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from NTT東日本

IoTを活用した通信ビルのスマート化 ―― 設備保全業務のデジタルトランスフォーメーション推進

NTT東日本では、災害に強い設備づくりや有事に備えた人材育成など、サービス品質を向上するための取り組みをこれまで行ってきました。近年、さらに業務を高品質かつ効率的に行えるよう、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、RPA(Robotic Process Automation)などの最新技術を取り入れ、「デジタルトランスフォーメーション(DX) 」の推進に取り組んでいます。これまで社内業務へのDXの取り組みとして、RPAを用いたオペレーション業務の自動化やAIの画像識別を用いた点検業務の効率化などに取り組んできました。ここではIoTデバイスを活用した通信ビルのスマート化による設備保全業務へのDX実現に向けた取り組みを紹介します。

背 景

NTT東日本では、東日本エリア(17都道県域)に約3000の通信ビルを所有しており、各通信ビルに設置した通信設備により広域にわたりサービスを提供しています。通信ビルのうち無人ビル(保守作業員が常駐していないビル)(図1)が大部分を占めています。そのため、設備保全業務が発生するたびに現地の通信ビルへ保守作業員を派遣し業務を実施していました。台風などの自然災害が発生した際は、通信設備への影響を確認するために、被災エリアすべての無人ビルへ保守作業員を派遣し設備の点検を行っており、大きな負担となっていました。
このような課題を踏まえ、遠隔地から無人ビルの状況をIoT(Internet of Things)デバイスにより把握し、設備の状況確認や点検の優先度を判断する取り組みを、2018年9月から開始しました(図2)。
2019年4月からは東北エリアで運用を開始しており、現在、東北4県の40ビルへ配備が完了しています。また、2020年度より導入拠点を東日本全体で約300ビルまで拡大する予定です。

図1 無人ビル(BOXタイプ)の外観

図2 IoTを活用した設備保全業務のDXイメージ

IoTを活用した設備保全業務

通信ビルにおける設備保全業務は主に下記の3つがあります。
① 建物管理系業務:通信ビル自体の定期点検、メンテナンス
② 通信設備系業務:通信設備の増設、減設、故障修理
③ 災害発生時等の緊急対応業務:被害状況の確認や浸水対策、停電時の対応、復旧対応
これらの業務に対し、IoTセンサデバイス(浸水検知、温湿度検知)やカメラを用いてリアルタイムに遠隔地の状況を確認できるだけでなく、空調、照明、施錠の遠隔操作を実施することにより現地へ駆けつけることなく作業を完結させる仕組みの実現をめざしています(図3)。
例えば、定期点検業務では、主に目視による点検と空調、照明設備の点検を実施します。これは、屋内外に設置したカメラ映像による確認と、空調、照明設備の遠隔操作による動作確認により遠隔地から点検を行うことが可能になります。
通信ビルによっては保全業務従事者が常駐しているビルから片道2~3時間かけて移動が必要となるビルも一部存在します。これまでの業務形態で課題となっていた現地への駆けつけ時間を大幅に減らすことで、サービス品質の向上や災害時の作業効率化へとつながっていきます。

図3 無人ビル(BOXタイプ)の実例

システム開発について

通信ビルに配備したIoTデバイスからの情報の可視化および制御を実現するシステムはすべて内製で作成しています(図4)。
IoTデバイスは多種多様な製品が市場に存在するため、さまざまな要望へ対応するには汎用的にデバイス接続が可能である点がポイントとなります。本システムは内製にて開発を実施することにより、ベンダロックインを回避し、汎用的にデバイス接続を可能としています。
一方、内製でシステム開発を行った場合、システム設定変更や維持管理を社内で実施していく必要があり、技術継承の課題や開発を行った技術者に稼働が集中し運用が困難になることが懸念されます。
そのため、システムの設定変更(新規拠点へのIoTデバイス導入時の設定等)をシステム利用者がGUI(Graphical User Interface)操作で設定内容を変更可能な機能を備えており、極力スキルレスで維持管理を行えるような工夫を行いました。

図4 センサ情報可視化画面

今後の展開

2020年度よりIoTデバイス導入ビルを約300ビルまで拡大し、効果検証と運用面での課題を抽出していき、最終的には東日本全域への展開をめざしています。
今後は通信ビルに対する保全業務だけでなく、電柱、マンホール、とう道など、NTT東日本が所有しているあらゆる設備の保全業務へ拡大を検討しています。
IoTデバイスによって収集したデータに対しビッグデータ解析を行い、故障の予知や監視自動化をめざし、さらなる品質向上および業務効率化をめざしていきたいと考えています。
最終的には社内業務へIoT技術の適用で得られたノウハウを活かし、開発メンバ(図5)を中心に社外向けサービス開発も検討しており、NTT東日本がめざす地域創生ビジネスへと展開していきたいと考えています。

図5 システム開発メンバ

問い合わせ先

NTT東日本
ネットワーク事業推進本部
高度化推進部 技術戦略部門 技術戦略担当
TEL 03-5359-5115
E-mail snm-usb-nwexp-wireless-p-gm@east.ntt.co.jp