Event Reports
アクセスネットワークでの価値創造とサステナブル社会を支える 研究成果と技術を体感した「TSUKUBA FORUM 2026」
- つくばフォーラム
- R&D
2026年5月27日(水)と28日(木)の2日間、茨城県つくば市にあるつくば国際会議場とNTT筑波研究開発センタで、通信技術の未来を体感する「TSUKUBA FORUM 2026」が開催されました。今回のテーマは、「アクセスネットワークで拓く未来 新たな価値創造とサステナブル社会への貢献」。通信インフラに関する技術開発やアクセス分野の課題解決に取り組むNTTアクセスサービスシステム研究所(以下、AS研)を中心に、NTTグループ各社やパートナー企業、協賛団体が最新の研究成果や取り組みを紹介。次世代の通信を支えるIOWN/6Gをはじめ、無線ネットワークを意識させないナチュラルな通信環境を創造する「Cradio®(クレイディオ)」などの先進技術や、インフラ設備の現場を支える技術・解決策など、アクセスネットワークの現在を知り未来を感じるイベントになりました。
NTTアクセスサービスシステム研究所
「IOWN」「tsuzumi」「量子コンピュータ」「量子AI」を柱としたアプローチを展開
NTT研究企画部門 木下部門長の基調講演「光とAIを軸に研究開発CoEを目指すNTT研究所 ~IOWN, tsuzumi, 光量子コンピュータの社会実装を通して~」では、NTT研究所の重要戦略である「IOWN」「tsuzumi」「量子コンピュータ」「量子AI」について、それぞれの重要性や特性などが紹介されました。

講演で木下部門長は、AI開発が膨大なコストや消費電力が必要な「超大規模な装置産業」へと進む中で、NTT研究所は、IOWN(AIの実行環境の効率化)とtsuzumi(AI自身の効率化)によるアプローチを展開。この2つに、光量子コンピュータ(計算性能の飛躍的な向上)と量子AI(人間の脳に近い効率的なAI)を加えた4つを柱としたアプローチを展開し、AI開発に対応していくことを紹介しました。また、IOWNはロードマップ1.0から2.0へと進展し、tsuzumiは世界トップクラスの日本語性能と視覚読解性能を証明していること。光量子コンピュータは常温・常圧で動作する方式であり、光通信技術との高い親和性があることや、省電力で効率的な学習が期待できる量子AIの研究開発に挑戦していくことを言及しました。
光ファイバの大容量化やフィジカルAIとの連携制御を可能にするSDN化技術
展示では、AS研を中心にNTTグループ各社やパートナー企業、協賛団体が最新の研究成果や取り組み、製品などを紹介しました。AS研の展示では「光通信技術」「無線通信技術」「オペレーション技術」「インフラ設備」などのテーマに関連した研究成果や取り組みを紹介しました。
「光通信技術」の展示では、アクセスネットワークの大容量化や柔軟性、低遅延性、運用性の向上をめざした技術などを紹介しました。
AIやクラウドサービスの進展でデータセンタを中心に光ファイバ需要が爆発的に増大する中で、AS研は光の通り道(コア)を複数有したマルチコア光ファイバ(MCF)の研究開発を進めてきました。
「マルチコア光ファイバの適用拡大に向けたコア技術」の展示では、MCFの空間多重伝送という特徴を利用して、一度に接続するコア数を増やすことや複数のコアを一括で増幅することで、従来のシングルモードファイバよりも光コネクタ数や接続稼働の削減、増幅電力を低減することを可能にする技術を紹介しました。この技術のポイントは、多心のMCFが集積した状態で回転調心することと、増幅用ファイバの構造を最適化することにより1つの励起光で高効率に一括増幅できることになります。

「現地稼働を削減する産業用機器SDN化技術」の展示では、産業用ロボットの機能ソフト化により、フィジカルAIと連携し、ネットワーク越しの制御を可能にする技術を紹介しました。産業用機器SDN(Software Defined Networking)化技術は、ネットワークプロトコル機能とロボットの制御機能をソフトウェア化し、エッジの計算リソースに実装できることが特徴です。これにより、メーカーの違いを吸収するドライバーや作業モデルのモジュール化が可能になり、ロボット導入を短期間かつ低コストで実現できることで、生産ラインの自動化の普及が期待できます。
展示では、異なるメーカーのロボットアームを2台設置し、管理端末からコマンド操作して同じ作業を別メーカーのロボットアームに引き継ぐ様子を、デモを通じて紹介しました。SDN化技術は、現地稼働を削減するとともに、エッジのリソースを活用したフィジカルAIとの連携制御を可能にする技術として期待されています。

通信断のない高信頼な無線通信でロボット農機の遠隔操作を可能に
「無線通信技術」の展示では、IOWNを支える中核技術として注目されているCradioの最新機能やユースケースをはじめ、通信品質の向上や無線の大容量化、低遅延化、高信頼化などを実現する技術を紹介しました。
CradioはWi-Fi、5G、NTN(非地上系ネットワーク)など、異なる複数の無線システムの通信品質の変化を予測し、制御することで、高品質な無線アクセスを実現するマルチ無線プロアクティブ制御技術です。都市部の繁華街やイベント会場などで安定した無線通信を提供し、スマートシティの自動運転やスマート工場の遠隔操作でも効果を発揮すると期待されています。
今回、Cradioのユースケースとして紹介されたのが「山間部でもロボット農機の遠隔操作を可能にする通信技術」の展示です。これは、NTT研究所とNTTドコモがクボタと共同で実施した実証実験の内容と成果を紹介する展示です。山間部での遠隔操作は、地形や基地局の少なさからモバイル通信が途切れてしまうことが課題になっていました。実証実験では、NTT研究所の技術であるCradioと協調型インフラ基盤技術によりモバイル通信回線と衛星通信回線を併用し、通信を安定化しました。また、伝送する映像について重要領域とそれ以外に分け、重要領域の映像品質は確保しながら、それ以外の領域をCradioで予測した通信品質に合わせて圧縮するNTTドコモの映像制御技術を組み合わせることで、ロボット農機の遠隔操作に必要な領域は鮮明なまま、山間部でも映像を途切れることなく送信できることを確認しました。

