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グローバルスタンダード最前線

ITU-T SG5(Environment、climate change and circular economy) 第5回会合

ITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)SG(Study Group)5は、落雷や電磁界に対する人体ばく露、電磁両立性(EMC:Electromagnetic Compatibility)、中性子の影響などの電磁的現象と、気候変動に対するICT効果の評価方法について検討しています。本稿では、2024年6月17~21日にヴロツワフ(ポーランド)で開催された、2022-2024会期の第5回会合の審議内容を報告します。

小林 栄一(こばやし えいいち)†1/服部 光男(はっとり みつお)†1/
原 美永子(はら みなこ)†2/石岡 諒汰(いしおか りょうた)†3
NTT†1
NTT情報ネットワーク総合研究所†2
NTTドコモ†3

ITU-T SG5 第5回会合の概要

2024年6月17~21日にITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)SG(Study Group)5 第5回会合(2022-2024会期)が、ヴロツワフ(ポーランド)で開催されました。出席者は41カ国192名で日本から6名(3名は現地参加、3名はリモート参加)が参加しました。
寄書件数は147件(うち、日本から6件)で、合意(Consent)された勧告案は新規12件、改訂9件、同意(Agreement)された文書は3件でした。ここでは第5回会合の審議内容について報告します。

審議結果

今会合では、EMC(Electromagnetic Compatibility)、過電圧、電磁暴露、中性子線放射等を所掌するWP1(Working Party 1)の課題1から4にて、新規3件、改訂7件の勧告案について勧告化手続きを開始することが合意されるとともに、1件の補足文書(Supplement)の発行が同意されています。WP2の所掌の課題6、7、13においては、新規6件および改訂1件の勧告案について勧告化手続きを開始することが合意されています。WP3においては、所掌範囲の課題9、11、12では、新規2件および改訂2件の勧告案について勧告化手続きを開始することが合意、2件の補足文書(Supplement)の発行が同意されました。

