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2025年6月号

from NTT DATA

生成AIアプリケーションを誰でも開発できるAIエージェント基盤サービス「つなぎAITM」の提供

NTTデータは、日本電子計算株式会社とともに、オフィスワーカーの生産性向上、付加価値業務へのシフトを実現するため、誰もが簡単に高度なAI(人工知能)アプリケーションを開発できる、新たなAIエージェント基盤サービス「つなぎAITM(つなぎあい)」を2025年5月に提供開始しました。つなぎAIは米国のAIテクノロジ企業LangGenius、IncのAIエージェント基盤「Dify(ディファイ)」をNTTデータと日本電子計算が日本企業に適応した独自機能を追加し、充実のサポートと万全なセキュリティで導入企業が安心して利用できるように開発したSaaS(Software as a Service)型のAIエージェント基盤サービスです。

背景

現在、日本では人口減少による労働力人口の減少加速、IT人材不足といった社会問題があり、生成AI(人工知能)活用の需要が急激に高まっています。しかしながら、生成AIの業務への活用には専門知識を持つ人材の確保や、多大なコストなど多くの課題もあります。NTTデータと日本電子計算株式会社は、誰でも簡単に高度なAIアプリケーションを開発できるというコンセプトのもと、AIエージェント基盤サービス「つなぎAITM(つなぎあい)*1」を開発しました。つなぎAIは、LangGenius、IncのAIエージェント基盤「Dify(ディファイ) Enterprise」にLLM(Large Language Models)の利用制限値設定などの予算管理機能やロール権限機能など日本企業に適応した独自機能を追加し、充実のサポートと万全なセキュリティで専門的な知識がなくても導入企業が安心して利用できるSaaS(Software as a Service)型のAIエージェント基盤サービスです。Dify Enterpriseは生成AIアプリケーションを開発できるプラットフォームで、AIエージェントや、複雑な処理を行うAIモデルを、ノーコードで簡単に構築することができます。つなぎAIによりDify Enterpriseの企業向けのSaaS提供は国内初となります。2024年にNTTデータとトヨタ紡織が実施した旅費申請・精算のAIエージェント開発検証においては、通常開発では3カ月程度かかるAIアプリケーションをわずか2週間で開発し、開発期間を約80%短縮することができました(図1)。

*1 「つなぎAITM」は日本国内における日本電子計算株式会社の商標です。https://winactor.com/product/tsunagi-ai/

つなぎAIの特長

つなぎAIはプログラミングの専門知識がなくても、独自のAIエージェント構築が可能です。データ加工の手間を圧倒的に削減し、企業内のナレッジ活用を推進します(図2)。

■日本企業に適した独自の組織管理機能

つなぎAIサービスは、LLMの利用制限値設定などの予算管理機能やロール権限機能、認証認可(SSO)、管理者権限や部署単位での権限設定やロール権限の付与により安心・安全にご利用いただける環境を提供します。

■サービス連携機能

つなぎAIサービスでは、NTTデータが提供するRPA(Robotic Process Automation)ソリューション「WinActor」や他社サービスと連携しやすい支援ツールやAPI(Application Programming Interface)連携機能を提供します。具体的には、NTTデータが作成した支援ツールを活用することでPDF出力が容易になったり、AI-OCR機能などを搭載することでさらなる業務効率化につなげることができます。そして、これまではRPA製品単独では難しかった判断を必要とする審査業務においても、AIがプロンプトで考えてどの情報を参照するかを判断するので、高速かつ正確に複雑な案件の審査の遂行支援が可能になります。

