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グループ企業探訪

第209回 NTTテレコン株式会社

ライフラインの集中監視・自動検針を提供 今後はIoTトータルソリューションにより世の中のデジタル変革を推進

NTTテレコンは、集中監視や自動検針を行うテレメータリングシステムを全国のライフライン事業者に提供してきた、正にIoTの先駆け企業。本格的なAI/IoT時代を迎え、既存コア事業の大変革を進めるとともに、新たな事業領域の開拓・拡大を積極化している。2018年7月に就任した深澤充社長に事業内容や経営戦略などについてお話を伺った。

NTTテレコン 深澤充社長

「ライフラインに安心をのせて」を旗印に、LPガス等業界のさらなるデジタル変革に挑戦!

事業内容を教えてください。

私たちNTTテレコンは、ガス・電気・水道等ライフラインの集中監視や自動検針を行うテレメータリングシステムを全国のライフライン事業者様(約800社/400万世帯)に提供している業界トップシェア(約5割)の会社です。1988年の創業以来、通信キャリアが提供するネットワーク技術の進化・進展に合わせて「NCU(Network Control Unit)」や「集中監視センタシステム」を開発・提供し、保安の高度化や検針業務の効率化・省力化等に貢献してきました。具体的には、各世帯のガスメータから得られるガス利用状況やガス漏れ検知などの各種情報を、固定電話や携帯電話の通信回線を使ってセンタシステムに集約し、ガス漏れ早期発見・遠隔遮断等のための集中監視サービス、自動検針サービスの提供、および「保安センタ」によるガス漏れ等緊急警報発生時の利用者・事業者様への緊急通報等サービスを提供しています。加えて、複数の事業者様で無線親機を共同でご利用いただくシェアリングサービスやクラウドを活用した販売管理・配送管理・請求書発行等の業務支援サービス、高齢者見守りなどの付加価値サービスも提供しています。現在LPガス利用世帯数は全国で2400万世帯ですが、約600万世帯(25%)に集中監視システムが普及しており、当社サービスシェアは57%(340万世帯)という状況です。集中監視システム導入による「認定LPガス販売事業者」の認定基準緩和やインセンティブ拡大(経済産業省)、そして今後の安価なLPWA(Low Power Wide Area)回線の導入とも相まって、システム普及はさらに拡大していくものと考えています。

経営戦略についてお聞きします。

IoT(Internet of Things)向けに普及するLPWAネットワークの本格導入に伴い、正に2019年からLPガスを中心としたライフライン業界はデジタル変革のまっ只中に突入します。リーディングカンパニーとして、新たな商品・サービスを速やかに投入していくことはもとより、30年以上にわたって培ってきた事業基盤を土台にしながら営業・マーケティングのあり方を抜本的に見直し、このデジタル変革に積極果敢に挑戦していきたいと思います。とりわけ、AI(人工知能)を含めた上位レイヤのアプリケーションはどんどん新しいものが出てきますので、特定メーカ・ベンダに縛られないニュートラルなポジションにより他社とのオープンイノベーションを積極的に推進し、お客さまに最適な商材を目利き・組み合わせて提供する「トータルソリューション」の力を強化していきたいと考えています。具体的には2018年8月に「新経営ビジョン」を策定しました。私どもが培ってきたノウハウをベースに5つの強みを棚卸し、これらにさらに磨きをかけつつ、相互に連携させることで総合力を発揮して、お客さま経営課題の解決に資する「トータルソリューション」を本格的に展開していきたいと考えています。

