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トップインタビュー

互いに認め合い、価値を高め合う──世界トップクラスの強みを融合して社会問題の解決に挑む

世界トップクラスのグローバルテクノロジサービスプロバイダ、NTT Ltd..本社を英国のロンドンに置き、70超の国と地域に約4万人を携えています。世界経済が新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けている最中も、テクノロジを駆使してプラスの影響を与え続け、IDC MarketScape:Asia/Pacific Managed Security Services,およびCisco® Partner Summit Global Awards等の受賞によってその貢献をたたえられました。設立から1年、世界的な貢献によって短期間にその名を知らしめたNTT Ltd.の基本方針と多様性を重視した企業のあり方について、森林正彰NTT Ltd.Senior Executive Vice President(SEVP)に伺いました。

NTT Limited
Senior Executive Vice President
森林 正彰

PROFILE

1984年日本電信電話公社に入社。2009年NTT Europe Ltd.代表取締役社長、2016年NTTコミュニケーションズ取締役 クラウドサービス部長、2018年同社代表取締役副社長を経て、2019年6 月より現職。

社員も企業も強みを掛け合わせて成長する

NTT Ltd.は設立されて1年が経ちました。年明けからは新型コロナウイルスのパンデミックにより英国も大変な状況にあると報道されていますね。現在の様子はいかがですか。

報道されているとおり、英国も新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けました。私も基本的には自宅で仕事をしており、多いときでは早朝から1日10件くらいはオンラインミーティングに参加しています。最近、やっとパブやレストランが開き始め賑わいは戻りつつあるのですが、日本と同様に感染者がまた増えてきていますので、先行きはまだ分かりません。
さて、会社設立から1年が経過しましたが、新型コロナウイルスのパンデミック等、世界規模でさまざまな変化が起きたことも手伝って、1年前の設立が遠い昔のように感じます。NTT Ltd.はDimension Data、NTTコミュニケーションズのグローバルビジネス、NTTセキュリティ等31社を統合して設立しました。会社を統合する際には業務だけではなく、各社の企業文化なども融合するというプロセスが伴います。業務も働いている人も違いますからギャップがあるのは当然で、互いに理解に努めるのですが、やはり、協働しているときとは異なり、統合されてはじめて分かることも多くありました。NTTグループ内の統合であっても会社を統合するのは難しいと痛感しましたが、時間とともにまとまってきたという実感を持っています。
統合した各社はこれまで兄弟・姉妹会社としてビジネスを展開してきました。つまり、グループにおいて複数の会社がそれぞれ自社の利益を追求し、グローバル展開している状況にあり、非効率な部分もありました。それを解消するべく、NTT Ltd.に統合し、英国に本社を置いたことで社内外にビジネスの方向性などをOne NTTとして明確に示すことができました。グローバル展開に注力していく意気込みも示せたのではないかと実感しています。
こうした体制により、NTTの特徴を活かしたサービスを提供していきます。インフラからアプリケーションに至るまでのすべてのレイヤにわたりフルスタックでサービスを提供できることは私たちの強みだと考えています。私たちはグローバル的にみても非常にユニークな存在で、世界トップ3のデータセンタを携え、ネットワークにおいても多くのグローバルレベルのビジネスを展開し、クラウド、マネージドサービス等さまざまなサービスを展開しています。こうした企業は世界的にみても稀なのです。このアイデンティティを活かしたビジネスに取り組んでいます。
現在、世界的にも注目いただき、パートナーシップやアライアンスのお申し出も増えて、パートナーリングやアライアンスはやはり重要であると再認識しています。中でも、Microsoftとのアライアンスは1つの象徴といえるでしょう。パートナーリングで一番重要なのは双方にメリットがあることです。一方的な関係は長続きしませんから、存在を認め合い、価値を高め合うことを重視して展開していくことになります。Microsoftとの関係はまさにこのようにあると考えています。ほかにも統合したDimension Dataとかかわりの深いCisco等、グローバル企業からのオファーが多くあることからもNTT Ltd.の社会的価値をご評価いただいていると感じています。

