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特集

モビリティを中心とした街のデジタルトランスフォーメーション

IOWNによる街全体の最適化

NTTは、革新的な技術によってスマートな世界を実現するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を掲げ、パートナーの皆様とのコラボレーションを進め、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、社会的課題の解決をめざしています。本稿では、モビリティ・街に着目し、IOWN構想をはじめとするNTTグループの技術・アセットを活用して、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り社会的課題解決をめざす「モビリティを中心とした街の最適化の取り組み」について紹介します。

三橋 慎(みつはし しん)/三輪 紀元(みわ のりゆき)
深田 聡(ふかだ さとし)/日高 浩太(ひだか こうた)
NTT研究企画部門

現状の社会的課題に向けた日本およびNTTの取り組み

経済の発展や、技術革新によるさまざまなサービスの誕生に伴い、人々の暮らしは豊かになり、個人の価値観が多様化する一方、生活の質や医療の向上に伴う高齢化や、世界情勢の変化などにより社会課題は複雑化してきており、現在の社会システムでは経済発展と社会的課題の解決を両立することは困難な状況になってきています。
このような環境下において、日本では、第5期科学技術基本計画において、めざすべき未来社会の姿として、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」としてSociety5.0(1)が提唱されています。
Society 5.0では、フィジカル空間のセンサからの膨大な情報がサイバー空間に集積されます。サイバー空間では、このビッグデータをAI(人工知能)が解析し、その解析結果がフィジカル空間の人間にさまざまなかたちでフィードバックされます。Society 5.0では、膨大なビッグデータを人間の能力を超えたAIが解析し、その結果がロボットなどを通して人間にフィードバックされることで、これまでにはできなかった新たな価値が産業や社会にもたらされることになります。
一方、NTTにおいても、前述のような多様化する社会的課題の解決をめざし、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用し、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤としてIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想(2)を発表し、2024年の仕様確定、2030年の実現をめざして研究開発を始めています(図1)。

図1 IOWN構想の概要

街やモビリティにかかわる社会課題

国内の街にかかわる社会課題に目を向けると、都市部では人口集中により、従前からある通勤ラッシュなどの交通問題や環境・エネルギーなどの問題は解消されていません。一方、地方部では少子高齢化・過疎化による生産人口減少から、公共サービスを含めたさまざまなサービスの維持が困難な状況にあります。
モビリティにおいても、特に地方部を中心に、電車、バス、タクシーなどの交通手段を従来どおりに維持することが困難で、将来の自動運転時代も視野に入れながら、さまざまな交通手段を統合的にとらえ、それぞれの地域の人々の働き方、暮らし方に対応した多様、かつサステナブルなサービスの提供が課題となりつつあります。

課題解決に必要な考え方

これまでの社会では、経済成長や人口増加を背景に、マクロな視点からの効率化を中心に、交通手段や、街のさまざまなサービスが設計・提供されてきました。
しかし、今後は目的・利用シーン・健康状態等に応じた交通手段など、多様化する個人の価値観・ニーズにタイムリーに寄り添いながら、多様な社会課題の解決をめざすサービスが求められます。一方で、サステナブルなサービス運用のために、個人に向けた最適化設計のみならず、必要な人員やエネルギーをリアルタイムに最小化して維持コストを抑えるなど、全体最適の視点からのインフラ・サービス設計・運用も重要となってきます。
上記のようなサービスの実現に向けては、サイバー空間とフィジカル空間の融合を実現し、今まで目的ごとに管理・利用されていた地理的空間情報、移動体情報、ヒトの行動、趣味嗜好、インターネット上の行動履歴など、ヒト・モノ・コトにかかわる膨大なデータをリアルタイムに収集し、サイバー空間上で横断的・高速に統合・利活用し、個別と全体の最適解を計算し、機器の制御や、人々の行動変容に結び付けていくことが必要となります。
NTTでは、IOWN構想のオールフォトニクス・ネットワークやデジタルツインコンピューティング(3)、およびその他の技術を活用し、サイバー空間上の大規模かつ複雑な演算処理、エネルギーや時間の制約を最小限に抑えたうえでの多種多様なデータのリアルタイムな収集・フィードバックを実現し、社会課題の解決に資するサービスの構築をめざしています。

