Event Report
「つくばフォーラム2020 ONLINE」開催報告
2020年の「つくばフォーラム」は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、例年会場としている筑波研究開発センタ(つくば市)では行わず「つくばフォーラム2020 ONLINE」と題し、10月29〜30日の2日間(展示期間は11月30日まで)にわたり「スマートな社会を実現する アクセスネットワーク 〜IOWN構想を実現する革新技術と事業へ貢献する先端技術〜」をテーマに、オンラインにて開催しました。ここでは、本フォーラムの講演や展示などの開催概要について紹介します。
棚瀬 章文(たなせ あきふみ)†1/石原 浩一(いしはら こういち)†1
田口 勝久(たぐち かつひさ)†1/高木 郁子(たかぎ いくこ)†1
猪狩 亜紀子(いがり あきこ)†2/安嶋 悟(あじま さとる)†2
NTTアクセスサービスシステム研究所†1
NTT-ATテクノコミュニケーションズ†2
開催にあたって
働き方や生活が大きく変化する中で、スマートな社会の実現をめざし、社会の変化に対応して人や企業の活動を支えるアクセスネットワークをより発展させたいという思いを込め、「スマートな社会を実現する アクセスネットワーク 〜IOWN構想を実現する革新技術と事業へ貢献する先端技術〜」をテーマとして開催しました。NTTアクセスサービスシステム研究所に加え、共催団体、NTTグループなどから85団体(表)が参加し、最新の研究開発や技術動向の紹介、展示を行いました。
講演概要
基調講演1、2は初日にライブ配信を行いました。
■基調講演1
澤田 純NTT代表取締役社長が、「アフターコロナ社会におけるNTTグループの取り組み」と題して講演を行いました(写真1)。詳細は本誌特集『つくばフォーラム2020 ONLINE 基調講演』をご参照ください。
■基調講演2
上原 一郎NTT西日本 代表取締役副社長が、「スマートな地域社会の実現に向けて 〜ソーシャルICTパイオニアをめざして〜」と題して講演を行いました(写真2)。詳細は本誌特集『つくばフォーラム2020 ONLINE 基調講演』をご参照ください。
アンケートの結果より、聴講者の99%の方から「参考になった」「講演内容が分かりやすく、NTTの取り組みへの理解が深まった」とのコメントをいただきました。またオンライン化されたことで聴講場所や定員の制限がなく、かつオンデマンドでも1カ月間配信したため、例年の4倍近くの多くのお客さまに聴講していただきました。
ワークショップ
ワークショップは、初日9時より約1カ月の間、オンデマンドにて配信されました。NTTインフラネットの担当部長およびNTTアクセスサービスシステム研究所(AS研)のプロジェクトマネージャ2名により講演を行いました(写真3)。
■ワークショップ1
NTTインフラネット Smart Infra推進部 プラットフォーム戦略担当 高木 洋一郎担当部長が「スマートインフラPFの取り組みについて」と題して講演を行いました。詳細は本誌特集『つくばフォーラム2020 ONLINE ワークショップ』をご参照ください。
■ワークショップ2
NTTアクセスサービスシステム研究所 アクセス設備プロジェクト 片山 和典プロジェクトマネージャが「次世代光線路技術の研究開発の取り組み」と題して講演を行いました。詳細は本誌特集『つくばフォーラム2020 ONLINE ワークショップ』をご参照ください。
■ワークショップ3
NTTアクセスサービスシステム研究所 光アクセス基盤プロジェクト 吉田 智暁プロジェクトマネージャが「APNを支えるPhotonic Gatewayと光アクセス技術」と題して講演を行いました。詳細は本誌特集『つくばフォーラム2020 ONLINE ワークショップ』をご参照ください。
技術交流サロン
共催団体、NTTグループ各社、NTT研究所による三位一体の取り組みとして「宇宙衛星利用」「スマートアクセス」の2テーマで、各社の事例を紹介したパネルディスカッションの様子をライブ配信しました。
■技術交流サロン1
「宇宙衛星利用」のテーマでは、NTTアクセスサービスシステム研究所 無線エントランスプロジェクト 衛星通信グループ 山下 史洋グループリーダがファシリテータを務め、「身近な宇宙・衛星利用の世界を実現するための期待と課題」と題し、JAXAやスカパーJSATがNTTグループとともに登壇し意見交換を行いました。第1部は、山下ファシリテータが現在の宇宙衛星を取り巻く背景を紹介し、なぜ今、宇宙衛星利用が盛り上がろうとしているのかについて、宇宙衛星分野にかかわるパネラーの皆様が実際にどのように感じているか意見を述べていただきました。第2部は、NTTグループを取り巻く宇宙衛星利用と課題について、NTTドコモ、NTT東日本、NTTコミュニケーションズより、現在の宇宙衛星利用例、課題、今後の期待についてそれぞれ紹介していただき、新たな宇宙ビジネスにチャレンジするうえでの課題について意見交換を行いました。第3部は、 JAXAとNTT研究所の宇宙衛星R&Dを紹介し、2030年に向け、日本が宇宙衛星利用・ビジネスを先導して展開するにはどのような分野のR&Dや国家施策・企業施策が必要かについて議論しました(写真4)。
