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グループ企業探訪

第227回 アイレック技建株式会社

非開削推進工事、非破壊地中探査のエキスパート

アイレック技建は、NTTの通信用地下通信設備工事用に開発された、非開削推進工事機「エースモール」と非破壊地中探査機「エスパー」を一般市場に展開していくために設立された、土木エンジニアオリエンテッドな企業だ。世の中の技術をリードする「エースモール」と「エスパー」を駆使したビジネス、エンジニア育成や海外展開に向けた思いを、飯田敏昭社長に伺った。

アイレック技建 飯田 敏昭社長

NTTの土木技術を市場展開する企業

◆設立の背景と目的について教えてください。

アイレック技建は、研究所で開発された、非開削推進工事を行うエースモールや非破壊地中探査を行うエスパーの技術を市場投入していくことを目的として、1987年に設立されました。
NTTが民営化された1985年以前から、通信ケーブルを通す管路を地中に敷設する工事は、ほとんどの場合道路等の地面を掘り、管路を設置した上に土を埋め戻す、開削工法で行われていました。また、少し大きな工事の場合、さまざまなインフラの管路等がどこに埋まっているのかを調べるために、試験掘りといって実際に地面を掘って確認する方法が採られていました。こうした工事は、地面を掘って埋め戻すという非常にコストのかかるものであり、事故等の危険とも背中合わせであり、さらには社会問題になっていた工事による交通渋滞を少しでも緩和するために夜間工事にならざるを得ない等の課題が山積していました。
こうした課題に対応していくために、地面を掘らずにロボットで管路を敷設し、地下設備調査を地上から行い、カメラを使って管路内部の点検や補修を行う、こういったことのできる機械としてNTTの研究所で開発・実用化されたのが、エースモールやエスパーです。当社では、試験等を通してこれらに改良を重ねたうえで事業に供しています。

◆どのような事業を行っているのでしょうか。

当社は、技術、ノウハウ、実績を活かして、①非開削推進事業、②非破壊探査事業、③管路、橋梁および付帯設備、トンネル等の点検・診断・補修を行う点検リニューアル事業、④環境負荷の削減や非開削、非破壊といった「NO-DIG」技術の推進を行う環境計測事業の4つの事業を行っています。
非開削推進事業では、エースモールのレンタルを行っています。管路等の口径や土質、工事方式等により、「エースモール」「リバースエース」「ハイブリッドモール」の3機種を準備しています。
世の中にある推進機械は販売のかたちで提供されているのですが、特殊な機械なので、壊れるまで何十年と使い続けます。数が多く出るものでもないので製造中止も多くなり、メンテナンスや修理の部品がなくなり、状況に応じた改良もできなくなっています。レンタルであれば、必要なときに使うことで利用効率も高まり、改良やカスタマイズも加えることで新たな機能も追加されて進化していきます。最近では他社の推進機械では対応できない工事に、当社のエースモールで対応した、という事例も増えてきています。
非破壊探査事業では、地下埋設管探査・空洞調査用のエスパーをはじめ、コンクリート構造物検査、下水道管周辺調査、コンクリート柱健全度調査等それぞれの目的に合った機器を扱っています。特にエスパーについては、「ロードエスパー3D」という車載型のものがあり、道路を走りながら探査を行えるものがあり、NTTインフラネットからスマートインフラプラットフォームの基礎づくりのためのツールとして期待されています。
こうした商材やサービスを展開していくためには営業活動が必要となるのですが、当社は土木エンジニアオリエンテッドな専門家集団なので、全国に拠点展開しているNTTインフラネットと連携した営業活動を行っています。2020年3月にNTTインフラネットのグループ入りしたこともあり、さらなる連携強化を図っていきたいと思います。

◆レンタルということは、対象はNTTの通信用土木の工事だけではないのですね。

地中に管路を持つのは通信だけではなく、電力、ガス、水道、下水道もあります。こういった地下設備の工事すべてがエースモールやエスパーの活躍の場になります。さらには、支障移転や通常の道路工事や道路補修においても地下埋設物の確認や空洞調査にもエスパーが使われています。
NTTの通信用管路はほぼ行き渡ってきているので、少し前までは自治体の下水道の新設工事がメインでした。最近では、この下水道も行き渡りつつある中、水道管の老朽化対策や耐震化といった工事が増えてきています。電力やガスについては業界内で完結する傾向がある中、少しずつ扱いが増えてきています。最近の変わったところでは、高速道路に沿った地下設備の対応も出てきました。日本中あらゆるところに地下設備、特に管路があり、さらには電線類の地中化の話も各地で出てきているので、新設からメンテナンスまでエースモールやエスパーの登場する機会を増やしていくつもりです。

