デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた挑戦――新たな価値創造
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NTTのめざすデジタルトランスフォーメーションの加速に向け、世界最先端の研究成果を活かした新たな価値創造に取り組んでいます。中でも、B2B2Xパートナーとのコラボレーションは、NTTとパートナーの異なる強みをお互い組み合わせることにより、世の中に変革をもたらす価値の創造につながると考えられます。本稿では、コラボレーションの意義やアイデア出しから技術検証、プロモーションまでの価値創造のプロセスを説明します。
角 隆一(すみ りゅういち)/ 武井 伸勝(たけい のぶかつ)
NTT研究企画部門
研究成果を世の中の役に立てるための活動
NTT研究所では、日々、研究者が世界最先端、オンリーワンをめざした研究に取り組んでいます。研究活動の第一の目標は、優れた研究成果を創出することですが、同時に、その研究が世の中に幅広く認知され、実際に使ってもらうなど普及することも大切です。
研究成果の普及に向けては、研究論文の発表や標準化活動に加え、実際の商用で使われるための事業化の取り組みも重要です。NTT研究企画部門プロデュース担当(プロデューサ)は、研究段階と事業化段階の間の障壁、いわゆる死の谷(デスバレー)を乗り越え、研究成果を事業に役に立てる活動を行っています。
現在、プロデュース活動としては、NTTグループ方針であるB2B2Xの取り組みを通じた事業貢献を図るため、業界パートナーとのコラボレーションに力を入れています。本特集では、世界最先端の研究成果を活かしたB2B2Xパートナーとのコラボレーションによる、新たな価値の創造について、代表的な事例を紹介していきます。
B2B2Xパートナーとのコラボレーション
研究成果を中核としたコラボレーションの意義は以下のとおりです。図1にイメージを示します。
第一に、世の中のユーザと接点を持つパートナーと世界最先端の研究成果を持つ研究所をお見合いさせることで、これまで存在しなかった新たな価値を創造することができます。NTT研究所の技術とパートナーのアセット(技術、フィールド等)を組み合わせると、こんなに便利な利用形態が考えられる、パートナーのこんな経営課題を解決できる、さらに世の中に幅広く応用できる等、新たな価値の創造が期待できます。
第二に、NTT研究所にとっては、パートナーからフィードバックされる現場の要求条件を直接知ることができるため、研究のレベルを上げることにつながります。例えば、達成すべき性能目標が明確になったり、フィールドでの検証や実データ分析により仮説の検証が行えるなどです。
第三に、コラボレーションのパートナーも、グローバル企業を相手とする場合が増えており、研究成果のグローバル事業への展開が見込まれます。研究の早い段階から海外のパートナーとのコラボレーションを行い、NTTのグローバル事業会社とも連携することで、国内では得られない新たな知見の獲得や世界各地の課題把握が可能となるため、研究成果の出口が世界に広がります。
このように、NTT研究所の最先端技術と異業種のパートナーとの掛け算によるコラボレーションの営みにより、自社が保有していないアセットどうしが化学反応を起こし、世の中に向けた新たなアイデアの創出が促されます。
図1 B2B2Xパートナーとのコラボレーション
パートナーとのコラボレーションプロセス
次に、パートナーとのコラボレーションプロセスを図2に示します。
最初は、新たな価値の創出です。具体的には、研究所のさまざまなテーマの中から、世の中に早期に出すべき技術は何なのか、どのような出口が考えられるのか、研究所と意見を交わしながら、研究所技術・市中技術の目利きを行います。そのうえで、異なる要素技術の組合せや他社のIP(Intellectual Property: 知的財産)との組合せ、さらには、業界の利用者視点のニーズを組み合わせることで、世の中に存在しなかった新たな価値のアイデア出しを行います。そのため、プロデューサは、常日頃からパートナーとの信頼関係を構築し、お互いの技術のアセットを組み合わせることでどんな価値が生み出せるのか日々検討を重ねています。
次に、市場への提案です。パートナーとの共同検討で生まれたアイデアが有益であるかを確認するため、実フィールドにおける共同実験を実施し、技術的観点での実現性の評価を行います。共同実験では、NTT研究所からは技術や実証機材の提供、パートナーからは事業フィールドや被験者の提供など、お互いに協力して技術検証を実施します。
また、PoC(Proof of Concept: 概念実証)により、アイデアをビジュアル化し、実際に触ってみることでサービス的観点での評価を行うことも重要です。PoCにおいては、アイデアをソフトウェア、ハードウェアなど簡易なつくりながら具体的なかたちにしつらえ、ユーザの利用シーンをビジュアル化し、事業に供した際のユーザビリティを確認します。
最後は、事業化の支援です。共同実験による技術的評価、PoC提案によるサービス性の評価ともにクリアされた場合、事業として成立するかどうか、パートナー、NTT事業会社で判断します。パートナーとNTT事業会社の収益性評価、商流の形態、プロダクトの価格目標、将来のマーケット見込みなどをお互いに詰めていきます。その中で、プロデューサの役割としては、ビジネスモデルの提案、事業フォーメーションの調整など、パートナーとNTT事業会社が事業化に向けて取り組めるよう支援することが求められます。
図2 パートナーとのコラボレーションプロセス
仲間づくりのためのプロモーション活動
コラボレーションの仲間づくりには、社外への情報発信も重要です。新たなコラボレーションの開始、共同実験やPoCの成果など、重要なマイルストンについては、NTTのニュースリリース、報道機関への取材対応など、積極的に発信を行っています。また、NTT R&Dフォーラムをはじめ、CEATEC、MWC(バルセロナ)、AI・人工知能EXPO、次世代農業EXPO、国際モダンホスピタルショー等、国内外の展示会にも出展し、研究成果のプロモーションを図るとともに、新たな出会いの機会創出に努めています。
また、コラボレーションによって創出された新たな価値をNTTグループとしてブランド化することも大変重要です。そのため、プロデューサは、価値を具現化するサービスを命名し、商標登録を行うことも積極的に行っています。
今後の展開
異なるバックグラウンドのパートナーとのコラボレーションは、新たな価値を創出するのに適した取り組みです。今後、グローバルなコラボレーションに一層力を入れ、世の中に役に立てるための研究成果の普及活動に取り組んでいきます。
(左から)角 隆一/武井 伸勝
問い合わせ先
NTT研究企画部門
プロデュース担当
TEL 03-6838-5651
FAX 03-6838-5349
E-mail nobukatsu.takei.hq@hco.ntt.co.jp
NTT研究所の成果を世の中に広くお使いいただくため、各業界の方々とのコラボレーションを推進しています。今後は、国内のみならず海外の方々との連携も増やし、R&Dのグローバル展開を進めてまいります。