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グループ企業探訪 

第230回 日本情報通信株式会社

情報技術と通信技術が融合した「ICT」の会社

日本情報通信は、NTTと日本IBM の出資により設立された会社だ。IBMの技術(IT)とNTTの技術(CT)が融合した、まさにICTにより、お客さまや社会の「Happiness」をめざす、桜井伝治社長に話を伺った。

日本情報通信 桜井伝治社長

システム開発、データアナリティクス、 プラットフォームのサービスを提供

◆設立の背景と目的について教えてください。

日本情報通信(NI+C)は、1985年12月にNTTと日本IBMの50%ずつの出資により、IBMのコンピュータ、ソフトウェア技術とNTTの通信技術を融合させたビジネス展開を目的に設立されました。グループ会社としてソフトウェア開発を行う「エヌアイシー・ソフト」、SI会社へIBMのハードウェア・ソフトウェアの卸を行うVAD(Value Added Distributer)事業を担う「エヌアイシー・パートナーズ」、EDI、クラウド、マネージドサービスを提供する「エヌアイシー・ネットシステム」の3社を擁し、連結ベースで社員数1100名、売上高約500億円規模の企業グループです。
会社設立当初は、IBMのメインフレームをベースとして、NTTの顧客管理システム「CUSTOM」の開発をはじめとした各種社内システムの開発と、多くの企業のIT化を支援してきました。2020年1月にNTT65%、日本IBM35%と資本構成を見直し、NTT連結子会社になりました。今後はNTTグループ向けの事業、特に社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の領域や、あるいはNTTグループの法人ビジネスの拡大に貢献していきたいと考えています。

◆どのような事業を行っているのでしょうか。

NI+Cの事業は、①システム開発、②データ統合、AI、デジタルマーケティング等システム開発・活用支援、③EDI、クラウド、セキュリティ、マネージドサービスの3本の柱で構成されています。
システム開発については、先述の「CUSTOM」の開発から流れが始まる、大規模システム開発のビジネスです。データ統合、AI、デジタルマーケティング等システム開発・活用支援については、関連するサービスやプロダクトを活用したソリューションをお客さまに提供するビジネスです。ポイントとなるのは、単にシステムやサービスを提供するだけではなく、お客さまの目的に合わせて効果が出るような活用方法のアドバイスや、実際の利用における業務SEのようなかたちで、お客さまに「伴走」しています。EDIについては古くからあるビジネスですが、現在もかなりの需要がある領域です。それに加えて、IBM Power Systems(旧AS/400、AIX)をベースにしたクラウドビジネスとセキュリティも提供しています。特に最近取り組んでいるのはゼロトラストセキュリティの領域、そしてマネージドサービスといったプラットフォーム的なビジネスです。
こうしたビジネスを進める中で、NTTの連結子会社になったことで、これまでのIBMとの連携に加えて、それ以外のパートナーとの連携も増えてきています。

◆どのようなところに注力されていますか

社内DXを推進し、そこで得られたノウハウ、知見を活用してお客さまのDXに展開していきたいと考えています。社内DXは、昨今の新型コロナウイルス対策を1つのチャンスととらまえて、例えば旅費精算の自動化、RPA(Robotic Process Automation)導入といったような社内業務プロセスの自動化や、Google Workspace等のリモートワーク関連サービス・プロダクトの活用等、IT を活用した社内業務プロセス改革として推進していきたいと考えています。
お客さま向けとして、お客さまの新しい事業やエンゲージメントを強化するための取り組みを、データ統合・活用の切り口から推進していきます。これからの企業の成長の源泉はデータであると考えています。そこに着目して企業を眺めると、分散管理されている顧客データ、さまざまなセンサやシステムから排出されるデータ、ドライブレコーダからのデータや運行記録、外部のWebの検索情報・検索履歴等、あらゆるところにデータがあります。こうしたデータをNTTのcorevo®、COTOHA®、IBM Watson といったAIにより、「収集、整理、統合、分析、活用」する事業(データ&AI事業)をさらに強化していこうと考えています。もちろん、システムやサービスの導入のみではなく、しっかりと伴走していくことも重要です。