■技術交流サロン2
「スマートアクセス」のテーマでは、NTTアクセスサービスシステム研究所 アクセス運用プロジェクト 海老根 崇プロジェクトマネージャがファシリテータを務め、「スマートアクセス 〜ロボティクスによる自動施工・遠隔制御に向けて〜」と題し、NTT東日本、通信建設会社が登壇し意見交換を行いました。第1部は、海老根ファシリテータがスマートアクセスに取り組む背景と方向性として、通信建設業界を取り巻く環境変化や所外業務効率化の動向、所外設備マネジメント業務のスマート化に資する技術確立、今後の架空構造物の施工に関する開発の方向性について説明し、重機による自動施工・遠隔制御を視野にパネラーの皆様が抱える課題やメタル設備の今後の対処などの効率化の阻害要因など、生の声を交え意見交換を行いました。第2部は、今後の業務をどのように変えていくかについて、素材や工法の見直しの必要性や自動化しやすくする取り組みの一例として、バーチャル空間上で作業指示をしてショベルカーで穴を掘る映像で紹介しました。AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)等で大きな技術進歩がみられることも合わせ、従来の業務を抜本的に変えるIOWN時代のアクセス業務のあり方について議論し、最後に、AS研は現場のために現場に寄り添って現場をきちんと支え未来の姿を実現したいと述べました(写真5)。
技術交流サロンのライブ配信中には、オンラインで聴講者が登壇者へ質問できる場を設け、多くの聴講者から「有意義だった」とのコメントをいただきました。
展示概要
オンライン展示では、AS研からの出展にとどまらず、共催団体およびNTTグループ各社よりアクセスネットワークに関する約150の展示について、各社の製品や取り組み状況を動画やスライド等で紹介しました(写真6)。2日間の開催日には各出展社ブースに展示説明員が待機しており、直接チャットやメッセージ、ビデオ会議等の対応を行いました。
■企画展示
共催団体、NTTグループ各社、NTTの三位一体の取り組みとして、「災害対策への貢献」「ニューノーマルへの貢献」に関する各社の取り組み内容を展示しました。アンケートの結果からは、企画展示ブース来訪者の96%のお客さまから「大変参考になった」「参考になった」との回答が得られました。災害対策への貢献について、過去の経験を活かし取り組んでいることがよく理解できた、資料が非常に参考になった等、またニューノーマルへの貢献については、掲載されていた研究所の技術についてぜひ自社でも使ってみたいと感じた等のコメントが寄せられました(写真7)。
■NTT展示
NTT展示では、スマートな社会を実現する、アクセスネットワーク技術を「IOWN構想を実現する革新技術」と、「事業へ貢献する先端技術」としてテーマ名に沿った展示ホールを設け、研究開発成果を紹介しました(図)。展示の中には、Web会議(Webex)で研究者と直接会話できる機能を設け、来訪者に理解を深めていただける展示をしました(写真8)。
(1)IOWN構想を実現する革新技術
空間多重ファイバ・伝送技術、フォトニックゲートウェイ技術、Cradio™(マルチ無線プロアクティブ制御技術)などのアクセスネットワークの革新技術の取り組みを紹介しました。IOWN構想実現に向けたアクセスネットワーク技術の研究開発方針、アナログRoFシステムのための遠隔ビームフォーミング技術、IOWNオールフォトニクス・ネットワークの多様な構成要素を統一管理するネットワークリソース管理技術(NOIM)、通信ネットワークを利用した光ファイバ環境モニタリング技術、オールフォトニクス・ネットワークを支えるマルチコア光ファイバ・ケーブル技術、オールフォトニクス・ネットワークを支えるフォトニックゲートウェイ、超大容量高速無線通信実現に向けた高周波数帯分散アンテナシステム技術、低軌道衛星MIMO技術・衛星センシングプラットフォーム技術、プロトコルフリー伝送の実現に向けた広帯域FM一括変換光伝送技術、Cradio™における無線動的制御技術、インテリジェント空間形成技術、インテリジェント空間形成技術(仮想大規模MIMO伝送技術、品質評価プラットフォーム、無線センシング)、AIを活用した最適エリア設計技術、ミリ波帯測位センシングによる高速移動ギガビット伝送・高速ハンドオーバ制御技術、無線ネットワークに依存しない集中制御による品質制御技術、マルチネットワーク-マルチ端末間の接続先最適化技術について、Webexで研究者と直接会話できるお薦め展示として紹介しました。
