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特集

NTT Technology Report for Smart World

「NTT Technology Report for Smart World 2021」の公開について

NTT研究企画部門では、2019年に始動したIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とともに、より人々が豊かに生きていく世界を実現するためのテクノロジーについてまとめた「NTT Technology Report for Smart World」を発表しています。このたび、新たに2021年度版を公開しましたので、その概要と更新のポイントについてご紹介します。

兼清 知之(かねきよ ともゆき)/大西 隆之(おおにし たかゆき)
村元 厚之(むらもと あつゆき)
NTT研究企画部門

社会の変容に対する限界打破のイノベーションとテクノロジー

今、大きく変わる世の中(新型コロナウイルス感染症、環境破壊や気候変動)にあって、人類が今までどおりの活動を続けていくのみでは、持続的な発展すら困難であることが明らかになってきました。ビッグデータのAI(人工知能)処理や仮想通貨の拡大など、情報処理に伴うデータ量は爆発し、消費電力もますます増えてきています。この新たな変化に対して、わたしたちのテクノロジーは、人々が豊かに生きていく世界の基盤につながることをめざしています。今回、現状を打破し、豊かな未来に向けて歩んでいくために必要と考えている複合的なテクノロジーとその構成(相互の関わり)について、わたしたちが取り組んでいるIOWN(Innova­tive Optical and Wireless Net­work)構想を軸として解説をしていきます。

IOWN構想の3つの要素、3つのプラットフォーム、5つの価値

ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクスベースの技術を導入した「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、あらゆるものをつなぎその制御を実現する「コグニティブ・ファウンデーション(CF)」、実世界とデジタル世界の掛け合わせによる未来予測などを実現する「デジタルツインコンピューティング(DTC)」、IOWNはこの3つの要素から成り立っています。
IOWNの起源は2019年4月に発表した光トランジスタであり、こうした光技術を活用したデバイスの開発の進展に伴い、IOWN構想の中では「光ダイレクト多地点接続技術」「エクストリームNaaS」「データセントリックコンピューティング基盤」という3つの共通プラットフォームが設定されています。そこから生み出される社会課題の解決と人々を豊かにする5つの価値が、「4Dデジタル基盤Ⓡ」「リモートワールド」「Well-being」「環境負荷ゼロ」「新たなTrustを構築するバリューチェーン」です。その3つの共通プラットフォームと5つの価値について解説していきます。

3つの共通プラットフォーム

■データセントリックコンピューティング基盤

多種多様なデータから新たな価値を創出していくデータ中心の社会の実現が求められています。IOWNが実現するプラットフォームの「データセントリックコンピューティング基盤」では、さまざまな分野・業界のデータオーナーやミドルサービスプロバイダーに新たな価値を提供し、持続可能な社会の創出を支援するものです。特に「データハブサービス」「AIサービスプラットフォーム」「ディスアグリゲーテッドコンピューティング基盤」の3つの機能でこの基盤は確立されていきます。

■エクストリームNaaS(Net­work as a Service)

5G(第5世代移動通信システム)のサービスエリアが拡大し、次の6G(第6世代移動通信システム)の展開を見据えている中、さらなる高速な無線ネットワークが求められています。また、大容量だけでなく、つながりつづけるネットワークが必要とされています。エクストリームNaaSの実現には3つの革新、「ネットワークサービス提供の概念の革新」「制御情報の概念の革新」「アクセスネットワークの革新」が必要となるとわたしたちは考えています。

■光ダイレクト多地点接続

IOWNのオールフォトニクス・ネットワークを使いこなし、十全に活用するために、多様な帯域に即応し、ユーザストレスのない多地点接続技術や高臨場感通信技術が必要だとわたしたちは考え、「光ダイレクト多地点接続サービス」の確立をめざしています。その実現には「ネットワーク情報の取得と提供」「リアルタイム多地点接続」の2つの技術が重要となります。このサービスが実現すると、異なる場所にいる人どうしがあたかも同じ場所にいるかのようにコミュニケーションができ、また、スポーツやエンターテインメントの新しいあり方を見出せるかもしれません。

