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多様なセンシングデータをリアルタイムに統合し,さまざまな未来予測を可能とする「4Dデジタル基盤™」
NTTは,ヒト・モノ・コトのセンシングデータを,リアルタイムに高精度空間情報に精緻に統合し,多様な産業基盤とのデータの融合や未来予測を可能にする「4Dデジタル基盤™」の研究開発に着手しました.
4Dデジタル基盤は,NTTのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想における「デジタルツインコンピューティング」を支える基盤として,NTT R&DおよびNTTグループ会社の技術・アセットを活用し,2021年度からの機能の順次実用化と,継続した研究開発による機能拡充をめざします.
背景および目的
Society5.0等で提唱されるサイバー・フィジカル・システム時代では,多様なソースからデータを収集し,それらをデジタル空間上で統合・蓄積・分析することで,さまざまな社会問題の解決や,新たな価値創造ができると考えられています.NTTの「デジタルツインコンピューティング」構想においても,実世界におけるモノ・ヒト・社会に関する高精度なデジタル情報を交換・融合・複製・合成等することにより,大規模かつ高精度な未来の予測・試行や,新たな価値を持った高度なコミュニケーションの実現をめざしています.
しかし,すでに統計化されたデータどうしの連携や,位置・時刻情報にズレがあるデータどうしのマッチングでは,未来予測の精度が高まらないケースがあります.社会実装に向けては,センシングデータをリアルタイムに収集し,その位置・時刻を高い精度で一致・統合させることが課題となると考えています.このような背景において,多様なセンシングデータの位置・時刻情報を精緻に統合し,未来予測に資する4D(緯度・経度・高さ・時刻)データを提供する,4Dデジタル基盤を構築します.
4Dデジタル基盤とは
4Dデジタル基盤では,図に示すように,高精度で豊富な意味情報を持つ「高度地理空間情報データベース」上に,多様なセンシングデータをリアルタイムに統合し,高速に分析処理を行います.
(1) 4Dデジタル基盤の位置基点となる高度地理空間情報データベースの整備
・地図事業のデータ・ノウハウを活かした,既存の地図データの位置のさらなる高精度化
・インフラ管理事業でMMS(Mobile Mapping System)等の活用による道路を中心とした高精度3D空間情報の整備
(2) 位置・時刻が高精度なセンシングデータのリアルタイム収集
・都市部での測位・時刻同期精度を高めるスマート・サテライト・セレクション®等の技術と,5G等の高速・低遅延通信による,精度の良いセンシングデータのリアルタイム収集
・マッピング技術を用いた高度地理空間情報データベースへのセンシングデータの精緻な統合
(3) 膨大なデータの高速処理と多様なシミュレーションによる未来予測
・高速時空間データ管理技術による動的オブジェクトから大量に送信される情報の高速検索,および分析
・AI技術による最適化シミュレーション・未来予測と行動変容
4Dデジタル基盤が提供する価値
4Dデジタル基盤は,さまざまなセンシングデータの位置・時刻情報の整合性を確保しながら空間情報上に統合し,各産業のICT基盤が持つデータと融合させることができます.これにより,移動体の正確な位置の把握や,さまざまな未来予測が可能となり,「道路交通の整流化」「都市アセットの活用」「社会インフラの協調保全」「環境・防災に向けた地球理解」といった価値の実現が可能となると考えます.
今後開始予定の取り組み
NTTでは,4Dデジタル基盤の2021年度以降,順次機能の実用化をめざし,必要な技術の研究開発を推進するとともに,「高度地理空間情報データベース」の構築を,2020年度より高精度な地図整備ノウハウ活用してゼンリンと共同で開始します.
また,インフラの維持・管理基盤の整備をNTTインフラネットと,オフィスビル・街区マネジメントの実証実験をNTTアーバンソリューションズと,社会基盤としてのソリューション展開に向けた実証実験をNTTデータと,それぞれ2020年度より共同で実施します.
問い合わせ先
NTT研究企画部門
プロデュース担当
E-mail contact-nttrd-4ddpf-ml@hco.ntt.co.jp
URL https://www.ntt.co.jp/news2020/2003/200326c.html
担当者紹介
実世界の精緻な把握・表現による社会課題解決・新たな価値創造をめざして
三輪 紀元
NTT研究企画部門 プロデュース担当
近年,ICTのめざましい発展により,膨大なIoT(Internet of Things)データの収集や分析が可能となりつつあります.これに伴い,政府やさまざまな企業が,Society5.0等で提唱されるような,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムの実現をめざして,データ流通のプラットフォーム開発・運用に取り組んでいます.
しかし,サイバー・フィジカルの融合において,すでに統計化されているデータや,位置・時刻の情報にズレがあるIoTデータどうしを掛け合わせても,実世界の現象把握・そこからの未来予測の精度が高まらないケースがあるのではないか,と考えたところが本構想の出発点でした.
4Dデジタル基盤の“4D”は,緯度・経度・高度・時刻の4つの次元を意味しており,4次元の情報を可能な限り精緻に,リアルタイムに把握する基盤,という意を込めています.実世界の1コマ1コマを,ニーズに応じて正確にサイバー空間上に表現することで,社会課題の解決や新たな価値創造につながるようなデータの融合・未来予測を実現させることをめざしています.
本基盤および構成技術群と,さまざまなIoTデータを組み合わせることで,日本のみならず,グローバルで,コネクティッドカー・自動運転,スマートシティ,社会インフラ維持等,さまざまな領域で活用可能性があると考えています.
一方で,本構想は新たな社会基盤構築へのチャレンジでもあり,一朝一夕で実現できるものではありません.将来ビジョンを明確に描きながらも,重厚長大なプラットフォーム構築ではなく,スピード感を持って実現可能な技術・サービスから社会実装に着手し,暮らしを支える基盤へと,NTTグループおよびパートナーの皆様とともに育てていきたいと思っています.