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2026年3月号

挑戦する研究者たち

暗号理論研究の方法論をベースにコンプレキシティ増大の法則を定式化

世界を代表する暗号理論研究者、NTT社会情報研究所の岡本龍明フェローは、これまで構想を温めてきた「組織化された複雑さ」の問題について、ご自身が長年専門としてきた暗号理論の方法論も活かし、このたび「コンプレキシティ増大の法則」として定式化しました。この法則により宇宙や生物、人間社会など多くの対象において、その集団が長期的に複雑化していく現象を統一的な方法で初めて説明することができるようになりました。今回、定式化の考え方、法則が成立している具体例、そして法則に従った場合、未来の地球や人間社会は一体どういった方向に向かっていくのか伺いました。

岡本龍明
フェロー
NTT社会情報研究所

世の中で複雑さが増大する現象とは一体何だろう

3年ぶりのご登場ですね。「組織化された複雑さ」の研究について進展状況をお聞かせください。

前回のインタビューでは「組織化された複雑さ」を定義しました。今回、これをコンプレキシティ(1)と命名し、それが世の中の多くの対象において時間とともに増大していく現象「コンプレキシティ増大の法則」を定式化(2)しました。さらにこの法則が具体的にどのような対象で成り立ち、どういった分野で役立つのかといった応用例も含め、これから詳しくお話していきます(2)(3)
世の中の複雑さが時間とともに増大しているという考え方ですが、この「複雑さ」を大きく2つに分けることができます。1つは、組織化されていない「無秩序な複雑さ」で「乱雑さ」ともいえるものです。もう1つは、本研究の主なテーマである「組織化された複雑さ」です。孤立系で前者(乱雑さ)が時間の経過とともに増大していく現象は、19世紀に「エントロピー増大の法則」として定式化され、熱力学第2法則とされています。一方、後者(組織化された複雑さ)はエネルギーや物質のやり取りがある開放系(地球など宇宙の部分系)などで見られるような多くの要素が有機的に関係づけられた系の持つ複雑さで、これまで物理学ではほとんど対象とせず、どちらかといえば生物学や人文学など、人間がかかわる現実的な領域と深く関連します。したがって、後者については物理学で行われてきたような「法則化」はほとんど検討されていませんでした。
この組織化された複雑さについて実際の例をあげてみますと、まず1つが物理学的な話で宇宙の成り立ちについてです。現在、宇宙は約138億年前にビッグバンで誕生したといわれています。このビッグバンの直後に素粒子が出現し、それらが集まり原子に、さらに原子が集まり分子へとかたちづくられてきました。このように、宇宙には素粒子という単純なものから徐々に複雑なものが誕生したという歴史があります。
さらに水素原子が多数集まり太陽をはじめとする恒星ができ、恒星を起源とした重い原子が集まり惑星ができ、さらに銀河ができ、銀河団、超銀河団がかたちづくられてきました。このように宇宙を眺めていると、小さなものが徐々に大規模な構造を持つようになり、それが時間とともにかたちを変えていく現象、つまり「組織化された複雑さ」が増大している現象を見ることができます。
次に生物学的な話になります。地球が約46億年前に誕生し、バクテリア(原核生物)が約40億年前に最初の生命として誕生しました。そこから、単細胞の真核生物が生まれ、それら細胞が集まってできた多細胞生物が出現し、さらにその生物自身が進化し、それら生物たちが集まった生物圏という組織が生まれました。そして今、生物圏そのものも複雑化してきています。
また、私たちの祖先にあたるホモサピエンスが約20万年以上前に地球上で誕生しました。ホモサピエンスが誕生してから、とても小さな規模で人が集まり、組織をつくり、社会をつくり、文明が発達し、今、私たちが見るような非常に高度で複雑な人間社会へと発達してきました。
このような組織化した複雑さの増大について、エントロピー増大のように、法則化することはできないものかと長年熟考してきました。今まで、そのような考察をしている研究者はあまりいなかったのですが、最近少しずつその動きが出てきました。
「機能的情報(FI:ファンクショナル・インフォメーション)」という考え方が一例です。これはある機能が生まれる確率の逆数の対数で定義されています。生まれてくる確率が低いものほど、より機能が高い(複雑)といえば分かりやすいでしょうか。これは生物系の研究者が定義したもので、例えばRNAが全くランダムな配列であるケースに比べて、よりレアな配列を持つ度合いを表したものです(4)。また、彼らは鉱物研究者とも共同研究し、地球上の鉱物がさまざまな理由で複雑化・進化してきた事実をFIの視点で調べています(5)
次に、アセンブリ理論(MA:分子アセンブリ指標)があります(6)。これは水素、酸素など単純な分子から出発し、それらを組み合わせて、より複雑な分子が生成されるという考え方に基づいています。惑星からの光スペクトルを観測・分析することで、そこに存在する分子を特定し、その分子がつくられる過程にどの程度手間がかかるのかを解析しています。つまり、分子を生成するのに必要な最小ステップ数から、その分子がどの程度組織化された複雑さを持っているかを調べようとしています。
この2例のように、長年私自身が問題意識を持っている「組織化された複雑さ」の研究は徐々に進んできています。

