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2026年8月号

特集2

つくばフォーラム2026に見るアクセスネットワークの研究開発

AI時代を支える光アクセスネットワーク技術

近年AI(人工知能)の性能が飛躍的に向上し、さまざまな産業においてAI適用によるビジネスの効率化や変革が急速に進行しています。NTTアクセスサービスシステム研究所(AS研)では、本格的なAI時代の到来を見据え、各種光アクセスネットワーク技術の研究開発に取り組んでいます。本稿では、AIが光アクセスにもたらす変化と影響を概観するとともに、研究開発の方向性と関連技術について紹介します。

島田 達也(しまだ たつや)
NTTアクセスサービスシステム研究所

光アクセスを取り巻くサービス変化

トラフィック量の増大に伴い、光アクセスの高速化が順調に進められています。商用ベースでは10Gbit/sクラスのサービスが普及拡大し、標準化ベースでは50Gbit/s級の検討はおおむね完了し、100Gbit/s級に議論はシフトしてきています。近年のAI(人工知能)の飛躍的な性能向上に伴い、さまざまな産業においてAI適用によるビジネスの効率化や変革が急速に進行しています。その結果、光アクセスを取り巻く環境にも変化が訪れようとしています。参考文献(1)によると、トラフィック量は2020年比で2030年には約14倍、2040年には約348倍に増加するという試算が出ています。また、用途にも変化が生じ、放送・動画・Webなどから、自動運転やメタバース、フィジカルAI、ドローン等の遠隔制御などの割合が増加すると予想されています。
自動運転などのトラフィックは、その地域だけで利用される、いわゆる地産地消型のトラフィックと呼ばれます。地域内で通信が閉じるため、バックボーン回線の帯域やコスト削減につながる、通信距離が短くなるため低遅延化が図られレスポンスが速くなる、各種データを処理するサーバがエッジに配置される、など今後の光アクセスネットワークを検討するうえでの示唆が含まれています。特にAI処理を行うサーバがネットワーク上のどこに配置されるかは重要なポイントで、将来的にはAgentic AIが人を介さずに自律的にタスクを行うためにAI間で情報をやり取りし始めると、トラフィック量や流れを想定するのが難しくなってきます。また、フィジカルAIも今後の光アクセスを検討するうえで重要です。フィジカルAIは、低遅延性、リアルタイム性が求められるため、APN(All-Photonics Network)のユースケースなどでも各種取り組みが紹介されています。
将来の光アクセスネットワークを検討するうえでは、このようなサービスの変化に加え、2030年代の商用化をめざす6G(第6世代移動通信システム)の要件(超高速、超低遅延、多数同時接続等)(2)なども考慮する必要があります。こうした変化や厳しい性能要件にこたえていくために、NTTアクセスサービスシステム研究所(AS研)光アクセスシステム基盤プロジェクトでは、以下の3つの方向性で研究開発を進めています。

光アクセスネットワーク技術の方向性

■方向性①:高柔軟性

サービスの多様化、トラフィックの変化に対応するためには、単なる高速・大容量化だけではなく、幅広い帯域サービスを経済的に提供していくことが重要です。また、利用時間、場所、用途、環境に対する柔軟性も求められます。例えば、フィジカルAIの利用が進むと、人が働く日中帯だけでなく夜間もロボットを稼働することなどが想定され、ネットワークの利用時間も変化してきます。さらに、環境変化を自ら学習しAIが自律的に安定的に動作するためには、それに追従したネットワークの提供が必要となります。

■方向性②:低遅延・低ジッタ化

現在商用で広く用いられているTDM-PON(Time Division Multiplexing Passive Optical Network)は、複数のユーザで上り帯域をシェアする方式で、ベストエフォート型のシステムとなります。今後は、AIの普及拡大に伴い、低遅延・低ジッタな性能を保証するギャランティ型のサービスのニーズが顕在化してくるものと想定されます。また、AIがもたらすサービス目線で考えると、光アクセス部分だけでなく、無線アクセス、エッジサーバも含めたトータルでいかに性能を保証するかも重要なポイントとなります。

■方向性③:効率的な運用

AI for Networkは光アクセスにおいても今後必須となる技術です。ネットワークの設計・保守・運用においては、AIを活用し自動化・自律化を進めることで、効率化を図ります。また光アクセスにおいては、ユーザ宅に置かれる通信機器も保守・運用に含まれるため、遠隔から設定・制御を可能とする技術や、サービスの継続的利用を担保し、使いたいときにいつでも使えるといった可用性を提供していくことも重要となります。
以下では、AI時代を見据え、現在私たちが取り組んでいる研究開発の一部を紹介します。

