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from NTTコミュニケーションズ

社会課題を解決するビジネス創出へ。OPEN HUBの挑戦

NTTコミュニケーションズでは、お客さまやパートナーの皆様とともに社会課題を解決し、Smart Worldの実現を加速させるため、2021年10月に事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World(OPEN HUB)」を開始しました。ここでは、OPEN HUBの特長について紹介します。

ビジネス創出に重要なコンセプト検討

OPEN HUBは「未来をひらく『コンセプトと社会実装』の実験場」をテーマに掲げ、組織・分野の垣根を越え、遊ぶように自由に発想し試行を繰り返し、社会課題から社会実装を促していく共創を促進するプログラムです。「人」「技」「場」が三位一体で循環することで、これまでにない価値創造をめざしています(図1)。
総勢200名のカタリスト(CATALYST)と呼ばれる社内外の専門家が、お客さまやパートナーの皆様と一緒に、これまでに蓄積された知見や手法、NTTグループの最先端テクノロジを掛け合わせ、課題解決やコンセプト創出、そして社会実装を支援します。
CATALYSTは、仮説検証や事業コンセプトのデザインを行い実装する「ビジネスプロデューサー」をはじめ、仮説段階のプロトタイプをもつくる「アジャイルエンジニア」、人間中心・ユーザ思考のアプローチを担う「デザイナー」「リサーチャー」など、ビジネスを創出するうえで欠かせない、さまざまな分野に精通した人材がそろっています。企業の皆様の課題や向き合うテーマに適したチームを組んだり、プロジェクトに適したアクティビティを設計したりすることができます(図2)。
Smart Worldの実現につながるビジネスを創出するためには、コンセプト検討が非常に重要です。このコンセプト検討が不十分なために、社会実装やPoC(Proof of Concept)に至らないケースが多々あります。そこでOPEN HUBでは、社会課題起点のコンセプト検討に力点を置いた共創プログラム「OPEN HUB Play(以下、PLAY)」を用意しています(図3)。
PLAYでは、まず各種リサーチ情報を基に社会の変化やトレンド、エンドユーザのインサイトの把握をします。次にそれらを基に問いを設定し、初期仮設設計、ニーズ検証、プロトタイピングを繰り返すことで、ビジネスコンセプトを磨き上げていきます。その際、例えばリサーチに活用可能な外部リソースや、ワークショップで活発なアイディエーションを促すオリジナルのアセットカードなど、さまざまなツールや手段も用意しています。そこで生み出されたコンセプトをベースに、お客さまやパートナー、各種専門CATALYSTとともに社会実装をめざしていきます。

リアルとバーチャルの垣根を越えた共創の場

2022年2月、大手町にOPEN HUBの中心活動拠点となるワークプレイス「OPEN HUB Park(以下、PARK)」を開設しました。近年リモートワーク率が増えたことを機に、出社3割を前提としたオフィス集約によりできたスペースが、共創の場として生まれ変わりました。またフレキシブル・ハイブリッドワークの働き方にマッチするよう、リアルとバーチャルの垣根を越えた、場所に制限されないコミュニケーションが可能なワークプレイスです(写真1)。
来訪者向けに、展示だけでなくコンセプト検討へのインスピレーションを与える各種デジタル体験を用意し、議論の活性化を促していきます。例えば、データの利活用は普段目に見えないものですが、大型LEDモニタに収集したデータを可視化し、直感的に分かりやすく表現することで、データ利活用の検討に役立てています(写真2)。また離れた場所にあるNTTグループのイノベーション拠点と臨場感を持ってコミュニケ―ションができるディスプレイや、遠隔から操作できるロボットを用意しました。これらを利用してリモートからでもPARKに来場ができ、リアルな来場者とのコミュニケーションを実現します。
ビジネスのアイデアや種の創出だけでなく、ここで生まれたビジネスや社会実装の成果をPARK内に設置されたスタジオやオウンドメディア「OPEN HUB Journal」で発信します。ビジネス共創の仲間が集まる共創コミュニティ「OPEN HUB Base」と連動し、トークイベントや会員交流イベントを通じてエコシステムを拡大するとともに、新たなビジネスの展開を図ります。