■WP1(EMCと雷防護、電磁界に対する人体ばく露)における審議動向

(1)課題1(ICTシステムの電気的な防護、信頼性、安全およびセキュリティ)
本課題では、雷撃や接地、電力システムの妨害波に対する通信システムの防護要件を検討しています。また、高高度電磁パルス(HEMP)や高出力電磁パルス(HPEM)攻撃に対する防護方法、電磁波を介した情報漏洩リスク評価およびリスク低減方法等の電気通信設備の電磁波的なセキュリティ課題の検討、粒子放射線による通信装置のソフトエラーに関する試験方法や規定を検討しています。
今会期では既存勧告K.81「通信システムの大電力電磁界イミュニティガイド」とK.87「電磁セキュリティ規定の適用ガイド-概要」に記載されている用語の定義について、ITU-R(ITU-Radiocommunication Sector) やITU-T SG17の所掌範囲とオーバーラップするとのSCV(Standardization Committee for Vocabulary)からのコメントに対して、NTTから改訂提案を提出して合意されました。新規勧告案K.spdm「通信装置のAC(Alternating Current)電源ポート内で使用されるSPDM(サージ防護デバイスモジュール)の性能要求と試験法」は、一般的なSPD(サージ防護デバイス)とは異なるものであることの明確化のため、名称がSPM(サージ防護モジュール)に変更されました。これに加え、SPDとの差異がフィールド交換不可能であることや、耐電流試験などが含まれておらずSPDの規格のIEC 61643-11には適合しないこと、実使用では適切な上流SPDが必要であること、などが追記されたうえでK.155として合意されました。新規勧告草案K.pids「物理的に大規模な建物内でのモバイル通信用分配システムの防護のための実用的なガイダンス」は、NTTからの顧客宅内環境であることや対象範囲の明確化をコメントし、それが反映されたうえで次会期以降の継続検討となっています。
なお本課題では、粒子放射線による通信装置のソフトエラーに関する試験方法や規定を扱っていましたが、次会合からこれを課題2で検討を行うことになりました。
(2)課題2(雷および他の電気的事象に対する装置およびデバイスの防護)
今会期では、既存勧告K.147「平衡導体ペアが接続されるデジタルポートの防護」と既存サプリメントK.Suppl.25「長距離シングルペアEthernet耐力試験(1)」における、長距離シングルペアイーサネットに関する規定についての議論が中心に行われました。審議の結果として、現在改定が進められているIEEE 802.3「Ethernet」とさらに整合させる方向で検討が行われ、次会期に改訂草案を準備して合意をめざすこととなりました。また、既存勧告K.21とK.20「通信センタ内、宅内に設置される通信装置の過電圧・過電流に対する耐力」について、ZTE(中国)からEthernetポートの回路構成の違いに基づき絶縁試験を除外する提案があり、キャビネット内のEthernetポートへの絶縁要求にも議論が及ぶなど、新たな課題として議論が行われています。また、既存勧告K.21での内線Ethernetポートの過電圧耐力試験レベル緩和提案が審議されて、それぞれ継続検討となりました。同じくZTE提案の新規サプリメントK.supple_TOV「DC電源供給を受けるICT装置の過渡的過電圧(TOV)への防護」の草案第1版は、DC(Direct Current)側へのTOV発生メカニズムのさらなる検討が実施される予定となりました。さらに、既存勧告K.12「通信装置防護のためのガス放電管の特性」で規定されている過電圧耐力試験で用いる「合意された一次防護」の選定指針について、あらかじめネットワークオペレータ等と合意することができない市販装置等のためのガイダンスを追加する改訂が合意されています。課題2と課題1のTerms of reference草案が合意され、WTSA-24に向け所掌範囲が明確化されるとともに、日本が推進してきたソフトエラーに関する検討項目については、課題2に移されることとなりました。本課題は日本が課題責任者を務めており、引き続きソフトエラーの標準化活動を日本主導で進めていきます。
(3)課題3(デジタル技術に関する電磁界に対する人体ばく露)
本課題では、携帯電話、無線システムのアンテナ周辺における電磁界強度の推定手順、計算方法、測定方法について人体ばく露の観点で検討を行っています。
今会合では既存勧告K.100「基地局の運用開始時における、無線周波数電磁界への人体ばく露の適合性評価」およびK.52「無線電磁界への人体ばく露の適合性に関するガイダンス」について、IEC62232:2022に合わせた修正案が提案され、これらを反映した改訂草案が合意されました。既存勧告K.83「電磁界レベルのモニタリング」について、付録1から3に記される韓国でのモニタリング事例の更新案が提案され、これらを反映した改訂草案が合意されました。新規勧告案K.peak「長期的考慮におけるピークばく露と実際のばく露の比較」について、タイトルの修正「RF-EMFばく露評価における時間的・空間的平均」を含む勧告案への修正案が提案され、これを反映した新規勧告草案が合意されました。既存補足文書K.Suppl.32「RF-EMF評価の事例」について、3.5GHz帯の5G(第5世代移動通信システム)基地局における測定結果の追加が提案され、これらを反映した改訂草案が同意されました。EMF(Electromagnetic Field)ばく露評価に用いる測定装置の校正に関する新規作業項目が提案され、K.caliber「EMF評価用機器の校正」として追加されました。その他、新規作業項目K.AI&EMF「5GNR基地局近傍における人工知能を用いたEMF評価手法」、K.peak「長期的考慮におけるピークばく露と実際のばく露の比較」、K.devices「人体に近接して動作するデバイスのRF-EMFばく露評価」、K.reflection「EMFばく露に対する金属構造物の影響」およびK.Suppl.MethDataEMF「RF-EMF評価のための方法論に関するガイダンスおよび電気通信設備からのRF-EMFへの人体ばく露に関する社会的懸念への対応」について、関連寄書に基づき、新規草案策定に向けた審議が行われました。
(4)課題4(ICT環境におけるEMC問題)
本課題では、新たな通信装置、通信サービスや無線システムに対応したEMC規格の検討を行っています。
今会期では、既存勧告K42のタイトルを「通信/ICT装置のエミッション・イミュニティ定義の一般原則」と変更するとともに内容を最新化した改定案が合意されました。また新勧告草案K.emc_satellite「衛星通信端末装置のEMC規定と試験方法」の最終草案が提出され合意されました。新規勧告案K.DMEI「対流圏無線ダクトによる基地局間の干渉の評価および対策」についてはITU-R WP5Dから本件はITU-Rの所掌範囲であるとのリエゾンが届いていました。これに対して、具体的にITU-RのどのWPで検討を行うのかを問い合わせるリエゾンを発出し、ITU-T SG5での検討はいったん休止することとなりました。新ワークプログラムとして、K.RIS_EMC「自己構成型スマートサーフェスのEMC」、K.emc_satellite_ES「衛星通信用地上局のEMC規定と試験方法」が追加されました。また、所掌する既存勧告の改版時期をレビューし、既存勧告の現行化等も進めています。これまでに、K.92等いくつかの勧告がIEC等の最新の国際規格との整合性を図った改版や見直しが行われています。

