2026年2月号
特集
発展するAPNの運用を支える最新コントローラ技術の研究開発動向
- IOWN
- APNコントローラ
- 運用高度化
さらなる大容量・低遅延の実現やオンデマンドな利用に向けて、ますます発展するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)APN(All-Photonics Network)ですが、これを運用していく中でAPNコントローラが担う役割はより一層重要になっています。本稿ではAPNコントローラの研究開発における最新動向として、発展するAPNを支える5つの技術について紹介します。
木原 拓(きはら たく)/林 裕平(はやし ゆうへい)
出水 達也(でみず たつや)/伊藤 健(いとう けん)
渡邉 紘平(わたなべ こうへい)/並木 雅俊(なみき まさとし)
NTTネットワークイノベーションセンタ
はじめに
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network) APN(All-Photonics Network)(1)においてはAPN Step2のフェーズを迎え、NTTグループ各社で順次APNサービスが開始され、さらなる大容量・低遅延の実現やオンデマンドな利用に向けてますますの発展を遂げています。本誌2023年11月号ではAPNの運用において重要な役割を担うAPNコントローラの基本的な機能について紹介しました(2)。本稿ではさらにその先の研究として、発展するAPNの運用を支える5つの技術(①分割光パス開通運用技術、②APN設計・光パスフロースルー開通技術、③APN-Tマルチベンダ化対応制御技術、④プロアクティブ保守技術、⑤オンデマンド光パス開通・切替技術)を紹介します(図1)。

分割光パス開通運用技術
IOWN APNは複数セグメントをまたがる高速・高信頼・低遅延な光パスの提供を志向しており、私たちはその実現に向けて各セグメント間で連携しながら光パスの開通や保守運用を実現するAPNコントローラ機能の研究開発に取り組んでいます。市中製品のEMS(Element Management System)には、単一セグメント内での光パス開通や保守運用機能を具備していますが、複数のセグメントをまたがる光パス開通や保守運用の機能は具備していません。その課題感に着目し、私たちは「複数セグメントをまたがる光パスの構成情報を管理する機能」「構成情報を基に各セグメントにて光パスの開通設定を行う機能」「各セグメント内の警報や性能情報を共有する機能」について、方式検討および試作実装を進めています。また、私たちは実際に前述の技術を実装したAPNコントローラを用いて大阪・関西万博会場と東京とを結ぶ商用環境にてフィールドトライアルを行い、セグメント間で連携し複数セグメントをまたがる光パスの開通や、トラブル時におけるセグメント間で連携した切り分けが可能であることを実証し、商用環境においてもセグメントをまたがった光パス開通と保守運用の実現性について確認しました(図2)。トライアルでの運用時に得られたフィードバックを基に新たな要件の整理を行っており、今後さらなる機能向上の研究開発を推進していく予定です。

APN設計・光パスフロースルー開通技術
APNは多数の装置が互いに接続されて構成されているため、APNの規模が大きくなればなるほどエンドユーザの利用拠点間を結ぶ経路の選択肢が増えていきます。また、APNの装置を設置している中継拠点間を結ぶ光ファイバの種類や敷設状況、設置されている装置機種によって通信可能な帯域や波長帯が異なります。さらに、多数のエンドユーザが光ファイバや装置を共用しているため、中継拠点間の一部でリソースが足りず、その経路での新たな通信提供ができなくなっている場合もあります。このように、通信サービスをエンドユーザへ提供するためには、都度これらの膨大な組み合わせや制約条件を踏まえながら最適なものを探し出すことになるため、長期間を要する煩雑な作業を必要としていました。
そこで私たちはこれらの作業を自動化するAPN設計技術を開発しました(図3)。この技術では、エンドユーザの利用拠点の情報や、利用帯域条件、耐障害性向上の観点から地理的に経路を分散させる条件等の必要な情報を入力するだけで、膨大な経路の組合せや制約条件を自動的に考慮した最適な経路候補を複数個算出することができます。さらに、これらの経路候補ごとに、構成する光ファイバや装置情報等を基に、想定される通信品質を自動的に算出することができます。
併せて、私たちはAPNを構成する多数の装置に対して、通信経路を確立するために必要な設定を自動的に投入する光パスフロースルー開通技術も開発しました(図3)。APN設計技術と光パスフロースルー開通技術を組み合わせることで、オペレータが必要な情報をAPNコントローラへ入力するだけで、膨大な組合せや制約の中から自動的に最適な通信経路とその通信品質を算出し、さらに実際にAPNを構成する装置に設定を投入して通信経路を確立し、エンドユーザに通信サービスを提供することができます。

