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グループ企業探訪

第208回 株式会社NTTフィールドテクノ

「地域No.1オンサイト企業」から「地域No.1総合サポート企業」へと変革、そして飛躍

NTTフィールドテクノは、NTT西日本のグループ企業として、NTT西日本の情報通信設備にかかわるアクセス系ネットワークからお客さま宅内設備の構築・開通・保守、および所内系設備のオンサイト保守、カスタマサポートまで、一元的に担っている企業である。今回はNTTフィールドテクノの事業内容、オンサイト業務における生産性向上への取り組み、そして今後の新たな事業展開を視野入れた会社の方向性について猪俣貴志社長にお話を伺った。

NTTフィールドテクノ 猪俣貴志社長

NTTビルからお客さま宅内まで、ワンストップでサポート

設立背景と目的をお聞かせください。

当社は2008年に発足したNTTホームテクノを前身としており、家庭内LANやそれに接続される多種多様な情報機器の登場によって高度化したIT環境にワンストップで対応していくため、宅内技術者を結集した専門特化型の会社としてブロックごとに(NTT西日本-ホームテクノ関西等)6社で営業を開始しました。2012年にこれら6社がNTTホームテクノとして1つの会社に統合し、これまでの業務に加えて、カスタマサポート業務(お客さまからの故障受付業務等)が移管され、宅内系のオンサイト保守・サポート業務をワンストップで対応できるようになりました。
そして2013年10月1日に「NTTフィールドテクノ」という新たな事業会社として発足したことを契機に、宅内だけでなく、NTTビルの外にあるケーブルや電柱などのアクセス系設備の構築、運用・保守業務を加え、さらに光サービスの開通業務も移管し、事業領域を大幅に拡大させました。その後、2016年にはNTTビルの所内系設備のオンサイト保守業務がNTTネオメイトから移管されたことで、NTT西日本の情報通信設備において、NTTビル内の所内系設備からアクセス系設備、およびお客さま宅内の設備までワンストップで対応できるようになりました。さらに2017年にはNTTビジネスソリューションズからビジネス系LAN/WAN、PBX等のSE/SI・MI等のエンジニアリング業務が 移管され、西日本グループのオンサイト業務を一元的に担う事業運営体制を構築いたしました。

まさに業務拡大の歴史ですね。どのように事業展開されているのでしょうか。

当社の事業は大きく2本の柱で構成されています。まず、上述したようにNTT西日本の情報通信設備に関する事業です。当社の沿革そのものの事業であり、NTTビルの所内系からお客さま宅内までの設備におけるオンサイト保守、光サービス開通や全国展開されている法人ユーザ様の多拠点ネットワーク工事等のコーディネート、電話引込線の垂れ下がり点検・撤去といった安全性の観点での保守、そして個人や法人のお客さまからの問い合わせやITコンサルティングといった各種サポート業務までを一貫して行っています。この分野においては、常にコスト削減を求められるのですが、単なる費用の削減ではなく、さまざまな業務において「生産性向上を高める」ということを意識した業務変革に取り組んでいます。もう1つの柱は、故障受付やオンサイト等の業務を通して得られたスキル、ノウハウ、仕組み等をNTT西日本以外の一般市場に展開することによって、新たな収益となるビジネスを行っています。
NTTコミュニケーションズ様やNTTドコモ様などNTTグループ企業へのオンサイト系業務や、ISP(Internet Service Provider)、SIer、メーカ等、各事業者様とのアライアンスによる新たな事業展開、通信事業者等へのコールセンタとオンサイトの組み合わせによるサポート業務などを提供しています。オンサイト、リモート支援、テクニカルサポート等の業務を通じて得られた社員の知見、企業としての知見を活用できる新たなビジネスの拡大をめざしており、現在、一般市場向けビジネスの売上は全体の25%程度ですが、これを今後7年くらいの間に40%を超えるまでに伸ばしていきたいと考えています。

