2026年1月号
from IOWN Global Forum
IOWN Global Forum ミッドタームメンバミーティング(ダラス)と活動の報告
IOWN Global Forum(IOWN GF)は、2025年9月30日~10月3日に米国・ダラスにてミッドタームメンバミーティングを開催しました。世界各国から約240名のメンバを迎え、IOWN GFで検討を進める技術・ユースケースや次年度計画に関する活発な議論がなされました。10月2日には、IOWN GF の一般公開イベントであるFUTURES も併催され“AI Infrastructure of the Future。”をテーマとして、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術の重要性や展開について講演がありました。ここでは本メンバミーティングの模様と合わせてIOWN GFの最近の活動状況について報告します。
IOWN GF 2025年ミッドタームメンバミーティング(ダラス)開催報告
IOWN GFでは、毎年秋に全メンバ向けのミッドタームメンバミーティングを開催しています。このミーティングでは、SC(Steering Committee)/WG(Working Group)/TF(Task Force)における技術・ユースケースの実現に向けた検討や次年度計画に関する議論などを行っています。
今回、現地には世界約60の会員企業・組織から、240名以上のメンバを迎え(写真1)、オンラインメンバも加わって活発な議論がなされました。
オープニングプレナリでは、President and Chairpersonの川添雄彦氏(NTT)がオープニングメッセージとして、フォーラムの成果に対するメンバの貢献に感謝の意を示しました。またAI(人工知能)需要の増加によってネオクラウドと呼ばれる事業者が登場するなどネットワークに期待される要件に新たな変化が起こっている点についても言及し、こうした変化に対応するうえで圧倒的な大容量・低遅延・低消費電力を実現するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の技術基盤が、AI時代の社会インフラとして極めて重要な役割を果たすことを強調しました。
続いて3名の業界リーダによる基調講演が行われました。はじめに、テキサス大学ダラス校のAndrea Fumagalli教授は、Open ROADMによるマルチベンダ対応の最新動向を紹介し、IOWN GFが実現をめざすマルチベンダによるOpen APN(All-Photonics Network)アーキテクチャの実装が着実に進展していることを主張しました。
続いて、AT&TのJohn Gibbons氏はOpen ROADMとIOWN GFがこれまで光ネットワークのオープン化で協働してきた点を挙げ、引き続き経済的なネットワークの実現に向けて連携することへの期待を示しました。また、OCP(Open Compute Project)FoundationのCliff Grossner氏は、OCPとIOWN GFがすでにOCP APAC Summitにおいてマーケティングでの協力を開始していることに触れ、今後はOCPでのプロダクト化に向けた連携を強化することへの強い期待を示しました。
その後、Andrea Fumagalli教授、John Gibbons氏、Cliff Grossner氏にTechnology Working Group(TWG) Chairの川島正久氏(NTT)を加えたパネルディスカッションが行われ、ハードウェアも含めた光ネットワークのさらなるオープン化やAI需要に対応するコンピューティングインフラの変革などの領域においてOpen ROADM、OCP、IOWN GFが連携することで課題解決を加速する重要性が示されました(写真2)。
また今回のメンバミーティングでは、lOWN技術の実行可能性、価値、およびパフォーマンスを実証した Recognized PoCの中 から、年間最優秀賞であるImplementation of the Yearとして、IOWN技術を活用したライブミュージックを実現する実装モデルを検討する「Reference Implementation Model for the Interactive Live Music Entertainment Use Case」が選ばれました。そして、本PoCをリードする富士通、Keysight Technologies、NEC、ソニー、住友電工のPoCチームが表彰されました。
メンバによるプレゼンテーションセッションでは、AI時代におけるネットワークの進化とIOWNの可能性を多角的に示す7件の発表が行われました。
セッション前半では、AIネイティブなネットワーク設計や6G(第6世代移動通信システム)の将来像、光技術による高効率なフロントホール構築など、次世代ネットワーク基盤の革新をテーマとする発表が続きました。AIとネットワークが相互に支え合う構造への転換を見据え、IOWNがその中心的な役割を果たす重要性が改めて強調されました。
続く発表では、地域社会や産業への展開が取り上げられ、台湾をはじめとする各国のICTエコシステムによる取り組みや、再生可能エネルギーを活用したスマートシティ構想など、IOWNのビジョンが各地で着実に実装されつつあることが紹介されました。
最後に、IOWNの社会実装とエコシステム拡張をテーマに、Open APN Functional Architecture においてOpen APNとDCI(Data Centric Infrastructure)をつなぐ新たな層として規定する、DN (Deterministic Network)を活用したネットワーキングの実装が進展していること、またIOWN技術を活用したネットワークソリューションがすでに実用化され、多くの顧客から高い関心を集めており、IOWNが研究開発段階を越え、社会実装の段階へと確実に進化していることが示されました。会合では、これらのプレゼンテーションに加えて、WG/TFでの議論、ワークショップが行われ、光トランスポート、AI、最新のユースケースなどに関するさまざまな議論が活発に行われました。また、IOWN GFのメンバ間交流のためのさまざまなネットワーキングの機会が設けられ、コミュニティ形成が促進されました。
なお、次回のメンバミーティングは2026年4月14日~17日にオーストラリア・シドニーで開催される予定です。


FUTURESダラス2025
2025年10月2日にメンバミーティングに併催して、IOWN GFの一般公開イベントであるFUTURESダラスが開催されました。FUTURESの目的は、産業界・学術界・政策関係者など外部のステークホルダを対象にIOWN 技術開発やユースケース創出の状況や展開を伝えるとともに、メディアやアナリストをとおしてIOWN GFの取り組みの重要性やインパクトに対する認知を広げることで、IOWNのエコシステムを拡大して普及を加速することです。
