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グローバルスタンダード最前線

ASTAP-34会合報告

2022年4月18~22日に第34回ASTAP(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)会合が開催されました。今回の会合は新型コロナウイルス感染症拡大の影響のためオンライン形式で開催され、19カ国の加盟国から約230名(登録)が参加しました。ここではASTAP-34と併設されたインダストリワークショップについて報告します。

荒木 則幸(あらき のりゆき)
NTT研究企画部門

ASTAP概要

APT(Asia Pacific Telecommunity)はアジア・太平洋地域でのICT分野の開発を促進している国際機関であり、1979年に設立され、アジア・太平洋地域の38カ国が加盟しています(1)
ASTAP(APT Standardization Program)はAPTにおいて標準化活動を推進している会議であり、1998年に発足しました(2)。主な目的は、①APT地域内の標準化における協力・協調体制を構築し、国際標準化に貢献すること、②APT地域内の標準化活動者を育成するとともに、地域内メンバー、特に開発途上国メンバーのICT分野のスキル開発を支援すること、③ITU等の国際標準化機関へ地域標準化機関として共同提案を行う、などです。APT地域での仲間づくりと開発途上国への貢献の場として、ASTAPを活用していくことは重要であり、日本における標準化の国際連携の戦略としても重要な課題の1つと考えられます。ASTAP-33は2022年4月18~22日に開催され、19カ国の加盟国から約230名が参加しました。また、本会合の初日には“Blockchain”に関するインダストリワークショップと“Guidelines on setting up National ICT Standardization Regime”に関する標準化ワークショップが開催され、約130名が参加しました。

ASTAPの組織構成

ASTAPの組織構成および役職者を表1に記載します。ASTAP-34では、新たに日本からEG BSGの副議長としてTTCの眞野正稔氏が任命されました。また、各Working Group (WG)、Expert Group (EG)の議長もしくは副議長を日本が務めることにより、各グループでの議論を日本がリードできる体制となっています。

作業方法の見直し

ASTAPの議長、副議長等からなるSteering Committeeより提案があり、ジェンダー平等の観点から、会議中での議長の呼称や文書の記述を“Chairman”から“Chair”に変更する作業方法の見直しを行いました。本会合より、実施され会合や文書修正に反映されました。
“He”や“She”等の呼称も使用しない要請もありましたが、会合において、発言者の名前をすべて把握することができない面もあり、“He”、“She”、“him”、”her”の呼称を用いる場合は時々あり、より意識を高める必要性を感じます。

主な成果文書

ASTAP-34では、各WGのレポート等を含め、19件の出力文書が承認されました。本会合のプレナリでは、2件(EG FN&NGN、EG IOT)のToR(Terms of Reference)の見直し、2件の新規レポート文書、4件の他標準化団体へのリエゾン文書(ITU-T SG16、FG AN(3)、FG AI4NDM(4)、AWG(5))、1件の質問状が承認されました。2件の新規レポート文書は以下のとおりです。
・Final draft of the 2nd Version of APT Report on Asia-Pacific Regional Activities of Human Exposure to EMF
・APT Report on Airport Runway Foreign Object Debris Detection System using Radio over Fiber Technologies

インダストリワークショップ

前回ASTAP-33会合で開催されたASTAP活動の強化検討アドホックで、今回ASTAP-34会合におけるワークショップはSDO(Standards Developing Organization) を招聘した標準化ワークショップとインダストリワークショップを併せて開催する合意がなされました。インダストリワークショップのトピックは、前回ASTAP-33会合のワークショップのプログラムを企画するCorrespondence Groupで持ち越しとなった“Blockchain”となりました。また、標準化ワークショップのトピックは、EG BSGのWork Itemである“Guidelines on setting up National ICT Standardization Regime”をトピックに開催されました。
表2にプログラム構成を示します。インダストリワークショップは、セッション1:Blockchain technology and standardizationとセッション2:Industry Workshop: Blockchain industry and applicationの2つのセッションで構成され、日本、韓国、中国、スリランカから7人の専門家の講演を行いました。日本からは、慶應義塾大学が講演を行いました。セッション3の標準化ワークショップでは、日本からTTC、韓国からはTTA、中国からCCSA、マレーシアからMTSFB、インドからTSDSI、タイからNECTECの6カ国のSDOが参加しました。標準化ワークショップでは、以下の国内SDOがない新興国からの確認事項に答える内容で情報共有がなされました。
・国内ICT標準化プロセス
・ICT標準化に関連する国内法
・政府とSDO・フォーラム・標準化団体の役割
・業界での取り組み
・国内標準化制度の制定に関するAPT加盟国への勧告
・ASTAPとAPTへの提案
時差等を考慮したオンラインでの開催のため時間が制限される中で、より多くの講演者の方々に情報を共有いただく主旨でタイトなスケジュールとなりましたが、次回会合は対面での開催となることを期待します。

今後の予定

APT事務総局長から、次回ASTAP-35会合は、2023年4~6月で、対面での開催を予定すること、また開催場所は現在バンコクが候補にあるほか、招請国・地域を募集していることの報告がありました。次回会合に併せてインダストリワークショップを単独で開催し、標準化ワークショップはEG BSG主催で新興国を招聘したミニワークショップを開催する予定です。

■参考文献
(1) https://www.apt.int/
(2) https://www.apt.int/APTASTAP
(3) https://www.itu.int/en/ITU-T/focusgroups/an/Pages/default.aspx
(4) https://www.itu.int/en/ITU-T/focusgroups/ai4ndm/Pages/default.aspx
(5) https://www.apt.int/APTAWG