2025年8月号
from IOWN Global Forum
IOWN Global Forum アニュアルメンバミーティング(ストックホルム)と活動の報告
2025年4月22〜25日に、IOWN Global Forum(IOWN GF)は、スウェーデン・ストックホルムにて、IOWN GF設立から5周年を迎えるアニュアルメンバミーティングを開催しました。世界各国から約240名のメンバが参加し、これまでの5年間の活動実績を振り返りつつ、今後の5年間の活動に向けた計画やユースケース、技術検討について活発な議論がなされました。4月24日には、IOWN GF の一般公開イベントである「FUTURES」も併催され、IOWN技術の重要性や展開について講演がありました。ここでは本会合の模様と合わせて最近の活動状況について報告します。
IOWN GF 2025年アニュアルメンバミーティング(ストックホルム)開催報告
IOWN Global Forum(IOWN GF)では、毎年4月に全メンバ向けの年次会合を開催し、年間活動実績の共有や貢献メンバへの表彰およびSC(Steering Committee)/WG(Working Group)/TF(Task Force)のミーティングを実施しています。
今回開催された2025年アニュアルメンバミーティングは、IOWN GFの設立から5周年を記念する会合であることから、年間の活動の報告や計画だけでなく、これまでの5年間の活動実績を振り返りつつ、今後の5年間の活動方針について議論を行う大きな節目となる会合となりました。
現地には世界約60の会員企業・組織から、250名以上の参加者を迎え(写真1)、オンライン参加者も加わって活発な議論がなされました。
オープニングプレナリでは、President and Chairpersonの川添雄彦氏(NTT)がオープニングメッセージとして、IOWN GFの設立から5周年を迎えるにあたり、これまでの活動を振り返りつつ、フォーラムを支えてくださった方々のご尽力に対して感謝の意を述べました(写真2)。また、今後5年間に向けた取り組み方針として、これまでIOWNが実現をめざしている低消費電力、大容量、低遅延といった従来の3つの特性に加え、光格子時計ネットワークや量子コンピュータ、量子通信などの量子技術を取り入れた「Beyond Digital」によって新たな価値の実現をめざすことが示されました。
続いて基調講演では、スウェーデン国際開発協力・外国貿易担当副大臣のHåkan Jevrell氏が、次世代技術が進化し、地政学的な不確実性が持続し、産業界が新たな課題に直面する中、将来を見据えたビジネスの競争力を維持するためのシステムとソリューションの開発がますます重要になっていることについてスピーチを行いました。
また、IOWN GFのディレクタ5名について改選結果の発表があり、Eric Hardouin氏(Orange)、林通秋氏(KDDI)、水野晋吾氏(富士通)、Ralph Rodschat氏(Ciena)、Jefferson Wang 氏(Accenture)の5名の再選が発表されました。
さらに年間表彰プログラムにおいて、IOWN GF のSCやWG の活動に顕著な貢献をしたメンバへの表彰が行われました。特に2025年にMWC(Mobile World Congress)バルセロナ2025におけるIOWN GFブースと半日セッションでの卓越した貢献が評価され、Marketing Steering Committee(MSC)から4名が受賞しました。また、Technology and Use Case Working Group(TUCWG)から、金融業界向けサービスインフラストラクチャや、エネルギー効率のユースケース、All-Photonics Network(APN)・Data Centric Infrastructure(DCI)アーキテクチャ等の検討に対する卓越した貢献が評価され、6名が受賞しました。
メンバによるプレゼンテーションセッションでは、9つのプレゼンテーションが行われました。
Day2には、富士通のFrancois Moore氏が「Emerging Optical and Compute Services in the Era of AI & Compute as a Service」と題し、AI(人工知能)の新時代を先導する新たな光サービスの必要性について言及しました。NokiaのDavid Neilson氏は、「The Optical Network: A Foundation for the Intelligent Future」と題して、よりスマートな未来のために光ネットワークが基本的に必要であることを論じました。Intel、NTT、Red Hatの代表者が「Offloading Network Functions to DPU/IPU in OpenShift/K8s: A Use-Case Study with IOWN Deterministic Networking over the Open APN」と題して発表し、NokiaのJohan Båck氏は、ネットワークの消費電力を削減するための動的な容量割り当ての取り組みを共有しました。最後に、富士通、NEC、NTTの代表者が、deterministic latency computingについて議論しました。