社員の「Happiness」、そしてお客さまや社会の「Happiness」に向けて

◆社内DXを推進していく原動力は何でしょうか。

社員の能力は大きな原動力になりますので、これを最大限活かすことができるような取り組みを行っています。
まず、人材育成と開発環境の整備です。これからのDX推進に必要なスキルの育成として、マルチクラウド利用のようなクラウドネイティブなスキル・人材、アジャイル開発の手法の1つである「スクラム」に関するスキルやスクラムマスターのような人材を育成し、リモートでのスクラム開発を可能とする環境整備を図ります。
そして、社員の「Happiness」をめざした取り組みです。現在8割程度のリモートワークを実施しており、コロナ禍終息後もリモートを原則とした働き方を継続していくつもりです。リモートワークでは、本題のみが議論されることにより気軽なコミュニケーションが取りにくい、人と会わずに仕事をすることによる社員の孤立化、公私が混ざり合うことでオン・オフがあいまいになりストレスが継続する等の課題がクローズアップされています。これらの解決に向けて、
①社員エクスペリエンス満足度調査、ストレスチェック、パルスサーベイ等社員の満足度、健康状態モニタリングの実施
②その結果に基づく、産業医、カウンセラーによるストレス対処講座、マインドフルネスセミナーの実施
③オンラインミーティングで不足する気軽な立ち話ができる「仮想オフィス空間」の導入、テーマフリーの全社員チャットによる情報交換の促進
④自宅でのテレワーク環境改善のための、大型ディスプレイ、椅子等の会社備品の貸し出し等を行うことで、社員の「Happiness」を促進していきます。

◆今後の抱負についてお聞かせください。

2020年12月に会社創立35年を迎えましたので、今後は次の30年に向けてしっかりとしたビジョンを持って進めていきたいと考えています。このために、先述のとおり、社員の「Happiness」が重要になってきますが、社員のみならずお客さまや他のステークホルダも幸せに、そして社会にも幸せをつくり出すようなICTの活用を推進できる会社にしていきたいと思います。併せてこれからの30年を見据えた未来にコミットしていくために、2050年がどういう社会になるかを思い描き、それを少しでも良い方向にもっていけるような役割を果たせる会社になりたいと考えています。
そのためにも、「Happiness」を重要なキーワードとして、これを基軸に進めていきたいと考えています。

担当者に聞く

システム開発によりNTTのビジネスをサポート

営業統括第一本部 副本部長
江藤 彰彦 さん

江藤彰彦さん

◆担当されている業務について教えてください。

NTTグループの社内系システムと、各社の法人営業部門が提供するソリューションにおける協業ビジネス等に関する営業のマネジメントを担当しています。
NTTの社内系システムに関しては、長年、顧客管理システム「CUSTOM」をはじめとするNTTの基幹系業務システムの開発を行ってきました。昨今では社内DXという流れの中でIBMをはじめとする先進的なソリューションを組み合わせた業務改善、業務システムの開発・提供のほか、NTT開発のソリューション、例えばRPAツール「WinActor®」やイントラマートやIBMなどをはじめとするプロダクトを組み合わせたシステムをNTTグループ各社の事業にご利用いただいております。
NTTグループの法人営業部門との連携に関しては、NTTグループ各社のサービス・プロダクトと、EDI等のNI+Cのサービス・プロダクトやIBMやSASなどのプロダクトを組み合わせるかたちで新しいソリューションとして、法人営業部門と連携して顧客獲得や市場開拓を行っています。また、NTTアドバンステクノロジやNTTテクノクロスとの連携により、研究所開発のRPAツールやコールセンタソリューションの構築支援や、NI+Cのソリューションと組み合わせた複合提案等も行っています。

◆ご苦労されている点を伺えますか。

NTTグループの社内系システムに関して、各事業会社特有の業務や、各オペレーション部門固有のルールにより運用されているケースがあります。NTTグループの中でこうした業務やオペレーション、システムの共通化の動きがあり、またシステム開発においても、機能の共通化を図ることで開発効率の向上、コストの最適化を図っています。このような共通化の動きの中、各社間の業務やプロセスの整理や調整に苦労しました。NI+Cは30年以上にわたって、NTTの業務システムの開発を行ってきており、それをとおしてNTTの業務に関する豊富な知見が蓄積されています。システム開発にあたってはそれを活用して、極力お客さまの業務と実際のオペレーションが変わらない、もしくは逆に変えて効率化できるようにご提案させていただきたいと思っております。

◆今後の展望について教えてください。

これまでの業務システム開発や法人営業連携のソリューション提供に加えて、昨年初より弊社自身がSAP、ワークスを使った人材管理やタレントマネジメント、顧客や社員に対するエクスペリエンス・マネジメントツールであるクアルトリクスなどのパッケージを活用した社内DXに取り組んでいます。その経験をふまえた新しい技術、サービスをNTTグループをはじめ、お客さまへ提案、提供していきたいと思います。

