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2026年4月号

特集

現場課題と対峙する、“技術の最後の砦” 技術協力センタの取り組み

技協まつりの開催――難解故障解決の知見共有

2025年12月10日にNTT西日本で開催されたマイスターズカップ、2026年1月21日にNTT東日本で開催された現場力向上フォーラムにおいて、技協まつりを実施しました。技協まつりは、これまでNTT東日本技術協力センタで解決した現場での難解故障等のお困りごとについて、実際の解決方法等を発表、展開する場となっています。本稿では、この2回のイベントで実施した発表内容について紹介します。

上西 雄介(うえにし ゆうすけ)/土田 周治(つちだ しゅうじ)
阪口 こはる(さかぐち こはる)/橋本 和樹(はしもと かずき)
NTT東日本

技協まつりとは

NTT東日本技術協力センタでは、NTT東日本・西日本をはじめとする本社や各現場から寄せられる、特に対応が難しい故障や複雑な障害に関する問い合わせに対して、解決策を検討・共有する活動を継続的に行っています。その一環として「技協まつり」と銘打ち、故障対策事例等を発表する場を設けて、現場で培われた知見やノウハウを広く共有する取り組みを2024年度より実施しています。
この発表の場である「技協まつり」では、実際に発生した難解な故障事例を取り上げ、原因究明のプロセスや解決に至るまでの具体的な手順、さらに再発防止に向けての具体的な対策案について詳しく紹介しています。このような内容は、現場で同様の課題に直面した際に、迅速かつ的確に対応を可能とするだけでなく、組織全体の技術力向上に大きく寄与し、お客さま満足度の向上に貢献できる営みとなっています。
また本取り組みは、NTT東日本・西日本の社員だけでなく、通信建設会社の皆様等も含めたさまざまな方にご視聴いただくことで、現場で抱える課題を横断的に共有し、業界全体で課題解決力を高めることをめざしています。このような情報の横展開は、単なる事例紹介にとどまらず、将来的な故障対策の強化や新たな技術開発のヒントにもつながる重要な営みであると考えています。

技協まつり in マイスターズカップ

2025年12月10日、福岡県のマリンメッセ福岡で開催されたNTT西日本最大級のイベントである「マイスターズカップ」の中で、「技協まつり」を開催しました(写真1)。本イベントでは、現地会場での参加に加え、Web配信によるオンライン視聴も可能とし、現地とオンラインを合わせて延べ1000名程度の方々にご参加いただきました。多くの現場技術者や関係者が一堂に会し、難解故障事例の対策や現場での取り組み等について共有する貴重な機会となりました。
今回の技協まつりでは、図1のとおり8案件について発表を行いました。内容は大きく「材料系」「宅内系」「EMC*1系」「線路系」「TSC*2技術支援」の5セッションに分けて実施しました。特筆すべき点について、今回初の取り組みとして、一部の発表においては技術協力センタの社員だけでなく、西日本エリアの現場で活躍する社員の皆様による事例紹介も行いました。これにより、現場のリアルな課題や解決策を直接共有できる場としても活用することができ、参加者からも高い評価をいただくことができました。それぞれの発表内容の概要については、以下のとおりとなっています。

*1 EMC:Electro Magnetic Compatibilityの略語。機器やシステムが、外部へ電磁的な干渉を引き起こさず、また外部からの干渉を受けても満足に機能することで、主に雷や電磁誘導等に関する取り組み。
*2 TSC:NTTフィールドテクノ サービスマネジメント部 フィールドオペレーション部門 フィールドサポートセンタ テクニカルサポート担当 の略称。

■開会の挨拶

開会の挨拶は、NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 サービス運営部 技術協力センタ 大串所長より行い、これまでの技術協力センタの歴史や技術・ノウハウの蓄積の意義等について説明しました。

■材料系セッション

材料系セッションでは、車両通行による振動の原因がNTT所有のマンホールに起因するものではないかというお客さまからの疑義に対して、科学的に対応しご納得していただいた事例や、鋼管柱の効率的な除錆方法の事例について発表しました。依頼元からは、お客さまからも感謝の言葉をいただいたことや、NTTに対する信頼性向上につながった等の講評をいただきました。

■宅内系セッション

宅内系セッションでは、他社回線を使用してビジネスフォンを使用しているお客さまで、通話途中で切断される事象についての原因究明およびその解決策の事例について発表しました。依頼元からは、対策等の提案もしていただきお客さまもご納得いただいたとの講評をいただきました。

■EMC系セッション

EMC系セッションでは、基準が未整理であった連棟ビル*3における接地改修時の調査改修方法の提案事例や、屋外設置型光アクセス装置の雷害故障原因の究明およびその対策の事例について発表しました。依頼元からは、サービス断を起こさないためにどのような対策を講じれば良いかなどのご提案をしていただき、実際に効果も出すことができたとの講評をいただきました。

*3 連棟ビル:外観上、1つの建物と見えていても、躯体構造が異なる場合や、同一の躯体構造であっても耐震構造や基礎が異なる場合、棟間をエキスパンションジョイント等で接続したような、棟間のビル構造体に電気的接続がないビル。

■線路系セッション

線路系セッションでは、撤去困難なメタルケーブルに対する新たな撤去方法の提案および撤去支援の事例や、クリーピング現象*4により移動した地下ケーブルの引き戻し方法の提案および引き戻し支援の事例について発表しました。依頼元からは、技術協力センタの協力のおかげで、困難作業を計画どおりに進めることができ、大変助かったとの講評をいただきました。

