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特集

新たな環境エネルギービジョン

NTTデータが挑むグリーンイノベーション

NTTデータは社会のカーボンニュートラルの達成に向け全社で取り組みを進めています。ソフトウェア開発・システム開発の観点でのCO2排出量測定のための基準づくりや、データセンタの省エネルギー化の実現のために、金属3Dプリンタを用いた取り組み、またグローバルではCO2吸収源として森林に着目し、吸収量の正確な測定を試みる取り組みを進めています。本稿ではNTTデータならではの取り組みの一部を取り上げます。

下垣 徹(しもがき とおる)†1/南田 晋作(みなみだ しんさく)†1
古川 洋(ふるかわ ひろし)†1/濱野 賢一朗(はまの けんいちろう)†1
小林 佑輔(こばやし ゆうすけ)†1/ 常見 幸平(つねみ こうへい)†1
遠藤 冴己(えんどう さえき)†2
NTTデータ†1
JSOL†2

グリーンイノベーション推進室設立

NTTデータはグローバル社会のカーボンニュートラルに向けたグリーンイノベーションを促進するため、2021年10月にグリーンイノベーション推進室を新設しました。
社会全体のCO2排出量削減に向けて、国内事業分野、海外グループ会社と連携し、コンサルティングによるお客さまの削減計画立案の支援や、グローバルスタンダードなソリューションによるCO2排出量の可視化、デジタルを活用したプラットフォームによるサプライチェーン全体でのCO2排出量削減などを進め、脱炭素化社会の実現に貢献します。また、NTTデータが保有するデータセンタの省エネ化および再生可能エネルギーの導入や、ソフトウェア開発における環境負荷低減に向けた取り組みを、国内事業分野、海外グループ会社と連携して推進します。
NTTデータのサプライチェーン全体のCO2排出量可視化を実現するとともに、自社のCO2削減を推進する仕組みづくりを進め、2030年には、SBT(Scienced Based Targets)イニシアティブより認定を受けた1.5℃目標(2030年度に2016年度比60%削減)の達成、さらには、2040年にはNTTグループが目標とするカーボンニュートラル実現をめざします。
NTTデータが考えるカーボンニュートラルに向けて、温室効果ガスの可視化から、温室効果ガスを減らす、あるいは回収・吸収や相殺、取り組みを支援する仕組み等、社会のグリーン化に向けデジタルを活用した取り組みを進めていきます(図1)。

ソフトウェア開発におけるグリーン貢献

ソフトウェア産業における脱炭素の取り組みでは、CO2排出量の多くを占めるデータセンタや、それを構成するハードウェアに注目が集まり、その高度化・効率化による排出量の削減が進められてきました。この分野では電力効率の高い革新的なハードウェアや、運用技術を積極的に評価検証・導入するほか、データセンタの再生可能エネルギー導入をさらに進めることで一層の削減が進むと見込まれます。これらに加え、NTTデータではソフトウェア領域の努力にも注力しています。
ハードウェアの消費電力は常にカタログ上の定格電力どおりというわけではなく、その上で動くアプリケーションにより実際の電力消費は変化します。さらに、同じ機能のアプリケーションであってもソフトウェアの実装により電力効率は変化します。そのため、より効率の良い“グリーンなソフトウェア”を構築する技術を蓄積、標準化していくことにより、低炭素排出なシステムを実現していきます。
また、今後各地でデータセンタの再生可能エネルギー導入が進むと、より効率の良いデータセンタにシステムを移設する要望が出ると見込まれます。しかし、一般にシステムは下位レイヤの構成に縛られ乗せ換えるのは容易ではありません。そういった障壁を解消するポータビリティの技術開発にも取り組んでいます。
このように、ソフトウェア産業では新たな削減努力を積み増す余地がまだまだあると考えられます。一方、システム開発で一般的に用いられる排出量算出基準は規模に原単位を乗じるもので、これを用いると規模すなわち値付けにより排出量が決まります。そのため、システム選定の際に排出量が考慮されなくなるおそれがあります。この状況から前に進むべく、NTTデータはソフトウェア領域において排出量削減の努力が反映される新たな算出基準の検討を進めており、それをグローバルな標準としていくべく、2021年9月にGreen Software FoundationにSteering Memberとして加盟しました。同団体は2021年5月に設立され、ソフトウェア領域における排出量基準の策定をめざしているほか、グリーンなソフトウェア開発に向けたアセット、ベストプラクティス、教育を含めたエコシステムを構築するとともに、その普及展開を進めていきます。NTTデータは自社の知見やノウハウを提供し、運営メンバとして議論をリードすることで、自社だけでなくソフトウェア産業全体のグリーン化を推進していきます(図2)。