高精度な予測技術と無線制御で通信品質の安定化やユーザー満足度を向上
「オペレーション技術」の展示では、ユーザーニーズに対応した柔軟なネットワークサービスの提供を可能にする、ネットワーク運用業務の自律自動化によるサービス提供や保守の効率化、迅速化を実現する技術を紹介しました。
「イベント会場でのIntent予測に基づく無線制御」の展示では、来場者のネットワーク利用要望を予測し無線制御を最適化する技術を紹介しました。Intent予測とは、人の行動データから「何をしたいのか」「何を求めているのか」といった意図(Intent)を先回りして予測することです。天候やチケット売上といった外部情報と無線ネットワーク情報から来場者の要望を高精度に予測し、予測した要望を満たすように無線ネットワークをプロアクティブに制御します。これにより、イベント会場での無線通信品質の安定化やユーザー満足度の向上を可能にし、基地局設備などの増設抑制にも貢献します。

光ファイバの特性を利用したモニタリング技術や適切な動作経路を誘導するガイダンス技術
「インフラ設備」の展示では、通信インフラに関する業務の省人化や効率化、安全性向上をめざした技術や、社会インフラのさまざまな課題を解決する技術を紹介しました。
「橋梁添架設備の振動モニタリング技術」の展示では、光ファイバの振動データを解析して橋梁添架設備の損傷を検知する技術と取り組みを紹介しました。橋梁添架設備の保守では労働人口の減少を背景に、従来の人手に依存した目視点検の維持が困難な状況です。さらに目視点検では、現地点検が必須であるため、判定者による評価結果の差異が生じてしまいます。その解決策としてAS研では、光ファイバの振動データから損傷を検知するモニタリング技術の確立に取り組んでいます。
この技術の特徴は、光ファイバそのものの振動データを解析して損傷を検知するので、点検用に何らかのセンサーを新たに設置する必要がないこと。また、異常や損傷のない健全時の振動データがなくても、点検時の振動データだけで損傷を検出することが可能なことです。今回の展示では、現状の取り組み内容と検証で使用している模擬橋梁を紹介しました。今後は、適用範囲を広げて橋梁本体での技術確立をめざしていきます。

「重機操作ガイダンス技術」の展示では、適切な重機の動作経路を誘導する操作ガイダンス技術を、電柱と建柱車によるデモを通じて紹介しました。これまでの電柱を吊る方式の建柱車は、電柱の揺れを抑えるために振止者が必要でした。しかし最新の把持(はじ)式建柱車は、電柱をアームで挟み込むので振止者は不要です。
この展示で紹介した重機操作ガイダンス技術は、把持式の建柱車で安全かつ効率的な重機動作経路を自動生成して操作者に案内する技術です。はじめに、レーザー光を利用して対象物までの距離や形状を高精度に計測するセンシング技術(LiDAR)で収集した点群データから作業現場の構造物や障害物を把握。続いて、建柱車の姿勢センサーと重ね合わせて、安全かつ効率的な操作経路を自動生成し、操作者は画面に表示された案内に従い操作レバーを動かします。この技術により、電柱の設置を安全かつ効率的な動作で行うことが可能になります。AS研では、重機操作の自動化や自律化を視野に入れ、研究開発を進めています。

架空ケーブル撤去技術や通信ビル設備移装プロジェクトを支える技術を紹介
NTTグループ各社の展示では、通信インフラの運用・保守、オンサイト作業、架空ケーブル撤去、地下光ケーブル布設などの効率化を目的とした技術をはじめ、アクセスネットワークや通信設備に関連したケーブルや装置、取り組みなどを紹介しました。
NTT東日本、NTT西日本、NTTアーバンソリューションズの3社による展示では、建設が進められている「NTT日比谷タワー」や全国の通信ビル設備移装プロジェクトの様子、光ケーブルの切替モデル(地下光クロージャ)などを映像や模型、パネルを通じて紹介しました。

NTT東日本とNTT西日本のアクセス技術や通信設備に関する展示では、架空ケーブル撤去や地下光ケーブル布設の効率化技術などを紹介しました。展示では、空気圧送機を用いて地上に設置した検証用のダクトに光ケーブルを布設するデモを実施。架空ケーブルを非昇柱で切断する技術や自動で牽引回収する技術などが紹介されました。
その他にも、自動巡回ロボットによる屋内通信設備の点検自動化の取り組み(NTT東日本)、ドローン×AI技術を活用したインフラ構造物のメンテナンス技術(NTT e-Drone Technology)、海底ケーブルサンプルや海底ケーブル敷設船「VEGAⅡ」模型(NTTワールドエンジニアリングマリン)などが紹介されました。
アクセスネットワークの未来に向けて通信・社会インフラの課題解決に挑戦
IOWN/6GやAIをはじめとしたアクセスネットワークの未来を創造する最新技術や、Cradioなどを活用した通信・社会インフラの課題解決に向けた取り組みなどを紹介した「TSUKUBA FORUM 2026」。 今回紹介された研究成果や技術が広く適用・実装されるよう、これからもNTTグループR&Dの挑戦を紹介していきます。