NTTテレコンの「新経営ビジョン」

特定メーカ・ベンダに縛られないニュートラルなポジションとフルラインアップにより、お客さまに最適な「IoTトータルソリューション」を提供し、世の中のデジタル変革を推進。
①「端末メーカ・フリー」
特定メーカに依存せず、すべての端末メーカとのインタフェース連携を推進し、警報・検針・付加機能等のあらゆる情報を収集できるNCU・センタシステムを開発・提供。
②「アクセス・フリー」
LPWAおよびMVNO(Mobile Virtual Network Oper-ator)の登録電気通信事業者として、NTTグループの有線・FOMA・LTEといった通信回線はもとより、お客さま要望や状況に応じて各種LPWA網を柔軟に選択・活用して、全県等域において最適なアクセスネットワークを提供。
③「NTT通信ビル収容・社内技術者による安定的センタシステム運用」
サーバなどの重要設備やオペレーション業務の拠点をNTT通信ビルに収容し、通信キャリアグレードの高信頼性を確保するとともに、設計・開発から保守まで一貫したスキルを有する当社の技術者による安定的なセンタシステム構築・運用を提供。また、当社共同センタ「テレコンクラウド」の提供のみならず、お客さまセンタシステムのSI・設備預かり保守も実施。
④「高品質な業務オペレーション」
「テレコンセンタ」および全国15拠点に展開する支店・営業所が、地場の工事会社と密接に連携し、全国レベルでの端末装置のデリバリ・保守を実現するとともに、「保安センタ」で24時間365日対応の集中監視を実施。30年以上にわたる豊富な実績で培った現場ノウハウにより、高品質で的確な業務オペレーションを提供。
⑤「NTTグループおよび他社とのオープンイノベーション推進」
NTTグループ内外との協業・アライアンスを積極的に推進し、お客さまの経営課題解決に資するAIを含めた上位レイヤのアプリケーションなどの目利きとラインアップを強化。

協業・アライアンスにより新たな事業領域を開拓・拡大IoTソリューションの「下支え役」として貢献!

新たな事業展開について教えてください。

ライフライン以外の事業分野については、NTTグループ企業をはじめとした各社のIoTソリューションの「下支え役」として貢献していければと考えています。全国に15の支店・営業所を構え、全県等域でLPWAおよびMVNOを提供することが可能な登録電気事業者資格をベースに、地場の工事会社と密接に連携しながら全国レベルでセンサ・端末機器のデリバリ・保守を統制・実施するとともに、NTT通信ビルに設置しているセンタシステムに集約した情報を基に「保安センタ」で24時間365日(6輪番体制)の集中監視をするという事業基盤(IoTプラットフォーム)は、発足30年以上の長期運用実績に基づく現場ノウハウが蓄積されており、さまざまな事業分野への応用が期待できると考えています。今や1つの企業で新たなイノベーションや付加価値の高いソリューションを生み出す時代は終わりました。今後は、NTTグループ企業や他社との積極的な協業・アライアンスを推進し、私どもの強みやノウハウを柔軟にご活用いただくことで、世の中のデジタルトランスフォーメーションを推進する一翼を担っていきたいと考えています。
しかしながら、忘れてはならないのはNTTグループのDNAである「つなぐ」という魂です。あらゆる物がインターネットにつながる時代、安心・安全なIoTプラットフォームを運用・提供していくことは、私たちNTTテレコンの最大の使命だと考えます。「ライフラインに安心をのせて」を旗印に、世の中の安心・安全を司る企業として、全社員で気持ちを1つにして誠実に仕事をしていきたいと思います。

社員・組織の自己変革を推進「楽しく・楽しみながら」

最後に、社風と社員へのメッセージをお聞かせください。

当社は泥臭い仕事を社員が愚直に遂行しており、「現業の実態がある会社」だと感じています。それ故、みんな仕事にプライドを持っており、役職や上下関係にあまりこだわらずにピュアな議論ができる風通しの良い雰囲気がとても良いところです。
これから遠隔監視等の当社コア事業は大競争時代に突入します。これまで培ってきたノウハウや強みを棚卸して自身のポジショニングを明確化するとともに、それにさらに磨きをかけながら、柔軟な発想で社内外の人たちとオープンにあらゆるかたちでつながっていくことがとても大切です。でも、大変な時代だからこそ、仕事は「楽しく・楽しみながら」やるというのが私のモットーです。そして、社員1人ひとりが変化を恐れず自己変革を推進し、みんなの持ち味や強みを結集した「最高のチームプレー」で、NTTテレコンの新しい未来を切り拓いていきたいと思います。