(2) 事業へ貢献する先端技術
保守運用自動化・効率化技術などの事業や現場業務に変革をもたらし、社会課題解決へ貢献する先端技術を紹介しました。IoT向け無線LAN規格IEEE 802.11ahの安定運用のためのマネジメント技術、加入者系ディジタル無線技術(TZ-68D)、所外設備の長期安全利用に向けた弓支線の検証、地下設備の絶対座標取得技術および管理・運用、とう道管理システムの高度ICT化、自動飛行ドローンによる首長マンホールの点検技術、ヒトの高度な判断を再現する采配高度化技術、クライアントサイドでユーザ/システム連携を実現するUI拡張高度化技術について、Webexで研究者と直接会話できるお薦め展示として紹介しました。
■一般社団法人 情報通信エンジニアリング協会(ITEA)
これまでに培った技術・ノウハウを継承し、品質の向上や効率化を図るとともに、大規模災害時の迅速な設備復旧等、安心・安全・信頼される情報通信インフラ設備の実現に向けた取り組みを紹介しました。
■通信電線線材協会
現場でご尽力されている方のお役立ちから、IOWNにつなげるモノまで、26社の最新製品・技術を「通信ケーブル最前線」「つなぐ技術最新動向」「架空関連技術勢揃い」の3ホールで紹介しました。
■全国通信用機器材工業協同組合(全通協)
「DXの進展に確かな技術とモノ創りで挑戦する全通協」をキャッチフレーズに、個社の卓越した技術力による製品の開発と、組合員一丸となった相乗効果による総合力を発揮したデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展への取り組みを紹介しました。
■NTTグループ
出展したNTTグループ各社は、DXをさらに推進し、豊かな社会の実現に貢献するための最新技術を紹介しました。
■その他のオンライン機能
2日間の開催日には、ログインした参加者が誰でも自由に書込可能なオープンチャットスペースとして「交流ひろば」を提供しました。またオンラインサイト上で使用できるバーチャル名刺として「vCard」機能をご利用いただき、参加者どうしが相互にコミュニケーションを図り交流を深める場を設けました。例年大変ご好評いただいているスタンプラリーについては、講演の聴講や展示ブースの訪問など一定の条件を満たすとポイントが付与されたスタンプが獲得できるという流れで今回も実施しました。3000ポイント以上獲得された方の中から抽選でノベルティをプレゼントしました。
開催結果の総括
初めてのオンライン開催となりましたが、過去最高の約9000名の方にご登録いただきました。オンライン展示については、展示物やデモを見たり触れたりできない、参加者の反応が分からない等の課題もあり、現地開催を望む声も挙がりましたが、一方で場所や定員などに依存せず、参加者自身のペースで展示の閲覧や講演の視聴ができるとの高い評価を得られました。基調講演は例年の約4倍、技術交流サロンは例年の約3倍と、大変多くの方に視聴していただき、大好評のうちに終了することができました。つくばフォーラム2020 ONLINEのテーマについては、93%の方が実感できたと回答し、IOWN展示について将来性を感じた、参考になったとの意見が多数寄せられました。IOWN構想の具現化に向けた革新技術と社会課題解決や事業貢献のための先端技術についてのオンライン展示を通じ、これまで以上に価値ある情報共有の場として充実したイベントとなりました。
謝 辞
本フォーラムの開催にあたり、共催としてご協力いただきました一般社団法人情報通信エンジニアリング協会、通信電線線材協会、全国通信用機器材工業協同組合の皆様に厚くお礼申し上げます。
(左から)田口 勝久/猪狩 亜紀子/安嶋 悟/棚瀬 章文/高木 郁子/石原 浩一
問い合わせ先
NTTアクセスサービスシステム研究所
企画担当
TEL 029-868-6040
FAX 029-868-6037
E-mail tforum2020-info-pb-ml@hco.ntt.co.jp
アクセスネットワークが社会インフラとしての信頼性を担保し、安心・安全なサービスを提供し続けるためには、社会および関連する産業界の方々との連携が欠かせません。今後も本フォーラムが良き交流の場となり、アクセスネットワークの発展に貢献できるよう、事務局一同、努力していきます。