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グループ企業探訪

第244回 株式会社コードタクト

新しい独自の「メソッド」により、「学びの変革」にチャレンジ

コードタクトは、学校教育や企業の人材育成を支援するクラウドサービスを提供している。オンラインが徐々に浸透しつつある教育の世界において、自社ソフトウェアの開発と新たな独自「メソッド」により、「学びの変革」にチャレンジする思いを後藤正樹社長に伺った。

コードタクト 後藤正樹社長

自社開発プロダクト「スクールタクト」「teamTakt」でブルーオーシャンへ船出

◆設立の背景と目的、事業概要について教えてください。

コードタクトは、2015年1月にEdTech(Education×Technology)の会社として設立されました。もともと既存の一斉授業や学びのあり方に課題を感じており、私自身の講師経験を反映させたソフトウェアによって学校や学びを変革したいと、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が掲げた「未踏人材プロジェクト」にプロジェクトを提案し、2010年に採択されたことがきっかけです。ソフトウェア開発や検証を行っていく中で、総務省による先導的教育システム実証事業にNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の配下で参画することが決定し、それに先立ち法人化し、同時に授業支援クラウド「スクールタクト」の販売も開始しました。なお、社名やプロダクト名、ロゴの一部にある「タクト(Takt)」は、私自身がプロオーケストラの指揮者をしているところに由来しています。
その後、2015年7月総務省「ICTドリームスクール実践モデル」に採択、2016年10月には「第13回日本e-Learning大賞」 EdTech特別部門賞を、2017年4月に「第29回中小企業優秀新技術・新製品」ソフトウェア部門奨励賞受賞しました。そして2018年2月文部科学省「次世代学校支援モデル構築事業」、総務省「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」に参画し、2019年1月 内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」へ採択されました。さらに2020年1月、教育現場におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)に協働して取り組み、教育領域における新たな価値創造を進めるために、DXによって教育現場を革新する「Smart Education」に取り組むNTT Comのグループ会社となりました。
コードタクトの主な事業は、「スクールタクト」「teamTakt」というサービスの提供とサポート、そして教育関連のコンサルティングです。「スクールタクト」は、タブレット端末、スマートフォン、PCなどデバイスフリーで利用できる授業支援クラウドで、GIGAスクール構想や学習指導要領など最新の教育トレンドを考慮したさまざまな機能で、先生が教えやすく生徒が学びやすい環境をつくります。
「teamTakt」は、「スクールタクト」で蓄積された知見を、企業の研修向けにカスタマイズしたものです。

◆「GIGAスクール構想」により、教育現場においてもオンライン授業等ICTの導入やDXが進んできていますね。

「GIGAスクール構想」とは、文部科学省が2019年12月に掲げたプランで、①1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子どもを含め、多様な子どもたち1人ひとりに個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する、②これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図り、教師・児童生徒の力を最大限に引き出すことをめざしています。この政策により、急速に学校教育の現場にもICTが導入されました。
例えば、新型コロナウイルスのため小学校でもオンライン授業が増えましたが、「スクールタクト」を使うことで新たな授業スタイルが生まれ始めています。普通は、3年1組のようにクラス単位で授業は進みますが、Zoomと「スクールタクト」を併用することで、3年生合同の授業として1人の先生が授業をし、残りの先生が児童のサポートに回るということが可能になります。
Zoomで児童と口頭でのコミュニケーションを、「スクールタクト」でワークシートをリアルタイムに共有することで、学びのプロセスを可視化し、他者と共有することで学びが深まる場を提供しています。こうした学びとコミュニケーションの間を考えたアプローチは他に類をみないので、その点においてはブルーオーシャンだと思います。

