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from NTT西日本

IoT事業拡大のためのLoRaWANの事業化

今後の市場拡大が見込まれるIoT(Internet of Things)分野において、今までネットワークに接続していないモノをつなげるため、乾電池等で長期間駆動可能となるよう低消費電力な通信へのニーズが高まっています。NTT西日本グループではセンサデバイス向けの新たな通信方式であるLPWA(Low Power Wide Area)分野において、LoRaWANと呼ばれる規格に着目し、NTTネオメイトの事業として提供を行っています。ここでは2016年度より実施してきたNTT西日本グループのLoRaWANに関する取り組みについて紹介します。

LPWA、LoRaWAN

今後の市場拡大が見込まれているIoT(Internet of Things)分野において、今後多くのセンサデバイスをつなげるために従来の通信方式ではコストと電力消費が大きな課題となっており、つながる社会を実現するためにはIoTに特化した新たな通信が求められています。
従来の通信方式と比べ広範囲をカバーでき、低消費電力で通信可能な新たな方式であるLPWA(Low Power Wide Area)の分野(図1)において、免許不要帯を用いるLoRaWANやSigfox、免許帯を用いたLTE-M(Long Term Evolution for Machines)やNB-IoT(Nallow Band-IoT)というさまざまな規格が生まれています。NTT西日本グループが取り組んでいるLoRaWANは、Semtech社やIBM社などの企業が中心となって仕様化した規格であり、免許不要のサブギガ帯域である920 MHz帯を利用し、低速ながら低消費電力で、長距離伝送できることが特徴です。LoRaWANは、世界500社以上の会社が参加するLoRa Allianceにより仕様策定され、パブリックに公開されているオープンな通信方式です。すでに北欧をはじめ世界100カ国以上の国で利用されています。LoRaWANの規格に対応した機器を組み合わせ、自営網や公衆網としてネットワークを構築可能であるとともに、LoRaWANに対応したさまざまなセンサデバイスの接続が可能となります。

図1  LPWAの位置付け

フィールドトライアル

NTT西日本では2016年6月から日本国内におけるLoRaWANの有効性の確認や、事例創出のためフィールドトライアルを実施しました(図2)。

図2  LoRaWANのフィールドトライアル

トライアルではNTT西日本がネットワークを準備し、センサやアプリケーションサーバ、フィールドについてはパートナーが準備し、さまざまなユースケース、フィールドでの実証を行いました。積水化学工業株式会社とともに滋賀県野洲市の水田にてLoRaWANの給水栓装置の遠隔制御のトライアルを行い、電波伝搬試験や季節、稲穂などの周辺環境の電波への影響を確認しました。従来の無線規格では天候の影響や、稲穂が伸びることにより電波環境が悪化するなど課題がありましたが、LoRaWANを用いたフィールドトライアルにおいては夏から秋までの季節を通じ、問題なく通信可能であることを確認しました。

大阪ガス株式会社とは関西をフィールドに将来的なスマートメータを想定したテスト用ガスメータの遠隔制御、検針データの収集を行う実証実験を行い、実用化できるレベルであることを確認しました。メータの自動検針や保安を実施している業界では、遠隔からの検針や、地震等災害時における各メータの開閉状態の確認など、センタ側から端末に遠隔かつ省電力で指示したいという要望があります。その実現のために、本実証実験ではLoRaWANのクラスB通信と呼ばれる下り通信の応答性が高い方式を用いました。NTT西日本は本実証実験のため、日本で初めてクラスBに対応したLoRaWAN環境を構築し、システム遅延や通信成功率を検証し、実用化できるレベルであることを確認しました。

日本初のクラスB通信の実現

LoRaWANの規格では、消費電力や下り通信の応答性が違う3つの通信クラス(クラスA/クラスB/クラスC)が用意されています(図3)。

図3  LoRaWANの3つの通信タイプ

クラスA

クラスAはLoRaWANの3つの通信クラスの中でもっとも低消費電力ですが、下り通信の応答性が低い通信方式です。デバイスは基本的にスリープ状態で、その間は下り通信を受け付けません。デバイスが上り通信を送信するタイミングでアクティブ状態になり、その後一定時間のみ下り通信を受け付けることができます。下り通信のパケットはデバイス側から上り通信が行われるタイミングでのみ受信可能となるため、下り通信の応答性が低くなりますが、可能な限りスリープ状態を保持するため、消費電力を大きく抑制することが可能です。