社内外のさまざまな強みが結集しているのですね。事業概要、事業戦略についてさらにお聞かせいただけますでしょうか。

事業の方向性としてはハイバリューサービス、つまり、お客さまのご要望に沿ったソリューションや付加価値の高いサービスを提供できるようにシフトしていき、これが事業の大きな柱の1つとなります。そのためにはサービスもパートナーリングに加えて、私たちの強みを分かりやすく提案、構築からオペレーションまでできる人材育成と確保を重要視した体制を強化しています。
また、私たちのビジネスは企業のお客さまが対象であり、お客さまにとって付加価値の高い競争力のあるソリューションを提供していくことが使命です。このためには一歩先をいく取り組みをしていかなければなりません。それぞれの分野で統合した会社の強みを組み合わせて一歩先へいこうと考えています。例えば、ハイブリッドクラウドソリューションの提供です。クラウド関連のソリューションをお客さまに提供する際に、自社のプライベートクラウドとMicrosoft Azureなどのパブリッククラウド、それにネットワーク、セキュリティ、そしてマネージドサービスを組み合わせるなどしてお客さまに最適なソリューションを提供します。クラウドの利用が増えていく中で、ネットワークの重要性も増していると思っています。クラウドやSaaSへの接続、そしてオフィス内やリモートアクセスなども含めたEnd to Endで高い品質で付加価値の高いネットワークも含めたソリューションを提供できるのは我々の強みです。こうした強みを前面に打ち出してお客さまの満足度を向上させていくつもりです。
ちなみに、 NTT Ltd.の社員は国籍も98%が日本以外で、ビジネス展開もグローバルです。日本国内で仕事をしている社員も500名ほどいますが、世界に点在する同僚のほとんどが外国籍という環境で働いています。日本からこちらに来た社員はグローバル企業に再就職したような感覚で仕事をしてるかもしれせんね。このようにさまざまな背景を持った社員の特性は私たちの強みであり、尊重し相互に良い影響を与え合う環境を設立当初から非常に重要視しています。その結果として、持続可能なイニシアチブを推進するために、あらゆるレベルのビジネスを通じて人材を育成することで知られ、2020年に入り、31カ国でトップ・エンプロイヤーズ・インスティテュートを取得、ヨーロッパ、グローバルにおいて認定を受けました。
その強みを存分に発揮するためにはさまざまな文化的背景への配慮も必要です。社員にアンケートを実施して理解を図り、在宅勤務をしている社員に向けて社長からメッセージを配信する。さらに、eラーニング等によって業務トレーニングを可能にし、ビデオ会議で議論をする場を多く設ける等、さまざまな施策に取り組んでいます。
社員がお互いの強みを尊重し合うスタンスが会社のカルチャーへと押し上げられたとき、さらに強い会社になるでしょう。さらに、統合した31社それぞれの特性、強みを認め合い、高めていければそれがNTT Ltd.のカルチャーになり、One NTTとして強い会社へと成長できると考えています。例えば、先ほどお話ししたハイバリューサービスの大半はNTTコミュニケーションズが手掛けてきたもので、これを拡大していける体制にあることはNTT Ltd.が強い会社へと成長していくベースとなります。また、Dimension Dataはソリューションを中心としたグローバル展開においてブランド力やマンパワーをフルに活かしてきました。社内においては従業員向けの情報発信、社外に向けてはブランド認知のための発信にもDimension Dataの強みを多いに活かしていけるだろうと見込んでいます。

