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グループ企業探訪

第229回 NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社

プロフェッショナル集団によるデータ解析・応用ビジネスのトップランナー

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは、ビッグデータ時代のデジタルマーケティング会社として設立された会社だ。多くのプロフェッショナル人材を擁し、成長市場を見つけてそこに身を置くという戦略で、トップランナーとして走り続けてきた同社の塚本良江社長に話を伺った。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション 塚本良江社長

成長市場のグローバル企業との 戦略的提携で事業拡大

◆設立の背景と目的について教えてください。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは、NTTナビスペース(データベースマーケティング会社)、デジタルフォレスト(データ解析会社)、NTTコミュニケーションズのソーシャルマーケティング事業、NTTレゾナントのリサーチ事業を統合し、ビッグデータ時代のデジタルマーケティング会社として、2012年10月1日に設立されました。
これまでの8年間、デジタルマーケティング(デジマ)事業を展開する中で、デジマの領域を超えて拡大したのが、データアナリティクス事業とメッセージサービス事業です。第2、第3の事業の柱となっています。
データアナリティクス事業は、当初は顧客データの分析が主でしたが、最近では、製造業などでのセンサデータや、品質管理のためのデータ分析なども行うようになりました。
メッセージサービス事業は、デジマでさまざまな顧客接点の構築・運用をさせていただく中でも、NTT(電話会社)だったからか、企業向けのスマホのショートメッセージ(SMS)送信が特に大きく伸び、第3の事業の柱となったものです。
こうしたビジネス領域の拡大に伴い、事業規模は会社設立当時の約3倍になりました。3本の事業の柱を持つ「NTTコム オンライン」として、この秋から、新コーポレートブランディングを展開しています。

◆具体的にどのようなサービスを提供しているのでしょうか。

デジタルマーケティング事業においては、「顧客データの統合・管理」、「データの分析と活用のコンサル/支援」、マーケティング・オートメーション等を活用した「カスタマーエクスペリエンスの向上支援」、Web、ソーシャルメディア、SMSといった「顧客接点構築・運営」の各ソリューションをお客さまのご要望に合わせワンストップで提供しています。提供にあたっては、SAP、Google Analytics、Salesforce、NPX Pro、Oracle、HeartCoreなどのマーケティングテクノロジの導入が必要となるので、そのインプリおよび運用の伴走も行っています。
データ&アナリティクス事業では、会社創設以来ご提供しているマーケティング・アナリティクスの領域(パネル調査・分析、NPS®調査・分析、ソーシャルメディア分析等)に加え、昨年度から、データ解析とデータ統合のグローバルリーダーであるTIBCO社との提携を開始しました。あらゆるデータの収集・統合・管理から解析・可視化/共有・予知/検知までをワンプラットフォームで提供しています。製造、エネルギー、金融、航空/交通、医療などのミッションクリティカルな領域で、グローバルビジネスを展開する大手企業で多く活用いただいています。
ビジネスメッセージ・サービス事業では、企業向けのSMS送信サービス「空電プッシュ」が、5年連続で国内市場トップシェアとなりました。金融機関での二要素認証での活用などを中心に使われています。昨年から開始した「ビデオトーク」は、SMSに送られたURLをクリックするだけで、企業とそのお客さまがすぐにビデオ通話を始められるサービスです。リモートワークの急速な普及により多くの問合せをいただいています。
こうした事業は、自社での内製開発によるプラットフォーム構築・運用に加え、グローバルで最先端のテクノロジやメソッドを持つ企業と提携することで推進してきました。米国TIBCO社との独占業務提携や、米国Gigya社との「GIGYA」(現SAP-CDC)との独占業務提携、米国サトメトリックス社とのNPS®での独占業務提携などです。
自社の開発力を強化するために、各種の認定資格者を積極的に増やしています。AWS ではAPNアドバンスト コンサルティングパートナーの認定もいただきました。