「3CHA精神」で海外展開をめざす

◆今後の事業展開や抱負についてお聞かせください。

今後に向けて、「エンジニアの育成」「エースモール/エスパーの高度化」「海外展開」の3つのテーマで取り組んでいます。
少子高齢化が進む中、エンジニアの高齢化や減少といった問題が業界全体で顕在化してきています。管路の工事を数多く行うにしても、エンジニアがいないことにはエースモールもエスパーも操作することができません。予見されるエンジニア不足に対応していくための育成とエースモールの普及を目的に、「エースモール工法協会」を全国の80社超とともに立ち上げました。同様にエスパーについても「エスパー探査協会」を立ち上げました。これらの活動を通して、エンジニアの育成と、エースモールやエスパーのファンを増やしていきたいと考えています。
エースモールやエスパーの高度化については、単なる改良ではなく、遠隔操作や計測・解析・診断の自動化をめざします。これらをセンタから集中操作できれば、エンジニア不足に対しても一石投じることができます。遠隔操作をするためにはセンサを使った計測は必須であり、また、データの解析・診断においても、IoTやAIを含むICTとの親和性が非常に高いものです。すべてに導入するには少し時間はかかるかもしれませんが、NTTの研究所と一緒に検討していくつもりです。
そして、海外展開ですが、海外には管路新設の需要がまだまだあります。エースモールの出番があるということです。それを意識して、2018年から2019年にかけてマレーシアの工事に参加しました。言葉や商習慣、工事に対する技術者の考え方の差等があり苦労はしましたが、他国の機械がギブアップする中、エースモールがそれを補って工事を完成させました。こうした経験を活かして第2、第3の事例をつくっていきます。
難易度が高く時間のかかるテーマではありますが、スキル・ノウハウのCharge、Chargeした知見を活かして新しいことにChallenge、そしてChallengeしたことによるChangeの「3CHA精神」(アイレック技建設立以来の精神)で前進していきます。

担当者に聞く

いろんなことにChallenge! 新たな市場開拓を!

非開削推進事業本部 営業部
部長
森 治郎 さん

◆担当されている業務について教えてください。

小口径の地下トンネルを非開削で掘るエースモール、少し大きめな口径のハイブリッドモール、傷んだトンネルを壊して新設するリバースエースの技術営業をしています。営業といっても現在は市場開拓に近い仕事です。
少し前までは下水道の新設が多かったのですが、それも一段落して減少傾向です。とはいえまだまだボリュームは多く、都市部の周辺では動きがありますし、最近では農業用水などの更改の仕事も増えてきています。
また、今後の海外進出をめざして2019年にはマレーシアへ行ってきました。言葉の違いや工事の作法の違い等で苦労しましたが、他国の工法がギブアップした工事をエースモールで仕上げたことで技術力を評価していただけました。
そして、新しい市場に向けて進んでいくためにはお客さまの要件も変わってきますので、それに対応していくためにも、既存のお客さまへの工事品質向上のためにも、エースモールの動作精度向上や、扱う管種や口径の変更等の改良を進めていかなければならず、それについても担当しています。

◆ご苦労されている点を伺えますか。

エースモールの改良は、実験フィールドで試験・調整を繰り返しながら仕上げていきます。NTT関連の工事を実施していた頃は、改良品を持ち込んで実際の現場で試してみることにお付き合いいただけました。もちろん、この過程で少しでも不具合があれば、修正して工事を完了させています。ところが、最近ではNTT関連の工事がなくなってきて、このように現場でなければ分からないことを試しながら進めることがやりづらくなってきました。
こうした中、位置検知の精度向上、時間短縮に向けた改良については、いきなりお客さまの工事でした。間違いがあると責任問題になるので、わずかな誤差も許されません。想定され得るエラーをくまなく実験フィールドで確認して臨みましたが、ハラハラドキドキの連続で、工事完了時の安堵感は表現しようのないほどのものでした。