Day3には、NTTの榑林亮介氏が、さまざまな業界イベントで展示されたDCI技術について講演しました。また、NTTの二ノ方一生氏も「Activities and Achievements Related to DCI with Composable Disaggregated Infrastructure」と題してDCIに関するプレゼンテーションを行いました。NokiaのTeresa Monteiro氏が「Operationalization of APN - Solving Coherent Optical Pluggables in Disaggregated Environments」と題して発表し、住友電気工業の西本裕明氏がOpen APNにおける波長パスの経済性について議論しました。
会合では、これらのプレゼンテーションのほかに、WG/TFでのワークショップ、分科会が行われました。エネルギー効率、データセンタの相互接続、リファレンス実装モデルなど、最新のユースケース、業界へのインパクトに関するさまざまな議論が活発に行われました。
なお、次回のメンバミーティングは2025年9月30日〜10月3日に米国ダラスで開催される予定となっています。
FUTURESストックホルム2025
2025年4月24日にメンバミーティングに併催して、IOWN GFの一般公開イベントである「FUTURES Stockholm」が開催されました。FUTURESの目的は、IOWN GF外部も含めたIOWN関連技術関係者にIOWN 技術開発やユースケース創出の状況や展開を伝えるとともに、メディアやアナリストをとおしてIOWN GFの取り組みの重要性やインパクトに対する認知を広げることで、IOWNのエコシステムを拡大して普及を加速することです。
今回のFUTURES Stockholmでは、250名を超える現地参加者と70名を超えるオンライン参加者を迎え、フォーラムの重要な作業に関するプレゼンテーションやパネルディスカッションが行われました。
グローバルリサーチ企業であるOmdiaのIan Redpath氏からは、「Market Landscape Study」と題して、APNが提供するデジタル経済の未来に関する新しいホワイトペーパーの内容ついてプレゼンテーションが行われました。
また「Driving Energy and Efficiency and Sustainability」と題して、NokiaのLieven Levrau氏が司会を務め、Red Hatの杉山秀次氏とOrangeのEric Hardouin氏をパネリストとして、持続可能で高性能なコンピューティングおよびネットワークインフラストラクチャを構築するためのエネルギー効率の取り組みについて、パネルディスカッションを実施しました。
次の公開イベントは2025年10月のミッドタームメンバミーティングと併せてFUTURES Dallasを開催予定です。
IOWN GFの活動状況
IOWN GFの対外的な活動として、2025年3月3〜6日にBarcelonaで開催された世界最大の通信業界イベントであるMWC25において、Partner Programmesでのセッション開催と、IOWN GFとして初めてブース出展を実施しました。
Partner Programmesセッションでは「Evolving Networks at the Speed of Light: Sustainable Innovation with the IOWN Global Forum」と題して、Accenture、Ciena、Ericsson、KDDI、Microsoft、Nokia、NTT、NTTドコモ、Red hat、SK telecomは、IOWNの技術やフォーラムがめざす新たな未来像について語り、AIによって増大するデータセンタ需要や、5G(第5世代移動通信システム)以降のネットワークの実現において、IOWN技術の適用によってエネルギー消費などの課題解決にどのような影響を与えるかについて議論を行いました。
またIOWN GFの出展ブースでは、IOWN GFがめざすビジョンや、APNに関するソリューションの展示や紹介するとともに、金融機関向けのマルチデータセンタインフラストラクチャや、リモートメディアプロダクションといったアーリー・アダプション・ユースケースの取り組みに関する紹介などを行いました。
IOWN GFでは、MWC以外にもOFC(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)やECOC(European Conference on Optical Communications)などの光通信分野における主要な国際会議やThe Open Compute Project(OCP)やLinux Foundationなど外部団体と連携して対外的な情報発信にも積極的に取り組んでいます。
これらの活発な活動を反映して、IOWN GFのメンバは増加しています。2025年度を迎えて以降では、Turkcell、三井住友フィナンシャルグループ、SOITEC、ピュア・ストレージ・ジャパン、Morgan Stanley、インテック、パトラス大学などが新たに参画し、現在、世界中の164の企業・組織が加入しています(2025年5月末)。IOWN GFは、今後も新メンバの加入を勧めるとともにメンバ間で連携した活動を加速していきます。
■参考文献
(1) https://iowngf.org/iown-global-forum-annual-member-meeting-april-2025-highlights/
(2) https://iowngf.org/iown-global-forum-showcases-latest-network-innovation-at-mwc-2025/
(3) https://iowngf.org/industry-event-mobile-world-congress-2025/
