from NTT西日本
「おまかせAI 働き方みえ〜る」によるデータドリブンビジネスの展開
中堅中小企業を取り巻く経営環境は、今までにないスピードで多様化が進む中、NTT西日本ではカスタマーサクセスの実現に向けて、お客さまの業務実態をモニタし、その結果に基づく効果的かつ訴求力の高い課題解決の実現をめざすサービスとして、 2019年8月に「おまかせAI 働き方みえ〜る」をリリースしました。ここでは、中堅中小企業を取り巻く経営課題とともに、サービス提供の背景・概要、サブスクリプション型サービスとして実装したオペレーション要件、データドリブンビジネスの今後の展開について紹介します。
中堅中小企業のカスタマーサクセス実現に向けたデータドリブンビジネス
日本において、企業数の99%を占め、雇用の約70%以上を占める中堅中小企業が抱える課題は、「生産性向上」「人手不足」「働き方改革への対応」「IT化による業務効率化」など、今までにないスピードで多様化が進んでいます。 NTT西日本においても、情報機器などのプロダクトアウトに代表される従来型のマーケティングや営業手法では、 お客さまとのタッチポイントも限定されており、カスタマーサクセス実現に向けて、お客さまの業務実態をモニタし、その結果に基づく効果的かつ訴求力の高い課題解決を実現する「戦略的サービスデザインへの変革」が課題と なっています。
そうした中、NTT西日本の中堅中小企業向けサービス開発チームでは、自社起点から顧客起点への変革を通じた継続的リレーション構築に向けて、「データ」を主軸としたタッチポイントの再構築を進めてきました。具体的には、①サービス利用を通じてお客さまの業務実態を知り、 ②その分析を通じて業務課題の抽出・可視化を実現し、③ その内容をフィードバックする、といった新たなタッチポイントを構築することで、プロダクトアウトからの脱却を図り、お客さまの業務課題へ効果的にアプローチをすることをめざす「データドリブンビジネス」の展開を進めてきました。
2019年8月にサービスリリースをした「おまかせAI 働き方みえ〜る」(1)は、NTT西日本のデータドリブンビジネスの中核サービスの1つに位置付けられます(図1)。
本サービスは、中堅中小企業を取り巻く経営環境の変化を背景に、NTTスマートコネクトが開発したサービスのOEMで実現しており、機能面ではお客さま従業員の方々のPC操作ログを収集し、その分析を通じて業務課題を抽出・可視化が可能となっています。またサブスクリプション型サービスとして、お客さまにサービス価値を体験していただき、利用継続につなげていただくためにも、NTT 西日本のサポートセンタからレポートのオンボーディングやテクニカルサポートといったオペレーション機能を具備したことも特長といえます。
「おまかせAI 働き方みえ〜る」の概要
2019年4月に施行された「働き方改革関連法」では残業時間の「罰則付き上限規制」が設けられるなど、今企業は、 長時間労働の是正や労働生産性の向上、さらには柔軟な働き方の推進が経営課題として求められています。
そうした中、働き方改革を実行に移すうえで、「どこから着手をすればよいか分からない」「仕事の偏りを定量的に把握できていない」「どの業務がRPA ソフトウェアで自動化できるのか知りたい」といった課題を感じている中堅中小企業が多く存在していました。
「おまかせAI 働き方みえ〜る」は、それら課題を解決し、 それぞれの会社に合った働き方改革の実現をサポートするサービスといえます。
サービスの特長として挙げられるのが「見える化」です。 一般的に、働き方改革を進めるうえで、まず実施すべきは「業務実態の把握」といわれる中、その会社全体の把握・可視化は課題となっていました。そうした中、本サービスでは、従業員のPC 操作ログを取得し、独自AI で分析を加えることで、業務プロセスの処理パターンの可視化を可能としています。このデータの収集から可視化までの一連のアルゴリズムおよび機能提供を支えているのが、NTT 西日本グループのNTT スマートコネクトです。本サービスの技術的な特長として以下が挙げられます。
データ収集においては、資産管理ソフトのシェアトップであるMOTEX 社のLanScopeCat をPC にインストールし、その操作ログを自動でクラウド側へ送付します。クラウド側では、NTT スマートコネクト社独自のAI 技術により、収集したPC の操作ログを分析したうえで可視化を実現します。
また、リアルタイムに収集されるPC の操作ログは1カ月当り数テラバイトにも及び、その量は利用社数の増加に応じて現在も増え続けています。このビッグデータを処理するために、クラウド側では分散型のオブジェクトストレージと、分散コンピューティングのフレームワークである Apache SparkTM を利用しています。
さらに自社開発している分析のアルゴリズムの特長としては、操作ログの配列パターンの類似性に着目し、繰り返し作業の検出が可能であることが挙げられます。これについてはNTTスマートコネクトにて現在、特許出願中です。
こうした技術的特長を用いて、「おまかせAI 働き方みえ〜る」では4つの可視化を実現しています(図2 )。
(1) 勤怠実態の見える化
従業員のPC での勤務実態を①繰り返し作業時間、② PC 作業時間(繰り返し作業以外)③ PC 作業をしていない時間の3 つに分けて把握することが可能です。また、月ごとの業務・作業時間の変化を全社・個人別・グループ別・作業別の観点から多面的に確認することもできます。
