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トップインタビュー

自ら始める、共に高める、社会に応える

新型コロナウイルス感染拡大により劇的に変化した社会において、デジタルトランスフォーメーション(DX)は一気に加速しています。創立20周年を迎えたNTTコミュニケーションズは組織を再編成し、国内外のお客さまに安心・安全なデータ利活用の実現への貢献をめざします。「3S(Simple、 Smart、 Speedy)+S(Secure)」 をコンセプトにデータ社会への貢献とデータ利活用、IOWN構想の実現に資する技術開発、仕組みづくりに挑む、トップとしての意気込みや哲学を菅原英宗NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長に伺いました。

NTTコミュニケーションズ
代表取締役副社長
菅原 英宗

PROFILE

1987年日本電信電話入社。2016年NTTコミュニケーションズ取締役、2018年NTTコムソリューションズ代表取締役社長、2019年NTTコミュニケーションズ代表取締役常務取締役を経て、 2020年6月より現職。

深化と探索を社全体で実践できる企業へと成長

副社長としてどのようにビジネスに臨まれていますか。

社員も、お客さまも、パートナーもワクワクするような、そんな会社になりたいと考えています。私たちの技術を活かして価値創造し、ステークホルダすべてがワクワクする未来を生み出したいです。そして、深化と探索を社全体で実践できる企業へと成長し、社会貢献へつなげていきたいと考えています。
2019年7月、NTTコミュニケーションズの海外事業部門、Dimension Data、NTTセキュリティ等を統合し、NTT Ltd.が営業を開始、NTTコミュニケーションズはNTT Ltd.と国内外をシームレスに連携しながら日本のお客さまのグローバルビジネスにしっかりと応えていくこととなりました。
一方、国内ではデータ利活用、デジタル化、データドリブンといったキーワードの下、お客さまの経営や事業が大きな変革期を迎え、 デジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されるようになりました。こうした動向に3S+Sで対応していくために、2020年4月、「業界別ソリューション提供体制」と「プラットフォームサービス提供体制」を軸とした組織の再編を実施しました。
私はこの新しい体制において、プラットフォームサービス、技術イノベーション、情報セキュリティ、DXを担当しています。

3S+Sとは何でしょうか。

「3S(Simple、 Smart、 Speedy)+S(Secure)」 は、他社よりもシンプルでよりスマートなサービスやソリューションをお客さまのスピード感でさらにセキュアにお届けするというコンセプトで、Smart World実現に向けた取り組みを加速するために設定しました。このコンセプトの下、私たちはOne Teamとして次の4つの主要組織を軸にビジネスを展開しています。
ビジネスソリューション本部では、Smart Worldの実現と、お客さまのDXを支援するため、金融、公共、製造、流通、外資/ITサービス業界を中心とした業界別のコンサルティング型営業により、お客さまの事業、業界、社会のニーズにマッチした最適なソリューションを提供しています。ここにデータ利活用を軸に、お客さまやパートナーと一緒に新たな世界を想像するSmart World推進室を配置しました。教育や製造業等各領域のデータが有機的に利活用され、社会課題解決へつながるように取り組んでいます。2020年度は200人体制で本格的に活動を開始して順次新たな領域への拡大を予定しています。また、ビジネスソリューション本部はお客さまにもっとも近い距離にいる「真のパートナー」として、私たちのケイパビリティを最大化し、B2B2X拡大に向けてもお客さまや他のNTTグループ企業との協業を推進しています。
プラットフォームサービス本部では、私たちのコアコンピタンスであるネットワークやデータセンタにさらなる価値を加え、デジタル社会に求められる安心・安全なサービスの開発と提供を担います。スマートデータプラットフォーム(SDPF)では、データの収集、接続、蓄積、分析といった機能の充実を図っていきますが、特にゼロトラスト型のSASE(Secure Access Service Edge)モデルの導入やローカル5Gなど、アクセス関連のサービスを開発しています。またオペレーションのサービス化とIT/OTセキュリティ強化を図り、これらをマネージドサービスとしてワンストップで提供していく考えです。UX(User Experience)の視点での開発を進めるためにも、Smart WorldとSDPFを両輪で回す仕組みとマーケットインの発想が大切です。
イノベーションセンターでは、技術をベースにこれまでの事業ドメインにとらわれない新たな価値や世界観を創出します。技術戦略、プロデュース、テクノロジ、デザインの4部門が5年、10年先の未来を見据えてオープンイノベーションで新規事業を創出・推進します。ここにはビジネスプランナー、デジタルエンジニア、デザイナー等200名が集い、CoE(Center of Excellence)として、先にお話ししたビジネスソリューション本部とプラットフォームサービス本部と連携を図りながらお客さまへの提案・提供をサポートします。また、この他パートナーやお客さまと共にまだ⾒ぬワクワクする未来を一緒に考えつくるオープンイノベーションやC4BASEという共創コミュニティの場の提供なども進めています。
そして、デジタル改革推進部は自らのDXによる成功事例・データドリブン経営のノウハウ等を提供します。データ基盤の整備や、データサイエンティストのCoEとセキュリティのCoEによる、データドリブンマネジメントの実現やワークスタイル改革、業務効率化・生産性向上に臨みます。Smart Worldの実現にはDXを社会全体に推進しなくてはなりません。私たちのこうした取り組みを「ショーケース化」することは、DXを浸透させ、ひいては社会貢献につながると考えています。
新型コロナウイルスの感染拡大により社会は一変しましたが、私たちはニューノーマルな社会の期待に応えるべく、共に「頑張ろう」と皆で取り組んでいます。