APN-Tマルチベンダ化対応制御技術
APNでは、圧倒的な大容量・低遅延通信を安価にユーザへ提供するために、また、ユーザに合わせたさまざまなサービスを柔軟に提供可能とするために、さまざまな装置が使われています。特にAPNのサービスを提供するうえでユーザ向けの種々のインタフェース(IF)を提供する役割を持つAPN-T*1においては、ユーザニーズに柔軟にこたえるべく種々のIFを提供できるよう、用途に合わせたさまざまな装置ベンダの機種を利用可能とすることを志向しています。
一方で、これらAPN装置の運用においては、機種が異なると光パス開通のための設定方法や保守運用機能の操作方法などが異なることから、ネットワークの運用者は各装置機種に合わせた設定方法や保守運用の操作方法を学習し、各装置に合わせた方法でそれらを使い分けて運用する必要が出てきます。そのため、APNを運用していくうえで扱うAPN装置の機種が増えるほど、ネットワークの運用者にとっては負担が大きくなるという課題があります。
こうした課題を解決するため、私たちはAPN-Tマルチベンダ化対応制御技術の開発を行いました。本技術の特徴としては、オープンな制御IFを活用することで種々のAPN-Tを共通的に制御可能としている点にあります。具体的にはネットワーク機器をベンダやプロトコルに依存せず、一元管理するための共通的なデータモデルやAPI仕様として策定が進むOpen Configを活用することで、異なる機種のAPN装置に対して共通的な操作の提供(例:光パス開通、警報監視など)を実現しています。APN-Tの多くの機種では上記Open Configを制御IFとして採用しており、本技術を用いることでそれらを一元的に運用でき、ネットワーク運用者の負担を大きく軽減することができます。
また、種々のAPN-Tを効率的に運用可能とすることで、APNサービスの中でユーザに合わせた柔軟なIFの提供を実現しています。
*1 APN-T:APNトランシーバは光パスの端点であり、光信号の送受信機能を持ちます。
プロアクティブ保守技術
APNの展開により中継用のルータやトランスポンダの削減が可能となり設備コスト削減効果が期待される一方で、光区間が長延化されることにより、光信号品質の劣化起因によるサービス中断が発生した際に、その切り分け対応が難しくなり、設備復旧が長期化してしまう懸念があります。そこで、私たちは、光信号の物理特性情報を積極的に活用し、構成情報と紐付けて解析を行い、被疑個所の早期検知を実現するプロアクティブ保守技術をAPNコントローラの保守高度化機能として開発しました(図4)。具体的には、大きく2つの機能を開発しています。
1番目は、APNノードからPM(Performance Monitoring)というAPNノードが管理する光信号に対する送受信パワー等の各種統計情報を収集する機能です。本機能は全APNノードから15分間隔のPM情報を常時収集し、また、過去の日付にさかのぼっても解析できるよう最大30日間分のPM情報を保存できる仕組みになっています。収集したPM情報は、APNコントローラが持つGUI画面上に構成情報と紐付けて表示することができます。
2番目は故障判定機能です。本機能は、APN-Tから収集したPM情報のビットエラーのカウントをトリガーに、対象の光信号が通過するすべてのAPN-I/G*2、3 IFの送受信パワーをPM情報から確認し、そのパワーの変動幅から正常・異常を判断し、異常と判断されたIFの最上流IFを被疑個所と判定します。併せて、被疑個所と判定したIFを通過するすべての光信号を影響信号としてGUI画面上に表示します。また、送受信パワーの変動が顕著でない場合においても、同時刻帯にビットエラーカウントがあった光信号をまとめ、その光信号群が通過する共通の区間(IF間)を被疑区間と判定する機能も開発しています。
本開発機能により、APN-I/Gでの送受信パワー変動起因による光信号品質劣化が発生した際に、早期にその被疑個所を動的に特定することができます。また、全国規模のネットワークにおいて送受信パワーが変動しない事象においても対応が可能です。
*2 APN-I:APNインターチェンジは光パスの中継機能部であり、波長クロスコネクト、インタフェース間のアダプテーションの各機能を持ちます。
*3 APN-G:APNゲートウェイは光パスのゲートウェイであり、収容するAPN-Tに対する制御チャネルの設定,光パスの合分波等の機能を持ちます。