継続的に利用することで、業務量の月ごとの変化が定量的に可視化できるため、繁忙期など時期による業務負担の実態を把握することも可能です。
(2) 業務内容の見える化
前述した独自AI 分析技術を用いて、効率化できる可能性のある繰り返し作業を抽出し、各作業パターンごとの総繰り返し作業時間、回数、実施人数等を確認できます。また、繰り返し作業のフロー化や、エクセル等のファイルを作業時間の多い順で表示する等従業員がどのような業務に従事しているかを確認することが可能です。それによって、 RPA 等ツールの導入検討時において従来は不明瞭であった定型業務を抽出できるため、業務の優先順位付けや当該業務の実態把握等に役立てることもできます。
(3) セキュリティリスク(内部不正)の見える化
あらかじめ登録したストレージに対して、誰が、いつどのデータにアクセスし、持ち出したかを可視化することができます。つまり、オンラインストレージやUSB 等外部ストレージへのアップロードによる重要データの持ち出し等の情報流出の可能性を把握することが可能となります。
また、従業員がいつもアクセスしているWWW サイト、 アプリケーション、ファイルを視える化できるため、業務時間内・時間外・休日出勤時の無駄なプライベート利用等への抑止効果、および本来アクセスしてはいけないWeb サイトの閲覧履歴も把握できることによって、UTM 等のセキュリティ製品の設定への活用にもつなげることが可能です。
(4) IT資産の見える化
PC の利用状況を手軽に一元管理ができます。PC ごとのOS バージョンをはじめ、各PC にインストールされているウイルス対策ソフトのパターンファイルまで把握することができ、リプレース時期を簡単に検討が可能です。また、メモリやディスク空き容量を把握することで、従業員からのスペックアップの要望への対応を客観的に判断することも可能です。
サブスクリプション型サービスとしてのオペレーション要件
「おまかせAI 働き方みえ〜る」をご利用いただくことで、 前述した4つの見える化を軸に、お客さまごとの働き方や業務内容をサマライズしたレポートが定期配信されます。 また、お客さまは本レポートで得られた内容から業務改善項目を把握することが可能となります。実際にご導入をいただいたお客さまからは、「レポートによって、従業員と具体的にどの業務を改善するべきか、どの業務をRPA化するかの具体的な議論につながった」や「残業時間の低減につながった」といった声もいただいています。
また、本レポートはお客さまに定期配信することに加えて、営業担当者も活用したソリューション提案を展開しています。具体的な事例として、中堅中小企業における経営課題の1つに「ペーパーレス」がありますが、本サービスの導入により、業務上で実際に利用されている印刷枚数といった定量的な可視化も可能となります。このように営業担当者がお客さまの顕在的課題や潜在的課題に対して、効果的にアプローチすることで、「おまかせAI OCR」や「RPA (WinActor)」などのソリューション提案・導入につながる事例が出てきています。
他方、レポートの見方・内容がお客さまにしっかりと伝わっていないとサービス価値棄損やチャーンにつながるリスクがあるため、サービス開始時にはオンボーディングを必須化しています(図3)。オンボーディングは、初回のレポート配信のタイミングで、NTT 西日本のサポートセンタからお客さまへプロアクティブに連絡し、お客さまのご利用状況に合わせたレポート内容の説明やさらなる活用方法のご案内を実施しています。
このように、レポートを起点としたお客さまとの新たなタッチポイントの構築に向けては、NTT 西日本におけるリモート組織であるサポートセンタの強み・スキルと、オンサイト組織である営業担当者の強み・スキルの相乗効果を図って、全社的なカスタマーセントリック(顧客中心主義)を推進していく必要があると考えます。
NTT 西日本が中堅中小企業の真の課題解決に寄与するビジネスパートナーであり続けるためにも、「おまかせAI 働き方みえ〜る」をご利用のお客さまに対して、データドリブンビジネスをさらに展開し、カスタマーサクセスの実現をめざしています。
今後の展開
今後、さらに中堅中小のお客さまの業務課題は、さらに多様化していくことが想定されます。
特に新型コロナウイルスの猛威により社会経済に深刻な影響があった中、多くの企業において在宅勤務を中心としたテレワークへのシフトが一気に進みました。また収束後もテレワークやローテーション勤務、オンライン会議など新しい働き方の定着など、今後よりお客さまの業務における課題は複雑化し、見えづらいものになっていくことが想定されます。
そうした状況のもと、「おまかせAI 働き方みえ〜る」においても、現状取得できるオフィス環境下の情報に加え、 リモート環境も含めた業務の可視化まで範囲を拡大していくとともに、そこで得られたお客さまの業務の状況や顕在化する課題等を基に、お客さまの業務実態に寄り添ったアプローチを拡充していくことで、お客さまの真の課題解決につながる事業展開・サービス拡充を進めていきたいと考えます。
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