いかなる状況もポジティブに変換できる

前職のNTTコミュニケーションズでは、日本の技術やサービスを世界に打ち出していきたいとお話しされていましたが、NTT Ltd.でもこの意気込みはお持ちですか。

もちろん、その志は携えています。ただ、日本の研究所で培ってきた技術や成功例を世界に向けて発信しているかというと現段階ではまだ十分とはいえず、やれることはまだたくさんあると思います。そして、その結果グローバルにその実力を認めていただける可能性は十分にあるとも感じています。
それらに加えて、NTT Ltd.がこれまで手掛けてきた取り組みの中にもユニークなものもあります。例えば、NTT Ltd.がスポンサーを務めている自転車競技の「ツール・ド・フランス」では、すでに当社のサービスをご利用いただいていますが、それに加えてイベントに利用できそうな技術をさらに提供するための取り組みとして「ハックフェスト」を実施しました。これは、社員からアイデアを募り、実際にソリューションも作成してもらうコンテストです。コンテストには、私は審査委員として参加しました。ビデオ等も使った本格的なプレゼンテーションにはすぐにでも使えるプロフェッショナルなソリューションばかりが並び、日本から参加した作品も入選していました。しかも、これは社員が業務の合間に世界各国をオンラインでつなぎつくり上げるという取り組みであるにもかかわらず、とにかく、非常にレベルが高いものです。今回は「ツール・ド・フランス」用に発案したものですが、マラソンやインディカーレース、ゴルフ等、グループがスポンサードしている類似したイベントにも応用でき、すぐにでも実用化できるソリューションばかりなのです。本務以外の取り組みであるにもかかわらず社員が個性を発揮して生き生きと輝く、今後もこのような取り組みをもっと活用していきたいと思っています。

アフターコロナ、ウィズコロナを見据えたとき、トップはどうあるべきでしょうか。

私の信条は一貫してポジティブに考えることです。この新型コロナウイルスのパンデミックにおいても、やはりポジティブに考えていきたいです。例えば、現在の状況をきっかけにして新しい方向性を見出し前進するのにはどうしたら良いかは常に頭の中にあります。昨今の状況をかんがみると、今までのようにオフィスのみで働くという時代ではなくなりました。そうであるならば、仕事をしやすいリモート環境を整えるのが私たちの仕事ではないでしょうか。皆さんがお困りの状況をいかに改善できるか。これはある意味ではチャンスなのです。自宅にいながら会社で働いているのと同等、あるいはそれ以上の効果を生み出し、安心して仕事ができる環境をICTが支えることは社会課題解決の1つです。
現在、社内でも議論している最中ですが、リモートも含めたオフィス環境を私たち自身がつくり上げて検証し、ニューノーマルに即したサービスを提供していこうと考えています。実現するには、社員側からするとどこにいてもセキュアに会社のシステムにアクセスできるリモート環境で仕事をすることがポイントになり、会社側からすると業務や社員をきちんとマネージできるかがポイントになります。
新型コロナウイルスのパンデミックは世界規模で大変な状況ではありますが、そうでなくても、ビジネスがうまくいかないことは当然あります。問題に直面したときにどう思考を転換するかかが大切で、熟考を重ねた「ベスト」がうまくいかないなら「セカンド・ベスト」で遂行すれば良いのです。思考が止まってしまうと負のスパイラルに入ってしまいますから、どの時点で切り替えるかを見極めることが大事です。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、人を集めることが難しくさまざまなイベントが中止となりました。実際の現場へ人を集めるのが難しいなら、別の手段で人を集めることに着眼し、発想の転換を図るのです。私たちならICTの力を駆使して多くの人々のためにデジタルで安全なイベントを開くこともできますし、セミナーも十分可能です。オフィスへ出勤できなくても、CEOのメッセージを在宅勤務の社員たちに届けることもできます。こうしたことが、私たちの技術により十分に実現可能であることを広く一般の人に知っていただき、活用していただこうという方向に考えを切り替えればビジネスにつながります。もちろん、私たちのビジネスの中にも、新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めることで、価値を失ってしまうようなものもあります。しかし、それに落胆せずに、価値あるサービスや伸びているサービスをさらに伸ばす方向へと切り替えれば良いのです。ただ、この切り替えも早くしなくてはいけませんし、見極めのポイントは非常に難しいところです。社員の中には今まで取り組んできたことに未練があり、「これまで上手くできてきたのだから」「また復活するのではないか」と期待する、あるいは思い込んでしまうこともあるでしょう。しかし、この思い込みをいかに払拭して切り替えるか、私たちトップが方向性を示さなければならないと考えています。

