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Focus on the News

東京大学とNTTによるゲノム情報を活用した新たな共同研究の開始

東京大学とNTT、およびNTTライフサイエンスは、東京大学医科学研究所で実施しているゲノム予防医学社会連携に関する共同研究の新たなフェーズとして、2020年10月より、企業従業員への参加者同意に基づく遺伝子検査の実施と健康診断データ等を掛け合わせた解析を行い、疾病リスクと生活習慣の関係性および発症抑制の解明をめざします。
長年にわたり蓄積された従業員健診データという世界的にも類を見ないビッグデータを有効活用する企業コホート研究により、日本ならではの新たな知見の創出に取り組み、1人ひとりに最適化されたヘルスケアの実現につなげ、人々の健康・幸せや産業活性化に貢献していきます。

■取り組みの内容

ヘルスケア分野においては、世界的な解析技術の進展等により、ゲノム情報等を踏まえた1人ひとりに最適化されたヘルスケアの実現が期待されています。
一方、疾患の発症には生活習慣も大きくかかわることが知られているものの、ゲノム情報、および生活習慣と疾患リスクの関係性、ならびに発症抑制については、いまだ研究の蓄積が不足していて、解明されていない領域が多く残されている状況にあります。
こうした中、NTTと東京大学医科学研究所では、2019年7月から「ゲノム予防医学社会連携研究部門」を設置し、ゲノム情報等を基に疾患リスク因子を解明するとともに、疾患予防に向けた望ましい行動や生活習慣を明らかにして、疾患予防法の社会実装につなげるための共同研究を進めています。またこれまでの研究成果を基に、NTTライフサイエンスでは、疾患リスクなど個人の体質を把握できる遺伝子検査を企業従業員向けに開始しています。
今回、共同研究の新たなフェーズとして、遺伝子検査で得られるゲノム情報に加えて、従業員の健康診断、生活習慣に関する履歴情報を、同意に基づいて集積、解析する新たな取り組みを開始します。本取り組みにより疾患リスク因子と発症抑制についての新たな知見の創出をめざしていく考えです。
また研究を通じて得られた新たな知見について社会実装を図っていくことにより、1人ひとりに最適化されたヘルスケアを実現し、企業の健康経営の推進や産業活性化、人々の健康・幸せに貢献していきます。

問い合わせ先

NTT広報室
E-mail ntt-cnr-ml@hco.ntt.co.jp
URL https://www.ntt.co.jp/news2020/2009/200928a.html

研究者紹介

ゲノム医学で社会と健康に貢献

平石 敦子
東京大学医科学研究所
ゲノム予防医学社会連携部門 特任研究員

個人のゲノム情報を解析し、医療を1人ひとりの体質に合わせてテーラーメイドしようとする試みが始まり、早くも10年以上が経過しました。網羅的な遺伝子型情報を用いて、病気のかかりやすさや薬物に対する反応との関連を解析する、ゲノムワイド関連解析(GWAS)という手法が始まり、世界中の研究者がこぞってGWASに大きく期待した当初から、私自身、多くの因子が複雑に関与している病気のメカニズムを解明できるかもしれないという希望に胸を躍らせ、見様見真似で原理や解析を学び、ゲノム医学の研究に従事してきました。
昨年、NTTと東京大学によるゲノム解析を用いた予防医学の共同研究が発足し、その一員として研究に従事できる機会をいただき、この10年間少しずつ温めてきた多くの研究シードが一気に現実のものとなりました。企業の健診データから収集した臨床情報および食生活、生活習慣、嗜好品利用などの情報と遺伝子型の関連を解析することにより、個人の生まれ持った体質に基づく「健康的な生活」の解明、また私の長年のテーマであった「女性のライフサイクルと健康」についての研究に着手できることとなり、この上ない喜びと手ごたえを感じています。研究にご協力いただく社員の皆様とともに、人々が末長く健やかに暮らし、働ける社会のためのゲノム医学研究に精進したいと思っています。

研究者紹介

生活習慣病予防の社会課題解決に向けて

麻野間 直樹
NTT物性科学基礎研究所 バイオメディカル情報科学研究センタ
総務部門 メディカル事業推進室

生活習慣病は、日本の死亡者数の約5割、国民医療費の約3割を占めるといわれており、その対策は重要な社会課題となっています。一方で生活習慣病の多くは、病気がかなり進行するまで自覚症状が現れないため、そうなる前に予防や治療というアクションを起こしにくいのが実情です。こうした中で、人間ドックや特定健診でメタボ判定となった人に対し、メタボの先にある生活習慣病にならないよう、いかにして行動変容させるか、という大きな研究課題がありました。
私たちはこれまでに、数年先の生活習慣病の発症確率を予測することができる、生活習慣病リスク予測技術を開発しており、健康診断データから自身の発症リスクが今どの程度か自覚できるようにしました。
そして今回、東京大学医科学研究所との共同研究の中で、私たちはスーパーヒーローの特性分析に取り組みます。スーパーヒーローは、遺伝子情報上は生活習慣病リスクが高いが、発症せずに健康維持している人のことを指しており、NTTライフサイエンスの是川幸士社長が提唱しているモデルです。遺伝子検査結果と健診結果のデータを分析して割り出した、このスーパーヒーロー特有の身体状況や行動の特性から、効果的な改善アドバイスが提供でき、予防のための行動変容や疾病リスク回避につながるものと期待しています。
私たちは、1人でも多くの人が生活習慣病にならずに長く健康でいられる仕組みづくりをめざして、この研究を推進していきたいと思います。