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特集

NTTグループの社会変革に向けたICTソリューション

3D-Viewで建設・製造・あらゆる現場のDXを推進するファシリティマネジメントサービス「Beamo™」

Beamo™(ビーモ)は、2021年8月にNTTビズリンクよりサービス化した、ファシリティマネジメントサービスです。本サービスは、NTTコミュニケーションズが2019年より実施しているオープンイノベーションプログラム「ExTorch Open Innovation Program」において、スタートアップ企業との共創にて開発したもので、本プログラムを通じて初めて事業化されるサービスになります。本稿では、3D-Viewで建設・製造・あらゆる現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する革新的な映像サービスである、Beamo™の特徴と今後の展開について紹介します。

田口 陽一(たぐち よういち)/木付 健太(きづき けんた)
NTTコミュニケーションズ

はじめに

Beamo™は、市販の360度カメラとスマートフォンによる簡単な撮影を基に、即座に建物内の3D-Viewを作成することで、ファシリティマネジメントや遠隔からの視察、セールス活用などに幅広く活用できるサービスです。
本サービスは、米国シリコンバレー発のスタートアップで、360度カメラを活用したキャプチャー技術に長けている「3i Inc.(3i)」と、データセンタを10年以上運用した経験を持ち、現場調査を効率化する技術を探索していた社員(テーマオーナー)との共創から生まれました。すでに、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が国内外で有する約70のデータセンタ、および局舎でのトライアル導入が進められており、建物構築、運用、セールスなどの各場面で活用されています。
その自社導入での結果を受けて、本サービスは2021年8月より、映像系ソリューションに強みを持つ、NTT ComグループのNTTビズリンクより提供を開始しました。本サービスにより、これまでリモートでの実施が難しいとされてきた現地調査や、建物設備の構築・保守などにおける働き方(ワークスタイル)を変革し、ファシリティマネジメント領域におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することができます。

ファシリティマネジメントサービスBeamoとは

Beamoは、「大規模」で「複数のビル」の情報を、「複数の関係者」間で共有し「コミュニケーション」を取りながら、建物設備のライフサイクルを通じた長期間にわたるファシリティマネジメントを行うことを目的として開発したサービスです。そのサービス内容は以下のとおりです。

■解決する課題

データセンタや物流倉庫、建設現場などでは、土地や設備の状況確認や計測作業の際、現地での対応が避けられず、感染症対策や生産性向上が課題となっています。
現場調査にあたっては、以下のような問題点が存在します。
① 世界各地の現場調査に行くこと自体が大変
② 現場調査の事前準備と、事後報告書作成が大変
③ 報告書の形式では、現場に行っていない人に現場の様子を伝えづらい
④ 現場の写真や情報を集約して一元管理しておらず、重複等余分な現場調査が発生
例えば、②の従来の調査報告書では、よく平面図に対して撮影した写真を貼付するかたちで作成されますが、当然撮影された画角や範囲でしか状況の把握ができません(図1)。
このような課題に対応するため、本テーマオーナーはExTorchプログラムを通じて、360度カメラ画像からの3D-View化技術に強みを持つ3i社とパートナーシップを締結し、ファシリティマネジメントのDXやインフラ構築・運用のワークスタイル変革を実現するサービスの開発に取り組んできました。
本サービスにより、現場に行っていない人でも3D-View空間上を自由に移動しながら、360度視点を変えることで、あたかも現地に行ったかのような感覚を持つことができ、さまざまな業務プロセスを改善することができます(図2)。

■Beamoの特徴

Beamoは、市販の360度カメラとスマートフォンにより簡単・即時に建物の3D-Viewを作成できるサービスで、以下のような特徴を有します。
(1) 360度カメラ+スマートフォンで簡単撮影
本サービスは、市販の機材で誰でも容易に撮影ができます(図3)。スマートフォンのジャイロ機能*とカメラ映像の画像解析を活用するためGPSが使えない室内でも自動で撮影位置を特定し、人手を介さず図面上に撮影ポイントをプロットします。
(2) 即時に3D-View化を実現
撮影したデータをクラウド上にアップロードすれば即時に3D-Viewを作成することができます。なお、撮影した写真データは日本国内のクラウド上でセキュアに保管します。
(3) 3D空間上での測量や情報の埋め込みが可能
作成した3D-View内にあるメジャー機能を使い、寸法の測量が可能です(図4)。運搬経路や設置スペースの確認がバーチャルで可能なため、何度も現場へ足を運ぶ必要がなくなります。
また、3D空間上にタグ付けが可能なため、現地の情報を補足するマニュアルや注意事項などを、動画や画像、文章で埋め込むことができます(図5)。
(4) ライフサイクル管理が可能
建物設備の建設から運用、建物の解体に至るまで、建物設備のライフサイクルにおいて発生するさまざまなイベントの状況に関するビジュアル情報を、時間軸に沿って保管することができます。撮影データは、撮影日とともに更新履歴としてすべて保管されているため、任意の撮影日どうしの同一個所における3D-Viewの比較表示をすることが可能です(図6)。