コンプレキシティ増大の法則について教えてください。

前述の既存研究(5)(6)は生物や分子といったある特定の対象に限定した「組織化された複雑さ」の理論でした。一方で、私の研究で定義したコンプレキシティはより一般的で、ありとあらゆるものを対象とすることができ、前述の既存研究が対象とした生物や分子も含んでいます。
では、あらゆる対象をコンプレキシティとして計測するには一体どうするのか、それはさまざまな方法で「観測」することです。観測とは、見て、触って、感じることです。目で直接観測することもあれば、顕微鏡や望遠鏡、さまざまな大掛かりの観測装置なども用い、世の中のありとあらゆる対象を観測します。ものが手に触れた際にも手が感じるセンサが反応し、脳に電気信号を送って対象を観測しています。要するに、私たちはさまざまな方法で対象を観測し、それを経てその存在を認識しているのです。観測データにはその裏に必ず情報源があり、これは確率分布として表わすことができますので、コンプレキシティは確率分布に対して定義することになります。
私のアプローチ方法は普遍的で、観測する対象の情報源(確率分布)を表現する最小の記述量を、論理回路によりシミュレーションする最小の回路サイズとすることにより、原理的にどのような対象に対しても定義することが可能です。しかし、最小の記述量を定義することができても、それを具体的に決定することは簡単ではありませんので、観測対象に応じた近似方法があると便利です。
そういった意味で、観測対象を生物などの機能に限定した場合において、前述のFI(機能的情報を表す最小情報量)は私のコンプレキシティに良い近似値を与えてくれます。また、観測対象を分子とした場合、そのコンプレキシティを厳密に定めることは難しいところを、前述のMAでは単純な分子から積み上げる際の最小ステップ数で計算しており、これもコンプレキシティに良い近似値を与えてくれます。このように、コンプレキシティはあらゆる対象を網羅するように定義していますが、これら既存研究は個別の対象における近似値を与えていると考えています(表)。
このように、コンプレキシティ増大の法則の定式化は、いつか誰かが挑戦しなくてはいけない問題に対して初めて1つの解を与えたという点で価値のある成果ではないかと思っています。

