NTT技術ジャーナル記事

   

「NTT技術ジャーナル」編集部が注目した
最新トピックや特集インタビュー記事などをご覧いただけます。

PDFダウンロード

2026年8月号

特集2

つくばフォーラム2026に見るアクセスネットワークの研究開発

アクセスネットワークで拓く未来 新たな価値創造とサステナブル社会への貢献

NTTアクセスサービスシステム研究所は、お客さまとNTTビルを結ぶアクセスネットワークに関する研究開発を行っています。アクセスネットワークを取り巻く環境は近年大きく変化しており、新たな価値創造とサステナブル社会への貢献に向けてNTTアクセスサービスシステム研究所はチャレンジを続けています。本稿では私たちが描く「アクセスネットワークで拓く未来」の紹介と、アクセス分野の最新技術を展示した「つくばフォーラム2026」について紹介します。

小松 宏至(こまつ こうじ)
NTTアクセスサービスシステム研究所
所長

はじめに

情報通信ネットワークにおいて、NTTアクセスサービスシステム研究所が所掌する「アクセスネットワーク」はお客さまとの接点を担い、情報通信の発展を広げていくという大変重要な役割を担っています。アクセスネットワークの発展は目覚ましく、光通信においては2001年にFTTH(Fiber To The Home)のサービスが開始されて25年が経過し、光ファイバの整備率は全国で97%を超えました。無線通信においても、5G(第5世代移動通信システム)サービスの人口カバー率は98%を超えています。アクセスネットワークは経済活動のベースになっていることに加え、個々人の生活レベルにも深く浸透しており、すでに社会にかかすことのできない重要な社会インフラの1つとなりました。
一方で、アクセスネットワークを取り巻く環境も大きく変化しています。1番目は、新たな需要・プレイヤの登場です。近年の目覚ましいAI(人工知能)の発展や、AIを支えるデータセンタへの投資の増加は目を見張るものがあります。今後、人々が当たり前にAIを利用する将来では、アクセスネットワークの役割も変化が求められています。2番目は、インフラ設備の老朽化と維持・運用の問題です。2025年に発生した八潮の陥没事故に端を発し、インフラ設備の老朽化は喫緊の社会問題となっています。高度経済成長期以降に整備された、道路橋、トンネル等のインフラ設備は、2040年にはその多くが建設から50年を超えますが、私たちNTTの通信設備も同様の状況にあります。また、2050年までに生産年齢人口が3000万人以上減少すると見込まれており、老朽化していく社会インフラをどのように維持・運用していくのかが問われている状況です。加えて、近年激甚化する豪雨災害などの自然災害への対応も避けては通れない大きな課題です。
このように変化する環境の中で、将来のアクセスネットワークはどのように利用され、どのような技術が重要になってくるかを想像した世界観を「アクセスネットワークで拓く未来」として紹介します。

アクセスネットワークで拓く未来

図1は少し先の将来、アクセスネットワークの発展によって実現される多様なユースケースを散りばめた世界観です。少し先の将来では、さまざまな分野でAIとの連携が当たり前となり、自律的に稼働する工場や、自動化・遠隔化が進んだ一次産業、エンターテインメントの分野では場所の制約を超えたサービスの提供、モビリティの分野では輸送の3次元化・自律化が進むと予想しています。また、社会インフラそのものは人手不足の問題に対応すべく、運用の自動化が実現されていると想像しています。このような未来社会においては、アクセスネットワークを支える光インフラ設備やオペレーションの重要性がますます高まっていくと考えています。
工場におけるロボットとフィジカルAIの連携や、新たなエンターテインメント体験では、多数・多様な端末を用途や環境変化に応じて柔軟に収容することが求められます。そのためには、低遅延アクセスネットワークとセンシングなどの環境把握が重要となります(図2)。
モビリティや一次産業の分野では、陸・海・空すべてのモビリティの収容と運用自律化が必要となり、無線のカバレッジ拡大と大容量化、センシングによる環境把握が重要となります(図3)。
社会インフラでは自動的な状態把握や劣化・故障の予測・復旧による運用自動化が求められます。そのためには、光ファイバセンシングや衛星モニタリングに加え、データ統合と協調管理が重要となります(図4)。
このような未来を実現するために、これからのアクセスネットワークは「AIなどさまざまな通信を支える設備」への進化が求められます。AIとの連携が当たり前となった世界において、通信需要にこたえる大容量化や、データセンタ内の超並列光接続、アクセスも含めたAPN(All-Photonics Network)の展開などIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の具体化とともに、メタル回線撤去に伴う電柱の削減やルーラルエリアにおける無線化などによる、通信設備の最適化を進めていきます。また、設備だけではなく運用面の進化も求められます。情報通信ネットワークの運用ではAIを最大限に活用し、AIによる状況把握だけではなく対処までも完結する完全自律運用を進めていきます。
次に「アクセスネットワークで拓く未来」の実現に向けて、NTTアクセスサービスシステム研究所の最新技術を展示した「つくばフォーラム2026」について紹介します。

つくばフォーラム2026

NTTアクセスサービスシステム研究所は毎年5月に茨城県つくば市のNTT筑波研究開発センタにて「つくばフォーラム」を開催しています。つくばフォーラムは1990年にアクセスネットワークの最新技術を紹介する展示会・技術交流イベントとして始まり、2026年は第36回となります。NTT研究所をはじめとして、NTTグループ各社や共催団体など多くの皆様にご参加いただき、年を重ねるごとに規模を拡大しており、2026年は出展社数113社、来場者数9367人の大規模なイベントとなりました(図5)。
つくばフォーラム2026は「アクセスネットワークで拓く未来 新たな価値創造とサステナブル社会への貢献」をテーマとして、前述した未来を実現すべく、アクセス分野の最新技術を「光通信」「無線通信」「オペレーション」「通信インフラ設備」「社会インフラ設備」の5つのカテゴリで展示しました。これらの最新技術については、NTTアクセスサービスシステム研究所のプロジェクトマネージャー、グループリーダーから本特集の中で紹介します。
つくばフォーラム2026では初めての取り組みとして、NTTアクセスサービスシステム研究所の検証設備の見学ツアーを開催し、ご来場いただいた皆様に世界最先端のアクセス分野の研究開発を支えてきた大規模な検証設備をご覧いただきました(図6)。また、テーマの1つである「新たな価値創造」に向けて業界を横断した技術交流やビジネス創出を目的とした「社会インフラ技術展示」コーナーを設け、NTTグループを含む13社の企業に出展をいただきました。同じくテーマの1つである「サステナブル社会の貢献」向けて「環境・エネルギー展示」コーナーを設け、NTT宇宙環境エネルギー研究所のレーザ無線給電やドローンによる雷誘発・誘導などの最新技術に加え、サステナブル社会の実現に資する製品などを共催団体8社より出展いただきました。

おわりに

本稿では私たちが描く「アクセスネットワークで拓く未来」の紹介と、アクセス分野の最新技術を展示した「つくばフォーラム2026」について紹介しました。NTTアクセスサービスシステム研究所は最先端のアクセスネットワーク技術の研究と実用化により、社会課題の解決と新たな事業価値の創造に挑戦し続けます。

小松 宏至

NTTアクセスサービスシステム研究所は、お客さまとNTTビルを結ぶアクセスネットワークに関する研究開発を行っています。本稿では私たちが描く「アクセスネットワークで拓く未来」とその最新技術を展示した「つくばフォーラム2026」について紹介します。

NTTアクセスサービスシステム研究所
企画担当

DOI
クリップボードにコピーしました