IOWN構想をはじめとする最新ICTインフラ構築・実証および社会実装の取り組み

実際にPARKで実施した社会実装への取り組みとして、NTTが研究開発を進めているIOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想についての取り組み事例を紹介します。
NTTでは、近未来なスマートな世界を支えるコミュニケーション基盤としてIOWN構想を発表し、その具現化をめざしています。IOWN構想の3つの主要技術分野の1つとして掲げているオールフォトニクス・ネットワーク(APN)は、光ベースの技術を用いることで従来とは別格の通信パフォーマンスを実現します。NTTコミュニケーションズはNTT研究所と連携し、大容量、低遅延、低消費電力が特長のIOWN APNをPARK、東京第11データセンタ、NTT武蔵野研究開発センタの3拠点で接続するとともに、IOWN実証実験環境の構築をしました。
さらに、さまざまな分野の方とのオープンイノベーションを促進するため、実際に見て触れられるIOWN構想の技術をPARKにて紹介しています。
第一弾では、NTT未来ねっと研究所が開発した「世界初、非圧縮8K120p*1に対応したSMPTE ST 2110規格による超低遅延映像伝送技術」を活用した実証実験を開始しました(図4)。本技術とIOWN APNを活用することで、エンド・ツー・エンドの光パスを通した映像伝送の長距離化と低遅延化を実現し、実際に伝送させた非圧縮8K120p映像の画質や低遅延性を体験していただきました。
この技術を活用することで、例えば、リモートプロダクションや遠隔医療、遠隔監視などのユースケースへの適用が期待できます。
また第二弾として、セキュア光トランスポート技術*2を活用したデータ伝送の実証実験を実施し、APN上での盗聴・改ざん・なりすましができない耐量子セキュリティを有する通信を実現しました。
この技術を活用することで、例えば、個人情報など特に秘匿性の高いデータを扱う分野(金融、医療、公共など)において、将来の脅威に備えた安心・安全なデータ伝送への適用が期待できます。
なお現在は、IOWN構想のデジタルツインコンピューティング(DTC)などを紹介しています。
IOWN構想についてはお客さまより、早期実現への期待を多数いただいています。PARKでいち早くお客さまに体感いただくことで新たなビジネスを創出するとともに、スマートソサエティ、低炭素社会、ウェルビーイングなど社会への実装をめざします。
*1 8K(横7680画素、縦4320画素)、フレーム周波数120 Hzからなるプログレッシブ方式の映像。
*2 セキュア光トランスポート技術:量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)と耐量子計算機暗号(PQC:Post-Quantum Cryptograph)が利用されています。

その他の実証実験や体験展示事例

PARKではIOWN構想以外にも実証実験や体験を提供しています。例えば、欧州のデータ流通プラットフォーム「GAIA-X」に接続し、グローバルサプライチェーンにおけるCO2や廃棄物の排出量を可視化する環境を用いて、お客さまの産業機器を接続した検証を実施しています。
また、パブリック5G(第5世代移動通信システム)・ローカル5Gの環境も配備。AGCとNTTドコモが共創した5Gガラスアンテナを屋内に設置し、景観に影響を与えず、高層階でも快適な通信環境を実現しています。将来的には、5Gスタンドアローン方式を導入し、実証実験に活用できる環境を構築していく予定です。
これらの通信インフラ環境を活用したロボット体験も可能です。Web RTC技術SkyWayを活用し、リモートから見学・回遊を可能とするテレプレゼンスロボットをはじめ、AI(人工知能)アシスタンス機能を搭載し、音声指示で自動追従や登録地点まで障害物をよけながら案内できるロボットや、実際に弊社データセンタでも使われている人の動作の再現を可能にし、遠隔操作で省力化を実現する汎用人型等身大のロボットなど、さまざまなロボット体験を通じて、ビジネスシーンでのロボット活用の検討に役立てています。

OPEN HUBの今後の展望

2021年10月以降、OPEN HUBを起点にさまざまなビジネスのアイデアや種が生まれています。それらに対し、企業の皆様とNTTグループが“人”“技”を結集し、リアル、バーチャルの“場”でブラッシュアップすることで、持続可能な社会を実現する新しいビジネスへとつなげていきます。

問い合わせ先

NTTコミュニケーションズ
OPEN HUB事務局
URL https://openhub.ntt.com/