テクニカルソリューション
地下メタルケーブル保守稼動削減に向けた「圧力発信器チェッカー」の開発
道路などの地下に敷設されている地下メタルケーブルには、メタル心線の電気的特性を良好な状態で保てるように乾燥空気が供給され、複数個所に設置された圧力発信器で供給区間の状態(乾燥空気の圧力)を遠隔で把握しています。しかし、圧力発信器の故障が疑われる場合であっても、その正常性を遠隔にて確認することが困難な状況でした。そこで今回、NTT東日本技術協力センタでは、圧力発信器の正常性判断を遠隔で行える「圧力発信器チェッカー」を開発しましたので紹介します。
地下メタルケーブルへの浸水防止
地下メタルケーブル(ケーブル)は、クロージャと呼ばれる接続かん内で接続され、管路やマンホールなどの地下設備の中に敷設されています。地下設備では、雨水などが溜まることがあり、ケーブルやクロージャが水の中に置かれることがあります。その際、ケーブルやクロージャへ水が浸入すると、ケーブル内のメタル心線の電気的特性が劣化し、通信サービスに影響を与えることになります。そのため、ケーブルやクロージャが浸水しないように、ケーブルへ乾燥空気(ガス)を供給し水の浸入を防いでいます。ケーブルへ供給しているガスやケーブル内のガス封入状況を、ガス圧遠隔監視システムにより常時ケーブル内のガス圧力を遠隔にて監視を行い、地下メタルケーブルへの浸水を未然に防いでいます。
圧力発信器の役割
ガス圧遠隔監視システム(システム)では、ケーブル内のガス圧を遠隔で監視するために圧力発信器を用いています。ケーブルごとに複数個の圧力発信器が接続点となるクロージャに設置されており、それぞれの圧力発信機は設置個所のガス圧を定期的にシステム側へ送信する重要な役割を担っています(図1)。
システムには、すべての圧力発信器の設置位置が事前に登録されています。ケーブル区間においてガス漏洩が発生した場合、圧力発信器からの圧力値と設置位置からケーブルのガス圧力分布図を作成することで、ガス漏洩個所の位置(距離)の推定が行えます(図2)。これにより、現地で漏洩個所の探索作業の範囲を絞り込むことができ、効率的な保守作業を行うことができます。
現在、実設備では2号、3号、4号の3種類(図3)が運用されています。
図1 設備構成
図2 正常な圧力発信器によるガス圧力分布(イメージ図)
図3 圧力発信器(外観)
圧力発信器が不良となった場合の問題
実際にガスの漏洩が生じた現場では、ガス圧力の分布から漏洩個所を推定し探索を行います。その際、推定個所近辺での漏洩点が確認できず、推定個所から大きく外れた場所で確認されることが、時々報告されています。
漏洩個所が推定個所より大きく外れる可能性として、①同一ケーブルにおいて漏洩個所が複数存在する、②圧力発信器が不良となり正確な値をシステムが受信できていない、ことが考えられます。漏洩個所を推定し探索する場合、①のケースでは複雑なガス圧力分布図となるため推定が困難ですが、複雑な圧力分布図をさまざまな観点で解析することにより、推定個所を絞り込むことが可能です。しかし、②のケースでは、誤った情報を含む圧力分布図になるため、解析しても正確な漏洩個所を絞り込むことが極めて困難になります。
例えば、本来より低い圧力値を受信している場合(図4(a))では、実際の漏洩個所とは異なった個所が推定され、それを基に探索することになります。また、本来より高い圧力値が受信されている場合(図4(b))では、真の漏洩個所を絞り込むのが極めて困難になり、推定される漏洩区間が広範囲となります。
こういった場合、複数のマンホール内に入って実際の圧力値を測定し、本来の圧力値を確認し、その測定値を基にガス圧力分布図を作成して漏洩個所の推定を行うことになります。しかし、交通量などの関係で容易にマンホールを空けられなかったり、マンホールに入るために水抜きや換気作業など多くの稼働が発生することや、道路上での作業が多くなることから危険が伴うことになります。
図4 ガス圧力分布(イメージ図)
不良な圧力発信器を特定するための課題
圧力発信器が不良となった状況で早期に漏洩個所を推定するには、不良となった圧力発信器を特定し、①取替えを行う、②圧力分布図から圧力値を除外する、方法が考えられます。①②ともに不良となった圧力発信器を早期に特定することが重要になります。しかし、不良な圧力発信器を特定するには、圧力発信器が設置されている複数のマンホールに入り、直接圧力値を測定する方法しかないのが現在の状況です。
そこで、誤った圧力分布図に惑わされ、漏洩個所の探索に多くの稼働が費やされないようにするため、複数のマンホールにて測定することなく早期に不良な圧力発信器を特定することが課題になります。
課題を解消するツールの開発
3種類の圧力発信器の動作状況などの分析を行ったところ、各号ごとに動作時の消費電流値が異なり、さらに正常と不良時において消費電流値が異なることが分かりました。そこで、今回、この特性を活用した圧力発信器の良否判定機能を有する圧力発信器チェッカーを開発しました(図5)。
本チェッカーを用いた圧力発信器の良・不良の確認は、通信ビルから行うことができます。通信ビルにて、良否判定を行いたい圧力発信器が収容されているケーブルの心線に接続し測定を行うことで、該当ケーブルに収容されているすべての圧力発信器の良否判定が行えます(図6)。また、通信ビルから測定が可能なため、複数のマンホールに入ることなく、遠隔で不良となった圧力発信器を見つけることができます。
本チェッカーを用いることで、遠隔にて早期に不良な圧力発信器の特定を行うことができ、確実性が高い漏洩個所の推定を行うことができます。
図5 圧力発信器チェッカー
図6 測定結果(良否判定・号数判別)
今後の展望
ここでは、地下メタルケーブルの複数個所に設置されている圧力発信器に対し、遠隔で正常性確認が行える
「圧力発信器チェッカー」について紹介しました。今後、圧力発信器異常と思われる実設備のケーブル区間においてトライアルを実施し、判定精度の向上を図っていきます。
また、メタルケーブルでは、長年利用してきた設備を限られたリソースで維持するために、さらなる知恵と工夫が求められています。技術協力センタでは、55年以上にわたり技術協力活動を行ってきました。これまでに蓄積された知識と経験を基に、引き続きアクセス設備の信頼性向上や故障の早期解決、および保守コスト低減に向けた取り組みを進めていきます。
問い合わせ先
NTT東日本
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技術協力センタ アクセス技術担当
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