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from NTTデータ

新たなクラウドマーケット「エンド・ツー・エンド」で価値を提供するNTTデータグループのクラウドアセット

クラウド市場に新しく追加された「エンド・ツー・エンド」マーケットでは、フルライフサイクルでの対応が求められています。フルライフサイクルにおいてワンストップで価値提供するために注力するのがアセット化の取り組みです。NTT DATAでは、グローバルでの成功体験に基づくベストプラクティスをアセットとして拡充、展開をしています。ここでは、日々進化するNTT DATAのクラウドアセットの全体像を紹介します。

クラウド市場における新たなマーケット

クラウド市場はこれまで、以下のマーケットで定義されていました。
・コンサルティング(Consulting)
・開発(Deployment/Development)
・運用(Managed)
・移行(Migration)
コンサルティング、開発、運用、移行といったライフサイクルを踏まえて複数のマーケットをワンストップで対応するマーケットとして「エンド・ツー・エンド」が新たに定義されました。
従前から定義されていた個別マーケットの規模は小さくなり、年平均成長率(CAGR)がマイナスとなるものがあります。従前からもっとも成長率の高かった運用(Managed)市場は引き続き高い成長率を維持しています。
一方で、エンド・ツー・エンドのマーケットは非常に大きく、2026年には約33兆円(2470億ドル)に到達すると予想されています。クラウド市場は、単にクラウドを利用するのではなく、ビジネス成果を最大化するためにどのようにクラウドを活用するかというニーズへ変化しています。複雑かつ多岐にわたるクラウドサービスを適切に活用しつつ、ビジネス成果を最大化させることは簡単ではありません。ビジネスプランの検討、計画したプランの実行、ITシステムの運用、ビジネスプランの改善といったフルライフサイクルをエンド・ツー・エンドで対応することが求められています。

フルライフサイクルを実現するアセット

NTT DATAが現在提供しているクラウドテクノロジアセットは以下のとおり、大きく3つのカテゴリに大別されています。
① Cloud Advisory Framework(ベストプラクティス、方法論)(図1)
② Cloud IaC(設計テンプレート、開発ツール)(図2)
③ Cloud Managed Service(クラウドサービス)(図3)
テクノロジアセットの全体像として重要視しているのは、フルライフサイクルの価値提供です。
・構想立案・企画検討フェーズでお客さまに寄り添い新たな像を描くこと
・開発フェーズで過去の成功例に基づいた高品質なクラウド環境を迅速に提供すること
・運用フェーズで種々のハイブリッド構成となっているインフラ・プラットフォームを一元的に管理する手段を提供すること
など、すべてのフェーズで一貫して付加価値を提供することがこの構成のコンセプトとなっています。これらのアセットと高度なスキルやマインドを持つ人財を組み合わせ、お客さまにワンストップでの価値提供をすることが、NTT DATAが描くクラウドの未来の1つです。

Cloud Advisory Framework(ベストプラクティス、方法論)

Cloud Advisory Frameworkは、NTT DATAが持つクラウドコンサルティング関連のベストプラクティスを集めたアセットの集合体です。各種クラウドサービスプロバイダは各社のクラウドサービス導入から活用までのフレームワーク(CAF:Cloud Adoption Framework)を提供しています。NTT DATAではこれらを統合した方法論として、独自にNuCAF(NTT DATA unified Cloud Adoption Framework:NTT DATA統合クラウド導入フレームワーク)を定義しています。NuCAFは比較的一般的なクラウド導入のための方法論です。マルチ・ハイブリッドクラウドにおけるクラウド導入を促進するための手順・ツール・ガバナンスなどを含み、コンサルタントの技量によらないクラウド導入を推進可能です。
NTT DATAではさらに、マーケットトレンドやお客さまの多様なニーズに応じ、柔軟に組み合わせたコンサルティングができるアセットを開発しています。中でも特色あるのがGreen Cloud Advisory(グリーンクラウドアドバイザリー)で、クラウド導入前後のCO2消費量に代表されるGreen関連の指標の可視化提案を可能にします。
また、成功裏に終わった技術コンサルティングのケースは、ナレッジとして「Advisory Bank」へ集約します。成功事例をすぐに集合知として横展開でき、各リージョンのお客さまに高付加価値なコンサルティングサービスを提供可能です。

Cloud IaC(設計テンプレート、開発ツール)

