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グローバルスタンダード最前線

第4回APT WTSA20準備会合報告

ITU-TのWTSA(世界電気通信標準化総会:World Telecommunication Standardization Assembly)に向けたAPT(アジア・太平洋電気通信共同体:Asia Pacific Telecommunity)の準備会合(APT Preparatory Group for WTSA20)の最終会合となる第4回会合(APT WTSA20-4)が、2020年11月16~20日、オンライン会議で開催されました。ここではAPT WTSA20-4の結果報告および今後のWTSAのスケジュールについて報告します。

荒木 則幸(あらき のりゆき)
NTT研究企画部門

概 要

APT(Asia Pacific Telecom­mu­nity)はアジア・太平洋地域でのICT分野の開発を促進している国際機関であり、1979年に設立され、アジア・太平洋地域の38カ国が加盟しています。APTは、WTSAへのAPTとしての共同提案(ACP: APT Com­mon Proposal)を検討するために、APT WTSA準備会合を開催しています。APT WTSA準備会合はWTSA-20までに4回の準備会合が計画され、第1回会合を2019年6月に日本(秋葉原)で開催しました。それ以降は、タイ、中国、フィリピンでの開催が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で開催計画が見直され、第2回以降のAPT WTSA準備会合はすべてオンライン会議で開催されました。
今会合への参加者登録者数は、APT加盟国の正会員が235名(16カ国)、準会員と賛助会員が25名、他の国際標準化機関の代表者が22名、事務局7名の総計289名でした。国別の参加者数では、中国から全体の4分の1を占める59名と積極的な対応をしていることと、タイ、マレーシア、インド、インドネシアなどの新興国の参加者が多くなっていることがあげられます。日本からは、総務省を代表とし、企業等から14名が参加し、日本代表団として対応しました。

APT WTSA準備会合の マネジメント体制

APT WTSA準備会合の役職者リストを表1に示します。課題別の詳細な議論を推進する3つのWG議長とそれぞれのWG副議長には、日本からは3名の専門家〔永沼氏(NEC)、本記事の筆者である荒木(NTT)、本堂氏(KDDI)〕が選任されており、中国、韓国、インドとの連携関係を維持しながら、日本がリーダーシップを発揮できるマネジメント体制を構築しています。今回、3名の副議長のうちインドからの副議長の変更提案があり、承認されました。

検討項目および作業方法

WTSA-20は、4年に一度開催されるITU-Tの総会であり、2021年以降のITU-Tにおける研究委員会(SG: Study Group)構成およびその議長・副議長の役職ポストの選定と、標準化トピックとして近年注目されるAI(人工知能)、IoT(Internet of Things)、スマートシティ、Beyond 5G、量子通信などの標準化方針にかかわる決議(Resolution)を作成する重要な会合です。
APT WTSA会合では、具体的な決議文書や勧告草案の作成検討を3つのWGで課題分担し、各WG議長が各WGの検討責任範囲(Terms of References)に従い、各国からの寄書を基に審議を行っています。
WG会合でコンセンサスが得られた提案は、プレナリー会合での承認候補案として審議されます。今会合の最終日のプレナリー会合で承認が得られたものが仮共同提案(PACP: Prelimi­nary ACP)となり、その後、APT加盟国の主管庁による承認が得られたものが最終的なAPT共同提案(ACP)となります。
PACPの承認条件としては、プレナリー会合での合意(コンセンサス)を前提としますが、意見が対立した場合は、プレナリー会合出席国の25%以上の賛成が得られ、反対国数が賛成国数より多くなければPACPとなります。
ACPの承認条件は、上記のPACPが、すべてのAPT加盟国(38カ国)に対して承認照会(endorsement)が行われ、加盟国の25%(10カ国)以上が賛成し、50%(19カ国)以上が反対しなければACPとなり、WTSA-20にAPT共同提案として提案されます。

