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Focus on the News

黒柳徹子さんのアンドロイドtottoがインタビュー!――幅広い話題で自律的にインタビューを行う音声対話システムを実現

NTTは、キャラクター性を持ち、自律的に会話を行う音声対話システムを開発し、黒柳徹子さんのアンドロイドtottoへ導入しました。これまでは人がtottoを操作することでユーザとの会話を実現していましたが、NTTがこれまで培ってきた音声対話技術を応用することでtotto自らがユーザに働きかけ、より自然な対話を実現しています。

背景・経緯

NTTでは「日常会話ができる対話システム」の研究を進めてきました。世の中の多くの対話システムが特定の仕事をこなすタスク指向型の対話システムであるのに対し、日常の幅広い話題に対応し、自分からユーザに働きかけ長時間の会話を続けられる対話システムの開発をめざしています。
またNTTでは、システムにキャラクター性を持たせることで親しみが増し、長く使い続けられると考えており、キャラクター性を持った対話システムの検討を進めています。
現在、「自律型アンドロイドロボットの実現性検証」に関する共同実験をtotto製作委員会(テレビ朝日、電通、電通テック、エーラボ)、(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、大阪大学と行っています。その枠組みの中でNTTのこれまでの研究で培ってきた「幅広い話題で」「キャラクター性」を持ってインタビューを行う音声対話システムをtottoへ搭載しました。これにより、黒柳徹子さんにより近づいたtottoとの自然な対話を実現しています。

技術の概要

従来のユーザからシステムへ働きかける対話システムではなく、相槌、同意、質問などを織り交ぜ、システムからユーザに幅広い話題で語りかけ、対話を促す技術を開発しました。
また、ユーザとシステムとの円滑なやり取りを実現するために、ユーザがいつでも話しかけられる機能とユーザの発話がまだ継続するか、終了するかをリアルタイムに判断する機能を持たせました。さらに、従来言語情報のみでやり取りされてきた対話システムに動作を加えることで、より多くの表現が可能となり、豊かなコミュニケーションが可能になりました。
システムに黒柳徹子さんのキャラクター性を反映させるため、totto製作委員会が保有する過去の放送(「徹子の部屋」)コンテンツから抽出した音声、発話内容、動作情報を利用して、黒柳さんらしい声、話し方、動作などを忠実に再現できる技術を構築しました。それをtotto製作委員会が制作したtottoと組み合わせることで外見から内面までキャラクター性を再現し、その場に存在しているかのような体験をユーザに提供できるようになりました(図)。

図 tottoとのインタビューイメージ

問い合わせ先

NTTサービスイノベーション総合研究所
広報担当
TEL 046-859-2032
E-mail randd-ml@hco.ntt.co.jp
URL https://www.ntt.co.jp/news2018/1810/181016b.html

研究者紹介
実社会で人を助ける対話システムの実現をめざして
光田 航

NTTメディアインテリジェンス研究所
知識メディアプロジェクト
知識言語基盤技術グループ
研究員

2015年に入社して以来、言語処理の応用研究を行うグループにて、人と対話できるロボット(対話システム)の研究開発に取り組んでいます。言語処理の研究を始めたのは学生のときだったので、当時参加した学会などでよくNTTのグループの研究発表を目にする機会があり、その高い研究レベルに憧れていたことをよく覚えています。実際に中に入ってみると、皆さん非常に優秀で、私は指導者やチームメンバにも恵まれており、入社したときからの目標である、実社会で役立つ言語処理技術の実現ができる環境だと感じています。
私は専門として、雑談対話システムと呼ばれる、自由な話題で人と話を続けられる対話システムの研究をしています。雑談は人の会話の6割を占めることが分かっており、相手のことを理解するなど、今後ロボットが実社会に入っていくうえで非常に重要な役割を持っています。これまでの雑談対話システムは、人が話す話題をとらえて、単に話を合わせるだけで精一杯だったのですが、最近はこれまでの研究の積み重ねやDeep Learningの登場により、徐々にシステムが目的(例えば、インタビューやディスカッションなど)に合わせて話を続けることができるようになってきています。今後の研究を通じて、将来的には、人に言えない悩みを相談したり、考えを整理したりできる、実際に人を助けることができる対話システムを実現していきたいと思っています。