伴走者としてお客さまとともに成長

バリューインテグレーション本部長
内藤 剛 さん

内藤剛さん

◆担当されている業務について教えてください。

ソフトウェアを中心としたソリューション系の開発を担当しています。NTTグループ向けとそれ以外のお客さま向けと両方担当していますが、ここではNTT以外について説明します。
会社設立当初はIBM関連のプロダクトをベースとした、どちらかというとシステム開発・販売的なビジネスでした。その後、ソフトウェア開発に軸足を移し、またデータアナリティクスの会社である「SAS」の日本パートナーになる等、IBM以外にもパートナー連携を広げてきており、最近では、データを「収集、整理、統合、分析、活用」する、データ&AI事業が中心になってきております。
データアナリティクスというと、お客さまからの委託に基づいて、コンサルタントが中心となってお客さまの戦略、マーケティング、データ解析、施策立案等まで行うビジネスが一般的です。NI+Cの場合は、お客さま自らが戦略策定から施策立案・実行までを行うことができるよう、お客さまのチームづくりから支援します。例えば、流通・小売業のマツモトキヨシ様では、リアル店舗やオンラインストア、その他顧客タッチポイントによるデータ収集・分析基盤のシステムセットアップ後は、お客さまチーム内で伴走サポートする当社ITコンサルタントを“先生”と呼んでいただき、お客さまによる戦略策定、施策立案・実行を支援させていただきました。お客さまの業務に一番精通しているのはお客さま自身であり、その部分をお客さまに教えていただき、データ解析等の結果により付加価値を付けた提案をして、お客さまとともに戦略策定・試作立案・実行までご一緒する、まさに伴走です。

◆ご苦労されている点を伺えますか。

最近は世の中の変化が激しくなってきており、特に新型コロナウイルス感染症関連で、これまで以上に人々の生活や移動の変化が激しくなってきております。こうした世の中の変化はお客さまのビジネスに直結する部分も多く、その変化への対応に苦労しています。
当社のお客さまの場合は、導入されたツールに対して習熟されており、お客さまご自身が販売戦略などを行うので、当社としては、顧客接点の仕組みをしっかりと創り、お客さま自身が時代の変化に合わせて接触の仕方や接触する人を変化できるよう、お客さまと一緒に検討していくことで、こうした変化への対応もスピーディに行うことができると考えています。

◆今後の展望について教えてください。

お客さまの伴走をとおして、双方で一緒に考え、実行していくことで、お互いが成長していくような関係を築いていきたいと思います。そのためにも当社としてお客さまの業界のビジネススタイル、サービス・製品の特長、あるいは(ターゲット)顧客について勉強し、これらの変化に追従できるようなシステムを提供していくことが必要になります。
また、こうしたプロジェクトは長期にわたって継続するので、途中でシステムが古くなり、更改が必要になってきます。現在、こういったシステムはオンプレミスの場合が多いので、クラウドにすることで容易に対応できるのですが、このクラウド化は技術的にまだ難しいところがあります。そこで、新しいテクノロジでクラウド化の提案をしていきたいと思います。

アラカルト

■仮想オフィス空間

社員の「Happiness」策の一環で、「仮想オフィス空間」を2020年9月につくったそうです(写真1)。見かけはまさにオフィス空間を再現し、ちょっとした休憩コーナーを設けたフロアを上から眺めたようなものです。フロア内に自分のアバターを置くと、それを見つけた人が寄ってきて、マイクを使って「ちょっとよろしいですか?」と話しかけて立ち話ができます。他の人に聞かれたくない込み入った内容であれば、フロア内の会議室に入って、資料を見せながらの会話もできるそうです。また、イベントホールのような懇親会場も準備されており、普段は社員が自由に利用できますが、貸し切りで部署の懇親会イベントなどにも利用できます。10月には、Web会議によるキックオフミーティングの後の懇親会イベントや、2021年入社予定の就職内定者の内定式も行ったそうです。

写真1

■サーフィンを通じた社員交流

NI+Cにはサーフィン競技のシンボル選手として、石川拳大選手が所属しています(写真2)。2019年までは、国内の大会模様をライブビューイングで社内に放映して大会観戦したり、少しでもサーフィンに興味を持ってもらおうと、辻堂海岸で社員、家族、友人を集めて体験イベントを行ったそうです。体験イベントでは、石川選手が所属しているサーフライダーファウンデーションという団体主催のプラごみアートや、ごみ拾いを通した海の環境保全活動にも取り組まれたそうです。
2020年は新型コロナウイルス対策でこうした取り組みができないので、11月より、先ほど紹介した「仮想オフィス空間」のイベントフロアで社員交流を目的として、石川選手発案実施の毎週水曜15時からの社内オンライントレーニングをライブで行い、その後も各自でトレーニングできるようにYouTube動画で配信をして、テレワークで凝り固まった首や肩をほぐして、リフレッシュしているそうです。何よりも、早く大会が開催されるようになるといいですね。石川選手の公式サイトは、https://kentaishikawa.com/です。

写真2