コンプレキシティの増大は地球上のあらゆる営みの中で起こっているのですね。

どのような系でコンプレキシティ増大の法則が成り立つのか、それを特徴付けるために検討した結果、自由エネルギーの流れている動的な系(非平衡系)で成立するという仮説を提示しました。この仮説は私たちが観測可能な宇宙、生物圏や人間社会を含む地球においてコンプレキシティ増大が成立しているのではという直観とも合致しています。そこで次に、コンプレキシティ増大の法則の応用例について触れていきます。
現在、物理の世界では光速、重力定数、電気素量、プランク定数などさまざまな定数が存在していますが、なぜその値であるのかは誰も分かっていません。たまたまその値になっているとしか言いようがないのです。しかし、この値を少しでもずらすと、私たち人間を含めた生物は誕生しなかったことが分かります。例えば、核力や電磁気力を定める物理定数が少しずれるだけで原子核内における構成要素間の結合力が変化し複雑な原子が形成されず、人間を含め複雑なものが存在しないことが起こります。すなわち宇宙の物理定数は非常に微妙なバランスで、地球上の生命を生み出すのに都合がいい値に調整されており、これをファインチューニングと呼んでいます。
これは非常に不思議な事実ですので、さまざまな学者が説を唱えており、現在もっとも多く支持されているのは人間原理というものです。しかしこれは「物理法則を観測する人がいれば、その観測者と宇宙の物理法則が整合していないと、そもそも観測者は存在しない」といった自明のような議論なのです。この物理定数が人間の存在に合うように定められているとの説は極めて主観的で、そもそも物理学ではないのではとも思えます。
ところが、私の仮説に基づくと、この問題はリーズナブルに説明ができます。つまり、この宇宙では「コンプレキシティ増大の法則が成立するように物理定数が定められている」と説明したらいかがでしょうか。コンプレキシティは純粋に数学的に記述されるため、人間原理でいうところの「人間の存在」とは無関係ですし、すべて客観的かつ理論的に議論できるのです。
次に、生物圏を眺めますと、多くの生物には、私たち人間も含めて雌雄の区別がありますし、寿命も持っています。なぜ雌雄や寿命が生まれたのかという疑問に対しては、さまざまな研究が進んできてはいますが、その根源の解明はなかなか難しいといわざるを得ません。その説明に、コンプレキシティ増大の法則が成立しているから、つまり生物圏において雌雄や寿命があったほうがよりコンプレキシティが増大するといった論法で導くと、分かりやすく納得感もあると考えるのです。
具体的にみていきましょう。もし生物が親となる2つの個体に雌雄がなく生物としての違いが存在しないと、個体には1つの構造しか存在しなくなりますが、一方で雌雄がある場合は生物種に2つの異なる生物的構造の個体が存在するため、構造の違いによる雌雄間の多様な相互関係が構築されるでしょう。
また、有性生殖の生物では、子は両親の遺伝子が混ざり合うので、子世代では親世代よりも多様性が増大します。もし生物の寿命が数十世代にもわたるような超長期間であれば(寿命が実質上なければ)、競争上優位な立場にある旧世代が支配的で世代の交代が順調に進みません。一方で寿命が現在のように数世代内に限られれば、世代交代が順調に繰り返され多様化が進むでしょう。このように生物に雌雄の区別や寿命があることは、いずれもコンプレキシティ増大の法則に従って生まれた現象として説明することができるのです。
人間社会における社会規範についてはどうでしょう。例えば、「自分にしてもらいたいと思うことを他人にせよ」という利他行為を勧める社会規範がみられます。こういった社会規範のあるほうが、より人間社会のコンプレキシティを増大させるといった説明ができるのです。利他的な社会規範がないと、助けを必要としている人がいても助けを受けられず、社会的弱者を守る制度もできないため、人や社会は損傷し多様性は減少していく、一方で、この社会規範があれば、人や社会を安全に守る行動や制度化が促進され多様性は増加していくでしょう。これもコンプレキシティ増大の法則に従って生まれた現象と説明できます。

