グローバルスタンダード最前線
第22回世界電気通信標準化協調会議(GSC-22)報告
第22回世界電気通信標準化協調会議(GSC: Global Standards Collaboration)が2019年3月26~27日までスイス・モントルーで開催されました。GSC会合は、各標準化機関(SDO: Standards Developing Organization)間の活動の情報共有や活動の重複の回避と標準化活動の促進を目的としており、今回は12のSDOから計85名が参加して行われました。今回の戦略トピックスは、Connected Citizen & Smart Sustainable City およびAI(人工知能)について議論されました。
会合の概要
第22回世界電気通信標準化協調会議(GSC: Global Standards Collaboration)は、2019年3月26~27日にスイス・モントルーで行われました。12の標準化機関(SDO: Standards Developing Organization)〔ARIB(日本)、ATIS(米国)、CCSA(中国)、ETSI(欧州)、IEC、IEEE-SA、ISO、ITU、TIA(米国)、TSDSI(インド)、TTA(韓国)、TTC(日本)〕から計85名が参加し実施されました(写真)。各標準化団体の最新の活動状況、優先する標準化課題の報告および戦略トピックスとしてConnected Citizen & Smart Sustainable City とAI(人工知能)の2つについて議論しました。
写真 GSC-22参加者集合写真
各標準化団体からの活動進捗報告
12のSDOから、最新の活動状況の報告および優先的な課題についての報告がありました。
重複する課題としては、Smart City, IoT(Internet of Things)、AI, セキュリティ、5Gなどでした。市場動向にタイムリーに対応した標準化活動の重要性と共通課題における各SDO間の検討の重複を最小限にするための連携協調が必要であることが共通に認識されました。
GSC-22の主要テーマに関する議論
今会合では、主要テーマとして、Smart Sustainable CitiesとAIの2課題を取り上げ、テーマごとに各SDOの代表によるプレゼンテーションとパネルディスカッションによるセッションを実施しました。
Smart Sustainable Cities:持続可能なスマートシティ
スマートシティの実現要件としては、都市間をまたがってデータを交換する共通的な仕組みの実現ができていないという潜在的な課題を有しており、GSCの各SDOは、シームレスなデータ交換、相互運用などを可能にするためのガイドラインと標準の開発に関する継続的な議論の必要性を共有しました。
各SDOからの報告の課題としては、IoT/Smart Cityプラットフォームにおける相互接続性が欠如(サイロ化)しており、プラットフォームとデータAPI(Application Programming Interface)の標準化の必要性が強調されました。
AI
AIに関しては、さまざまな地域のニーズを認識しながら、5G、ヘルスケア、工業製造などの分野でのAIおよび機械学習とその応用に関する継続的な活動について情報を共有しました。 AIの技術的な側面だけではなく、セキュリティ、プライバシ、信頼性、倫理、社会的懸念、および規制に関連する潜在的な問題について検討が行われ、ICTシステム、サービスおよび技術の倫理的および社会的側面に取り組むためにGSCメンバ間での協力が必要であるという認識を行いました。SDOの報告の中では、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)では、倫理に整合したデザインを行うためのEthics of Autonomous & Intelligent Systemsに関するグローバルプロジェクトを推進し、倫理も考慮したAIやAutonomousシステムを広くカバーする標準としてIEEE P7000シリーズを制定しています。
また、ETSI(European Telecommunication Standards Institute)におけるAI関連の活動として、ISG ENI(Experiential Networked Intelligence)ではデータ収集および分析への AI 利用、ISG ZSM(Zero touch network and Service Management)では自動化およびオペレーションへのAI利用、ISG MEC(Multi-access Edge Computing)ではネットワークエッジの開放とネットワークおよびコンテクスト情報の提供、TC ITS(Intelligent Transport Systems)では自律的な自動車へのAIの活用の検討を行っています。TTC(日本)からは、セキュリティ専門委員会委員長より、AI/Machine Learning におけるTransparent(透明性)とTrustworthy(信頼性)に関するプレゼンテーションを行いました。AI技術の普及によりさまざまな活動においてAIの判断が利用されようとしていますが、不適切、または偏ったデータが利用されることにより、適切な判断がされない可能性が指摘されています。また、AIエンジンの機能を恣意的に操作することにより、特定の人々にのみ都合が良い判断が行われる可能性があります。そのため、日本政府が規定した以下のHuman-centric AIの社会的な基本原則Human-centric、Education、Privacy、Security、Fair Competition、Fairness, Accountability、and Transparency、Innovationに沿うとともに、AIセキュリティ標準化の観点から、AIシステムを利用するためのガイドラインやAI システムのレポート機能の重要性、またTraining Dataの内部評価、標準化されたTraining Dataに対する出力データの調査、バランスの取れていない出力の検出、AI利用のための信頼性フレームワークなどの技術仕様の必要性が示されました。
今後の予定
次回、第23回会合は2020年にTIA(米国)がホストで開催される予定です。