*4 クリーピング現象:物体に持続的な応力が加わることで時間とともに変形が進む現象のこと。

■TSC技術支援セッション

TSC技術支援セッションでは、ひかり電話利用で通話途切れが発生する事象への対処方法事例や、VPN装置*5「FV-1000」を使用したL2TP VPN接続構成の切替構成事例について発表しました。現場やお客さまのお困りごとを解決することで、オンサイトでの技術的サポートを完遂し、TSCとしてのミッションを果たせることができたとの講評をいただきました。

*5 VPN装置:Virtual Private Network機器のことであり、主にVPNゲートウェイやVPNルータのこと。

■閉会の挨拶

閉会の挨拶は、NTTフィールドテクノ サービスマネジメント部 フィールドオペレーション部門 フィールドサポートセンタ 橋本センタ長(写真2)よりお言葉をいただき、全体の総括および現場のお困りごと解決の重要性についてご説明いただきました。

技協まつり in 現場力向上フォーラム

2026年1月21日、東京都のNTT中央研修センタで開催されたNTT東日本最大級のイベントである「現場力向上フォーラム」の中で、「技協まつり」を開催しました。本イベントにおいても「マイスターズカップ」で開催した「技協まつり」と同様に、現地会場での参加に加え、Web配信によるオンライン視聴も可能とし、現地とオンラインを合わせて延べ1500名程度の方々にご参加いただきました。本イベントにおいても多くの現場技術者や関係者が一堂に会し、難解故障事例の対策や現場での取り組み等について共有する貴重な機会となりました。
今回の技協まつりでは、図2のとおり8案件について発表を行いました。内容は大きく「線路系」「EMC系」「宅内系」「材料系」の4セッションに分けて実施しました(写真3、4)。
今回の取り組みを通じて、技術協力センタは単なる故障対応の支援組織にとどまらず、現場で培われた知見を集約し、会社や部門の垣根を越えて共有するハブとしての役割を果たしていることを強く印象付けることができました。「東日本と西日本といった異なるフィールドをつなぐことで、現場力の底上げと業界全体の技術力向上に貢献する」それが技協まつりの最大の価値です。今後もこの場を通じて、現場の声を起点に新たな技術や解決策を創出し、より強固なネットワークサービスの提供に寄与していきます。

■開会の挨拶

開会の挨拶では、技協センタの63年に及ぶ歴史および設立当初からの使命について、NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 サービス運営部 技術協力センタ 大串所長(写真5)より説明がなされました。

■線路系セッション

線路系セッションでは、ネットワーク基盤の信頼性向上をめざし、メタル撤去や専用線切替えに関する複雑な課題に挑戦しました。従来困難とされていた撤去区間でのトライアルを通じて、現場で得られた知見を基に新たな技術を創出。また、光ケーブル試験データ解析を自動化する内製ツールを開発し、膨大なデータ処理を迅速化することで、1000万超のお客さまの通信を支えるインフラ保守の高度化を実現しました。聴講者からは、内製ツールの操作方法についてさらなる改善点をご提案いただき、今後取り組むべき課題もみえてきました。

■EMC系セッション

EMC系セッションでは、通信品質を守るため、故障原因の徹底調査と保守業務の効率化に取り組みました。保安器浸水や避雷器の状態を精査し、宅内機器故障の真因を突き止めることで、現場対応力を強化しました。依頼元からは、お客さまへの説明もスムーズに進行できて大変助かったとの講評をいただきました。

■宅内系セッション

宅内系セッションでは、宅内設備における他社回線収容時の通信トラブルを徹底的に分析し、安定したサービス提供に向けた改善策を検討しました。着信応答時に発生する切断事象や、ビジネスフォンでの通話途中切断といった複雑な問題に対し、原因を多角的に究明し、再発防止に向けた技術的アプローチを提案。これにより、異なる回線環境下でも高品質な通信を維持するための指針を示しました。また、中継メタル50bit専用線のDSM*6切替えによる通信不可事象に対しては、詳細な原因分析と切替え支援を実施し、将来的な運用改善に資する具体的な解決策を提示しました。依頼元からは、最初のお客さま提案から約3年越しとなったが、無事収容替えが完了し、お客さまからの信頼も維持することができたとの講評をいただきました。

*6 DSM:Dedicated Service handling Moduleの略称であり、専用線加入者を多重化・クロスコネクトする装置のこと。

■材料系セッション

材料系セッションでは、設備保守の高度化に向け、非破壊測定技術と効率的な点検手法の開発に挑戦しました。RT-BOX*7床下鋼材の非破壊測定に関する調査と実機トライアルを通じて、現場での適用可能性を検証しました。また、電柱点検における電柱特定方法を改善し、作業効率を飛躍的に向上させる提案を実施しました。これらの取り組みは、安全性と作業品質の両立をめざす次世代保守の基盤となります。依頼元からは今回の点検手法をRT-BOX床下鋼材だけでなく建物等ほかにも応用していくため、今後も現場と技術協力センタが一丸となって取り組んでいきたいと講評をいただきました。

*7 RT-BOX:遠隔収容装置(Remote Terminal Box)の略称。複数の銅線(電話、ISDN等)を光ファイバに多重化し、交換機に接続する役割を担っています。通信需要の増加に応じて1990年代以降、数多く設置されてきました。

■閉会の挨拶

閉会の挨拶では、8件の発表を通じて困難な課題に知恵と工夫をもって取り組む姿勢への誇りと、年間多数の相談を支える中で「つなぐ使命」を果たせているとの実感、ならびに技協まつりの内容を横展開して現場に活かすことで今後も地域に期待される存在をめざしたいとの所感が、NTT東日本 千葉事業部 設備部 倭部長(写真6)より述べられました。

(左から)土田 周治/橋本 和樹/阪口 こはる/上西 雄

技協まつりでは現場でのさまざまな難解故障事例について紹介しています。ぜひ一度ご視聴ください。

NTT東日本
ネットワーク事業推進本部
サービス運営部 技術協力センタ

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