グローバルスタンダード最前線
APT/TTC BSG(標準化格差是正)専門委員会の活動~東南アジア大学連携によるアイディアソンイベントの開催~
一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)のBSG(標準化格差是正)専門委員会では、アジアルーラル地域におけるICTを利活用した社会的課題解決ソリューションの展開・普及をAPT(Asia-Pacific Telecommunity)の支援を受けて行ってきました。今回、各国で実施した農業、水産業、環境、医療、教育、災害予防等のパイロットサイトでのデータを共有するためのプラットフォーム立ち上げを行い、それらの異業種間のデータを活用した新産業を創出するアイディア提案のイベントを開催しました。ここでは各イベントの概要を紹介します。
岩田 秀行(いわた ひでゆき)
NTT研究企画部門
第1回 アイディアソンイベント
2018年12月5~6日にマレーシア クチンのサラワク大学で第1回アイディアソンイベントが開催されました。
oneM2M Workshop (Pre-Ideathon Workshop)
本アイディアソンイベント開催前の2018年11月28日にサラワク大学において、シブ工科大学の講師からoneM2Mの概要説明およびoneM2M仕様サーバ設置のデモ、およびIoT(Internet of Things)デバイスのサーバへの接続デモを70名の学生参加のもと実施しました。
アイディアソンイベント@マレーシア
本アイディアソンイベントには、20チーム、76名のサラワク大学およびシブ工科大学の学生が参加して2日間にわたり実施されました(写真1)。3グループに分けてプレゼンテーションおよびデモを行い、上位チームが再度プレゼンテーションを行い、順位付けを行いました。
参加チームの概要および対象エリアを表1に示します。
発表された社会課題としては、クチンはボルネオ島の地方都市のため、交通渋滞に関する解消の課題は少なく、洪水や森林火災等の災害時のソリューションや、水質を含めた医療ソリューションの提案が主となりました。
写真1 第1回アイディアソンイベント@マレーシアの表彰式模様
表1 第1回アイディアソンイベント@マレーシアの提案内容および対象エリア
第2回 アイディアソンイベント
2019年3月6~8日にフィリピン マニラのアテネオ大学で第2回アイディアソンイベントが開催されました。
Technical Specifications of Workshop
本アイディアソンイベント開催前の2019年3月5日に、アテネオ大学のDaniel氏より、oneM2M仕様サーバにoneM2M仕様IoTデバイスが接続できるようにデモ、説明を26名の学生参加のもと実施されました。
アイディアソンイベント@フィリピン
本アイディアソンイベント(Round2)の前に現地大学側で、16チーム、34名のアテネオ大学の学生が参加のもと予選(Round1)を行い、7チームを選抜しました(写真2)。アイディアソンイベント(Round2)では日本、マレーシア、フィリピンからの審査員のもと審査を行いました。
第2回アイディアソンイベント@フィリピンの提案内容、対象エリア、審査結果を表2に示します。発表された課題は、自然災害が多い地域のため災害に関する課題や医療機関が不足しているため医療に関する課題が多く、それらを含めた町レベルでのソリューション提供として考えている提案が多くありました。
写真2 第2回アイディアソンイベント@フィリピンの模様
表2 第2回アイディアソン@フィリピンの提案内容、対象エリア、審査結果
第3回 アイディアソンイベント
2019年11月8~9日にインドネシア バンドンのバンドン工科大学で第3回アイディアソンイベントが開催されました。
主催者側からはBSG(標準化格差是正)専門委員会から3名、マレーシアから2名、フィリピンから2名の計7名が参加し運営をサポートしました。現地のバンドン工科大学からは、受付、進行、審査員等、先生や学生の20名の支援のもと実施されました。
Workshop on oneM2M
ICTソリューションを提供するうえで、国際標準化されたプラットフォームを活用するということで、参加者に対してoneM2Mの概要の紹介をTTC BSG専門委員会谷川和法副委員長から行いました。また、マレーシアのUTCS(University Technical Colleges)(シブ工科大学)が各参加チームにoneM2M仕様に準拠したIoTツールキットを配布し、omeM2M仕様サーバへの接続のチュートリアルを実施しました。
アイディアソンイベント@インドネシア
今回のアイディアソンには、19チーム、57名が参加しました。アイディアソン本選(Round2)の前に現地運営側で予選(Round1)を開催して、19チームから10チームに選抜されました。主催者から6名、現地運営側2名の審査員で評価を実施しました(写真3)。
参加チームのタイトルおよび対象エリア、審査結果を表3に示します。
発表における社会課題としては、アジア都市部での共通課題である交通渋滞の解消が多く、また、インドネシアではカリマンタン島(ボルネオ島)への首都機能の移行が検討されているため、カリマンタンでの社会課題である泥炭地火災の抑制の提案がありました。
写真3 第3回アイディアソンイベント@インドネシアの表彰式模様
表3 第3回アイディアソンイベント@インドネシアの提案内容、対象エリア、審査結果
今後の展開
アイディアソンを開催するにあたり、異業種のデータを組み合わせ、新しい産業を創出するような提案を期待していますが、まずは直面する社会課題をICTを活用して解決する提案が大半を占めました。主催者側の事前説明不足もあり、次回以降のイベントに反映していく必要があると感じました。今後、アジア太平洋地域での他国での実施を予定しており、将来の目標としては、アジア地域でのイベントに拡張していきます。
ICT人材育成は地域経済の繁栄には必須であり、日本の大学も含めこれらの活動で貢献していきます。