IaCはInfrastructure as Codeの略であり、ITインフラをコードとして記述し構成管理することで自動化ツールを利用できるようにする方法を指します。Cloud IaCは、標準的なアーキテクチャを自動構築するIaCツールセットを核としたアセットの集合体です。ベストプラクティスに基づく設計文書やテスト項目、成功体験に基づく事例集、さらには運用行程を高度化する技術検証結果などの要素を含みます。
以下にCloud IaCアセットの構成要素を列挙し端的に紹介します。各要素に共通した目的は、クラウド上のシステム開発の生産性、および品質の抜本的な向上です。これらCloud IaCアセットはグローバルのNTT DATAグループで共有され、標準的な開発パターンや事例を充実させていくことで日々生産性と品質を向上させています。
・Horizontal Template:業界によらないクラウド利活用のためのテンプレート集
・Architecture Bank:お客さまへのアーキテクチャ提供の成功体験集
・Implementation Template:標準アーキテクチャに基づく設計・構築テンプレート
・Operation Template:運用基盤の設計・構築テンプレート
・xOps:クラウド開発運用の最適化プロダクト(FinOps、AIOps、SecOpsなど)利活用のためのガイドラインとテンプレート
・Industrial Template:業界ごとのクラウド利活用のためのテンプレート集

Cloud Managed Service(クラウドサービス)

Cloud Managed Servicesは、お客さまのハイブリッドクラウド環境の運用を一手に引き受ける、ハイブリッドクラウド向けのマネージドサービスです。ITIL(Information Technology Infrastructure Library)*で定義されている機能に加えて種々のサービスを組み合わせることで、複雑化するクラウド運用に必要なすべての運用管理項目を機能として有するアセットをめざしています。特に2022年10月にNTT DATAへ加わったNTT Ltd.はこの領域で有用なアセットや経験を保有しています。NTT Ltd.のケイパビリティを盛り込むことでさらにグローバル対応力を向上させていきます。

* ITIL:ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティスをまとめた一連のガイドブック(ライブラリ)。

エンド・ツー・エンドを支えるコンポーザブルテクノロジ

エンド・ツー・エンドでビジネス成果を迅速に達成するためには、フルライフサイクルといったフェーズの観点だけでなく、お客さまがビジネスにすぐに利用できるバーティカル(業種・業界特化)といったビジネスレイヤの観点も求められます。
特定業種・業界向けをサポートするテクノロジとして注目されているのが「コンポーザブルテクノロジ」です(図4)。Gartner社のハイプ・サイクルにおいても、コンポーザブルテクノロジは、今後2〜5年の間に飛躍する技術として、現在期待のピークに到達しています。
これまでシステムアーキテクチャはシステム全体をパッケージングするモノリシックなアーキテクチャから、ある程度の粒度のサービスを組み合わせてシステムを実現するマイクロサービスへと変化してきました。
モノリシックなアーキテクチャでは、システム全体を1つの大きなアプリケーションとして管理するため、管理が容易な反面、すべての機能が密結合されているため、変更が難しい課題があります。
マイクロサービスは、個々のサービスがモノリシックなアプリケーションと比べて小さく、独立しているため変更が容易である反面、それぞれが独立しているため全体の管理が困難という課題があります。
モノリシックとマイクロサービスの中間に位置付けられるのが、コンポーザブルアーキテクチャです。コンポーザブルアーキテクチャは、ビジネス的な意味を持つアプリケーションをPBC(Packaged Business Capability)としてカプセル化し、PBCどうしを連携させてシステムを実現する仕組みです。PBCを組み合わせることで業務アプリケーションの提供速度をあげ、モノリシックな管理容易性とマイクロサービスのような俊敏性を両立できます。
コンポーザブルアーキテクチャに基づくアプリケーション、「コンポーザブルアプリケーション」の開発方法を図に示したのが図4です。さまざまなPBCをマーケットプレイスで管理し、複数のPBCを「コンポーザブルプラットフォーム(Composable Platform)」上へデプロイし、統合することでコンポーザブルアプリケーションを迅速に開発できます。
エンド・ツー・エンドのねらいでもあるビジネス成果を迅速に達成するためには、業種・業界に特化したバーティカルな仕組みが必要です。そのために特定業種・業界の機能をパッケージし、組み合わせて迅速にサービス提供を可能とするコンポーザブルテクノロジの実現が鍵となります。

まとめ

クラウド市場とともにエンド・ツー・エンドのマーケットは大きく成長すると予想され、その中でフルライフサイクルのワンストップ対応やバーティカル(業種・業界特化)への対応が求められると考えられます。
今回紹介したアセット集合体は、いずれもエンド・ツー・エンドの価値提供を目的としたアセットです。
今後もさらなるアセット拡充、利活用を加速し、あらゆるリージョン・業種・業界の経験を基にした高付加価値なサービスを、エンド・ツー・エンドでお客さまに提供します。

問い合わせ先

NTTデータグループ
技術革新統括本部 システム技術本部 クラウド技術部
TEL 03-5546-8202
E-mail cloudsiall@kits.nttdata.co.jp

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