社員が「頑張れる」場所を整える

「頑張ろう」という言葉の裏側には大きな責任が伴うと思います。「頑張ろう」にはどんな思いが込められているのでしょうか。

難しい質問ですね。「頑張ろう」というのは確かに一言です。でも、私自身が頑張らないと、皆さんには頑張っていただけません。また、社員の立場では解決が難しいことでも、私のようなマネジメントの立場なら解決できることもあります。そして大切なことは、マネジメントの立場が頑張ることで皆さんに貢献できることの1つは、社員が頑張れるように環境を整えていくことなのだと考えます。昨年、私たちは会社創立20周年を迎え、これを機に「自ら始める、共に高める、社会に応える」ことを信条として掲げました。立場に関係なく、頑張れる(チャレンジできる)こと、それぞれの立場で頑張る(チャレンジする)という組織としての文化を醸成していきたいです。
それから、自ら新しいチャレンジをしながらお客さまのチャレンジを支えていきたいと考えています。併せて、先駆的な取り組みも時代の流れを読むこともどちらも大切な視点ですから、お客さまのチャレンジを支えていくには、先駆的になりすぎてもいけないし、支える側に徹してもいけません。非常に難しいことではありますが、バランスをとりながら進めていきたいと思います。私たちの組織なら実現できます。
先駆的な取り組みという意味では、研究所の新しい基礎的な研究・技術開発の取り組みがあります。研究所には先駆的な取り組みをしていただきながら、時代の流れを先読みするために第一線の現場の声を聞いていただきたいと考えています。最先端の営業と最先端の研究者が連携したら向かうところ敵なしです。
私はNTTの中で衛星通信事業に携わっていたこともあり、NTTの研究所とは古くから付き合いがあり、一緒に人工衛星開発・打ち上げを手掛けていたこともあります。それから、NTTレゾナントの創業にも携わりました。創業当時は研究所から出向してきた約200人とともに働いていました。こうした経験もあって、事業において研究所のリソースを活用できることがいかに恵まれているかはよく理解しています。これまで研究所にすべてお任せだった部分も役割分担して、研究者の皆さんも頑張れるように、私たちがお客さまに研究成果を責任もって届けたいと考えています。しっかりと自らの才能を活かし、新しい何かを生み出していただきたいと思います。また、先ほどご紹介したイノベーションセンターに配属した社員が皆さんの生み出した成果を見極め、活用できるような体制を整えて伴走します。

