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Focus on the News

千葉市におけるスマートエネルギーシティの実現に向けた共同実証について

TNクロス、NTTアノードエナジー(NTT-AE)、NTT、および東京電力ホールディングス(東電HD)は、お互いが持つ技術・設備等を活用し、再生可能エネルギー(再エネ)の導入促進や電力レジリエンスの強化によるスマートエネルギーシティの実現をめざし、千葉市において共同実証を実施します。

■背景・目的

近年、自然災害の激甚化が進んでおり、昨年、未曽有の台風被害を受けた千葉県域においては、レジリエンスの向上が急務となっています。
また、千葉県域は、太陽光発電や洋上風力発電など、再エネ立地としてのポテンシャルが高く、今後の再エネ拡大が期待される一方で、電力系統の増強が必要となる地点も多く、既存電力系統を効率的に活用した再エネの導入拡大が求められています。
そこで、4社は、レジリエンス強化とさらなる再エネ拡大をめざし、電力の強靭化や民間企業等との連携強化などによる「災害に強い都市モデル」の実現を打ち出している千葉市において、蓄電池等の分散型エネルギーを活用した実証を行います。

■取り組み内容

具体的には、レジリエンス強化と再エネ拡大につながる以下3点の取り組みを進めていきます(図)。
(1) 避難所における電源バックアップ整備の支援
平時の温室効果ガス排出の抑制と、非常時のエネルギーの確保を同時に実現するため、災害発生時の生活維持の拠点となる避難所の再エネ等を活用した電源バックアップ機能を強化します。
(2)
 グリーン発電事業推進および直流送電を活用したレジリエンス強化
さらなるレジリエンスの強化を実現するため、NTTビル等に設置する再エネ・蓄電池・EVや直流送電技術を活用した、新たな電力供給の仕組みを提供します。
(3)
 ICT活用による平時・非常時のエネルギー価値最大化
NTTが有する情報通信技術や蓄電池運用技術、東京電力グループが有する電力制御技術の活用等により、地域内の再エネ・蓄電池や需要家設備、既存の電力系統を高度に連携・制御し、地域のエネルギー価値を高める取り組みを進めていきます。

■各社の主な役割

(1)TNクロス:避難所への再エネ等導入、サービス化検討
(2)NTT-AE、NTT:NTTビルへの蓄電池・直流自営線等導入、需給分析システムの整備
(3)東電HD:蓄電池・直流自営線と既存配電網の協調・相互連携、分散型エネルギーの有効活用に向けた仕組みの構築

■今後の予定

本実証により、再エネ主力電源化とレジリエンス強化に繋がる地域モデルを早期にサービス化するとともに、他の地域にも幅広く展開することにより、スマートエネルギーシティの拡大を図っていきます。

問い合わせ先

NTTアノードエナジー
TEL 03-6738-3211
E-mail support-ml@ntt-ae.co.jp
URL https://www.ntt-ae.co.jp/pdf/press20200423.pdf