審 議 結 果

(1) WG1: ITU-T作業方法
WG1では、ITU-Tの作業方法に関するWTSA決議の改訂(MOD)または廃止(SUP)を検討しています。また、ITU-T Aシリーズ勧告(勧告A.1、A.7等)の改訂に関しては、TSAG会合での検討が必要となることから、TSAGへの寄書提案を可能とする文書種別のAPT Viewとしての合意を目標としました。
WG1からの成果物は、8件のPACP案が作成され、プレナリー会合での承認が得られました。提案の中で、決議22(TSAGの権限に関する決議)と決議32(電子的会議方法に関する決議)の修正、決議35(ITU-TのSGおよびTSAG議長/副議長の任命と任期)と決議45(SG横断的な標準化連携に関する決議)の廃止のPACPは日本提案に基づくもので、提案文書のエディタは日本が担当しています。
(2) WG2: ITU-Tの作業計画とSG再編構成
WG2では、ITU-Tの各SGが取り組む作業計画と課題(Question)を含むSG構成を検討しています。また、新規の標準化課題についても、今後のSG構成に密接にかかわることからWG2で議論しています。
新課題については特に、新型コロナウイルス感染症に対するe-healthを含むパンデミック対策、ICTにおけるAIの活用、Machin Visionに関する検討推進、量子情報技術(QIT)に関する検討強化、Vertical applica­tionを考慮した将来網の検討など、新規決議が中国や韓国から提案がありました。しかし、日本としては、ITU-TのSG11、SG13、SG16での課題と密接な関係があり、各SGでの検討が進行中であること、また、これらの新課題は次元研究委員会であるFG(Focus Group)で継続検討されている状況であることを踏まえ、決議の作成は時期尚早であり、新決議案に反対の立場を主張しました。最終プレナリーでの審議では、日本提案に対して同様の意見を示すオーストラリアと連携した対処を行い、結果として、新決議については新型コロナウイルス感染症に代表される重要課題である“ITU-T’s role in facilitating the use of ICTs to prevent the spread of global pandemics”の決議のみのPACPを合意することができました。また、WG2ではe-healthに関する既存の決議78の改訂提案についても合意しました。
SG構成のハイレベルな再編原則については、WTSA-16で合意したハイレベルSG再編7原則を基本とし、中国からの提案を中心にAPT Viewとして合意することができました。
SG再編案については、TSAG会合において、TSB局長からSG構成案のたたき台(Food for thoughts)が提案されており、現状11個のSG構成に対して、SG数を大幅削減する提案が、欧州CEPT等の他の地域会合で検討されています。APTでも韓国、マレーシアやインドネシアなどSG数削減に同調する意見もありましたが、今会合では、日本から既存SG数を維持するSG構成案〔ただし、SG20のIoTセキュリティ課題(課題6/SG20)をSG17 とSG2へそれぞれ部分的に移管する提案を含む〕を提案し、中国の支持と韓国、マレーシアなどの了解を得て、APT統一案として合意することができました。SG構成の議論はSG議長および副議長の選挙に密接に関係することから、それぞれの国および地域の事情を把握しつつ、WTSA本番での決着に向け、今後の対処が必要となります。
(3) WG3: 規制・政策と標準化課題全般
今会合の最終プレナリーで合意されたPACPは既存決議の改訂に関する29件、APT Viewが5件となりました。合意された決議および勧告改訂に関するPACPの一覧を表2に示します。

今後の予定

今回のAPT WAST20-4において実質的なPACPの議論はいったん完了しましたが、WTSAが2022年3月に再延期されたことを受け、2021年度にAPT WTSA追加準備会合を開催することが提案され、承認されました。今後のWTSAに関連する会合の開催予定を表3に示します。追加されたAPT WTSA準備会合では、今後開催されるTSAG会合への対処の検討や、他の地域標準化機関のWTSAへの共同提案を分析し、APTとしてのWTSAにおける対処方針の検討が行われる予定です。