信頼の伴奏者となり企業の進化を支える

◆輝かしい実績ですね。何かポジティブな循環があるように思えますが。

戦略的提携という点において、最初はグローバル市場の中でもこれから大きくなりそうだというテクノロジに、早い段階から目をつけて対応してきました。いくつもの提携を行い、実績を上げることで、人脈の広がりや評判により、相手から提携に関するオファーをいただくケースも増えました。
一方で、こうした戦略も社員なくしては実績にはつながりません。社員の大半がデジタルマーケター、データサイエンティスト、ディベロッパー、データエンジニアといったプロフェッショナルな人材・スペシャリストです。「SAP Partner最優秀個人賞」を受賞する社員などもおり、こうした社員が、サービス、ソリューション、プロダクトをお客さまに最適なかたちで届けてくれるのです。また私たちは、カスタマーサクセスが重要だと思っています。テクノロジやサービスを導入するだけでなく、それらを活用して、お客さまがビジネス課題を解決し、成功する(=カスタマーサクセス)まで伴走する。地道なご支援(=カスタマーサクセス活動)が信頼関係につながると信じています。これからも徹底的に現場に寄り添うプロフェッショナル集団として、信頼の伴奏者となり企業の進化を支えていきたいです。
働き方改革やテレワークといった言葉を頻繁に見かけるようになりましたが、当社では新型コロナウイルス対策以前からテレワークを推進しています。そして、多様な才能を持った社員が最大限のパフォーマンスで活躍できるよう、好きな時間に好きな場所で働くことができる、裁量労働制を導入しており、ほとんどの社員がその対象となっています。また、プロフェッショナルなスキルに関する育成にも力を入れています。こうしたかたちで、人の才能が最大限に開花するような仕組み、制度、文化、環境をつくることが、信頼の伴奏者となるための重要な役割を果たしているのです。

◆今後の事業展開や抱負についてお聞かせください。

当社は会社設立以来、成長市場を見つけてそこに身を置くという戦略のもと、3本の事業でビジネス展開することができるまでになりました。この領域はまだ成長分野です。市場と一緒に成長していきたいと思います。

担当者に聞く

SMSで必ずつながる、スマホのオンライン顧客応対、オンライン営業ビデオコミュニケーションサービス「ビデオトーク」

ビジネスメッセージ・サービス部
テクニカルプロダクトマネージャー
岩水 堅治 さん

◆担当されている業務について教えてください。

「ビデオトーク powered by 空電」(以下、「ビデオトーク」)という1対1の顧客応対時のビデオコミュニケーションを可能とするサービスの企画・開発から普及・啓蒙、営業支援活動を担当しています。
当部門の主力商材であるSMS一斉配信サービス「空電(からでん)プッシュ」というサービスがあります。SMSの到達率・開封率が高いという特徴を利用したプッシュ型のメッセージングサービスであり、ビジネスメッセージサービス・プラットフォームとして位置付けています。「ビデオトーク」は、この「空電プッシュ」とNTTコミュケーションズが提供するWebRTCサービス基盤「SkyWay」を活用して、企業とその企業の顧客との1対1応対時に有効なビデオコミュニケーションを提供するサービスで、2019年2月にサービスを開始しました。
企業のオペレーターがビデオコミュニケーションを必要とする顧客にビデオ通話専用のURLが記載されたSMSメッセージを送ります。SMSメッセージを受け取った顧客は、SMSに記載されたURLをクリックするだけで、オペレーターと即時にビデオコミュニケーションが開始されます。顧客側はスマートフォンにビデオ通話専用のアプリケーションをインストールする必要もなく、また、事前にユーザ登録やアカウント交換などの手間が発生しません。そのため、オペレーターは初見の顧客でもあっても「いま・すぐビデオ通話」が可能となるサービスとなっています。スマートフォンで撮った写真をオペレーター側に即時に送ることや、テキストチャット、画面共有、通話状況の録画もでき、1対1のリアルタイムコミュニケーションが実現可能です。

◆手軽に使えそうですね。どのような利用シーンがありますか。

当初はコンタクトセンターにおける利用を想定していました。
例えば、自動車保険会社の場合、コンタクトセンターでは事故現場の状況確認において電話では難しかったヒアリングがビデオコミュニケーションにより視覚的に確認できるようになり、迅速・正確な対応が可能になります。IT機器や家電の場合、設置場所の状況が映像にて把握できれば装置の動作状況の確認や操作説明を的確に行うことが可能となります。また、不動産関連では、賃貸物件の紹介・内覧、退去時の物件確認などにも活用できます。
具体的な事例として、顧客の高級家具を保管するための運搬・倉庫業を営んでいる、プレミアムストレージサービス株式会社様の事例があります。作業手順の確認や見積り作成のため顧客宅(現地)への訪問が必要でした。また、現地訪問ができない遠隔地の場合は、事前の確認のために顧客が撮影した写真を送付いただいていましたが、情報が不足することが多いため、何度も写真撮影・送付をお願いしたり、場合によってはご依頼をお断りせざるを得ないケースが少なくなかったそうです。このような課題を解決するために「ビデオトーク」を採用いただきました。アプリのインストールや事前のユーザ登録などの手間もなく簡単な操作でビデオ通話が可能なため顧客にはおおむね好評で、企業側も手軽にテレビ電話で遠隔見積もりが可能となったため受注率が約2割向上したそうです。
また、ある消防署では、救急車が到着するまでの間の、心臓マッサージやAED使用等の応急処置の遠隔指示に使用することにより生存率の向上を図るという期待を込めて「ビデオトーク」を採用され、救急以外にも利用拡大を検討されているそうです。最近は、リモート接客、リモート営業用途でご採用いただくことが多くなっております。