担当者紹介

脱炭素・レジリエンス強化実現に向けたDER普及・活用拡大への取り組み

今田 博己
東京電力パワーグリッド株式会社 エネルギーリソースアグリゲーションビジネス(ERAB)統括
事業開発室 事業開発第一グループ マネージャー

近年、地球温暖化に伴う気候変動に伴い災害が激甚化している一方、既存のインフラは経年による設備老朽化が懸念されており、レジリエンス強化は喫緊の課題となっています。また、地球温暖化も世界的に重要な課題であり、パリ協定に基づく大幅な脱炭素化が求められています。
脱炭素化を実現するには、化石燃料依存を脱却し、再生可能エネルギー(再エネ)を主軸とする分散エネルギーリソース(DER)を活用したエネルギー需給構造に変革していかなければなりません。また、昨年の台風15号による千葉県域を中心とした長期停電の経験から、従来のインフラに過度に依存した供給構造を見直す必要があり、供給側・需要側が協調した災害復旧の実現が重要となっています。このように、脱炭素・レジリエンス強化に向けて需要側に分散して存在するDERデータをIoT・ICTにより一元化し、再エネ・DERを導入しやすい環境を整えることが不可欠です。
これまでDER活用により再エネ大量導入を目指した新島PJやVPP実証を進めてきましたが、千葉市実証では脱炭素・レジリエンス強化に向けたDER活用機会のさらなる拡大をめざしたい。具体的には、DER情報を見える化・分析し非常時の電力供給に活用するほか、予備力・調整力としての活用や電力系統混雑時における再エネの出力制御代替としての活用を通じ、再エネ導入拡大にも貢献していきます。さらには、再エネ事業者やアグリゲータなどにDERを活用した新たな事業機会を創出していきます。

担当者紹介

電力×ICTによる新たな都市防災モデルの実現に向けて

土屋 卓之
TNクロス ディレクター 自治体担当

TNクロスでは、東京電力とNTTのインフラやノウハウの連携により、省エネ・低炭素化推進、災害に強いエネルギー供給等の社会的要請に資する事業の創出をめざしています。
2019年2月に、千葉市・NTT・NTT東日本千葉事業部の4社による「災害時の新たなエネルギーインフラ活用等の実証に向けた共同検討に関する協定」の締結を皮切りに、災害時の被災者生活早期安定化と平常時の住民サービス向上をめざし、自治体避難所やNTT・東京電力のインフラ設備、EVなどの民間設備を活用した新たな都市防災モデルの実現に向けて、千葉市様とさまざまな検討を行ってきました。この新たな都市防災モデルの実現には、再生可能エネルギーの地産地消拡大と災害時におけるエネルギーレジリエンスの向上を同時実現できるスマートエネルギーシティの世界を創っていくことが重要だと考えています。
私たちがめざすスマートエネルギーシティでは、ICTにより電力を提供できる人と電力を必要とする人をバーチャルにつなぎ、太陽光発電や蓄電池等の分散電源からつくり出される再生可能エネルギーをEVやマイクログリッド等によりリアルに融通することができる、これまでにない新しい世界の創出をめざしています。
今回の千葉市における実証は、そのような世界の基盤となるリソースや技術をフィールドに展開することで、新たな都市防災モデルの実現を加速する大きな一歩になると考えています。

担当者紹介

防災×エネルギーによる地域活性化・レジリエンス向上に向けた取り組み

伊達 新哉
NTT技術企画部門/NTTアノードエナジー スマートエネルギー事業部 企画部門長

環境・エネルギーに関する社会的課題に対応した、エネルギー効率の向上、地球温暖化対策・再生可能エネルギーの活用、耐災性(レジリエンス)向上などの取り組みによる、持続可能な社会の実現が重要となっています。
エネルギー利用の効率化・価値向上による産業活性化に向けては、再生可能エネルギーや蓄電池等の分散エネルギーリソースによる、発電・蓄電ソリューションの提供が拡大しつつあります。また、ICTとデータを活用した自律的・最適な制御を行い、エネルギー利用の高度化を実現する新たなエネルギーマネジメントシステムにより、分散電源を平時・非常時に最大活用し、地域社会・コミュニティにレジリエントで安定したエネルギーを提供することが可能になります。併せて、環境への適合を進めるためには、再生可能エネルギーを中心としたエネルギーを確保し、地産地消可能な環境価値の高い電源として最大限活用していく取り組みが必要となります。
4社がお互いの持つ技術・設備等を活用し本実証を進めていくことで、自治体拠点やNTTビル等への太陽光発電・蓄電池・EVの展開を拡大し、地域のエネルギーリソースとして分散エネルギー基盤を整備していくことができます。そのうえで、ICT基盤を活用したVPPサービスや、直流自営線と既存配電網の協調・相互連携による地域マイクログリッド等を順次展開していくことにより、スマートエネルギーシティを実現し、エネルギーの循環型社会を拡大していきたいと考えています。