティと、NTTラーニングシステムズが強みとする教育研修の設計・調達のサービスを組み合わせるなど、新たな体験や感動(EXでCXを創造)につながる高付加価値サービスやトータルソリューションを提供することで、お客さまのエンゲージメント向上を支援していきます(図1)。

■具体的にどのような事業展開をしているのでしょうか。

ヒューマン・キャピタル分野における各種BPOやコンサルティングに加えて、調達DX、学校向け教育ICT、年金・健康保険関連業務をベースとした健康経営、ならびに自律的キャリア形成やリスキリング等の研修育成事業など、幅広い側面からNTTグループの共通系業務を支えるとともに、一般市場のお客さまおよび社会課題の解決に貢献することをめざしています。2022年12月に設立したHRコンサルティングのNTT HumanEX(エヌ・ティ・ティ・ヒューマネクス)やNTTビジネスアソシエ東日本などNTT ExCパートナーグループでは約2300人が働いています。また、きらら保険サービスなどの関連会社とともにヒューマン・キャピタル全般におけるサービスをNTTグループと一般市場のお客さまに広く提供しています。

お客さまに寄り添い、新たな体験や感動を届けることで「価値あるパートナー」となることをめざす

■事業を取り巻く環境はどのような状況でしょうか。

ヒューマン・キャピタル分野においては、企業の人材、とりわけ事業変革や新たなビジネスモデル構築をリードするデータサイエンティストなどデジタル人材等のニーズが高まる中、いわゆる「ジョブ型の人事・評価制度」や「専門性教育・研修」、「人材データドリブン」が、企業の持続的成長におけるKSFとして経営戦略上の重要性が増しています。人材の流動化が進む中で、個人が働く、また会社を選ぶうえで、生き生きと働くことができるか、ということが重要視されています。人的資本経営の取り組みとその開示の動きも本格化しており、企業の持続的な成長や価値向上において、エンゲージメントの向上は重要な経営課題に位置付けられており、そのため企業の視点と従業員の視点双方のエンゲージメント向上が必要となります。
さらに、持続可能な社会の実現(SDGs)の観点からも、多様な働き方や社員等の能力開発支援、健康経営などヒューマン・キャピタル・ソリューションの提供を通じた社会的課題解決への期待や意義が高まっている状況です。

■今後の展望についてお聞かせください。

お客さまが抱える事業課題に真摯に耳を傾け、EXやCXの価値向上に資するサービスを幅広く提供することで、社員と企業双方の持続的な成長を支援します。その実現に向けたキーポイントは、「働く」「学ぶ」「暮らす」の幅広い分野におけるシステム・制度にかかわる運用等の知見とデータを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)ソリューションです。
例えば、「働く」では、働きやすさ・働き甲斐・働き方の観点からジョブ型人事制度、エンゲージメントサーベイ、ダブルワークなどのコンサルティングを、また「学ぶ」においては、自律的なキャリア形成・能力開発・リスキリングの観点から、育成支援コンサルティング、キャリア・ジャーニープログラムなどを、さらに「暮らす」においては、安心・安全に働ける環境の観点から、健康経営支援やビジネスリワーク(休職者復帰プログラム)など、NTT ExCパートナーグループ総体でお客さまへ高付加価値をご提供いたします。
また、BPOもシナジー発揮に重要なポイントとなります。人事部門はDX等によるオペレーションの効率化、品質向上を図りながら、経営課題と連携した戦略性を発揮することが求められています。社宅管理代行や財務、契約購買、人事給与、総務厚生など幅広いBPOの受託を通して、お客さま企業の業務改善やDX、コンサル、課題解決に向けた「打ち手」を裏方からご支援して参ります。
このように時代を先取りして事業変革へチャレンジすることが、お客さまの持続的成長、ひいてはSDGsやサステナブルな社会の実現に貢献することであり、まさに私たちの使命そのものだと考えています。NTT ExCパートナーグループは、この使命を果たすべく総力を挙げ、お客さまに寄り添い新たな体験や感動を届けることで、皆さまにとって「価値あるパートナー」と感じていただけるよう努めていきます。