最近、生産性向上という言葉をよく目にしますが、具体的にどのような施策で対応しているのでしょうか。

当社では、多くのベテラン社員の方々が退職を迎える時期に備え、技術の担保が重要な課題となっています。また、地元で活躍したいという志を持った若手社員が増える中で、社員1人ひとりの多様な価値観、発想を活かしながら、社会の変化にも迅速かつ柔軟に対応できるスタイリッシュな現場業務のあり方が求められています。このような背景のもと、当社では「ゼロ化・プロアクティブ化」を掲げ、取り組みを進めています。
さまざまな業務で発生する間接的な業務や、移動時間、事故等をゼロに近づけるのが「ゼロ化」。物事が発生してからアクションを起こす(リアクティブ)のではなく、発生する前に対応するのが「プロアクティブ化」。この考え方に基づき業務の見直しを推し進め、生産性向上に努めています。
オンサイト業務の「ゼロ化・プロアクティブ化」においては、AIを活用したシステム「フィールド・アシスタント」を現場に実践配備しており、現場作業者はもちろん、作業者を統制する側の業務もサポートし、日々の業務の効率化と生産性向上を実現しています。

「企業は人なり」、人材が事業の持続的基盤

1万人のオンサイト作業員の生産性が向上するとすごい価値が生まれますね。

オンサイト作業員は約1万人ですが、当社にはコールセンタのスタッフ等を含め、約1万8000人の社員がいます。「企業は人なり」という言葉がありますが、まさにこの1万8000人そのものが当社の価値であり、事業の持続的基盤でもあります。単に稼働のみではなく、各人のスキル、知見、発想等が価値であり、これをいかに活用・管理していくかということも、事業上の大きな役割を担っています。そのうえで、社員個人のスキル等は重要ですが、商材、サービスも多種多様で技術も複雑化しており、現地社員をリモートでサポートする等、社員の能力を補完・サポートできる仕組みもつくり、トータルでパワーアップを図っています。
少し話は変わりますが、当社の特徴として社員の約20%が女性です。フィールドエンジニアリングをメインとする会社でこの数字は相当高いと思います。お客さまサポートを通して人の役に立つことができる、トラブル対応等において自分の努力の結果が目に見えるといった理由で、入社を希望する女性が増えてきており、何年後かには40%近くまで女性比率が高まるのではないかと思っています。女性社員のコミュニティもつくっており、そこでは女性向けデザインの作業服のような見かけの話ではなく、工具の軽量化といった改善成果も生まれており、女性に限らず(腕力の強くない人等)男性にとってもうれしい作業環境改善の提案につながっており、非常に大きなパワーとなっています。

この人材はまさに強みですね。この強みを活かして今後はどのように事業展開するのでしょうか。

社員1万8000人の価値は十分な強みであり、さらにオンサイト業務に従事する社員を中心にお客さまと直接コンタクトできるビジネス機会があることも強みの1つです。さらに当社が今後NTT西日本以外の一般市場に向けたビジネスを拡大していくうえで、パートナーと連携した「アライアンス」を軸に事業を展開していくことが重要となります。パートナーとの連携において、何らかのかたちで情報通信が介在しており、その意味で当社がNTT西日本の設備にかかわる業務を一元的に担っていることは大きな強みになってきます。
お話してきた当社の事業を踏まえ、「“地域No.1オンサイト企業”」という会社としてのめざすべき方向性を社内外へ発信していますが、これからは「“地域No.1総合サポート企業”」という新たな方向性をめざしていこうと考えています。もともと「No.1」という意味合いは、人材・拠点といった量、高度な技術力や多様なスキルといった質、そして先駆的取り組みに挑戦しようとする企業としてのマインドでNo.1をめざすことです。そして、当社が培ってきたオンサイト、そのオンサイトを支えるリモート機能、さまざまなサービスにかかわる工事等を総合的にコーディネートするデリバリ機能を基盤とし、NTTグループのさまざまなサービスや商材、さらにアライアンスパートナーのサービスや商材なども組み合わせて、個人や法人のお客さま、自治体様等が抱えるさまざまな課題に幅広くこたえられる、またはサポートができる企業へさらに進化していきたいと考えています。
そのためには、事業の基盤である人材(社員)がこれまで以上に力を発揮できる環境の構築が必要で、これからも企業としての先駆的な取り組みを継続していきたいと考えています。

社員の方へのメッセージをお聞かせください。

これまでお話してきたように当社の強みや事業基盤を支える源泉は何といっても主役は社員です。当社の沿革でも分かるとおり、会社を取り巻く事業環境は絶えず変化しており、これまでの事業領域の拡大とともに、当社がかかわっていける領域もどんどん大きくなっています。
ICT等の普及によって、ますます社会環境が変化し、それに合わせてお客さまのニーズや新たな課題が生まれてきますが、それらの環境変化に追随し、地域での課題やお客さまのニーズにこたえていくことが当社の“バリュー”だと考えていますので、「地域No.1総合サポート企業」をめざして、その主役である社員の皆様と一緒に変革・進化を続けていきましょう。