「教育総研」で「メソッド」を開発し、「学びの変革」への機動力に

◆学校教育の真のDXをめざしているのですね。具体的にどのような「スクールタクト」の導入事例があるのでしょうか。

1人1台端末の導入が前倒しで進められたこともあり、おかげ様で「スクールタクト」は国公私立問わず全国で2000以上の小学校・中学校・高校・大学、そして教育委員会や学習塾に導入いただいています。
実際の事例として、東海大学付属高輪台高等学校様では、通常の座学での授業に「スクールタクト」を活用することで、生徒の理解度をリアルタイムに把握しながらの授業進行が可能になりました。同時に、授業中の板書量が削減され、生徒はより先生の説明に集中できることで授業進度もアップし、これまでできなかったペアワークなど協働学習の時間も確保できるようになったと評価されました。
また、啓明学園初等学校様では、通常の座学での授業とオンライン授業に「スクールタクト」を活用して、児童が皆の前でのプレゼンテーションや児童どうしの意見交換を行うことで、授業参加と学び合いが活発になったとの評価をいただきました。
これらの事例は一例ではありますが、他のお客さまからも多数の同様な評価をいただいています。大切なのは、これらの評価はまさに「スクールタクト」がめざしているところでもあり、私たちにとって大きな自信となっています。

◆今後の展望についてお聞かせください。

「スクールタクト」は学校教育を意識して開発されたものですが、企業等の研修においても学校教育と同じような学びのプロセスが展開されています。そこに着目し、企業として必要となる機能を追加、カスタマイズして「teamTakt」を開発しました。このビジネスの展開を進めていきます。
また、他に同様な取り組みをしているところがない、ブルーオーシャンであるが故に、先駆者としてこの分野に関する研究も進め、実践知を学問知にまで引き上げていかなければならないと考えています。そこで、教育系の研究者や、データサイエンティスト等による「教育総研」を設立し、新しいメソッドの開発、教育学的側面からの評価等を行い、研究発表や論文発表を行っています。教育総研では、これまでの経験から、学校や企業における教育・研修プロセスでは「振り返り」に大きなポイントがあることが分かっているので、特にこの分野を重点的に研究し、新たなサービス開発や機能の追加につなげ、「学びの変革」を促進していくつもりです。

担当者に聞く

「teamTakt」と「振り返り」で企業の人材育成・研修を高付加価値化

営業部
錦織 佑さん

◆担当されている業務について教えてください。

「teamTakt」は「スクールタクト」のリアルタイム性や回答共有の機能等を活かし、オンラインでの研修(Off-JT)とOJTを効果的に実施することができるジョブトレーニング支援クラウドです。研修の場面では、研修→実践→経験→振り返りといった経験学習サイクルをリモート下で実現するメソッドや、OJTの場面における「1 on 1」に加え、ファシリテータ1名と4人のメンバで構成した少人数グループで振り返りを行い互いの関係性の質を高める「ぐるり(グループリフレクション)」といったメソッドも提供しています。私は営業として、「teamTakt」の活用方法であるこれらメソッドのコンサルティングも含め、企業への提案活動を行っています。
「teamTakt」は2020年から販売を開始しました。新入社員向けのオンライン研修から現場配属先におけるOJTまでを継続的に行うためのツールとしてNTT Comに導入いただいたのをはじめ、住友商事様の社員研修、文教センター様の組織再編をきっかけとしたチームビルディング、中尾マネジメント研究所様の経営者研修等、多くのお客さまの活用事例があります。

◆課題や注力されている点を伺えますか。

リモートワークが普及するに従い、人材育成の場がオフィスや会議室からオンラインの世界へシフトしていくことが容易に想像できます。こうした大きな育成環境の変化にどのように対応していくか、というところに課題意識を持っています。「teamTakt」はリモート環境における研修・OJTを意識した人材育成の設計を行うことができます。そのメソッドをお客さまの環境の中でうまく展開できるようコンサルティングしていくことで、リモート環境でも付加価値のある人材育成を実現できると思います。
また、リモートワークへのシフトは、集合型の研修を推進してきた企業にも影響を与えるものになっています。既存の研修内容をそのままリモートに代えるのであれば、eラーニングをビジネスモデルとしている企業との差がなくなってきます。私たちはこれまでの研修コンテンツやノウハウを最大限活かしながら「teamTakt」を連携させることで、新たな研修のビジネスモデルをつくり上げることが可能になると思っています。研修を実施して終わりではなく、職場での実践やその振り返り等をモニタリングすることにより、効果を継続的に向上させる研修をパートナーと一緒に提供していくB2B2B(or C)モデルの開拓に注力しています。すでにシェイク様・NTTデータユニバーシティと連携して、「teamTakt」による研修と実践を兼ね備えた「ハイブリッド型オンラインラーニング講座」の提供も始めています。