担当者に聞く

グループ共通IT(調達)をスマートに使ってNTTグループ各社へバリューを提供

DX調達事業部 業務システム部門 担当課長
浜野 大介さん

■担当されている業務について教えてください。

私は、DX調達事業部 業務システム部門で、NTTグループの契約関連業務の標準化・効率化を図り、Fit to Standardの基本方針に基づきDXの推進を目的とした「グループ共通IT(調達)」の運用に携わっています。主にグループ共通IT(調達)に必要なマスターデータである、サプライヤ情報や商品情報を入力するための「業務運用ツール」の開発と保守運用を行っています(図2、3)。
業務運用ツールはグループ共通IT(調達)の仕様に沿ってつくらなければなりませんが、仕様が確定する前に開発をスタートする必要があったため、柔軟な開発が可能となるアジャイル開発を採用しました。開発中盤になっても、グループ共通IT(調達)の仕様が変更になることがあり、仕様変更に対応した開発と品質のチェックが追い付かないという問題が発生したため、一部機能を制限して2023年4月に暫定運用を開始しました。その後、必要な要件とのギャップを埋めつつプログラム品質の向上に取り組むことで全機能を提供することができました。
課題解決においては、利用いただくNTTグループ各社へのヒアリングを重視し、持株会社や社外の技術者および上長の支援により、チーム一丸となって開発を完遂することができたと考えています。

■今後の展望について教えてください。

運用は開始しましたが、サプライヤ情報や商品情報を投入する際に、記載項目が多く、業務負荷低減に向けた改善要望もあります。これらに対する改善検討は継続して実施することで、グループ共通IT(調達)全体の利便性は向上していくと考えております。今後もより使いやすいものとしていくために検討を重ね、業務効率化に貢献していきたいと思います。

コミュニケーション可視化ツールでオンラインコミュニケーション参加者の対面的雰囲気を感じる

HRソリューション事業部業務・システムコンサルティング部門 担当課長
田中 慎也さん

■担当されている業務について教えてください。

HRソリューション事業部で、コミュニケーション可視化ツールの開発に取り組んでいます。
働き方の多様化に伴い、オンラインコミュニケーションが普及していますが、対面のときに相手の表情や雰囲気から感じ取っていた心身の健康状態やその変化が分かりづらくなるとともに、コミュニケーションの密度、質も変化してきました。特にチームで業務を行う際には、こうした心身の状態やその変化を迅速に感じ取り、対応していくことが、パフォーマンスを上げていくための重要なポイントになります。
そこで、チームメンバーの心身の状態・変化、多忙度、孤立感等を、オンラインコミュニケーションの量、音声や表情等の質から分析・可視化することで、マネージャーのラインケア業務を支援する機能を開発し、ラインマネージメント支援ツールとしてサービス化しました(図4)。
開発においては、NTT研究所が開発した、音声音響処理・画像映像処理・自然言語処理などのさまざまな機能をオールインワンで統合的に扱うことができるAI(人工知能)を活用し、TeamsやWebex等によるオンライン会議の情報を、会話時間や会話時の「表情」「声(音声)」から、ポジティブ・ネガティブ・ノーマルの感情分析を実施します。そこで得られた結果を可視化し、日次・週次等でレポートするとともに、急激な変化や変化がない状態が長期化した場合にアラートを発出します。これによりマネージャーは、メンバーの状況変化の早期発見が可能となり、気付きの漏れや遅れによるメンバーの心身不調等の重症化を防止することができます。

■今後の対応について教えてください。

今後はNTT研究所と連携しながら、ツールを意識させずに情報収集する機能、対面形式の会議における複数名識別判断と情報取得機能、対面・リモートのハイブリット会議の情報取得機能等を追加していくことを計画しています。また、ラインケアの分析情報として、「勤務情報」や「ヘルスケア情報」等のクロスチェックが行えるサービスや、コミュニケーション力向上につながる改善アドバイス、「セルフケア」「チームビルディング」につながるコミュニケーション可視化等をサービス化し、サービスラインアップの充実を図っていく予定です。そして、AIの活用シーンをさらに広げて、議事録機能も開発し、業務の効率化・生産性向上をめざしたいと思います。