担当者に聞く

ゼロ化・プロアクティブ化」による生産性向上

取締役 設備部長 髙嶋 俊英さん

髙嶋俊英さん

ご担当の業務内容について教えてください。

ベースロード業務として、NTT西日本の局内からお客さま宅内まで一気通貫した、電気通信設備等の保守・運用業務、コールセンタによる故障受付業務(113)を担当しています。
また、コールセンタやリモートとオンサイトによるサポートサービスで培ったノウハウを活用して、ビジネス推進部で開拓した一般市場向けビジネスのオペレーションも担当しています。例えば、モバイル通信事業者のアンテナの点検保守業務、光回線卸サービスを利用しているISPへのコールセンタとオンサイトによるカスタマサポート業務等がこれにあたります。加えて、リモートとオンサイトをコーディネートする機能としてデリバリセンタを立ち上げており、全国に拠点を展開されているお客さまに対し、通信設備構築にあたっての工事調整業務(デリバリ機能)も展開しています。

業務が広範にわたっていますが、どのようなことに注力されていますか。

すべての業務における生産性向上を図るため、業務の「ゼロ化・プロアクティブ化」に取り組んでいます。
知識経験が豊富な先輩達がお辞めになる厳しいリソース環境の中で、既存の業務改善ありきではなく、将来のあるべき姿を描き、現状とのギャップをAI・IoTを使って解決していくことに注力しています。例えば、「ゼロ化」とは、さまざまな業務で発生する間接的な業務や工事中に発生する設備事故等を、ナレッジとAI・IoTを融合させて限りなくゼロに近づける取り組みです。また、「プロアクティブ化」とは、これまでのベテラン社員による目視での設備点検や知識をベースにした不良設備改善を、必要なデータベースに最新技術を用いながら効率的に貯め、知識のナレッジ化と融合させて“プロアクティブ”に実現させることをめざしています。
また、オンサイト業務における待機時間や移動時間のロスを大幅に軽減し、生産性向上を図る有効なツール「フィールド・アシスタント」を全支店に配備し、日々の効率的なオンサイト業務を実現するとともに、物品管理や社員の健康管理等もこのシステムでの一元管理を実現することに取り組んでいます。

「フィールド・アシスタント」はどのようなシステムですか。

毎日のさまざまな業務案件がGPSを使って、誰が、どこで、何の案件を、どんなステータスで実施しているのかがシステムの画面で可視化されています。また、社員のスキルデータベースとして、単なる資格の保持情報だけでなく、経験した商材・案件等のこれまでの実績を社員ごとにデータベース化するとともに、お客さまへどのようなルートで訪問することが移動ロスを減らすかといったAIの最適ルーティングを使い、案件ごとに最適な社員や現場までの最短移動ルートを導き出すことができ、オンサイト業務の生産性向上を実現しています。
加えて、通信設備の点検業務では、作業者のスマートフォンに音声認識アプリを搭載することで作業手順や作業内容を音声によりサポートすることができるので、その点検業務に精通していなくても、故障対応に駆けつけた作業者が待機時間を利用して点検業務を実施することが可能となり、さらなる生産性向上につながっています。

今後の展望について教えてください。

当社の強みはオンサイトで日々活躍する「人」です。しかしながら、「人」には限りがあります。これからも増え続けるさまざまなお客さまへのサポート業務を、ゼロ化・プロアクティブ化の取り組みを推進することで、さらなる生産性の向上を図り、「人」が新しいビジネスを含めた量と質の向上にチャレンジするとともに、それに伴う「人」の育成についてもAI/ICTをうまく使いながらスキルアップを全面的にサポートしていきたいと考えています。

地域No.1の総合サポート企業としてSociety5.0時代を牽引したい

取締役 ビジネス推進部長 村田 晋一さん

村田晋一さん

ご担当の業務内容について教えてください。

NTTフィールドテクノでは、これまで培った通信設備の構築から開通・運用・保守にいたるまでの業務ノウハウをベースとした 「一元的なデリバリやリモート、オンサイトによるフィールドサポート」と「パートナー各社やNTTグループ各社の皆様との多様なアライアンス」 を活かして地域社会の抱える課題解決に取り組んでいます。
主な取り組みとして、最新技術(AI等)を活用したインフラ設備の老朽化対策やリモートサポート等を活用した教育現場へのICT整備等にチャレンジし、地域社会を支えるお客さまの課題解決に向けたご提案を進めています。

