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特集

NTTグループのSmart Infraへの取り組み

現場がつながるGISプラットフォーム──トリプルIPによる高度な空間マネジメント

NTTインフラネットは、NTTグループが保有する膨大な量の基盤設備を一元管理するため、設備の位置や属性情報を管理する多種のオープンソースソフトウェアをコントロールするミドルソフトを独自開発し、描画の設定、データ入出力、データベースおよびテーブルの結合等をユーザがノンプログラミングで自由に設定できるGISプラットフォーム(トリプルIP)を構築しました。トリプルIPをベースにした設備データベースを構築し活用することにより、社内外の設備管理業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)化を推進しています。本稿ではトリプルIP技術とその活用事例について紹介します。

吉田 浩隆(よしだ ひろたか)/伊勢 誠(いせ まこと)
関口 俊彦(せきぐち としひこ)/蒲池 千恵(かまち ちえ)
NTTインフラネット

GISプラットフォーム

GIS (Geographic Information System )は、位置情報に関するデータ(空間情報)を総合的に管理・加工・可視化し、高度な分析や迅速な判断を可能にするシステムです。図1で示すように、各種情報をレイヤごとに分けて格納し、空間情報をキーにしてさまざまな情報を重ね合わせて地理的に一元表示します。情報を俯瞰できるため、業務の効率化、業務連携の推進、情報提供の迅速化に寄与します。
NTTインフラネットでは、NTTグループの基盤設備や社外の公開データを加えて設備マネジメントを行うGISプラットフォームとしてトリプルIP(IIIP:Infrastructure IT Innovation Platform)を開発しました。

図1 GISプラットフォーム(トリプルIP)

トリプルIPの特長

トリプルIPのソフトウェア構成上の特長や独自の機能を紹介します。

■オープンソースの採用

本プラットフォームは、オープンソースを拡張し、多数のオープンソースソフトウェア(OSS)をコントロールするコアソフトをベースとした構成としています。
特にGIS環境としては、圧倒的多数のユーザに利用され安定化したOSSは常に最新技術も反映されることから、その恩恵を受けることができ、さらにデータベースの隠蔽部分および特定のベンダロックからの解放を実現できます。

■ノンプログラミングによる自由度

通信設備は、ルート管理のためルート周辺の設備抽出等の多様な空間演算が必要となります。トリプルIPでは、関連するデータに対してさまざまな条件をand/or/=/not=/≧/≦等を組み合わせた属性検索、空間分布の可視化を実現します。これら検索の自由度に加え、幾何的な描画の自由度とデータベース定義の自由度を有します(図2)。
特に、データベースの自由度ではSQLを記述することなくユーザが指定する任意のキー情報を基に、ノンプログラミングで複数のデータベースをつなぎ合わせたり、座標を管理する基本テーブルに複数のテーブルを付け足す機能を有しています。これにより、設備点検や補修履歴など時系列管理を可能とします。また、独立した異なるデータベースを仮想的に1つのデータベースとして扱い、さまざまな条件で集計や検索をし、基本情報が格納されたテーブルに手を加えることなく属性情報を追加することが可能になります。
例えば、マンホールに関するデータが固定資産データベース、点検補修データベース、占用管理データベースなど独立して存在している場合でも、各データベースをマージすることなく横断的な条件を指定し、その条件に一致するマンホールを検索することができます。また、マンホールに関する点検や補修の履歴データを追加する場合でも、基本データを複製することなく履歴データを追加できるため、基本データを変更することなく時系列の管理ができます。

図2 異なるデータベース間をさまざまな条件にて横断的に空間検索

■外部情報の取り込み

空間データを授受する標準プロトコルや複数の外部交換ファイル形式をサポート(Shape、WMS、KML等)し、任意フォーマットデータにおいてもジオコーディング(地名、住所が示す場所に対して、緯度経度を与えること)する機能を具備しています。そのため、外部のさまざまな空間データベースからデータをリアルタイムに取得し、それらを使いやすく加工し、活用しています。
例えば地震や降雨の情報は気象庁の原典データをリアルタイムに取得・加工し、設備被災把握と点検対象設備の抽出、数時間先の被災予測などを行います。また、自治体が公開する情報および臨時的に公開する情報もユーザが取得先を設定し、リアルタイムに取得しています。