「カオナビ」社との協業で、データドリブンな人的資本経営の推進に貢献

ラーニングソリューション事業部 ビジネス戦略推進部門 担当課長
山岡 啓介さん

■担当されている業務について教えてください。

新会社のミッションとして、「ヒューマン・キャピタル(HC=人的資本)分野へのソリューションやテクノロジー等の価値提供」が掲げられ、これを加速させるため、タレントマネジメントシステムシェア8年連続No.1約3000社の顧客基盤を持つHRテック企業「カオナビ」社との協業に取り組んでいます(図5)。
「専門性を重視した研修等」をeラーニングにて提供可能な、ExCのクラウド型学習管理システム「LStep(エルステップ)」とタレントマネジメントシステム「カオナビ」をシステム連携させ、ワンストップでサービスを提供することで、人事部門における人事戦略策定、利便性向上や業務の効率化、従業員の自律的なキャリア形成支援など、企業等におけるデータドリブンな人的資本経営の推進に貢献することができると考えています。

■今後の展望について教えてください。

NTTグループを中心に利用されている、研修申込サイトのLearning Site21(LS21)と連携し、NTTグループの「18の専門分野」「グレード基準」に合わせた推奨研修講座を含む約3000講座について、LStep利用ユーザ、カオナビユーザが受講、申込できるような仕組みを構築し、さらに上長、育成担当者等からの推奨講座のレコメンドまでできるような機能の開発を予定しています。
こうした取り組みにより、多様な社員の多様な働き方をフォローしながら自律的に多様なキャリアを構築・成長できる仕組みを実現し、EXを向上させ、お客さまへの新たな付加価値の創出につなげることをめざしています。

XRを活用したNTTバーチャルステージングソリューションを提供

DXソリューション部 ソリューション制作部門
藤本 翔さん

■担当されている業務について教えてください。

主な業務として、ヒューマン・キャピタル分野における映像制作を担当しています。具体的には、クロスリアリティ(XR)を活用した教育・研修用映像コンテンツや、プロモーション・各サービス紹介の映像等が挙げられます、また、新型コロナウイルス感染症の影響により、オンライン入社式や式典のライブ配信の案件が急増したことを受け、2021年からはライブ配信に付加価値をつけたバーチャルプロダクションの企画・制作・配信まで一気通貫で内製・提供できる体制を確立しました(図6)。
バーチャルプロダクションの大きな特長は、3Dで作成したCG背景と被写体をリアルタイムで合成できる点で、ゲーム制作で使用される「Unreal Engine(アンリアル・エンジン)」を利用することで高度なグラフィック処理によるバーチャル背景のリアルタイム化が可能となり、映像演出、アニメーション付き3Dテロップの制作、立体的で美しいグラフィックスにより、入社式やセミナー、プロモーションなど新たなコーポレートブランディングの手段として好評をいただいています。

■今後の展望について教えてください。

ヒューマン・キャピタル分野における映像制作において、一段レベルアップしたバーチャルプロダクションサービスを提供していくうえで、「オプションサービスの充実」と「提供価格」は重要なファクターであり、サービスの面ではXRの技術を融合させ没入感の高いコンテンツを企画から参画していくことで、新たな付加価値を生み出すきっかけにもなると考えています。
オプションとしては、発言した言葉を即時に自動で字幕テロップ化する技術の検証を進めており、音声を出力できない環境下や、聴覚障がいの方でも視聴可能なコンテンツの開発を進めています。
また提供価格の面では、スタッフの人員数や稼働時間削減の経験を活かして、今後はキャリーバッグに必要機材をパッキングして全国各地へ出向き、そこからバーチャル配信できるスモールサービスとしてパッケージ化もめざしています。

ア・ラ・カルト

■大宮アルディージャVENTUSの林選手が所属

ExCパートナーには、女子サッカーWEリーグの大宮アルディージャVENTUSの林みのり選手が所属しています(写真1、2)。「仕事とサッカーの両立は大変な所もありますが、周りの皆さんのおかげで楽しく、前向きに業務を行うことができ、社会人としても少しずつではありますが、成長を感じることができている」とのことです。
2022-2023 yogibo WEリーグでは、全22試合中19試合に出場しましたが、目標であった3ゴール3アシストを達成できなかったので、次シーズンは3ゴール5アシストの目標を達成できるように日々トレーニングに励んでいるそうです。
そんな林選手からメッセージをいただきました。「いつも大宮アルディージャVENTUSの応援ありがとうございます、私たちが楽しく真剣にサッカーと向き合えているのは、サポートいただいている方々のおかげです。サッカー選手としても社会人としても、さらに成長していけるようにこれからも頑張っていきたいと思います!」頑張れ林選手 Ole!