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光ファイバ通信普及に貢献したNTT技術史料館所蔵の「VAD法光ファイバ母材製造装置」および「F-32M-1形端局中継装置」が国立科学博物館「未来技術遺産」に登録

NTTが運営する「NTT技術史料館」所蔵の「VAD(Vapor-phase Axial Deposition)法光ファイバ母材製造装置」および「F-32M-1形端局中継装置」が、9月3日に国立科学博物館の「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されました。
日本独自の光ファイバ量産製法確立に大きく貢献した「VAD法光ファイバ母材製造装置」および光ファイバを用いた伝送路にて世界で初めて商用化された中継機「F-32M-1形端局中継装置」が、日本の科学技術の発展を示す貴重な技術史資料であると評価されています。
1970年代、国内で本格的な研究開発が始まった光ファイバ通信は、実現に向けてさまざまな分野の研究開発が進められました。その中でも、今回注目されましたVAD法は光ファイバを量産するための技術で、NTT(当時 日本電信電話公社)および古河電気工業㈱(古河電工)、住友電気工業㈱(住友電工)、㈱フジクラ(当時 藤倉電線㈱)の技術を結集し考案され1977年に発表されました。VAD法により、光ファイバの基となる光ファイバ母材を安定的・効率的・経済的に製造することが可能となり、1つの母材から1000~2000 km分もの光ファイバを作製できるまでに高められていきました。
また、F-32M-1形端局中継装置は、光ファイバ伝送路に初めて商用導入された中継機として、国内の光ファイバ通信網形成の基盤になるとともに、伝送方式の分野で世界をリードしていきました。どちらも光ファイバ通信時代の幕開けを示す貴重な史料といえます。

VAD法光ファイバ母材製造装置

現在、光ファイバ通信に多く用いられている光ファイバは、光が通る中心部分のコア・外側のクラッドという2層構造となっています。VAD法とは、石英ガラスを原料として光ファイバの基となる「母材」を製造する方法の1つで、ガラスの原料ガスから生成されるガラス微粒子(コア用・クラッド用)それぞれをバーナーで吹き付けて、2層構造を持つ円柱状の多孔質母材を作製、その多孔質母材に高温の加熱処理を施し透明化するという方法です。この母材を高熱で細く引き伸ばしたものが光ファイバとなります。
1960年代後半から通信用の伝送媒体としての実現可能性が提示されていたガラス製光ファイバについて世界で研究開発が始まる中、1970年代初頭、NTTが光ファイバ製造技術の研究を開始します。米国で考案されていたMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法・OVD(Outside Vapor Deposition)法などに接し、NTTは古河電工、住友電工、フジクラとの共同研究体制を立ち上げ、MCVD法の改良を行う一方、量産に適した日本独自の光ファイバ製造方法の考案をめざし研究開発を行いました。
1977年には、国際会議「IOOC‘77」で量産性に優れた日本独自の光ファイバ製造方法としてVAD法を発表し、高く評価されました。NTT技術史料館所蔵の実験装置「VAD法光ファイバ母材製造装置」(図1)から得られた実験データがこの発表のベースとなったことも、本装置が貴重な史料である理由の1つとされています。
1977年以降もさらなる研究開発を推し進め、VAD法を用いた光ファイバ量産工程の確立、VAD法による超低損失光ファイバの製造方法確立などを実現していきました。VAD法が持つ、光ファイバ母材の大型化・低損失化がしやすいなどの特長に加え、継続的な研究開発により、極めて伝送損失の少ない光ファイバを無接続かつ長尺で作製することが可能になり、光ファイバの量産化・経済化に大きく貢献しました。
2015年には、「高品質光ファイバ量産製法として用いられるVAD法(1977~1983年)」の功績が、世界規模での急速な光通信ネットワーク構築に貢献したとして、電気・電子・情報・通信の技術分野において世界的に権威のある「IEEEマイルストーン」に認定されました。今日でも、世界の光ファイバ通信を支えています。

図1 VAD法光ファイバ母材製造装置

F-32M-1形端局中継装置

1970年代に光ファイバ通信実現に向けさまざまな分野の研究開発が行われる中、光ファイバ通信の最初の実用化を見据え、NTTは1978~1979年に電話局間を光ファイバで結ぶ現場実験を行いました。その成功を経て1981年、世界で初めて中継用の伝送方式F-32Mで商用試験を行い、「F-32M-1形端局中継装置」(図2)を導入し、世界に先駆けて光ファイバケーブルを用いた中継伝送路の大容量化実現に大きく近づきました。F-32M方式は、都市の電話局間の中継線や比較的短い距離の市外回線に用いられ、県内中継伝送など中距離には同年に商用化されたF-100M方式が用いられました。伝送方式の分野で日本が世界をリードしてきたことを示すとともに、光ファイバ通信網形成の始まりを伝える貴重な史料の1つです。
1983年には伝送容量・中継距離を大幅に伸ばしたF-400M方式が商用開始となり、1985年には旭川-鹿児島間約3400 kmの日本縦貫回線が完成しました。その後も光ファイバ通信に関する研究開発・技術革新を経て、さらなる伝送容量の拡大やFTTH(Fiber To The Home)に代表される加入者系の光化推進につながることとなります。

図2 F-32M-1形端局中継装置

NTT技術史料館について

NTT技術史料館は、日本の通信事業のルーツから日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信に関する研究・技術開発の歴史的資産を集大成した施設です。見学も可能です。1500点以上のうち、以下の技術史料が「未来技術遺産」に登録されています。

NTT技術史料館ホームページ http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/

問い合わせ先

NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
TEL 0422-59-3663
E-mail inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp
URL https://www.ntt.co.jp/news2019/1909/190903a.html