■豊富な標準テンプレート

(1) WinActor×生成AIで業務自動化範囲を拡大
つなぎAIとWinActorを組み合わせることで、データの収集や数値の集計、その後のレポート作成の一連のオペレーションをの自動化が可能です。具体的には、定型業務として作業が必要なデータの取得や加工、グラフの作成をWinActorが担い、それらのインプットデータを基にレポートのフォーマットへの出力やレポート内容に対する定性的な文章生成をつなぎAIが担うことで、最終報告資料の作成まで一連の作業を自動化することが可能です。これにより、煩雑なレポート作成作業にかかる時間を大幅に削減でき、効率的な業務遂行が可能となります。すべての作業が自動化されるため、人手でのヒューマンエラーも低減され、正確な報告資料を効率的に作成できる利点があります。つなぎAIとWinActorの連携により、業務プロセスの効率化と生産性向上に貢献することが期待できます。
(2) AIアシスタントが業務の属人化を解消
つなぎAI上に構築したAIアシスタントが担当者の問合せ業務をサポートすることで、顧客や関係者からの問合せ対応を大幅に効率化します。FAQ等に記載されている問いに対する簡単な問合せに関しては、24時間体制で回答が可能となります。また、回答することが難しい内容に関しても、過去の問合せ対応履歴や関連ドキュメントから最適な回答を導き出すことができます。これにより、専門知識を持つ別の担当者にエスカレーションされるケースの減少や、回答へのリードタイムの短縮が可能となります。さらに、AIが回答できず担当者が回答せざるを得ない問いに関しても、回答後に問合せ内容と回答内容の組合せからFAQを自動で生成することが可能です。つなぎAIを活用することで、均質な品質でFAQを作成することが可能となり、組織のナレッジとして形式知化され、組織全体の効率を向上させることが可能です。
(3) データ加工へのLLMの適用による人手作業の工業化
アンケート結果や、過去のメール問合せ回答のメールアーカイブをつなぎAIを介してLLMを適用することにより、人手作業の工業化を実現します。つなぎAIとRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)、LLMによる文書理解、AIワークフローによる分類によって、従前は、人手で実施していた記述式アンケートの分類付与や要約作成に加えて、文章の好悪感情を判定することによって、従来は外部に委託していたようなレポーティング作業を自動化することが可能です。また、サービスデスク業務において、やり取りしていた過去のメール問合せ回答の内容から不要な内容をクレンジングして整形・加工することによって、AIチャットボットのINPUTデータ等のデータ利活用しやすいかたちに加工する作業を自動化することが可能です。

■充実したサポート体制

つなぎAIは、NTT DATA各社と300社以上にのぼる特約店ネットワークを活用し、伴走型でサポートします。具体的には、作成したPoC(Proof of Concept)モックを活用しAI活用の検証等を通じて顧客のニーズに応じたサポートを提供します。WinActorをはじめとした多数のRPAツール・業務効率化ツールにおける支援実績を持つ当社は、そこで培ったパートナーネットワークを活かし、現在の支援基盤を最大限に活用することで効率的かつ効果的な支援を実現します。

■コミュニティ機能

誰でも簡単に生成AIアプリを作成することができる「つなぎAIサービス」だからこそ、ユーザどうしの情報交換やテンプレート共有を促進するためのコミュニケーション機能「ユーザフォーラム」を提供しています。この機能では、さまざまなトピックに基づいたサークルの作成・参加により、メンバーどうしで自由に意見交換ができます。またユーザは簡単に疑問を投稿でき、他ユーザやNTTデータからの回答が期待できます。これにより、AIアプリ作成時の疑問点を自分自身で確認・解決し、市民開発をすることが可能となります。そして、つなぎAIの学習や習熟のためにeラーニングやTipsもコミュニティ機能内で閲覧できます。NTTデータは、このコミュニティ機能を通じて、つなぎAIを活用する皆様の業務効率化を全面的にサポートしていきます。

活用事例

■メールナレッジを活用したFAQ抽出・チャットボット構築

(1) 課題
・人手不足により、1人の窓口担当者がすべての問合せ対応を実施。
・複雑な問合せ対応が多く、業務歴の長いベテラン担当者による対応が必要なため属人化している。
・1件の問合せにつき、これまでの問合せ歴・マニュアル確認等で対応に数時間を割くことも多く、非効率的かつ業務負荷が高い。
(2) 活用方法
・過去の問合せ歴(メールナレッジ)や仕様書からFAQ一覧の作成。
・上記FAQを活用したチャットボットを構築。