■WP2(環境効率、電子廃棄物、サーキュラーエコノミー、持続可能なICTネットワーク)における審議状況

(1)課題6(デジタル技術の環境効率)
本課題では、デジタル技術や新規先端技術に対する環境効率と要求条件の明確化、ならびに技術的なソリューション、指標、KPI(Key Performance Indicator)、関連する測定法に関する勧告を策定しています。
今会合ではL.1310改訂のほか、L.FEMS(L.1260)およびL.Cooling_DC(L.1327)が合意されました。L.1310改訂(通信機器に対するエネルギー効率指標と測定方法)では、測定方法における多数の超高速ポートを備えたコアルータ・スイッチの考慮(11.2章)や無線アクセス技術向けの指標および測定方法における5G(IMT2020)への対応(10章)についての改定が行われました。L.1260(工場エネルギー管理システムの参照モデル)は工場におけるエネルギー消費を効率的に管理するための工場エネルギー管理システム(FEMS)の参照モデルを規定する勧告です。またL.1327(複数のシナリオにおけるデータセンタ向け冷却技術選定に関するガイドライン)はデータセンタの省エネ運用のため、現在主流となっている下記の冷却技術について、各冷却技術の概要、冷却コンポーネント(屋内の熱交換、屋外の放熱、冷媒の伝送・分配など)の原理分析に加え、データセンタのさまざまな適用シナリオ(多次元的な適用シナリオ)に基づいて冷却技術を適切に選択する方法を説明するものです。このほか新規ワークアイテムとしてL.DLEE(ディープラーニング計算エネルギー効率評価フレームワークおよびメトリクス)、L.S_AI(持続可能なAI/XRベースのシステム設計)の2件について検討開始が合意されました。また、各勧告案に対する議論が進められており、主なものとして移動網のエネルギー効率に関する評価(L.1331改訂)およびコンピューティングパワー効率指標と測定方法 (L.MM_Computing power)では初版ドラフトを作成、固定網のエネルギー効率評価(L.FNEE)、異種サーバに対するエネルギー効率測定手法とメトリクス(L.EE_sgpu)、5G網向けソフトウェア制御による省エネに関する機能要件と試験方法(L.soft_ES)、通信網で使われる電力、冷却、ビル環境システム等のインフラ機器向け監視制御インタフェース‐汎用インタフェース (L.MCI_Gen)、通信網で使われる電力、冷却、ビル環境システム等のインフラ機器向け監視制御インタフェース‐ICT機器の電力・エネルギー・環境パラメータ監視に関する情報モデル (L.MCI_MIM)、ならびに多次元なネットワークエネルギー効率指標に関する研究 (L.Sup.MDEE)では最新版ドラフトが更新されました。
(2)課題7(電子廃棄物、サーキュラーエコノミー、持続可能なサプライチェーン管理)
本課題では、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の考え方、サプライチェーン管理の改善をベースとしたデジタル技術に対する環境要件、ならびに製品、ネットワーク、サービスに関するeco-ratingプログラムにかかわる勧告を策定しています。
今会合ではL.1017(L.EnvPerSmartphone)、L.1071(L.D4PI)およびL.1028(L.UPR10)の3件が合意されました。L.1017(スマートフォン向け環境性能スコアリング手法)はスマートフォンに関して材料効率およびライフサイクルアセスメント(LCA)の側面を考慮した総合的な環境性能をスコアリングする方法を定義する勧告です。L.1071(持続性と循環性に関するデジタル製品情報向け情報モデル)は、デジタル製品パスポート(DPP)に含まれる環境情報として、ICT製品のサステナビリティおよび循環性を記述するための情報モデルを定義し、欧州DPP(Digital Product Passport)およびUNECE(United Nations Economic Commission for Europe、国連欧州経済委員会)B2B(Business to Business)DPPと調和し、補完する位置付けの勧告です。L.1028(ICT機器の寿命延長がもたらす地球温暖化の潜在的な影響の推定)は、使用段階のGHG(温室効果ガス)排出量と製品寿命全体にわたるGHG排出量の相対的な関係を理解する際に役立つ指標であるUER10を定義する勧告です。このほか新規ワークアイテムとして、L.DPP4C(デジタル製品パスポートにおけるICT製品に関する消費者向け環境情報およびリバースバリューチェーン情報)およびL.ICT4RD(電子廃棄物のリサイクルおよび廃棄を管理するICTの利用法)の2件の検討開始が合意されました。
(3)課題13(循環型の持続可能なシティおよびコミュニティの構築)
本課題では、シティおよびコミュニティにおけるデジタル技術(AI、5Gなど)の使用・運用および循環型社会の考え方を応用するための要件、技術的な仕様、効果的なフレームワーク、シティにおける資産に対して循環型社会の考え方を応用するうえでのガイダンス、ならびに循環型シティ・コミュニティに向けたベースラインシナリオを確立するために必要となる指標およびKPIに関する勧告を策定しています。
今会合ではL.1632(L.Ident)が合意されました。L.1632(持続可能な都市向けのビルインフラにおける機器特定方法)は持続可能な都市の実現における、ビルインフラ設備管理の効率性および安全性の向上のため、建物のインフラストラクチャビルインフラ設備〔HVAC(空調換気システム)、電力・水道・ガス供給、火災警報など〕の識別方法を定義する勧告です。また、各勧告案に対する議論が進められており、持続可能な都市で使われるビルインフラ管理システム向け識別方法(L.resBIMS)、および循環型都市におけるKPI(L.circularCityKPIs)について初版ドラフトが作成されました。

