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Focus on the News

ITERとの包括連携協定の締結について

NTTは、ITER国際核融合エネルギー機構(ITER機構) とITER計画に関する包括連携協定を締結しました。
NTTは、人類初の核融合実験炉を実現しようとするITER計画を支援することで、「革新的な環境エネルギー技術の創出」を加速し、お客さま・企業・社会の環境負荷低減に貢献していきます。

背 景

ITER計画は、平和目的のための核融合エネルギーが科学技術的に成立することを実証するため、人類初の核融合実験炉(ITER)を実現しようとする、日本・欧州・ロシア・米国・韓国・中国・インドの7 極が参加している超大型国際プロジェクトで、国際機関であるITER機構がITER計画を実施しています(図)。
NTTは、「革新的な環境エネルギー技術の創出」に向け、革新的なR&Dに取り組む「宇宙環境エネルギー研究所」の設立準備を進めるなど、R&Dによる限界打破のイノベーションの創出、および環境負荷低減への事業活動の推進により、お客さま・企業・社会の環境負荷低減に貢献することで、「環境負荷ゼロ」をめざしています。
こうした取り組みの中で、 活動を開始したIOWN (Innovative Optical and Wireless Network) 構想における光関連技術の適用を想定しており、現状のICT技術を革新させることで、ITER計画の成功に寄与していきます。

内 容

本包括連携協定の下、戦略的観点より以下の領域で連携していきます。
・超高速・超低遅延ネットワーク接続、データストレージ、コンピューティング、グローバルネットワークインフラを含む未来の情報通信技術に関する探査
・ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入した「オールフォトニクス・ネットワーク」、実世界とデジタル世界の掛け合わせによる未来予測等を実現する「デジタルツインコンピューティング」、あらゆるものをつなぎ、 その制御を実現する「コグニティブ・ファウンデーション」からなりたつIOWNに関する探査
ITER機構が日本の民間企業と長期的な非商用包括連携協定を締結するのは初めてであり、フルスタック・フルライフサイクルのサービスをグローバルに提供ができる総合ICTプレイヤーとしてNTTグループが一丸となって、ITERの2025年初期運転開始およびそれ以後に向けて、情報流通基盤や制御基盤整備へ向けた技術的貢献を行っていきます。

問い合わせ先

NTT広報室
E-mail  ntt-cnr-ml@hco.ntt.co.jp
URL   https://www.ntt.co.jp/news2020/2005/200515c.html

パートナー紹介

地上に太陽を:ITERからNTT研究開発力への期待

Tim Luce(ティム ルース)
ITER国際核融合エネルギー機構 チーフ・サイエンティスト

「ITER(イーター)」は、平和目的のための核融合エネルギーが科学技術的に成立することを実証するために、人類初の核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトです。南仏プロバンスの地で、世界35カ国からなる日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7 極のITERメンバーが協力して、世界最大のトカマクと呼ばれる核融合マシンを建設しています。
核融合プラズマをはじめとするITER全体で取得されるさまざまなデータは、ITER計画の基本的な成果であり、またもっとも貴重な資産となります。従い、ICT分野における世界の最先端のテクノロジおよびイノベーションを取り入れるために、世界的なIT企業と戦略的なパートナーシップを結ぶことは、ITERプロジェクトにとって大きな利益になると考えています。
ICT分野におけるハードウェア、ソフトウェア、またさまざまなコンセプトは急速に進化しており、(ITER計画の初期運転開始予定の) 2025年までには現在予測されているさまざまなソリューションが実現しているかもしれません。さらに(ITER計画にとっての次の主要なマイルストーンである)2035年およびその先においては、私たちが今日まだ知らないような画期的なICTが登場するかもしれません。 そのため、最新のテクノロジを必要なときに反映させることができるアジリティは、私たちにとって大きなメリットとなります。 ICT 分野の最先端テクノロジに関する重要な洞察は、この戦略的パートナーシップによって得られると信じています。
このたび、先進的ICTを開発する確かな能力と、私たち核融合コミュニティが必要とするIOWN構想のような革新的な未来の技術戦略を構想する能力を備えている世界的ICT企業のNTTと非商用長期的協業パートナーシップを結ぶことができ大変嬉しく思います。ITER 計画の実現のために、共に人類の未来のために、NTTのメンバーとの素晴らしいコラボレーションができることを期待しています。

研究者紹介

人類の夢「人工太陽」の実現に向けて

前田 裕二
NTT宇宙環境エネルギー研究所 所長

これまでの私の専門分野とは関係性が薄かったため、核融合は人類の夢であり、実現は2050年ごろと漠然と思っていました。ところが、昨年あたりから実はもっと早く実現するかもしれないという話を耳にしたり、 ITERという超大型国際プロジェクトの存在を知ったり、少しずつ核融合に興味を持つようになっていました。
そのような中、前職であるNTT研究企画部門在籍中、2019年5 月にIOWN構想を全世界に向けて発表し構想の中身を詳細化させていく段階で、NTT Research, Inc. 経由でITER機構にIOWN構想を紹介しないかという話があり、それをきっかけとして私たちNTTも人類の夢の実現に貢献できるチャンスがあると考え始めました。
折しも、革新的な次世代エネルギー技術にチャレンジ可能な新研究所を新しく発足させるという話も同時期に浮上し、この新研究所の目玉テーマとして、何としてでもITER機構との協力関係を構築したいという気持ちになり、IOWN構想の発表からちょうど1 年となる2020年5 月に包括連携協定を結ぶことができました。
NTT側には核融合の研究ノウハウはほとんどありませんが、IOWN構想で実現しようとしている超大容量、超低遅延なオールフォトニクス・ネットワークと、サイバー空間上で超高精度な未来予測を行い現実世界へ反映させるデジタルツインコンピューティングなどの新技術によって、核融合オペレーションの最適化に貢献できないかと考えています。
また、この協定はグローバルカンパニーであるNTTグループとしての包括連携協定であるため、核融合データセンタ構築等においては、国際的に豊富なノウハウを持つNTT Ltd. も連携体制に入っています。このようにNTTグループ一丸となって、人類の夢の実現に貢献していきます。