今回のFUTURESダラスでは、300名を超える現地メンバと50名を超えるオンラインメンバを迎え、“AI Infrastructure of the Future。”をテーマとしたプレゼンテーションやパネルディスカッションを通じてIOWN GFの活動や技術を紹介するとともにAIの台頭がインフラストラクチャ要件をどのように変革しているかを探りました。
基調講演では、米国の民間シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のGregory Allen氏が、グローバルAIインフラ市場の機会と課題を解説しました。Allen氏は、AI性能の指数関数的な成長が巨大な経済的機会を生む一方、その最大の課題は、データセンタの膨大な電力需要にあると指摘し、IOWN GFはネットワーキング技術でこの電力課題を解決する重要な役割を担うと強調しました。
続いてComputer WeeklyのJoe O’Halloran氏がモデレートするパネルセッションには、NTT、Microsoft、Intelの専門家が参加しました。セッションでは、AIによるネットワーク需要の爆発的な増加といった現実的な課題が議論され、これらの課題解決の核としてAPNを活用したデータセンタの分散配置や電力効率化、ネットワークのプログラマビリティ、そしてAIによる運用自律化など、具体的なIOWN技術の活用事例が紹介されました。
その後、EricssonのGonzalo Camarillo氏、NTTの川島氏、VIAVI SolutionsのSameh Yamany氏による講演も行われ、IOWN GFの活動成果と産業への適用への展望を示しました。
またメンバ組織による技術展示も行われ、1FINITY、Anritsu、中華電信、安藤・間、ITRI、NTT、Pegatronなどが光ネットワーク・コンピューティングに関する最新技術を紹介しました。
IOWN Global Forumの活動状況
IOWN GFでは、FUTURESのほかにも対外的な連携を加速しています。2025年6月にはKubeCon + CloudNativeCon JapanのゴールドスポンサーとしてIOWN GFのブース出展および“CDI (Composable Disaggregated Infrastructure) BoF*: Unlocking Disaggregated Computing for Cloud-Native Applications” と題し、柔軟で効率的なクラウドネイティブ インフラストラクチャを構築するための画期的なアプローチであるCDIに特化したBoFセッションを開催しました。
2025年7月には、IOWN GFの川添氏が、ITU(International Telecommunication Union)事務総長のDoreen Bogdan-Martin氏を訪問し、より持続可能でスマートな社会を世界規模で実現するために、ITUとIOWN GFのさらなる協力を加速することで合意しました。
2025年8月には、ハードウェアの仕様や設計のオープンソース化を進める非営利組織のコミュニティであるOCPが開催するOCP APAC SummitにおいてNTTの荒金陽助氏が“Open Collaboration for Next-gen Communication and Computing Infrastructure”と題した基調講演を行うとともに、IOWN GFが“Optical Communication Networks”と題したブレークアウトセッションをホストし、光通信に関連する多数のプレゼンテーションを通じてIOWN GFがネットワーク、コンピューティングの分野で先進的な技術開発やユースケースの開発をリードしていることをアピールしました。
2025年10月には、光通信に関するヨーロッパ有数の会議であるECOC(European Conference on Open Communication)にIOWN GFブースを出展しました。このように、世界の各地でIOWN GFのビジネス展開に向けた、エコシステムの拡大に取り組んでいます。
さらに、2026年3月に開催される世界最大の通信業界イベントであるMWC(Mobile World Congress)やOFC(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)では昨年に引き続き、IOWN GFのブース出展を予定しています。MWCにおいては、ブース出展に加えてIOWN GFの主要メンバや外部パネリストを招いた講演セッションも実施する予定です。
またIOWN GFは、IOWN技術の実装を促進するため、IOWN GFが公開するPoC Referenceに基づいて開発されたPoCを認定するプログラムを実施しています。2025年度のこれまでの約半年間に、このプログラムでは、Open APN Architecture PoC Reference Version 1.0で定義されているOpen APNアーキテクチャに準拠したAPN-GおよびAPN-T機能への適合や、PoC Reference for Mobile Fronthaul over APN Version 2.0に準拠したPtMP(Point-to-Multipoint)型APN技術の評価などを対象とする新たな3件のPoCが、「Recognized PoC」として承認され、公開されました。
これらの積極的な活動により、IOWN GFのメンバは増加しています。2025年度これまでの約半年間で、Turkcell、三井住友フィナンシャルグループ、SOITEC、ピュア・ストレージ・ジャパン、Morgan Stanley、インテック、パトラス大学、Smartoptics、STNet、九州大学、トランスコスモス、Astrape、山下PMC、Broadcom、IHI、NCHCなどが新たに参画し、現在、世界中の約170の企業・組織が加入しています(2025年10月末)。IOWN GFは、今後も新メンバの加入を勧めるとともにメンバ間で連携した活動を加速していきます。
* BoF: Birds of a feather flock togetherという英語のことわざを略した言葉で、共通の興味や関心を持つ人々が集まって自由に議論する非公式な集まりのこと。
■参考文献
(1) https://iowngf.org/itu-secretary-general-and-the-iown-global-forum-president-and-chairperson-meet-to-accelerate-further-collaboration/
(2) https://iowngf.org/content-type/proof-of-concepts/