人類はコンプレキシティをさらに高め拡張人間へと進化していく

提唱されたコンプレキシティ増大の法則に従っていくと、人間社会の未来はどのような世界になると想像されますか。最近ではAIの急速な発展も気になります。

AI(人工知能)は私も大変興味を持っている分野です。ただ、人間社会のコンプレキシティを考えるうえで重要なのは人間と人間との関係です。人間社会は人と人との関係の複雑さを土台にして、複雑化してきました。例えば原始時代では社会といっても数人程度の小さな集団でしたが、農耕社会になるにつれて大規模化し、さらに現代ではインターネットが生まれたことで人間関係は一気に複雑になりました。よくAIは「人間の仕事を奪うのではないか」と言われていますが、それは一理あると思います。しかし、私はAIが人間と人間の関係をより複雑にし、進化させてくれる良いツールになるのではと思っています。
そもそも人間は自分自身を「進化」させてきた生物で、例えば道具をいろいろ発明してきました。道具とはある種、人間の機能を拡張するものだと思います。そう考えると、人間は1人ひとりが単独で完結した生物であるというよりも、コンピュータをはじめとした何らかの道具を体の拡張機能とした生物になってきたのではないでしょうか。脳にある記憶についても外部媒体として本やクラウドに記録を残したり、車やブルドーザー、クレーンに関しても、人間の手足としての機能が拡張されていると考えられます。私たちはすでに単なる人間ではなく、さまざまな機能を外部へ拡張して自らを進化させた生物になっているのです。AIも同様のイメージで、人間の脳を拡張してくれる存在だと考えています。
今後、AIが人間社会で上手に活用されるとすれば、まずは手間のかかる知的な作業ですよね。プログラミングにおいては面倒なコーディングを大量にこなす作業などでしょうか。これらがAIに取って代われば、仕事における階層や主従関係も改善し、より対等な人間関係がより高度なレベルで形成され、結果としてより高度な拡張人間によるコンプレキシティの高い人間社会になっていくのではないでしょうか。さらに将来は、より能力アップした人間どうしが、一層高いレベルで複雑な関係を持った社会を構築していくのではないかと予想しています。
生物の中で自身の生物集団のコンプレキシティをここまで高めてきたのは人間だけだと思いますので、生物圏の中でも極めて特殊な存在だと考えています。最近、人類が果敢にチャレンジしている例が小惑星衝突への対応です。地球では太古の昔、これにより恐竜や多くの生物種が絶滅したことがありますが、人類は今、あらゆる小惑星の動きを観察し、次に衝突しそうな候補を調査し、実際、何十年後に衝突する可能性が高まったら、どう対応するのかまで考え実験しています。数年前NASAでは、小惑星に探査機をぶつけて軌道を変える実験も実施しています。これを地球の外から見てみると、「地球全体が1つの生物」のようにみえるのではないでしょうか。例えば、自分に向かって飛んでくる敵に対して、飛行体を衝突させて防御する。その姿は、まるで生物が外敵から身を守っているようです。コンプレキシティを高めた人間という特殊な生物は、いつのまにか地球全体を守るべく活動をするようになっているのです。
地球温暖化の問題に対しては、気温を下げようと努力していますね。こうした取り組みは今後100年以上を経てさらに進化していくはずですし、何100年先には、人間が地球環境をある程度コントロールするかもしれないですね。つまり、生物圏が複雑化する中で人間という不思議な生物が生まれたわけですが、生物が進化(複雑化)する中で「脳」が生まれたように、人間社会が地球(生物圏)においてある種の「脳」の機能を担い、地球を守るために攻撃したり、地球環境を制御しようと行動する役割を持つようになるのではないでしょうか。
近年では、イーロン・マスクが火星への移住計画を進めていますが、私の構想の中にも同様の考え方があります。人間はいつしか宇宙へ進出し、地球上の自然環境を移植しようとするのではないか。生物が子孫をつくり命を永続させようとするように、私たち人間は、宇宙の中に地球上の生物圏(生命)の子孫を残そうとしていくのではないでしょうか。
また人間は、地球上に存在するあらゆる生物を調査・研究しています。多くの生物が限られた種との共生や捕食関係を基盤に生きているのに対し、人間は地球規模で生物全体を研究し、絶滅危惧種の保護などにも取り組んでいます。つまり生物圏に傷が生じたとき、それを修復しようとする機能を担っているといえます。地球全体を1つの新しい生命体ととらえたとき、人間社会はその調整や回復を担う機能としてコンプレキシティを高め進化していく方向に向かっているのではないでしょうか。