クラスB

クラスBは消費電力を抑えながら、下り通信の応答性を向上した方式です。デバイスは定期的にアクティブ状態になり、下り通信を受け取るタイミングをつくるため、ネットワークサーバはそのタイミングに合わせて、下り通信を送信します。このとき、デバイスとネットワークサーバで同期が必要となるため、基地局からGPS信号を基準とした同期信号をブロードキャストします。デバイスはその同期信号を基準にしながら、定期的にアクティブ状態になります。アクティブ状態になる時間を定期的にすることで、消費電力を抑制し、下り通信の応答性を向上した通信を実現します。

クラスC

クラスCは、デバイスが常時アクティブ状態であり、消費電力は高いものの、いつでも下り通信を受け取ることができるため、もっとも下り通信の応答性が高い方式となっています。他の通信クラスに比べ、消費電力が大きいため、電池駆動のデバイスには不向きで、電源駆動が可能な環境での利用が推奨されます。

日本初のクラスB通信の実証実験

NTT西日本グループではNTTネオメイトの事業としてLoRaWANの提供を開始しています。2017年7月より、政令指定都市における広域整備事例として日本最大規模となるLoRaWAN実証環境「Fukuoka City LoRaWAN」を福岡市へ提供しています。「Fukuoka City LoRaWAN」は福岡市内を広域にカバーし(図4)、各種IoTデバイスやセンサ、アプリケーションと組み合わせることにより新たなイノベーション創出の実証実験に活用いただくことが可能です。実証目的であれば、無償でご利用いただけ、 福岡市内に事業所がなくてもご利用いただけます。

図4  Fukuoka City LoRaWANの提供中エリア

2018年6月時点で50社を超える事業者から「Fukuoka City LoRaWAN」を用いた実証実験の相談・申込みをいただいています。NTT西日本は実証実験参加者のサポートを行うとともに、LoRaWAN活用事例の創出に取り組んでいます。児童見守りトライアル*1として、児童のカバン等にセンサを取り付け、定期的にセンサから送信される位置情報を基に、保護者や塾の講師がスマートフォンやPC等で児童の位置情報を確認し、児童を見守る仕組みづくり、効果検証を行いました。
また、保育園等が抱える現場の課題を IoTで解決する、IoT保育園の実証トライアル*2も実施しています。温湿度、CO2、PM2.5を計測できるセンサを設置し、計測データを基に保育士が空調機器の制御や換気を行い快適な環境の実現や、乳幼児の衣服に寝返り検知センサ等を取り付け、うつぶせ寝や呼吸の停止といった異常をセンサで自動検知することにより保育士の業務負担の軽減が期待できます。
ほかにも福岡市内において集合住宅における水道メータ自動検針実証*3など「Fukuoka City LoRaWAN」を活用した事例創出に取り組んでいます。
NTTネオメイトが提供するLoRaWANはクラスB通信をすでに実装しており、LPガス事業者へ遠隔検針環境を提供するアズビル金門株式会社へ商用提供を行っています。クラスB通信の商用提供は世界において初の事例となります。
NTT西日本グループでは、実証実験等で得られたノウハウを基に、LoRaWANを活用したソリューションを多くの業界に幅広く提案・提供し、事例を創出するとともにさまざまな社会課題の解決に取り組んでいきます。

*1 児童見守りトライアル:株式会社LiveRidgeおよびmanaweb塾と共同で実施。
*2 IoT保育園の実証トライアル:学校法人やなぎ学園きりん幼稚園・社会福祉法人きりん会きりん保育園、株式会社SKT、国立大学法人九州工業大学と共同で実施。
*3 集合住宅における水道メータ自動検針実証:株式会社三好不動産、アズビル金門株式会社と共同で実施。

問い合わせ先

NTT西日本
アライアンス営業本部 ビジネスデザイン部
IoTビジネス部門 ビジネス開発担当
TEL 06-4793-5775
E-mail iotnw-bd-hq@west.ntt.co.jp