◆今後の展望について教えてください。

これまで、大都市圏で大人数を集めて技術説明会を開催したり、パンフレットや毎年更改される技術資料をお客さまや自治体に出向き配っていました。昨今のコロナウイルス対策で、それもままならなくなり、資料をダイレクトメールで送りました。ところがそれではお客さまとのコミュニケーションが取れないので、小規模ならばいいだろうと、お客さま個別に出前説明会を開催しました。デリバリー説明会と呼んでいます。やってみると大規模のときより質問も多く出てきて、思いのほか効果がありました。コロナウイルスがきっかけではありますが、アフターコロナでもこれを続けていこうかと思います。
AI、IoTを活用して、エースモールの遠隔支援、その先には自動制御に向けた開発も手掛け始めています。付加価値を創造し新たな市場開拓に取り組んでいきたいと思います。

ロードエスパーとスマートインフラプラットフォーム

東日本営業本部 第二事業部
担当課長
野中 聡 さん

◆担当されている業務について教えてください。

エスパーという地中レーダーを使った非破壊調査に関する業務を行っています。通常、地下の埋設物を調査するときには手押しタイプのエスパーを利用しています。大規模の調査の場合には車載型エスパーであるロードエスパー3Dを利用しています。一般的にはNTTの設備の占用位置調査や路面下の空洞調査というのがロードエスパー3Dのメインな領域になっています。私はどちらかというと路面下の空洞調査の方をメインで取り組んでいます。
現在は、ロードエスパー3D1号機で調査しているのですが、2号機を開発中です。2号機は下部に地中レーダーを設置し、屋根上にNTTインフラネット開発のステレオカメラシステムを設置し一走行で地上と地下の情報を同時に取得することができるようになります。それにより空洞調査であれば詳細な場所の特定に使えますし、先々にはNTTの地下設備と地上設備を対比しながら管理できるようになると思っています。

◆ご苦労されている点を伺えますか。

ロードエスパー3D1号機の段階ですでに取得データが膨大なものになっており、それを技術者がすべて目視で判断しています。これが2号機になるとステレオカメラによる画像が加わるので、情報量は指数関数的に増えます。技術者の苦労は一言では語れるものではありません。これを解決するために、現在AIを使った解析ツールを開発中です。
また、2号機の開発そのものもコロナウイルス対策関連の影響で、部品や装置が入手困難になり、開発期間が延びています。とはいえ、今は開発の最後の段階なのでロールアウトに向けて全力で頑張っています。

◆今後の展望について教えてください。

北海道から九州まで国道を中心とした幹線道路の点検業務は終息の方向へ向かっているので、これからは1号機よりコンパクト化した2号機でそれ以外の道路の調査への参画を進めていきます。
その先の話として、2号機に別の装置を追加して、あるいは3号機を開発することで、NTTインフラネットのスマートインフラプラットフォームへのNTT設備に関するより詳細な情報提供が可能となるので、将来的にはそちらのほうへも進んでいきたいと思います。

ア・ラ・カルト

■新工場の効用

2018年12月にエースモールを自前でメンテナンスする工場をつくりました(写真1、2)。以前はつくば駅から車で30分もかかる場所に個別部品ごとに建屋が別だったものを、つくばエクスプレス(TX)の駅の近くで、一連のプロセスの動線を考えて1カ所で作業できるつくりの工場にしました。作業性が良くなり、マシンの回転率も向上し、効率的になったそうです。そればかりではなく、これまで車通勤だった社員が電車通勤に変わり、仕事で疲れた後の帰路の運転の必要がなくなり、社員に好評なうえに、TXにより都心からのアクセスも良くなり、派遣を含めた社員の採用等においても人が集まるようになり、良いことばかりだそうです。ただ、社員の中には電車通勤に変わって、せっかく飲みニュケーションができるようになって喜んだはずが、コロナ禍でそれもままならず、がっかりしている人もいるようです。

■仕事大好き

現在、全社の女性社員5人のうち3人が育児休暇を取得しているそうです。期間満了前に出勤したがっていた社員が、コロナ禍の影響で子どもを保育所に預けることができなくなり、出勤ができなくなりました。会社としては、しっかり休むように言っており、本人も子どもと一緒に過ごせる時間が増えて喜んでいる一方で、仕事も大好きで、大好きな子どもと仕事の間で板挟みになり、悩んでいるとか。それくらい素敵な職場なのですね。