グローバルでのグリーン化への取り組み

カーボンニュートラル世界の実現に向け、世界の中でもいち早くかつ意欲的に取り組みを進めている欧州において、NTTデータグループも2009年より専門組織を立上げ、コンサルティング能力、都市計画・土木にかかわるエンジニアリング能力を蓄積してきました。現在、180名を超えるメンバが電力、ガス、水道含めたユーティリティ分野を中心にお客さまのサステナブル経営をサポートしています。
NTTデータでは、企業活動におけるGHG排出削減の支援に加え、ネガティブエミッション、吸収源としての森林に着目した研究開発を行っています。EUでは2030年までに年間3億1000万トンの吸収を目標とし、各国ごとの目標値を法定、義務化する動きが進んでいる一方で、この実現にあたっては、吸収量の正確性と検証コストの両立が大きな課題になっており、地上での実地計測・評価に加えて、より効率的かつ正確に測定する手段の確立が求められています。
NTTデータでは衛星画像などリモートセンシング、AI(人工知能)技術を用い、数年間にわたる吸収量予測も含めた手法の確立とITプラットフォームの開発を日欧で共同にて進めています(図3)。

サプライチェーンを通じた脱炭素化/JSOL

2050年カーボンニュートラルを実現するため、JSOLは、SAPと協業して、メーカが調達プロセスを通し、サプライヤ・グリーン商材プロバイダと共同で、カーボン排出量の削減に取り組むことができるサービス提供を検討しています。
サプライチェーン全体の中で、原材料調達におけるカーボン排出量の占める割合が大きい一方で、現在のカーボン排出量の算出方法は、カーボン排出削減効果が加味されていない原材料のカーボン排出原単位で計算しており、サプライヤがカーボン排出削減に取り組んでも、その効果が反映されません。
この課題解決のため、カーボン排出量を削減した原材料とそのカーボン排出量情報を集め、その原材料を調達することによりメーカとサプライヤが共同でカーボン排出量の削減に取り組めるようなサービスを提供したいと考えています(図4)。
JSOL法人未来会議・カーボンニュートラル活動メンバ(遠藤冴己、牛渡久美子、田野周、友田忠志、任田紘子、船渡大生<順不同>)

Additive Manufacturing/コンピュテーショナルデザイン NTT データザムテクノロジーズ

近年、その性能を最大限に引き出せるデザインを、トポロジー最適化や形状合成等の数値計算により導き出す、「Computational Design」の活用領域が飛躍的に広がっていますが、優れたデザインには、鋳造・焼結・塑性加工・接合加工等、従来の加工方法では造形自体が難しいものも多いです。ロケットエンジンの開発にも携わっているNTTデータザムテクノロジーズでは、積層造形(Additive Manu­facturing:AM)技術を活用した金属3Dプリンタにより、従来の加工法では難しい3次元複雑形状品を加工する技術の研究を続けていますが、データセンタの省エネルギー化に寄与するチップセット排熱効率化を実現する複雑形状のヒートシンクの開発も手掛けています。効率は材料にも左右されるため、Materials Informaticsに長けた英国企業との提携も行いながら、事業化に向けた検討を行っています(図5)。

(上段左から)下垣 徹/南田 晋作/古川 洋/濱野 賢一朗
(下段左から)小林 佑輔/常見 幸平/遠藤 冴己

私たちの日常生活においても気候変動による異常気象等が増えてきています。私たちの将来の世代のためにもサステナブルな社会を築いていくことがとても大切。これにはグローバルでさまざまな活動をする方たちとつながり、カーボンニュートラルに向けた活動を進めていく必要があります。私たちは、デジタル活用したグリーンイノベーションを皆様と協力して進めていきます。

問い合わせ先

NTTデータ
グリーンイノベーション推進室
E-mail climate@kits.nttdata.co.jp