研究開発部門に大きな期待を寄せていらっしゃるのですね。

世界の最先端を行く基礎研究からその応用・実用化に至るまで兼ね備えたNTTの研究所はありがたい存在です。その成果を活用してサービス等に昇華させることで、世の中に貢献していくことが、その恩恵に応えることだと思います。その先を行く話として、お客さまと研究レベルでの協業というのも考えていく必要があります。そのためにも、積極的に研究所とディスカッションしていきたいと思います。最近気になるキーワードとしては5Gのクラウド化、量子暗号化などです。また、研究所技術ではデータ利活用時に必要となるセキュリティ技術、特にゼロトラスト化などにも興味があり、イノベーションセンターでも取り組んでいます。
こうした流れの中のトピックとして、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想実現に向けて研究所と連携していくIOWN推進PTをイノベーションセンター内につくりました。プロジェクトでは、IOWN構想の中でオールフォトニックネットワークとオーバーレイソリューションを早期に実現することを意識して、まずデータセンタ内のネットワークへの適用を見込んでいます。そして、この実現に向けた活動の中で、研究所と連携して、武蔵野データセンタにもIOWN技術を使ったショーケースもつくりたいです。
その他のトピックとしては、将来到来するであろう宇宙の時代に向け、NTT宇宙環境エネルギー研究所とも連携して、宇宙ビジネスを模索していきたいです。
IOWN構想のコグニティブファウンデーションを実現していくためには、NTTグループ内における技術の共通化、アーキテクチャの共有化は重要で、これによりお客さまにワンストップでサービス提供できる基盤を整えることができます。逆に共通化に向けてIOWNがいいターゲットであり、研究所と連携してこれを推進していきたいと考えています。

一歩前へ、一歩先へ、一歩外へ

最後に副社長が仕事をするうえで大切にされてきたことを教えてください。

「一歩前へ、一歩先へ、一歩外へ」という言葉を大切にしています。個人でも組織でも同じことで、一歩前、先、外へ行くと見える世界は違います。その違いを経験すると、違う発想、違う行動が生まれてきます。しかし、その一歩が出ないことも、出られないこともたくさんあります。 だからこそ、私はあえてこの言葉を大切にしています。
これまで、判断ミスや失敗をして、一歩出ておけばよかったと後悔したこともあります。さらに、その失敗が後まで響き、他の人に迷惑をかけてしまい、申し訳なかったと思うこともあります。覚悟が足りなかったと思うこともあります。こうした中には、世界的な大きな事件や出来事、自分の判断の及ばない物事の影響があることもあります。一方で、社会の流れや時代の潮目を読むことは大事ですが、十分に備えていても良い結果が得られないときもあります。だからこそ、自分を信じて一歩出ることが大切になると考えているのです。
失敗してもそこには必ず学びがあります。経験を教訓として、次につなげていくことを考えることが大事なのです。先般、不正アクセスを受け、お客さまをはじめとして皆様にご迷惑をお掛けした件については、万全を期していた「つもり」が招いた事象だったと反省していますが、この原因究明から対処等において、社員の活躍に助けられた点が多く、また社員のスキルの高さも再認識しました。そして多くの反省と共に教訓を得ることができました。このときの教訓を活かし、当社の財産でもある社員のスキル、パワーにより、お客さまに貢献していき、そして、お客さまやパートナーがワクワクするような会社に成長していきたいと考えています。そのためにも、まずは社員がワクワクしながら活躍する、魅力を持った会社でありたいです。
(インタビュー:外川智恵/撮影:大野真也)
※インタビューはマスク着用のうえ、ソーシャルディスタンシングを保って行われました。

インタビューを終えて

「こうして改めて質問されると自分を再認識するものですね」インタビューを一通り終えて、写真撮影の準備が整うまで菅原副社長とお話ししていたときのことです。すでに、十分なほど私たちの質問にはお答えくださったのですが、副社長は改めて失敗談についてお話をくださいました。しかし、そこに悲壮感はありません。失敗から何を得てどうつなげていきたいと考えているか、そして、私たちを励ますかのように「自分の力の及ばないことで失敗することもある」とおっしゃるのです。福島県出身の菅原副社長は、連続テレビ小説という番組で放映中の「エール」というドラマにも大いに共感されることもあるとか。こんなふうにさりげなく私たちにもエールを送ってくださり、非常に温和な方という前評判と呼応するように、温かくインタビューを締めくくってくださいました。そんな菅原副社長のご趣味はゴルフ。写真撮影をする際、「重心を足の裏においてください」というスタッフの声に反応し、スイングして和ませてくださり、愛犬のお話では「(愛犬にとって)ご主人様は妻で、私とごん(愛犬の名前)は同列なんですよ」と笑わせてくださいました。ご趣味をさらに伺うと、日課の散歩に週末のラーメンの食べ歩きと、とても和やかに日々を送るご様子をお話しくださる一方で、技術や研究開発のイベントにはすべて参加して、熱心に開発者とお話をしていらっしゃると言います。穏やかな語りと笑顔の下に隠された熱い思いと、目の前に起こるすべてのことを巧みに使って最高の今をつくり上げる技を見せていただいたひとときでした。