from NTTデータ
2025年の崖を乗り越えるためのレガシーデジタルインテグレーション
NTTデータでは技術オファリングの1つとして、「DXを阻むさまざまな課題を適切に紐解き、優先度をつけて段階的に解決していく」ためのソリューション「Legacy Digital IntegrationⓇ」(レガシーデジタルインテグレーション)を提唱しています。 この「Legacy Digital IntegrationⓇ」のコンセプトやポイントについて、デジタル時代の現状とともに紹介します。
デジタル時代に対応するために
NTT データはこれまで、TERASOLUNA や統合開発クラウドによる生産性向上、大規模Agile によるビジネス拡大を推進してきました。しかし、①お客さまニーズが超上流における技術力にシフトしていること、② IT 業界における技術が急速に進化・多様化していること、③前述の① ②を支える人財・体制の確保が難しくなっていること等により、既存の方法論やツール等によるアプローチだけでは対応が難しい状況となっています。
この状況に対応するべく、NTTデータでは“コンサルティングからデリバリまで”幅広いお客さまニーズに一気通貫でこたえ、提案・提供が可能な仕組みを整えました(図1 )。 方法論やツールといった道具をそろえるのみならず、お客さまニーズと当社の技術的な強みを踏まえた17の「技術オファリング」を整備し(図2)、これらを含めた幅広い知識を持つ「デジタルテクノロジーディレクター®(DTD)」が各種技術を適切にコーディネートし、お客さまのビジョン実現に向けたロードマップとして提案を行います。
ここでは、 この「技術オファリング」の1つである「Legacy Digital IntegrationⓇ 」( レガシーデジタルインテグレーション)について紹介します。
■「2025年の崖」を乗り越えるカギ
さて、2018年に経済産業省より『DXレポート*』が発行されてから、早いものですでに2年以上が経過しました(1)。 ビジネス競争力の維持・強化のため、あらゆる産業分野においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が求められていることは、多くの経営者にとってもはや共通認識であるといっても良いでしょう。経済産業省からはレポートによる問題提起のほか、実際にDX に取り組むための施策として『DX 推進ガイドライン』『DX 推進指標』も公表され、経営者が現状を認識しDXに取り組むアクションを起こすことが強く促されてきました。実際に、現状への危機感を具体的なビジネス課題に昇華し、変革のロードマップを描くべく具体的なアクションへ移るお客さまがこの2 年間で増えてきています。
しかしSIer としては、この2 年間思ったようにDX に取り組めず、危機感を抱いたまま足踏みをしてしまっている企業が少なくないことも感じています。これらの企業でDX を阻んでいるものは一体何であるのかを考えるにあたり、ここで改めて『DX レポート』における問題提起を振り返ってみましょう。この報告書では“DX に取り組まず放置してしまうと「2025年の崖」に落ちる”、つまり大きな経済損失を生む状態に陥るとして警鐘が鳴らされました。具体的には、2025年までにDX を実行できない場合のシナリオとして、ビジネスにおける競争に敗れるだけでなく莫大な技術的負債を抱える可能性が示されています。そして“DX の足かせとなるのはレガシー化した既存システムである”とし、これを取り除くため積極的にシステム刷新に取り組むことが推奨されました。
DX をめざす企業にとっては、ビジネス戦略を迅速かつ柔軟に顧客や市場の変化に対応させていくことが必須であり、これを実現できるIT システムへと刷新していく必要があります。しかし、長年利用されてきた既存システムは肥大化・ブラックボックス化などの“手を付け難い”要因を数多く抱えていることがほとんどであり、思い描く理想の姿に一足飛びに生まれ変わるには非常に困難な状況だと言わざるを得ません。このことを踏まえれば、前述した「DX に取り組めない企業」の大多数が既存システムに手を焼いているであろうことは容易に想像がつきます。
つまり、「2025年の崖」を乗り越えるには、「既存システムをどう攻略するか」がキーポイントになるといっても過言ではないでしょう。では、解決すべき課題が山積している既存システムを前にして、どのようなアプローチが採れるでしょうか。この答えとしてNTT データが提唱しているのが「Legacy Digital IntegrationⓇ」です。
* DXレポート:経済産業省が2018年に発行した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」。 2025年目途にDXを実現しなければ、年間最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があると警告しています。