* ジャイロ機能:スマートフォンに搭載されている、物体の傾きや回転を検知することができる機能。

■想定する利用シーン

本サービスは、表1のようなシーンでの利用を想定します。
(1) 設備管理・現場調査
建物内の設備の管理や、現場調査など、これまで現地へ赴く必要があった業務の一部を本サービスにて代替することができます。これにより、事前準備から現地対応、事後の資料作成といった稼働を大幅に削減することが可能となります。例えばBeamoが有する寸法測量の機能を用いれば、建物に設置したい設備の運搬、設置可否などが、通路幅等の寸法確認によって可能となります。
また、これまで撮影した個々のカメラやPCに残ったまま散逸しがちであった、現場に関する写真、動画といった各種画像データをBeamoのタグ機能により、任意の空間上にタグ付けすることで、集約管理することが可能となります。この撮影、タグ付け作業を定期的に行うことで、常に情報を最新化することができます。
(2) セールス
建物をセールス用に撮影、タグ付けしたうえ、その3D-Viewを公開することで、お客さま向け賃貸スペースの案内資料として活用いただくことができます。またお客さまに対し、営業社員からリモート内覧のかたちで建物、設備をバーチャルに紹介することも可能となります。
(3) 見学・研修
現在のように、多人数での現場訪問がしづらい状況下においては、建物、設備の3D-Viewを、社員向け教育、研修の教材として活用いただくことができます。例えばNTT Comでは、社員によるお客さま見学対応を目的として、社員向けの入館から現場までの案内ツアー・ビデオとして活用した事例があります。
(4) 安全管理
安全管理の用途としては、工事現場への入場前安全研修での利用や、現場安全教育のためのeラーニング教材として活用いただくことができます。

■これまでの社内展開状況

私たちは2019年にプロジェクトの立上げ後、NTT Comグループが保有する国内外約70棟のデータセンタや通信局舎に導入し価値検証を行い、現地調査業務における生産性向上などの効果を確認しました。これと並行して、実際に試験導入したメンバからいただいた現場の声を集めながらサービス改善を進めてきました。
その際、試験導入に協力いただいた一部メンバの声を紹介します。
・NTTコムエンジニアリング インフラネットワーク部 フロアマネジメント担当 古橋良重さん:「全国の局舎管理業務では、現地調査で各ビルのフロアを大量に撮影します。ところが、帰社後に写真を確認すると肝心な場所が写っていないことや、他に撮影すべきだった個所を思い出すことが多々ありました。その場合、現地の通信建設業者への追加依頼や、自身で再度出張し撮影を行う点などが、コストや稼働増の原因になっていました。また、デジカメで撮影した写真の整理も煩雑で、同じようなレイアウトの多い局舎において、撮影した写真と現場の紐付けが難しいという課題がありました。
2019年から活用し始めたBeamoは、コロナ禍で出張制限がかかり現地に行きづらくなる中で、リモート環境にありながら局舎内の確認が可能なため、フロア管理や工事調整の効率化に役に立っています。
写真整理の課題においても、撮影時に写真が自動でフロア図の該当場所と紐付くので、フロア内を網羅的に撮影しておけば、撮り忘れなどの追加稼働も発生しづらいです。フロア管理業務の効率が上がり、全体のコスト・稼働削減に貢献しています。また、機材もスマートフォンと三脚、360度カメラのみですので非常に手軽で、簡単に持ち運ぶことができるため導入に障害はありませんでした。
将来的には、資産管理ソフトなど他システムとの連携を期待しています。現状、別システムで管理しているラックやネットワーク機器などの資産状況を、Beamoの画面から3D-Viewと合わせて確認できると、さらに業務が進めやすくなると思います。」
私たちは、このようなかたちで、まずはNTT Comグループ内で活用することでサービス改善を重ねてきました。2021年8月にNTTビズリンクでサービス化した後は、NTT Comのセールス組織とも連携し営業展開を進めています。本サービスはファシリティを多くお持ちのお客さますべてがターゲットになるため、特に業界を絞ることなく電力やガスなどのインフラ、工場を持つ製造業、コールセンタ等に広く展開し、受注を獲得しています。

■これからの社外展開先

私たちは、今後もお客さまの声を参考にしながらサービス改善を進め、3D-Viewを活用したサービスのさらなる市場拡大をめざしていきます。今後の具体的な戦略としては、前述の利用シーンを想定したうえ、各業界横断で一定規模の企業には必ず存在する表2の4つをターゲットに展開を進めていく予定です。
こうした展開先は、普段セールス組織としても接点が少ないところになるため、ピンポイントでアウトバウンド的にアプローチを試み、営業展開を進めていく予定です(表3)。

今後について

NTT Comは、本サービスの拡大により、これまで現地での対応が必要とされてきた業務のリモート対応の実現など、すべての働く人が最適な働き方を選び活躍できる世界をめざします。
そうした世界の実現のため、現場業務やファシリティマネジメント領域でのDXを加速させ、自社が持つリアルタイム情報配信サービスとの連携や、ドローンやロボットなどの活用による撮影の自動化、また日本のお客さまから要望の多い、3D-Viewデータストレージのオンプレミス化対応、APIによるBMS(Building Management System)や資産管理システムなどとの連携や、画像解析サービスとの連携など、本サービスのさらなる機能拡充を行い、お客さまのワークスタイル変革に貢献していきます。

(左から)田口 陽一/木付 健太

Beamoについては、現在NTTグループ内での活用と並行して、お客さまへの提案を積極的に行っています。本サービスの利用、活用にご興味ございましたら、デモを含めご説明させていただきますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

問い合わせ先

NTTコミュニケーションズ
イノベーションセンター
プロデュース部門
TEL 050-3811-3374
FAX 03-5439-0470
E-mail com-open-innovation-cp@ntt.com