どのようなビジネスを開拓してきたのでしょうか。

インフラ設備の老朽化対策については、2018年3月より「道路路面診断ソリューション」 の提供を開始しています。車載カメラや振動センサにより得られる路面画像、振動データをAI等で分析し、路面のひび割れの検知や、平坦性を診断します。道路路面に限らず、車載カメラで撮れるさまざまなターゲット(特定の目標物)の表示内容の確認や位置情報の取得等、さらなる活用範囲の拡大にも取り組んでいます。また、信号柱等の地中部点検サービスも提供しており、鋼管柱で発生しやすい地中部の劣化を掘削せずに診断することで、短期間で効率的な点検が可能となります。これらの「道路路面診断」や「鋼管柱点検」の結果は、自治体様の補修計画等に反映しやすいように地図上にマッピングして提供します。
また、教育ICT支援として、教育現場へのICT活用推進にも取り組んでいます。教育委員会様とICTに関する協定を締結し、授業でのICT利活用方法の相談を電話でサポートする等、教職員様の負担を軽減する取り組みを進めています。電話サポートでは、専用ソフトを用いて教職員様と同じ画面を見ながら問合せにおこたえする仕組みもご活用いただけます。また、必要によりフィールドエンジニアが現地に訪問して技術支援を行います。
このほかにも、AIを搭載したコンシェルジュが観光情報や施設の案内に多言語で自動応答するサイネージソリューションの提供や生産性向上に向けたロボティクス(RPA)の導入サポート、健康増進に資するIoT機器の構築運用等、地域社会の課題解決に向けて取り組んでいます。

今後の展開について教えてください。

あらゆるモノがインターネットとつながり新たな価値を創造するSociety5.0時代においても、地域No.1の総合サポート企業として地域社会の課題解決に貢献するため、AI、IoT等に関する先駆的なチャレンジとノウハウ蓄積に積極的に取り組んでいます。部分的なネットワークサービスや端末機器、ソリューション提供にとどまらず、周辺業務をまとめてお任せいただけるような総合サポート企業をめざし、地域のお客さまとともに課題に向き合うコンサルティング力と幅広く商材を目利きするプロデュース力に磨きをかけていきたいと考えています。

NTTフィールドテクノ アラカルト

現場環境改善PTの取り組み

女性社員が働きやすい職場の実現に向け、2016年度より現場環境改善PTとして、「工具」や「工法」などの改善を推進してきました。今年度から現場環境改善PTのコンセプトを見直し、「SHINING活動」というかたちで、現状の働き方の延長線上であるモノの改善にとらわれることなく、「入社したい! 入社して良かった!」と思われる企業をめざして、理想像(あるべき姿)と現状とのギャップを埋める「未来を見据えた業務改善」に取り組んでいます(写真1)。

写真1 KAIZENアイデアコンテストでの議論模様

教育現場のアクティブ・ラーニングをサポート

NTTフィールドテクノでは、電子黒板等のICT機器を活用し、動画や写真を使った、生徒がワクワクする授業やアクティブ・ラーニング*を実現するために奮闘される先生の思いをかたちにします。
具体的には、地域密着で通信を支え続けてきた実績がベースの「テクニカルコールセンター&オンサイトサポート」で、ICT機器の問題個所の特定やトラブル復旧を、電話での相談受付に加えて、学校等現地を訪問することで、教育現場でのICT活用促進を支援し、先生方が授業に専念できるようにします。

* アクティブ・ラーニング:文部科学省が提唱する、ディスカッションなどによる課題解決型の能動的学修のことです。

関西教育ICT展に出展

2018年8月の会期中、約8000人の教育関係者が来場した「関西教育ICT展」(写真2、3)。そんな教育関係者が注目するイベントで、メーカを問わず多種多様なICT製品をサポートしてきた実績をPRしました。来場者からは、「デジタル教材の使い方をはじめ、現地でのサポートの必要性を感じている」「保守体制が課題」等といった手ごたえを実感する声もいただいています。

写真2

写真3