モビリティ・街の最適化に関する現在のNTTグループの取り組み

NTT グループでは、「多様な交通を組み合わせ、エンドエンドで個別・全体最適な移動を提供する」というビジョンを掲げ、モビリティのDXによるさまざまな社会課題の解決や新たな価値創造をめざし、さらに、モビリティを含む幅広いな分野のDXを通じたスマートシティ、街全体の最適化をめざしています。
今回の特集では、図2に示す、モビリティ・街のDXに向けた、NTTグループの各取り組みとIOWN時代に向けた展望等を紹介します。
(1) マルチモーダルMaaSを支えるオープンなMaaSプラットフォーム
少子高齢化や地球環境問題などの社会問題から将来の公共交通についてもそのあり方を考え、公共交通や周辺サービスを統合したマルチモーダルMaaS(Mobility as a Service)を支えるオープンなMaaSプラットフォームの取り組みを紹介します。
(2) マルチモーダルMaaSを支える二次交通の取り組み
生活交通・観光交通にて、深刻な課題となっている二次交通(ファーストワンマイル・ラストワンマイル)の公共交通の再生に向けた、サステナブルな地域社会・スマートシティの実現するAIや異業種連携を活用したNTTドコモの取り組みを紹介します。
(3) モビリティ領域での4Dデジタル基盤TMの活用について
ヒト・モノ・コトの多種多様なセンシングデータをリアルタイムに収集し、「緯度・経度・高度・時刻」の4次元の情報を高い精度で統合させ、多様な産業基盤の未来予測に資するデータを提供する「4Dデジタル基盤TM」を活用した、交通の整流化に向けた取り組みを紹介します。
(4) コネクティッドカー分野の技術開発・検証について
クルマから得られるビッグデータを活用することによって、新たなモビリティサービスの提供に必要となる技術の研究開発の取り組みとして、トヨタ自動車株式会社とのコネクティッドカー分野での協業について紹介します。
(5) コネクティッドカー協調領域・交通環境情報の活用
来たる自動運転社会で必要とされるインフラ協調領域での社会基盤づくりに向けた交通環境情報ポータルおよびデータプラットフォームアーキテクチャに関するNTTデータの取り組みを紹介します。
(6) 「街づくりDTC」によるデータ駆動・連鎖型のスマートシティ
街全体の最適化を実現するために、街で提供されるサービス単位で環境・モノ・人をとらえ、デジタルツインと、それらを分野横断で連鎖させる機能であるDTCを実現することで、新たな価値提供をめざした「街づくりDTC」の取り組みを紹介します。

図2 モビリティを中心とした街全体の最適化の取り組み

今後の展開

今回は、モビリティおよび街全体の最適化につながる現在の取り組みと将来のIOWN時代の展開を紹介しました。
ICTの目覚ましい発展と、NTTの、そしてパートナーの皆様の技術・アセットを活用することで、技術的には多岐にわたるサービスの構築が可能となりつつあります。
一方でこのようなサービスの社会実装に向けては、個人情報保護やセキュリティの観点、サイバー・フィジカル空間の融合によるコンピュータシステムでの未来予測・行動変容に伴う責任所在、法制度、社会受容性、また経済性など、さまざまな観点から多面的に検討する必要があります。
NTTは、このようなさまざまなチャレンジについても目を向けながら、パートナーの皆様とともに、ICTによる豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。

■参考文献

(1) https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
(2) https://www.rd.ntt/iown
(3) https://www.rd.ntt/iown/0003.html
(4) https://www.rd.ntt/iown/0002.html

(上段左から)三橋 慎/三輪 紀元
(下段左から)深田 聡/日高 浩太

私たちは「移動」に着目し、さまざまな取り組みを行っています。移動、そしてそこからうまれる交流や体験が、人類の感性や知的好奇心を磨き、暮らしや社会をより良く変えるイノベーションが起きてきたと信じています。世界的な感染症流行という未曽有の危機の今こそ、皆様との共創による“移動”のイノベーションを追求したいと考えています。

問い合わせ先

NTT研究企画部門
プロデュース担当
E-mail  contact_mobilityp@hco.ntt.co.jp