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from IOWN Global Forum

IOWN Global Forum 第4回年次会合と活動状況の報告

2024年4月23〜26日に、IOWN Global Forum(IOWN GF)は、カナダ・バンクーバーにて、第4回年次メンバー会合を開催しました。世界各国から約350名のメンバーが参加し、年間活動実績や計画、ユースケースや技術検討の活発な議論がなされました。4月25日には、IOWN GF主催の初めての一般公開イベントであるFUTURESも開催し、IOWN技術の重要性や展開について講演がありました。ここでは本会合の模様と合わせて最近の活動状況について報告します。

第4回年次メンバー会合(バンクーバー)

IOWN Global Forum(IOWN GF)では、毎年4月に全メンバー向けの年次総会を開催し、年間活動実績の共有や貢献メンバーへの表彰およびWorking Group(WG)/Task Force(TF)のミーティングを実施しています。このほか、10月にもメンバー会合を開催して進捗確認や次年度計画の議論を行っています。これら2回のメンバー会合に加えて、2回の技術検討ワークショップを実施しています。
今回、2024年4月23〜26日に、第4回となる年次メンバー会合をカナダ・バンクーバーにて開催しました。現地には世界14カ国、86の会員企業・組織から、210名の参加者を迎え(写真)、137名のオンライン参加者も加わって活発な議論がなされました。
オープニングセッションでは、President and Chairperson の川添雄彦NTT代表取締役副社長が、メンバーの努力への感謝とともに、最近の成果として、日米首脳会談におけるファクトシートへの記載、MWC 2024への参加、新メンバーの加入などについて述べ、さらなる展開とメンバーの協力の必要性について強調しました。
また、IOWN GFのディレクター5名について改選結果の発表があり、Rong-Ruey Lee氏(Chunghwa Telecommunication)、Giovanni Manto氏(Nokia)の2名が新たにBoD(Board of Directors)に加わることが発表されました。
続いて、CienaのSteve Alexander氏が基調講演「Faster、Closer and Greener: The IOWN All-Photonic Network」と題して、より速く、より近く、より環境に優しいコネクティビティに対する世界の高まるニーズにこたえるための、オールフォトニック・ネットワーク(APN)の必要性について講演されました。
さらに、IOWN GFのSteering Committee(SC)やWGの活動に顕著な貢献をしたメンバーへの年間表彰プログラムにおいて、以下の6名が表彰されました。
・久野浩氏(ソニーグループ):将来を見据えたユースケース、ベンチマークモデル、リファレンス実装、AIC-Interactive Live EntertainmentのPoCレポートおよび早期導入ユースケースへの貢献
・Lieven Levrau氏(Nokia):IOWN GF Vision 2030 White Paperの最新リリースで強調されたエネルギー効率テーマへの貢献
・村瀬友英氏(三菱ケミカル):CPS-Industry Managementの将来を見据えたユースケース、ベンチマークモデル、リファレンス実装およびPoCレポートへの貢献
・Christoph Schumacher氏(NTT):タスクフォースリーダーとしての卓越した貢献とIOWN Global Forum文書の質向上への貢献
・杉山秀次氏(Red Hat):CPS-Area ManagementユースケースのPoCレポートへの貢献
・山本浩司氏(NTT):2023年12月のITU CxOミーティングでのコミュニケーション、プロモーション、サポート体制確立による標準化に向けた活動への貢献
メンバーからのプレゼンテーションとして、KDDI、NEC、Rakuten Mobile、VIAVIの4社から発表が行われました。林通秋氏(KDDI)は、「Paving a Way Toward the Global Standard of APN」と題して、スマートで持続可能な未来を実現するためのAPNと標準化について講演しました。福井賢二氏(NEC)は、「Toward Accelerating Early Adoption Use Cases from the APN Controller Point of View」の発表で、早期導入ユースケースを促進する必要性を強調しました。Ayaz Bankapur氏(Rakuten Mobile)は、「Optimizing Optical Transport Networking with Adaptive Resources: An AI-Driven Approach」と題して、ユースケース、課題、楽天のテレコムAI戦略の検討課題に関して発表しました。Sameh Yamany氏(VIAVI Solutions)は、「Synergizing IOWN Objectives with Open RAN: Achieving Seamless Harmonization」として、Open RAN(Radio Access Network)に関する2030年のVIAVIのビジョンとIOWN GFにおける連携・支援について述べました。各発表に対して、聴講メンバーとの活発な質疑が行われ、今後の活動への組み込みが提案されました。
会合では、これらのプレゼンテーションのほかに、WG/TFでのワークショップ、分科会が行われました。金融サービス・インフラ、放送メディア遠隔制作、ファイバセンシング、データセンタ間接続とグリーンコンピューティング、6G、デジタルツイン・アプリケーションなど、最新のユースケース、業界へのインパクト、ビジネス適用に関するさまざまな議論が活発に行われました。
次回のメンバー会合は、2024年10月8〜11日に台湾・台北で開催されることが発表されました。

