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from NTTコムウェア

通信インフラのメンテナンスサイクルを革新するデジタルトランスフォーメーション

NTTグループは鉄塔、局舎、橋梁、管路、電柱、吊り線、とう道といった膨大な通信インフラを保有しています。高品質な通信サービスを提供し続けるためには、これらの通信インフラに対する日々のメンテナンス(維持管理)が欠かせません。高品質な通信サービスの維持・向上のために、メンテナンスサイクルを高度化し、通信インフラを安心・安全かつ経済的に守っていくことが重要な課題となっています。NTTコムウェアは、AI(人工知能)・ドローン・MR(Mixed Reality)といった最新技術を駆使し、通信インフラをはじめとした社会インフラのメンテナンスサイクルのデジタルトランスフォーメーションに貢献する技術開発・ソリューション開発を進めています。ここではその事例について紹介します。

通信インフラ維持管理の課題

NTTグループの通信インフラは、通信インフラ設備の種類ごとに管理基準が定義され、定期的に目視点検・診断を行うようになっています。設備の劣化状況は、設置場所の環境や設備の補修状況により進行に違いが生じますが、一律に行う定期点検・診断ではその違いに対応できません。劣化状況に応じた詳細点検・診断、および補修に稼働を割り当てることができれば、通信インフラ維持管理業務の最適化につながると考えます。
インフラ設備の劣化状況の診断は、熟練技術者の長年の経験やノウハウに頼る部分も多いのが現状です。暗黙知の点検・診断スキルをどのように伝承していくのかは課題の1つです。また、通信インフラ設備の点検は、高所・閉所作業を伴うものも多く、危険作業は安全面からも極力削減する必要があります。
さらに、近年頻発している大規模災害の障害に対する復旧業務は、ライフラインとなる通信サービスの提供において非常に重要な業務です。災害時は即応・復旧が求められますが、現況の把握やリソースの適正配置が課題です。

めざすは通信インフラのデジタルツイン

通信インフラ維持管理業務の最適化、熟練技術者の技術伝承、大規模災害時の現況把握といった課題に対するソリューションとして注目しているのが通信インフラのデジタルツイン(デジタルの双子)です。デジタルツインとは、現実空間をデジタル上の仮想空間で再現・モデル化し、効率的な管理を実現するコンセプトです。サイバーフィジカルシステム(CPS)とも呼ばれています。通信インフラの設備台帳や、点検・補修結果、経年劣化状況をデジタルデータとして収集、一元的に管理します。蓄積データから、劣化予測、メンテナンスサイクルの最適化、熟練技術者の点検スキルの集約、災害時の即応などが可能となります。
NTTコムウェアが実現をめざしている通信インフラのデジタルツインの特長は次のようなものです。
① 従来、紙媒体や電子ファイル、個別システムで管理されていた情報を、設計データ・管理台帳や点検結果までの各データとしてスムーズに連携・効率化することで、メンテナンスサイクル(点検、判定、補修・更改、設備管理)を一元管理します。
② 通信インフラ設備にかかわる現況情報を仮想空間でモデル化して再現させることで、仮想空間上で対象設備の簡易点検・診断を実施することができます。高所作業や危険作業を伴う現場での点検作業の一部を仮想空間内の簡易点検作業に置き換え、点検・診断した結果を現実と仮想に同期させることで、現場から結果を確認することが可能となり、より安全かつ効率的な業務に変革します。
③ 仮想空間に集約・蓄積された熟練者による点検・保守結果を、AI(人工知能)に繰り返し学習させることで、点検・診断作業をスキルレス・自動化します。さらに劣化予測による予防保全で業務全体を最適化します。
④ 一元管理された情報とネットワーク管理情報や外部の災害情報などを統合することで、大規模災害時の迅速なサービス復旧などに活用可能です。
NTTコムウェアは通信インフラのデジタルツインを構築し、デジタルトランスフォーメーションを推進することで維持管理業務を革新していくことをめざしています。

通信インフラのデジタルツインに向けた事例の紹介

NTTコムウェアが実現をめざす通信インフラのデジタルツインに向けて、各種技術を利用した通信インフラの点検・診断業務での実証事例を積み重ねています。その一部を紹介します。

ドローンを活用した通信インフラの現況情報取得に役立つ「ドロポ®」

通信インフラのデジタルツインの実現には、まず通信インフラの現況情報を正確に取得する必要があります。情報取得を効率的に行う技術として注目されているのがIoT(Internet of Things)技術とロボット技術です。中でも空飛ぶロボットであるドローン(UAV:無人航空機)による空撮で、通信インフラの外観を取得、3Dモデル化するとともに大量の撮影写真・動画・赤外線カメラ映像などで現況情報を取得する取り組みが始まっています。
NTTコムウェアは、NTTグループ全体でのドローン活用の取り組みに参画し、ドローン運用業務の支援や運用ノウハウの共有に役立つ「ドロポ®」を開発しています(図1)。
ドロポ®によって、ドローンやパイロット、プロジェクトやフライトの計画など、業務にドローンを導入・活用する際に必要な情報を管理できるようになっています。ドローンで取得した飛行ログや撮影画像などの各種データの管理も行うことができます。ドローンを活用して、通信インフラの現況情報を効率的に取得し、管理するためのシステムとして活用をめざしています。