5つの価値

■4Dデジタル基盤Ⓡ

IOWNを通じて提供する「4Dデジタル基盤Ⓡ」は、正確な位置(三次元情報)に時刻情報を加えた四次元の情報をリアルタイムに高精度な地理空間上に統合したデジタル基盤であり、「道路交通の整流化」「都市アセットの活用」「社会インフラの協調保全」「環境・防災にむけた地球理解」という4つの価値がポイントとなります。多様な社会活動の現状分析、未来予測を産業横断で行い、さまざまな産業基盤に提供することで、交通・スマートシティにおける人々の快適さと全体最適化の両立、社会インフラの運用・維持コストの低減、社会と自然環境の調和する社会が実現されます。

■リモートワールド

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を経て、多くの産業でリモート化が進められています。そのため、リモートワークやオンライン教育など、実際に集まらなくてもリアルと同じような価値を提供する仕組みが求められています。わたしたちはIOWNを通じて、リモートワールドという価値を提供していきたいと思っています。ここでは「遠隔地の環境条件を融合・同一化」「人の意思・意図を伝達し能力を合成」「文化・価値観の壁の超越」「近接した活動との連携」がポイントとなるでしょう。

■Well-being

近年注目されている「Well-being」という概念は、身体だけでなく精神的、社会的に良好な状態にあることを意味しており、医学的・快楽主義的・持続的といった分類、個人的要因・社会的要因・超越的要因などいくつもの見地から人間の幸福をとらえる試みがなされています。その中で、1人ひとりが自分のWell-beingを実現できる基盤をわたしたちはつくっていきます。ここでは「Well-being要因の見える化」「個々人に合わせた選択肢の提示」「自身の動機づけに基づく実践」「産業を超えた補完的なエコシステム」がポイントとなります。

■環境負荷ゼロ

気候変動や大規模災害、パンデミックなど地球環境の変化に対応する社会の実現は、現代を生きるわれわれにとって急務となっています。環境負荷ゼロの価値を提供するために、ここでは「環境変化を受容する社会の実現」「次世代エネルギー流通ネットワーク」「核融合炉の最適オペレーション」「超高精度な気象予測」がポイントとなるでしょう。新たな次世代エネルギー技術の活用やエネルギーの最適な流通のためにも新たな通信基盤は必要不可欠となってくるでしょう。

■新たなTrustを構築するバリューチェーン

社会のデジタル化が進み、人はより利便性の高いサービスを受けられるようになったと同時に新たなサイバー犯罪のリスクも高まっています。情報処理がより人間社会に密接になるにつれ、サイバー世界の被害が直接的に人間に影響を及ぼすものになってしまいます。わたしたちは安心・安全な社会を下支えできる基盤をつくりたいと考えています。そこでは「より安心かつシンプルなセキュリティの確立」「信頼できる組織との連携によるグローカリズムの実践」「産業を超えるコネクテッドバリューチェーン」「データを源泉とした価値創出の加速」といったことがポイントとなるでしょう。

おわりに

NTT研究企画部門では今後もテクノロジーの動向とNTT R&Dの取り組みについて発表していきます。今回発表した資料はNTT持株会社HP(1)よりダウンロードしていただくことが可能ですので是非ご覧ください。

■参考文献
(1) https://www.rd.ntt/techreport/

(左から)兼清 知之/大西 隆之/村元 厚之

テクノロジーとNTT R&Dの動向をまとめた 「Technology Report for Smart World 2021」の冊子とオンラインPDFを発行しています。お客さまとのコミュニケーションへご活用いただければと思います。

問い合わせ先

NTT研究企画部門
R&Dビジョン担当
E-mail technology_report-ml@hco.ntt.co.jp