オンデマンド光パス開通・切替技術
私たちは、APNコントローラで光パスを長期間利用し続ける従来型のサービス形態に加えて、短期間での柔軟な光パスの開通・廃止を実現するオンデマンド光パス開通技術や共通のリソースを活用して必要な対地に接続先を柔軟に切り替え可能とするオンデマンド光パス切替技術の研究開発を実施しています。本技術により、短期間利用を含むユーザのニーズに応じたオンデマンドでの光パスの経済的な利用を実現します。また、リモートプロダクションにおける各スタジアムと編集拠点間の接続のように、接続先を期間によって切り替えたいユースケースにもAPNによる高信頼かつ低遅延な光パスが利用できます(図5)。本技術では、従来人手で行っていたルート、波長、伝送品質等の計算を設計機能部において自動化し、設計データに基づく光パスフロースルー開通技術と連携することで、設計から開通までの一連のフローをユーザ要求に基づいて自動で実施することが可能となりました。また、ユーザの要求に基づいた迅速な光パスの提供を可能とするだけでなく、激甚災害時などの迂回においても最適な迂回ルートを光パスの切替先のルートとして自動設計させることで、迅速な迂回の実現につなげることができます。
本技術を実装したAPNコントローラを利用して、共同でフィールドトライアル(3)を実施しました。ユーザが制御するIPコントローラからAPI経由での要求に基づいて、光パスの開通を行い、ユーザ側でのL2/L3設定、アプリケーションサーバ間でのトラフィック疎通までを含めてオンデマンドでの開通が可能なことを実証しました。また、激甚災害時の故障を模擬したシナリオにおいて、波長変換器も含む光パスの迂回切替を実施し、10分以内の光パス切替を実証しました。

今後の展望
本稿では、私たちが日々研究開発を進めているAPNコントローラ技術について、新たに創出した最新の5つの技術を紹介しました。今後はAPNのさらなる発展へ向け、より一層の展開が進み大規模なネットワークとなるAPNにおいて種々の装置をより効率的に収容・管理するための制御技術や、多くの装置を運用していく中での設計や開通等のさらなる高度化技術、APNにおける大容量・低遅延通信の主要なユースケ—スであるデータセンタ間通信に適用可能な運用・制御技術などの創出をめざして研究開発を進めていく予定です。
■参考文献
(1) IOWN Global Forum:“Open All-Photonic Network Functional Architecture,”NTT, ref. Dec. 2024.
(2) https://journal.ntt.co.jp/article/23716
(3) https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/12/18/251218a.html

(上段左から)木原 拓/林 裕平/出水 達也
(下段左から)伊藤 健/渡邉 紘平/並木 雅俊

APNの発展に伴いAPNコントローラが担う役割はますます重要となってきます。私たちはAPNのますますの発展、新たな価値の創出に向けてAPNコントローラの研究開発を推進していきます。