「teamTakt」に新たなメソッドで「学びの変革」につなげる

◆今後の展望について教えてください。

これまでの集合型の研修に代表されるような人材育成は、座学で講義を聞き、テストやグループワークで理解度や習熟度を計り、最後にアンケートを取ってフィードバックを得るというパターンが主流でした。オンライン型の研修に移行しても、研修の場がリアルからZoom等に代わり、コンテンツが電子化されただけで、従来の延長線上であることには変わりません。
そこに「みんなで学び合う」という「teamTakt」の機能やメソッドを取り入れることで、リモート環境下でも多様な意見・考えに触れながら学習することができます。さらに、今まであまり可視化されてこなかった振り返りやかかわり合いを分析することで、新たな学びの場がデザインされていきます。新たな研修の可視化を実現する「teamTakt」の展開は、企業においても「学びの変革」となるに違いありません。
こうした体験をさまざまなパートナーと共有しつつ、自らもトライアンドエラーを繰り返しながら、「学びの変革」を展開していきたいと思います。

ア・ラ・カルト

■リモートネイティブな会社

会社設立当初からリモートワークベースの、まさにリモートネイティブな会社です。自宅で業務を行う方が多いようですが、オンライン環境であれば、どこで作業をしてもよいとのこと。日ごろからスタッフどうしはビジネスチャットを使いながら居場所なども確認し合っているようです。必要に応じて出社している人もいますが、その一方で関東圏以外に住んでいるスタッフの中には、採用が決まってから1度もオフィスに顔を出したことがないという人もいるなど、リモートネイティブならではのエピソードです。さらに、米国、台湾、インドネシアなど海外在住の日本人スタッフもいるそうです。

■「ぐるり」でコミュニケーション

「teamTakt」のメソッドを活用した、その名も「ぐるり」という社内施策があるそうです。参加は任意で、ファシリテータを含めた4人一組が、自分の行っている業務や活動、趣味、家族など各自が設定したテーマに応じて、振り返りを行う場で、1週間に1回、2カ月を1タームとして実施しているそうです。グループで行うことにより、1人では気付けなかった新たな考えを知ることができ、また一緒に働く同僚が、どういう関心を持って働いているか、どういうライフスタイルを送っているかなど、人となりが分かる点からも繰り返し参加する人も多くいるとのこと。リモート環境では社員相互のコミュニケーション不足が問題となることが多くありますが、これならばその心配もなさそうです。もしかしたら、この「ぐるり」から、新しいメソッドが考案されるかもしれません。

■ランチタイムがコミュニケーションタイムに

2021年より新たに「フォーカスランチ」というオンラインのランチ会も始めたそうです。フォーカスランチでは、毎回指名された1名のスタッフが、今興味を持っていることや、これまでの経験など、自分自身をプレゼンテーションしていきます。参加者はランチを食べながらその様子を視聴し、質問なども交えながら、コミュニケーションをとっていきます。発表内容のクオリティが回を重ねるごとに上がっており、同時にプレゼンタへの期待値も上がっているそうですが、ランチタイムに気軽にプレゼンタの人柄を知れる機会ということで、毎回30人程度が参加しているそうです。また、各プレゼンテーションは当日参加できなかった人や新しく入ってきた人のためにアーカイブ化されており、ビデオ社員録のように活用されているそうです。