担当者に聞く

LPWAを活用した新たなビジネスモデルの開発を

取締役 新規ビジネス開発部長 博士(工学) 原田 充さん

原田 充さん

LPWAについての取り組みを教えてください。

一般にテレメータリング端末やセンサからセンタへの送信データは、少量かつ低頻度(ナローバンド通信)です。一方で、通常の携帯端末はブロードバンド対応で常に電波を出しているため、電池を電源としている端末の場合は電池交換のために設置場所に赴く頻度が高くなり、これがコスト増を招きます。そこで、通信速度を落とし、データ送信時のみに電波を発する等、低消費電力化が期待できるLPWAが、IoT向けの通信手段として注目されています。
当社の主幹事業であるガスの集中監視事業においても、ガスメータに接続される端末とセンタをつなぐ通信技術の1つとして、 LPWAを活用し、コストの抑制を図っています。

どのようなところに注力していかれますか。

新規ビジネス開発という側面からいいますと、大きく2つあります。1つは、当社のLPWAシステムの汎用化を行い、ガス以外の分野における監視業務などの用途を開発することです。もう1つはLPガス事業者様向けに、今まで提供できていなかった新たなサービスを開拓したいと考えています。
前者は、例えば、ガスの監視ネットワークに相乗りするようなかたちでガス以外の情報を載せる仕組みを開発中です。後者は、LPガス事業者様向けのサービスで、ガスボンベを効率的に交換・配送するためのサービス等を開発しています。集中監視システムにより、ネットワークを介してガスの残量は常時把握できますから、その情報を基に、ガスボンベの交換時期の最適化や、さらに交換が必要なボンベについて最適な巡回ルートの予測を行い、販売店に情報提供するサービスです。以前は1軒1軒家を巡回して得られる月1回の検針値のみにより、ガスの残量がなくなる時期を予想して交換しなければなりませんでしたが、これにより販売店様の業務が効率化されます。

今後の展望についてお聞かせください。

当社のシステムをご利用いただいているお客さまのLPガスメータは、すでにネットワークとつながっています。NTTテレコン以外の事業者様からこうしたネットワークを使いたいというご要望があれば、上記の相乗りする仕組みを利用することによって、端末1台からでもつなげられるという利便性が提供可能になります。さらに、ガスボンベの交換やメンテナンスのための要員が思うように集まらないといった状況を抱えるLPガス事業者様に、当社の集中監視サービスとセットでガスボンベの交換支援情報を提供することで、LPガス事業者様の課題解決に資することができます。こうして、当社のサービスが全国に展開されてくれば、その先の話として、例えば自治体の防災関連の監視等の業務やその他の住民サービスに当社のLPWAネットワークを活用いただくことも可能になります。つまり、住民サービスや住民の安全を支える新たなインフラの登場でもあります。

30年以上にわたる豊富な実績で培った業務オペレーション

カスタマサービス部長 中村 公俊さん

中村 公俊さん

カスタマサービス部の業務概要を教えてください。

カスタマサービス部には、全国を対象とした3つのオペレーション機能があります。具体的には、「全国デリバリ・保守コントロールオペレーション」「センタシステム運用・保守オペレーション」、それに「集中監視オペレーション(24h.365d)」で、スタッフは44名、私はそれらすべての部門を統括しています。

それぞれの業務についてお聞かせください。

1番目の「全国デリバリ・保守コントロールオペレーション」では、集中監視システムの約120万件に及ぶお客さまデータの登録と修正業務、それに集中監視用端末機器の工事試験や故障切り分け試験のオペレーション、そして、各種検針情報に関するLPガス事業者様や販売店様からの問合せに対応しています。
2番目の「センタシステム運用・保守オペレーション」では、震度7クラスの地震に耐え、非常用電源が確保されたNTT通信ビルの、免震機構付のラックに収容された、当社およびお客さまからお預かりした集中監視システムのサーバの維持管理および故障時におけるログ解析などを行っています。
3番目の「集中監視オペレーション」では、「テレコンセーフティサポート24」という、当社の保安センタがガス事業者様に代わり、ガスメータから送信される緊急情報を24時間365日監視し、ガス利用者様への電話による情報収集と対処方法案内などの業務や、ガス事業者様やガス利用者様からの電話受付業務を行っています。さらに、LPガス以外の分野における水位監視、温度監視等のオペレーションも行っています。