図1 ドロポ®の概要

仮想空間での点検業務を実現する「KnowledgeMap® 4D」

ドローンの撮影写真を基にしてデジタル空間上での簡易目視点検・診断ができるよう開発したのが「KnowledgeMap® 4D(4D仮想点検ビューア)」です(図2)。すべての点検・診断を代替できるわけではありませんが、点検・診断内容によっては業務量の削減に寄与できると考えています。
SfM(Structure from Motion)技術により、撮影した写真から3Dモデルを生成し、点検対象の劣化状況を写真と3Dモデルで管理することが可能となっています。ドローンで撮影した写真は大容量となるため、その写真をデジタル空間上に分かりやすく再現・可視化する仕組みが求められます。KnowledgeMap® 4Dでは、写真からSfM技術で生成した3Dモデルとともに大容量の写真を管理・可視化することができます。3Dモデル上で任意の個所をクリックすると、適切な写真を過去の写真も含めて自動抽出できます。同じ通信インフラの過去に撮影した写真を時系列で管理しているため、経年劣化状況の把握も可能です。また、選択した写真上に、不具合点検・登録・報告業務ができるアノテーションツールを具備しています。
これらにより点検したい場所を選択して直感的に確認することや、逆に、写真上で登録した不具合が3Dモデルのどのあたりに該当するかを3Dモデル上に表示することが可能となるため、全体を俯瞰した結果の確認や、不具合の偏りの確認などが可能となります(特許出願済技術)。
NTTコムウェアはNTTグループ各社と共同で、本技術を用いた通信インフラ設備の点検トライアルを開始しています。

図2 KnowledgeMap® 4Dの概要

AI自動分析、劣化予測をめざして鍛えているAIエンジン「Deeptector®」

KnowledgeMap® 4Dで熟練技術者が点検作業を繰り返すことで、点検・診断結果をデータとして蓄積することが可能です。サビや剥がれなどの不具合の種類と劣化度合いを写真上に登録し、教師データとしてAIを強化させることができます。また、AIで判定した不具合情報を写真上に表示し、点検業務を省力化する機能も付いています。
さらに、経年での劣化情報を蓄積し、構造解析の仕組みと組み合わせることで劣化の予測シミュレーションも行えるようになると考えています。
こういった取り組みはNTTコムウェアのAIエンジンである「Deeptector®」を利用して行っています。AIを使って自動解析することで、見逃しの防止やレベル判定の均一化が図れます。十分精度が高まれば、通信インフラだけではなく、例えば鉄道やダムなどの他の設備にも展開することができると考えています。

MRを使った実世界へのフィードバックを行うことができる「KnowledgeMap® xR」

デジタルツインに集約した情報を現実の設備にフィードバックするために注目しているのがMR(Mixed Reality)技術です。MRとは現実空間に仮想空間を重ね合わせて表示し、仮想空間上の物体・情報がまさにそこにあるかのように認知・操作できる技術です。現実の通信インフラにデジタルデータの情報を重ね合わせて表示することができるため、現場での作業の効率化が期待できます。
NTTコムウェアはMR技術を活用したアプリケーション「KnowledgeMap® xR」の開発を進めています。ここでは2つのアプリケーションについて紹介します(図3)。
(1) ドローン飛行支援アプリケーション
MRのHMD (Head Mount Display) を装着し、現実のドローンを見て操縦することで、リアルタイムで高度や距離、方角などのテレメトリデータや飛行ルート、撮影画像などを現実空間上に浮かび上がって見せることができます。操縦者は手元の端末で確認することなく、HMD上でドローンの状態を確認することができます。
(2) MRフィールドエンジニア支援アプリケーション
KnowledgeMap® 4Dで管理する不具合個所の情報を現実の通信インフラ上に重ねて表示します。現実世界に不具合個所や関連情報を重ね見せることで、点検漏れの抑止につなげることができます。さらに、不具合個所に近づくと作業手順などが自動表示され、確実で安全な補修作業を支援します。
MR技術の屋外利用については、雨や暑さなどの天候条件や、直射日光下での視認性、現実空間と仮想空間の位置合わせなどに課題はありますが、将来はこういったデジタルデータを現実空間に重ね合わせるようなMR技術の業務活用が当たり前になると考えています。

図3 KnowledgeMap® xRの概要

今後の展開

NTTコムウェアはNTTグループ各社と共同で通信インフラのデジタルツインの実現をめざし、技術開発・実証実験に取り組んでいます。この技術をいち早く実用化することで通信インフラのメンテナンスサイクルの高度化を推進します。
この技術・ソリューションにより、さまざまな社会インフラ維持管理の課題解決に貢献したいと考えています。

問い合わせ先

NTTコムウェア
ビジネスインキュベーション本部
ビジネスインキュベーション部
TEL 03-5796-3160
FAX 03-5796-0103
E-mail bi-bid-m2m@srv.cc.nttcom.co.jp