■複数の文書管理ソースをAI統合検索

(1) 課題
・業務にかかわる文書管理ソースがHubble、Notion、ファイルサーバに散逸していて、統合的に検索する手段がないため、非効率な状況が生じている。
(2) 活用方法
・HubbleやNotionなどをつなぎAIとAPI接続し、ファイルサーバをクローリング等行うことにより、複数の場所にある文書を一括で検索することで、業務効率化を実現。

■記述式アンケートの分類、要約、レポーティング

(1) 課題
・記述式アンケートの分類、要約、レポーティングをしたうえで、各課に配布する業務を人手もしくは外部委託で実施しており、作業負荷やコストがかかる状況が生じている。
・アンケートの記述内容から意見のポジティブ、ネガティブを判断し、ネガティブに対しては、関係部署に即時にエスカレーションする等の作業が必要となるため、人手を外せない状況が続いている。
(2) 活用方法
・記述式のアンケート結果をExcelに貼り付けしたうえで、つなぎAIとAPI接続し、LLMを活用することで、記述式アンケートの分類、要約、レポーティングの自動化を実現。
・LLMの文書理解を活用することで、文書で表現されている内容について、機械的に一次分類を行い、アンケートの記述内容の判断支援の高速化を実現。

■出張計画の作成

(1) 課題
・出張計画を作成する際に、自身の予定表を確認し、交通ルート検索、宿泊先検索をしたうえで出張計画作成を行うが、各システムを個別に参照、検索するため、1つひとつの作業時間は短いが累積で大きな時間を要している。
(2) 活用方法
・メールソフトの予定表とつなぎAIをAPI接続することで、空き予定を確認。つなぎAIをAIアシスタントとして活用することで、乗り換え案内サービスやホテル予約サイトとAPI接続することで、ルート検索およびルート取得、ホテル空室情報をリアルタイムで取得する一連の処理を実施。また、出張計画の作成およびセルフ審査を支援することで、トータルの作業時間の大幅な短縮を実現。

■会議の録音データからの文字起こし

(1) 課題
・会議の録音データを人手で文字起こしを実施しており、文字起こし作業自体と、文字起こし結果のレビューを複数名が実施するため、作業時間を多く要しており、作業負荷が大きい状況が生じている。
(2) 活用方法
・録音データをつなぎAIを介してLLMを活用し、文字起こしを実施し、話者特定も併せて実現することにより、文字起こし作業の自動化を実現。また、精度の高い文字起こしにより、レビュー個所や、手戻りを削減することで、業務効率化を実現。

今後の展開

NTTデータは、WinActor導入・保守で培ったNTT DATA各社と300社以上にのぼる特約店ネットワークを活用し、つなぎAIを2027年に導入社数600社、2025年から2027年の3カ年累計で40億円の売上高をめざしていきます。そして、今後はつなぎAIのサービスラインアップをさらに拡充し、さらなる業務効率化や働き方改革を支援するとともに、生産年齢人口の減少やIT技術者の不足などの社会課題解決に貢献していきます。
NTT DATAは、積極的なAI活用の推進とガバナンスの両輪でお客さまのビジネス、社内のビジネスの変革を推進します。お客さまのビジネスでは、AIエージェントが指示に応じ自律的に対象業務のタスクを抽出・整理・実行する「SmartAgent*2」の実現をめざします。社内のビジネスでは、ソフトウェア開発の大幅な生産性向上や実践的生成AI人財の育成を加速します。これにより、人手不足等の社会課題解決に貢献するとともに、人が付加価値の高い業務領域に注力できる世界を実現していきます。

*2 「SmartAgent」は日本国内における株式会社NTTデータグループの商標です。

NTTデータ
社会基盤ソリューション本部
ソーシャルイノベーション事業部
アセットビジネス担当

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