◆ご苦労された点を伺えますか。

「ビデオトーク」は、企業対顧客(B2C)における1対1の対面での顧客応対をリモートで実施することを想定して開発したのですが、「ビデオ通話」=「Web会議」と想定されることが多々ありました。「ビデオトーク」のメリットを説明するにも、「Web会議」を想定されると効果やサービスの強みがうまく伝わらないことがありました。また、世の中に企業対顧客(B2C)のビデオ通話利用の事例がほとんどないため、導入の意思決定までに至ることが困難でした。利用シーンのメインターゲットであるコンタクトセンターにおいては、次世代コンタクトセンター構想の中でビデオソリューションの活用を挙げておられる企業も多く、ビデオ通話の利用は理解してくれるのですが、効果を数値で示すことが難しいうえに業務フローの変更を伴うこともあり、採用に至るケースは多くありませんでした。
ところが、2020年に入り、半年間で前年の6倍ほどの新規のお客さまにご採用いただいております。これは、NTTコミュニケーションズグループの法人営業からお客さま紹介等の支援をいただいたところも大きいのですが、新型コロナウイルス対策により、企業のセールスパーソンが顧客と対面接触できなかったり、限定的になっているケースで「ビデオトーク」に着目された結果です。特に個人顧客を多く抱える生損保系の営業では接触手段にお困りのところ、「ビデオトーク」をご採用され、ビデオ通話を利用した顧客接点活動を実践されている事例が多くなっております。

◆今後の展望について教えてください。

機能的・技術的な面では、多言語対応や自動音声認識、さらに自動翻訳機能などを追加していきたいと思います。今後、訪日・在日外国人が増えることを想定し、こうした方々をターゲットとしたビジネスが数多く登場してくると考えております。 AIと連携した画像解析などにもチャレンジしたいです。
一方、新型コロナウイルス対策がきっかけとなり、Web会議をはじめとするビデオ通話の利便性を多くの人が実感したと思います。今後、デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透が加速していくに従い、ビデオコミュニケーションが当たり前のように使われるようになると思います。こうした動きの中、私たちが想定していない利用シーンも登場していきます。新たな利用シーンを想定した機能実装を考えるばかりではなく、世の中の動きをいち早くキャッチし、業務課題を解決できるようお客さまに寄り添ったサービスとして展開していき、「ビデオトーク」のさらなる普及に努めていきたいと思います。

ア・ラ・カルト

■帰宅訓練

東日本大震災の際、個人で単独帰宅しようとしてリタイアした人が多いことが分かりました。一緒に行動できる「帰宅方面グループ」をつくり、顔見知りになるためにも実際に一緒に帰宅する訓練をしようというのが始まったきっかけです(写真1)。
オフィスに「スタート地点」を設け、チームごとに地図と水を受け取り「チェックイン」を済ませて、社長から激励を受けながらゴールに向けて出発です。毎年の定例行事なのですが、新型コロナウイルス対策で、2020年は「帰宅方面グループ」編成を継続し、帰宅訓練は見合わせています。
転入者など初めての参加者からは、「本当に歩くのか?」という反応だったようですが、実際に参加すると、組織横断のコミュニケーションで盛り上がり、ゴール後は自然発生的にオフ会が開催されたとのことです。中には、スタート直後に道に迷い、ゴールまでの道順はさておき、オフィス付近の地理に相当詳しくなったグループもあるようです。

写真1

■All Hands

各専門分野で活躍している約200名の社員全員が一堂に会して、事業の方向性合わせと一体感醸成を目的に恒例ミーティング“All Hands”を四半期ごとに行っています(写真2)。社員が楽しく参加できるよう、懇親会のフード・ドリンクにも趣向を凝らし、チームごとに分かれた謎解き合戦やクイズ大会等、お祭り気分で盛り上げる企画となっているようです。
2020年度は、新型コロナウイルス対策によりフルリモートで実施しています。単なるWebミーティングではなく、あえてプレゼンテーターとモニタ画面をカメラ撮影してライブ感を出すなどの工夫をされています。懇親会ができない寂しさもある一方で、オンラインミーティングという場に社員全員が参加していることの新鮮さとともに、リアルとはまた違った「つながり感」を持った社員も多くいるようです。

写真2