FUTURES:初の一般公開イベント

4月25日には、IOWN GF初の一般公開イベント「FUTURES - Powering Tomorrow with Photonics」を開催しました。このイベントでは、外部参加者を含む200人以上の会場参加者と70人以上のオンライン参加者が出席し、IOWN GFの活動、ビジョンと実績に関して対外的に発信を行うとともに、より広範な業界関係者が光技術をキーとして将来ビジョンを実現するための役割とビジネス機会についてオープンな議論を行う場となりました。
IOWN GFのリーダーシップメンバーから、光技術による持続可能な世界への変革に向けた活動、2030年ビジョンと現在の成果の紹介がありました。また、Linux FoundationのArpit Joshipura氏からの招待講演として、「IOWN and the Linux Foundation - Open Source Collaboration for Driving the Future of Communication Infrastructure」と題して、リエゾン関係を結んでいるLinux FoundationとIOWN GFが将来の通信基盤を担う技術開発においていかに連携を加速していくかについての講演がありました。
さらに、Rod Naphan氏(富士通)、Derrick Buckley氏(マイクロソフト)からの各社取り組みの紹介の後、パネルディスカッション「The Possibilities of IOWN Technologies」が行われ、Computer WeeklyのNetworking EditorであるJoe O’Halloran氏が司会を務め、Ciena、Ericsson、Nokia、Sonyからのパネリストが参加して、IOWN技術の可能性について、議論されました。

IOWN GFの活動状況

IOWN GFでは、IOWN技術の実装を促進し、「Vision to Reality」を実践するために、PoC (Proof of Concept) を外部活動としつつ、IOWN GFによる 「Recognized PoC」の認定を行うプログラムを開始しました。PoCチームは、IOWN GFが公開するPoCリファレンスに基づいて開発したPoCについて、PoCレポートをIOWN GFに提出します。対象分野の専門家による厳密な評価を経てIOWN GFが認定した「Recognized PoC」は、IOWN GFが発行するPoCリファレンスを参照し、IOWNベースの技術の実現、価値、パフォーマンスを実証するものです。2023年9月以降、8件のRecognized PoCが承認され、公開されています(1)
また、IOWN GFの対外的な活動として、2024年2月に開催されたMWC24において、IOWN GFとして初めて外部セッションを実施し、200名以上が参加しました。90分間のセッションにおいて、IOWN GFのEricsson、富士通、KDDI、Red Hat、SK Telecom、NTT各社のリーダーシップにより、スマートで持続可能な世界を創造するために、2030年までに重要な社会的・環境的課題に対処し、本質的かつ広範な次世代通信コンピューティング基盤を構築する技術ロードマップについて議論されました。また、技術パネルでは、IOWN技術の将来、IOWN GFの取り組み、これらの取り組みが通信業界をどのように変革するかについて議論されました。
さらに、IOWN技術の標準化に向けた取り組みとして、2023年12月5日、ITU-T CxO Roundtable会合において、川添副社長がIOWNによる国際コネクティビティの重要性について講演し、IOWN技術に基づいて、開発途上国を含む新しいネットワークをグローバルに展開するための標準化の必要性について述べました。会議参加者は、IOWN GFの価値と役割について確認し、連携の強化、ITU-Tによる国際標準の必要性が認識されました。
これらの活発な活動とともに、IOWN GFのメンバーは増加しています。過去12カ月で、AKKODiS、Googleのスポンサーメンバー2社を含め、AMD、ホンダ、NHK、TBS、パナソニック、東京海上日動、SOMPO、早稲田大学などの大手企業や大学等、29の企業・組織が新たに参画し、世界中の142の企業・組織が加入となりました。IOWN GFは、今後も新メンバーの加入を勧めるとともにメンバー間で連携した活動を加速していきます。

■参考文献
(1) https://iowngf.org/recognized-pocs/

問い合わせ先

NTT研究企画部門 IOWN推進室
E-mail iown-info@ntt.com

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