光無線連携制御技術

方向性②で示したとおり、サービス目線で考えたときには、低遅延・低ジッタ化を進めるうえで、光アクセス+無線アクセス+エッジサーバのトータルで性能、品質を設定・制御していくことが重要です。光アクセス+無線アクセスの例として、図1に検討中の技術概要とドローンを使った遠隔点検の実証を示します。
今回の実証では、無線区間にはローカル5G(第5世代移動通信システム)、有線区間にはフレッツVPNを利用し、操縦者は、点検用のドローンからの映像を見ながら、遠隔操作を行いました。ローカル5Gでは、上り下りで同じ周波数を利用して通信するTDD(Time Division Duplex)方式が採用されているため、上り下り信号ともに決められた時間・タイムスロットでしか信号を送信することができません。また、他のユーザ利用により輻輳が発生し遅延やパケットロスによる再送も発生することがあります。そのため、周期的に送信される映像信号がローカル5G区間でジッタが発生し、その結果、操縦者に届く映像は乱れ、ドローン操縦がしづらくなってしまいます。光無線連携制御技術は、このような無線区間で生じるジッタを低減するため、無線基地局から無線区間の送信タイミングに関する制御情報を無線コントローラで収集し、光コントローラを用いて光区間で信号間隔を均一にすることで(低ジッタ化することで)、映像品質を安定にすることができます。本技術により、ドローンの遠隔からの安定操作が可能となります(3)
本技術については、福島県南相馬市にドローンを配置し、約60km離れた郡山市から遠隔操縦を行う実証実験を行いました。実証実験では、無線区間をローカル5G、2拠点間をフレッツVPNで接続した環境を構築し、ドローンからの映像を見ながら遠隔操縦できることを確認しています。今後はさらなる適用拡大に向け、ドローンに限らず無人航空機・ロボットの操縦等への幅広い適用をめざして、実用化を推進中です。

産業用機器SDN*化技術

フィジカルAIの一例として産業用ロボットがあります(図2)。産業用ロボットを動作させるために、現在専用の制御機器(ハード)が主に用いられていますが、制御機能をソフト化し、エッジに実装することで、機能の変更を柔軟に行うことや、AIと組み合わせた高度なロボット制御が可能となります。例えば、パレタイズ(荷物の積み上げ作業)動作を実装する際、ロボットごとに異なる制御ドライバ、パレタイズする作業モデルと汎用的に利用されている画像分析AIを組み合わせることで、ソフトをゼロからつくる必要がなくなり、すでにつくられた機能モジュールを利用するだけで作業内容の実装が簡単にできるようになります。また、作業内容の変更は、難しいプログラムの書き換え等は必要とせず、LLM音声認識により自動設定変更も可能となります。本技術では、産業用ネットワークで広く使用されている、EtherCATやPROFINETのプロトコルドライバをソフトウェア実装しており(4)、ロボット作業の変更、メーカの異なるロボットへの取り換えなどが簡単に実現できるようになります。これにより、産業分野におけるフィジカルAIの普及拡大が期待できます。

* SDN(Software Defined Network):ネットワーク機器の制御を柔軟にソフトウェアで行えるようにしたネットワークの設計思想や技術のこと。

遠隔制御対応APN光トランシーバ構成技術

本技術は、方向性①、③に関する検討で、APNにおいて、ユーザ拠点に設置される光トランシーバ(APN-T)(5)に対し、遠隔で設定・制御を行う技術です(図3)。
コントローラは遠隔に置かれるさまざまな光トランシーバとやり取り可能な共通の制御インタフェース(6)を介し、主信号と同じ光ファイバに制御信号を多重して送受信します。本機能を活用することで、APNの開通時に必要な光パス設定(APN-Tの波長設定や送信光パワーの設定等)を自動的に行うことが可能となります。そのため、APN開通時に、作業者を派遣する必要がなくなり、開通時間を100分の1程度にまで大幅に削減することができます。
現在他企業様と連携し、25Gbit/s、100Gbit/s、400Gbit/sのAPN-Tの研究開発を進め、用途に応じたサービス提供をめざしています。技術実証と並行し、Open ROADMMSAへの提案など、標準化に向けた取り組みも実施中です。なお、本技術の研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の助成事業(JPJ012368G50201)により得られたものです。

今後の展望

本稿では、AIが光アクセスに与える影響について述べるとともに、光アクセスの研究開発の方向性、検討中の技術について紹介しました。AIを基盤としたより豊かな社会の実現をめざすうえでは、光アクセスの役割は非常に重要です。APNの面的展開が進むことで、光アクセスにもAPNが適用されれば、ユーザが享受するサービスの幅が一気に拡大していく可能性があります。今後もAIの普及速度に負けない、スピード感のある光アクセスの研究開発を推進していきます。

■参考文献
(1)https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/policy/hd2tof0000009hiu-att/er20230928.pdf
(2)https://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/corporate/technology/whitepaper_6g/DOCOMO_6G_White_PaperJP_20221116.pdf
(3)K. Miyamoto, T. Harada, H. Ujikawa, T. Shimada, and T. Yoshida: “Application-Level E2E Demonstration of Reducing Uplink Jitter Due to Radio Transmission Toward Real-Time and Stable Remote Operation,” VTC2025-Spring, pp. 1-5, Oslo, Norway, 2025.
(4)Y. Koyasako, T. Suzuki, T. Hatano, T. Shimada, and T. Yoshida: “Demonstration of Industrial Ethernet Protocol Softwarization and Advanced Motion Control for Full Software-Defined Factory Network,” IEEE Access, Vol. 12, pp. 104020-104030, 2024.
(5)https://iowngf.org/open-all-photonic-network-functional-architecture/
(6)妹尾・原・可児・島田:“オール光ネットワークのための遠隔制御対応光トランシーバ構成技術の概要,”信学技報,Vol.125, No.315, CS2025-69, pp.58-62, 2026.

島田 達也

AIがもたらす新しい社会に向け、光アクセスの研究開発を推進していきます。

NTTアクセスサービスシステム研究所
光アクセスシステム基盤プロジェクト

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