活用事例

■設備管理への活用

これまでは紙の図面により、膨大な量の基盤設備を管理してきましたが、トリプルIPが有する高度な表示、検索、外部データ集計機能および三次元計測機能を活用することで、設備データを一括管理し、設備管理業務のDX化に役立てています。
(1) 三次元計測技術による設備記録図面の絶対座標化
設備管理業務の効率化を進めるためには、正確な位置情報が要求され、高精度に絶対座標を取得する技術が必須です。本特集記事『高精度3D空間情報を活用した地下設備の高精度3D位置情報管理』で詳述する当社MMS(Mobile Mapping System)によって得られる前方ステレオ画像を正射投影変換して得られる正射写真図(道路オルソ)をベースマップに敷き詰めると、絶対位置精度を保った実写の道路平面図が得られます。この道路平面図は、縮尺40分の1以上の超大縮尺図面に相当し、トリプルIPの大縮尺表示機能を用いてハンドリングされます(図3)。この道路平面図上に紙図面を画像化したPDFの設備記録図面を重ね合わせ、図面中の地下埋設ルートをデジタルトレースすることで紙図面の絶対座標化と埋設物設備のデジタル化が実現できます(図4)。また、紙図面上に記録された設備の付帯情報を属性データとして取り込み、その情報とMMS走行で得られたマンホール位置座標から、縦断図や横断図の自動生成を可能にしました。
(2) 設備点検業務の抜本的改革によるスマートメンテナンスの推進
NTTグループが保有するマンホールは、日本全国に約69万個存在し、その設備点検には相当の稼働を掛けてきましたが、MMSをはじめとする三次元計測技術により、個々のマンホールの絶対座標把握が可能となりました(図5上段)。これにより、現地にて任意の設備にスマートフォンをかざすだけで、スマートフォンが設備を認識し、設備名がスマートフォンに表示されます。この際、スマートフォンのGPS座標位置はソフトにて高精度測位処理され、その場で写真撮影すると表示された設備名を括り付けてセンタへ送信します。センタではトリプルIP上に各地から送信された情報が地図上にポップアップします。
これらの基本機能は設備点検、災害時の調査点検に活用され、現地稼働を大幅に削減しています(図5中段、下段)。
3次元データベースと現地情報機器間で、空間情報を相互にリンクさせる使い方がスマートメンテナンスにつながっています。

図3 MMSによる道路平面図の生成

図4 紙図面の絶対座標化

図5 設備位置計測技術に基づくスマートメンテナンスの実現

■災害対策への活用

トリプルIPは、さまざまな情報を「重ねる」「検索する」「抽出する」などの基本機能に加え、タブレットや写真受付機能などにも柔軟に対応可能なシステムです。この特長を活かし、震災や降雨災害時の災害対策にも威力を発揮しています。
データベース化済みの設備情報に加えて、NTTインフラネット独自で集められた情報や、官公庁、自治体、他企業様から公開されている情報までを地理空間上にマッシュアップすることで、被災した設備の面的範囲や量が直感的でありながら定量的に把握でき、迅速な設備復旧計画の立案、効率的な設備点検、設備補修の進捗管理等に活用できます。図6はトリプルIP上で「重ねる」ことができる主な災害関連情報です。これらの情報ソースは、災害時に官公庁から定期的に提供されますが、そのままでは地理空間上に面的展開ができません。そこでオリジナル情報を取り込み、メッシュ加工し、地理空間上でハンドリングできるかたちへと変換した後、トリプルIPへ自動反映させています。
また、トリプルIPは、タブレット機能やスマートフォン写真受付機能など現地との情報連携機能を備えています。タブレット対応しているため、被災先にて使用した場合では現地からトリプルIPにリモートアクセスし、マッシュアップしたさまざまな情報を確認できます。スマートフォンからインターネット経由で被災状況の写真なども受付できるため、災害対策本部等の事務所にて、被災現地の状況をリアルタイムに把握することが可能です。図7に被災場所や被災状況の確認を行うトリプルIP画面の一例を示します。

図6 トリプルIPが提供している主なリアルタイム災害関連情報

図7 被災場所や被災状況の確認画面の一例

今後の取り組み

トリプルIPは、大規模なデータベースとさまざまなアプリケーションによる高度な設備管理の土台として、今後も機能拡大などの進化を続けていきます。高度なデータベース管理上に、AI(人工知能)・AR(Augmented Reality)・VR(Virtual Reality)などの技術を駆使することで、一層の自動化を推進します。また、点検時に撮影された写真を用いたAIによる自動劣化判定技術の開発も行い進化させていきます。

(左から)蒲池 千恵/伊勢 誠/吉田 浩隆/関口 俊彦

トリプルIPはオープンソースをフル活用したGISです。自社設備管理情報に加え、公開されている社外情報をリアルタイムにマッシュアップできるため設備点検や災害対策に活用されています。今後も機能拡充を行い、社内外業務のDX化に取り組んでいきます。

問い合わせ先

NTTインフラネット
DX推進本部 開発部 DX開発担当
TEL 03-6381-6460
E-mail iiip-rep-hqt@nttinf.co.jp