■NTTデータのDXアプローチ
「Legacy Digital Integration Ⓡ 」は、DX を阻むさまざまな課題を適切に紐解き、優先度をつけて段階的に解決していくための“実践的な”アプローチです(図3 )。上流の「Step1:デジタルアセスメント」でDX ロードマップを描き、下流の「Step2:モダナイズ」でそれを実行する2段階の構成となっていますが、ここでより重要なのは「Step 1:デジタルアセスメント」において“絵にかいた餅”ではない、実現性のある道筋をつけることです。
DX に取り組むにあたっては、ビジネス戦略とIT 施策を融合させたロードマップが欠かせません。「Step1:デジタルアセスメント」では、この必要不可欠なロードマップを描くべく、現状把握と課題整理を行い、今後進むべき方向性と優先順位を定めていきます(図4)。ここでのポイントは、ビジネス・IT の両観点でアセスメントを行うことにあります。これまでのシステム刷新とは異なり、DX 後のめざす姿を定めるためにはビジネス観点が必須です。「既存システムの現状、レガシー化課題」を整理するのみでは不十分であり、これに「ビジネスニーズに基づくシステムへの要求事項」を合わせることで、初めてDX 後のシステムの姿を描くことが可能になります。
また、デジタルアセスメントにはもう1つ重要な役割があります。それは、DX を「企業全体の取り組み」として始めるためのファクトをそろえることです。ビジネス観点が欠かせないDX においては、これまでのシステム刷新のようにIT 部門のみで取り組むことは不可能であり、経営層の承認はもちろんビジネス部門の協力も得る必要があります。そのためには、課題を放置するリスクや早期に対策するメリットについて、定量的な指標(具体的な数値)や事実で示すことが非常に効果的です。こういった観点からみても、企画段階においてビジネス・IT の両面からアセスメントを実施しておくことは重要といえます。
「Step2:モダナイズ」では、デジタルアセスメントで描いたロードマップに合わせ、適切な手法を選択しながらめざす姿を段階的に実現していきます(図5)。NTT データでは、実現のためのモダナイズ手法を“ 9つの「R」(9R: ナインアール)”としてパターン化しており、システム課題や制約を踏まえた“Can-Be”にマッチする最適な手法を選択・組み合わせることで、現実的なジャーニーとして実行していきます。
手法適用の一例を挙げると、外部プラットフォームとの連携強化を重要視する方針であれば、既存システムに極力変更を加えず外部向けのコネクタを提供する手法(=リテイン・リインタフェース)が候補となります。開発アジリティを向上させることを最優先とするのであれば、まず既存の最適化(=リファクタ)に取り組むか、クラウド・外部システムへの切り出し手法(=リアーキテクチャ)が選択肢となり得るでしょう。
お客さまはそれぞれ異なるビジネス戦略を持ち、抱えるシステム課題も異なっています。それらを踏まえて描くDX ロードマップも当然、千差万別のものとなります。そのため、 この「Legacy Digital Integration Ⓡ 」により、 お客さまの現状とニーズを見極め、実際に取り組むことのできる現実的な道筋を描いたうえで着実に実行していくことこそが重要となるのです。
■DXは “終わりのない長い旅”
私たちは、DX を“終わりのない長い旅のようなもの” ととらえています。「既存システムは捨てて新しくつくり直す」ディスラプティブ(破壊的)なアプローチや、すべての課題を1回で解決するビックバンアプローチで取り組むのではなく、常に変化していく状況に合わせて段階的に進めていくことが重要です。そして、これまで述べてきたように「Legacy Digital IntegrationⓇ 」はその長い道のりの標になるものと考えています。
DX 全盛のデジタル時代において、SIer のシステム刷新への取り組み方にも変化が求められています。しかし、お客さまに寄り添いその時点における最善を提案する姿勢については、これまでと何ら変わることはないと私たちは考えています。これからも長い旅をお客さまとともに歩み、 DXを成功させるお手伝いを続けていきます。
■参考文献
(1) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_ transformation/20180907_report.html
(2) https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
問い合わせ先
NTTデータ
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インテグレーション技術センタ
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