どのようなご苦労がありますか。

オペレーション業務は顔の見えない電話応対業務です。時には、ガスの販売店様や工事会社の現場作業員の方からお叱りを受けることがあるため、オペレーション業務を担うスタッフには、それらがストレスの要因になることもあります。そこで、ストレス軽減のために、会話によるコミュニケーションの行き違いがないかということに、私たちは細心の注意を払っています。コミュニケーションのノウハウをきちんと伝え、OJTによる教育や電話応対の研修などを実施、さらに、ガス工事の流れを体験・学習できるようなコーナーも社内に設置し、研鑽に努めています。

今後の展望についてお聞かせください。

AIなどの先端技術を活用した集中監視の効率化やガスの利用状況の見える化などを進め、より安心、使い勝手の良いソリューションを提供するためにも、30年以上にわたる豊富な経験で培った業務オペレーション実績に基づく、高品質で安定的なオペレーションに努めたいと考えています。また、今後は、さまざまな分野における人手不足という状況にかんがみ、当社であらゆるジャンルに対応できる受託業務オペレーションとすべく、さらなる業務運営体制の拡充を図り、その一環としてフロアのレイアウトを変更しました。これにより、ショールームを兼ねたオペレーションルームを開設し、作業環境の改善を図り、専用室で高品質なオペレーション業務が行えるようになります(写真1)。

写真1 新たなオペレーションルーム

NTTテレコン アラカルト

拠点間の距離を共通の趣味で補うスポーツクラブ

NTTテレコンは2016年6月に「テレコンランニングクラブ」を創設し、現在、全国にいる約20名のメンバが活動しています(写真2)。メンバが全国に分散しているため、合同練習は難しいものの、各自の練習風景や結果を社内の電子掲示板にアップして、コメントのやり取りをするなどの交流を図っています。ちなみに、2018年度には、NTTグループ駅伝を含む19のマラソン大会に、社員が参加しています。多くはフルマラソンやハーフマラソンで、「別府大分マラソン」や「名古屋ウィメンズマラソン」といった国際的な大会にも参加しています。中には各地のマラソン大会を渡り歩き(走り?)支店の垣根を越えた活動をしている社員もいるそうです。

写真2 ランニングクラブメンバ

SNSで情報発信!

NTTテレコンは2017年4月からFacebookによる情報発信をしています。本社・支店から集まった6名でFacebookチームを結成し、サイトの管理運営を行っています(写真3)。「試行錯誤しながら、会社の紹介を目的に、月に1~2回発信しています。まずは多くの人に、NTTテレコンのことを知ってもらい、当社はライフラインの安心・安全を提供しているのだということを伝えたいという想いがあります」と営業本部営業支援担当課長の長谷部朗子さんは言います。投稿記事の中にはサービス紹介だけでなく懇親会の画像もアップされており、楽しそうな会社の雰囲気も伝わってきます。

写真3 Facebookチームメンバ

営業の変革をもたらす「深澤塾」の全国行脚が始まった

深澤社長がNTTテレコンに着任した2018年7月から本社で開かれたのをスタートに、すべての拠点で社長自らが講師となり「深澤塾」を開催しています(写真4)。授業は1回2時間程度で、最初のテーマは「営業・マーケティングの変革」、対象は全社員だそうです。社長はもともと法人営業のエキスパートで、課題解決型の営業ノウハウを社員に伝授すること、そしてみんなとダイレクトに接し、直接コミュニケーションできる場を設けることが狙いだといいます。「価格や納期が勝負の物売りから脱却し、当社が提供する商材・サービスで解決できるお客さまの経営課題やその投資対効果の仮説を立てて、それを確認にいく営業スタイルに変革することが目的(深澤社長)」。すなわちこの「仮説検証型営業」が真のトータルソリューションであるということ。この営業プロセスのPDCAを全社で回していく仕掛けをつくり、中身を日々進化させていくことが重要であるとのことです。今後も、テーマを変えて第2弾・第3弾の深澤塾が予定されているそうです。

写真4 深澤塾の様子