直感は経験値や鍛錬の極み

切り替え方やタイミングはどのようにして身につけられたのでしょうか。

何か特別に学んだりしたことはありませんが、これまでの経験の蓄積で自然に身についた感覚的なもので判断しているところはあります。しかも、これが正しいかも分からないし、100%絶対に正しいと思って挑んでいるわけでもないのです。直感は経験値や鍛錬の極みという人もいますが、それに近いのではないかなとも感じます。
ただやみくもに経験値を活かすことを優先しては失敗を招きますから、立ち上がったばかりのNTT Ltd.のビジネスについては自分で判断できるような最低限の情報収集と経験を蓄積しています。1年が経過してかなり情報収集ができており、大きな方向性を示せる段階にきているのではないかという実感があり、タイミングを計っているところですが、さらに情報収集は継続しています。また、私はICT Infrastructure Service に加え、7月からManaged Service全般も担当していますのでこちらも勉強中です。さらに、1人の考えでは及ばないこともありますから、ほかの幹部や親会社の考えともすり合わせながらこの先を見据えていこうと考えています。自分がもう少し若いときは、今の年齢になればもう少し楽に仕事ができるのではないかと想像していましたが、現在の立場を考えるとますますタフに働いているというか、NTT人生の中で一番タフな仕事をしています。裏を返せば、それだけやりがいのある充実した仕事をしているのだと考えています。

技術者の皆さんへ一言お願いいたします。

現代は会社の規模や立場に関係なく、いろいろな場所や人から良いものが生まれてくる時代です。ちょっとしたアイデアから役立つモノやサービスが生まれてくることが非常にたくさんあるし、機会もたくさんあります。自らの創造性を発揮してどんどん発信していただければと思います。私たちは大きな会社ではありますがベンチャーからのアプローチも大歓迎です。発信はSNSでも良いですし、個人のつながりを活かす、LinkedInのようにビジネスのつながりを活かすこともできます。NTTグループにもベンチャーキャピタルの会社が米国の西海岸にありますので、パンデミックが落ち着いたら私も積極的に訪ねていこうと思います。また、日本でもアジアのベンチャーを対象にしたコンテストを企画しています。これまでマレーシア等でコンテストを開いて優秀な技術を発掘することができました。こうした機会を活かして私たちのビジネスとも結びつけていけたらと考えています。つながりは至る所にありますし、1人のエンジニアのアイデアによって社会が変わることがありますから、どんどん創造性を発揮していただきたいと思います。(インタビュー:外川智恵)

■参考文献
(1) https://hello.global.ntt/en-us/newsroom/ntt-ltd-expands-cloud-exchange-offerings-in-us
(2) https://hello.global.ntt/en-us/newsroom/ntt-ltd-reflects-on-one-extraordinary-year-in-business
※取材はオンラインで行い,写真は過去のものを使用しました.

インタビューを終えて

森林SEVPにトップインタビューにご登場いただいたのは1年前。その後、シリコンバレーではNTT Research, Inc.のグランドオープンのイベントでご一緒させていただきました。次は、英国でご活躍されるお姿を拝見できると楽しみにしておりましたが、新型コロナウイルスのパンデミックによりオンラインでの再会となりました。非常に残念に思っていましたが、ひとたびオンラインでの取材が始まると、画面からは森林SEVPの穏やかな笑顔とポジティブなエネルギーが伝わってきます。お話を伺った当日も早朝からオンラインミーティングに出席されていたといいますが、お疲れは全く感じられません。最近はご趣味の旅行はできなくても、現地では解禁となったゴルフを楽しんでいらっしゃるそうで、「自粛期間にできなかった分スコアは落ち込んだけれど、最近になって持ち直してきました。ゴルフは上手くいかないところがいいところ」と、相変わらず何事もポジティブに置き換えてお話しくださいます。また、旅行の代わりに、料理をはじめ家事をするようになられたとという森林SEVP。「家にいるのだから少しは手伝わなければと思って、餃子を焼いたり、ご飯を炊いたり、掃除をしたりしています」と微笑まれる姿に、ご家族との様子が垣間見え心が和みました。在宅勤務でゆとりのできた時間にはお嬢様から紹介された韓国ドラマも楽しまれているといいます。Web会議サービスを利用した今回のオンラインインタビューの結びには「パートナー会社のWeb会議サービスの音声の部分には実はNTT Ltd.のサービス(クラウドボイス)が使われているのですよ」とさりげなく教えてくださいました。常に自然体で何事も押し付けない森林SEVPは世界的危機の中にもご健在でした。また、お目にかかれる日を楽しみにしております。