FuncCPA安全性において新たな関係性を証明

長年のご専門である暗号理論の研究について最近の成果をお聞かせください。

私は公開鍵暗号の研究に長年携わってきましたが、その安全性についてはかなり以前から標準的な定義が確立していました。ところが最近の新しい応用環境において、より新しい安全性を定義する必要が出てきたのです。これまでのように暗号を通信の安全のためだけに使うのとは異なり、例えば完全準同型暗号などデータを暗号化したまま処理するような利用環境においては安全性を拡張し定義する必要がでてきました。それがFuncCPA(Functional Chosen-Plaintext Attack)安全性であり、それにはいくつかのバリエーションがあります。このバリエーション間の等価性、非等価性を明確にすることは今後の公開鍵暗号理論の発展のためにも重要ですので研究を推進しています。
図ではFuncCPAを中心に各バリエーションの概念的な強弱レベルを示しており、下方向や右方向が弱くなります。まず図の左に、中心的な位置付けのFuncCPA、それを強めたFuncCPA、弱めたOW-FuncCPA、そして右にはFuncCPAを弱めたWeak FuncCPAなどがあります。そこで、各バリエーション間で概念上の強弱はあっても、実際はどうなのかと赤字で記したバリエーション間の強弱について調べたところ、FuncCPAとOW-FuncCPAが等価であることや、FuncCPA→Weak FuncCPA→FuncCPA→FuncCPAと3つのバリエーションの間を→が一周して閉じることを解明し、これら4つのバリエーションがすべて等価(同等の安全性)であることを証明しました。この結果について当初は予想しておらず私どもにとっても驚きでした。
次に図の右では、標準的な公開鍵暗号での安全性として、もっとも上にIND-CCA1(強い)、もっとも右下にIND-CPA(弱い)があります。この2つの間にはより細分化された安全性の概念が提案され、中間的なさまざまな安全性レベルが存在しています。従来は「このくらいのレベルで考えれば十分であろう」としたところを、より細分化する必要のある利用環境が出現したのです。今回赤字で記した対象を検証した結果、ここに記載のすべてのバリエーションで強さが異なり、階層的になっていることが証明されました。

研究活動で大切にされていることや現状の課題についてお聞かせください。

私は常に新しい観点や斬新な方法など独創性を出していくこと、そして理論としても価値があり世の中へインパクトを与える研究をしたいという気持ちを大切にしています。さらに、この研究が価値あるものだと自分で思えることが何より重要だと思っています。
今回の複雑性については30~40年ほど前から個人の興味として考え続け、長い間、温めてきた研究対象です。興味深いことに、長く携わってきた本業である暗号研究の方法論や知識が、このコンプレキシティの研究に大変役立っているのです。確率分布で考える発想などは、もしかすると暗号を研究していなかったら出てこなかったかもしれません。そう考えると、私の基盤である暗号研究はさまざまなところで役立っているといえます。
前述したとおり、私は最近のAIの発展に大いなる興味を持っていますが、「AIはどうして大量のデータを学習することで飛躍的に賢くなったのか」といった根本的な疑問への答えはまだよく分かっていないようです。現時点では、多くの人はAIというブラックボックスを「どうやっていち早く使いこなしていくか」といったエンジニア視点で取り組んでいます。確かにこのAIの応用は新たな産業革命を引き起こすような大きなインパクトがありますが、18世紀の産業革命をもたらした蒸気機関の研究から熱力学という物理理論が生まれたように、「AIの飛躍」の疑問に答えるような研究から新たな科学理論が生まれるのではないでしょうか。私は、この疑問は物理における相転移などでみられる集団的現象として「創発」の観点でとらえるべきだと考えており、それはコンプレキシティ増大とも密接に関連していると思っています。斬新な発想で大胆に取り組める若い研究者をはじめ、世の中の誰かがこのような問題から新たな理論を切り拓いてくれることを期待しています。

■参考文献
(1) https://doi.org/10.1155/2022/1889348
(2) https://doi.org/10.48550/arXiv.2302.07123
(3) 岡本:“複雑化する宇宙と生物圏そして人間社会─創発とコンプレキシティが解き明かす世界, ” 近代科学社, 2025.
(4) https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae248
(5) https://doi.org/10.1073/pnas.0701744104
(6) https://doi.org/10.1038/s41467-021-23258-x

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