■WP3(気候変動の適応・緩和、ネットゼロエミッション)における審議状況

(1)課題9(気候変動、およびSDGsとパリ協定のフレームワークにおけるデジタル技術の評価)
本課題では、パリ協定および国連によるSDGs(持続可能な開発目標)と整合した開発トラジェクトリとするために、ICT、AI、5Gなどを含むデジタル技術に対する持続性影響に関する評価手法およびガイダンスの開発を行うとともに、気候変動と生物多様性課題の重要性を踏まえてこれらの課題に焦点を当てた検討を進めています。
今会合ではL.1410改訂、L.147が合意、L.Suppl.60の発行が同意されました。L.1410(ICT製品、ネットワーク、サービスに関する環境LCA評価方法)はICTライフサイクルアセスメント:フレームワークおよびガイダンス、ICTおよび基準製品システム(ベースラインシナリオ)の相対評価方法:フレームワークおよびガイダンスの2つのパートからなる勧告です。初版(2014年12月)の発行以降、ICT業界におけるサーキュラーエコノミーの考えが普及していることを踏まえ、今回の改訂により、循環型製品のLCAなどのガイダンスが追加されました。
また新規にL.ClimAI(AIの環境影響評価のためのガイドライン)、L.PCF_SEM(スマート電力メータのカーボンフットプリント評価方法)、L.Carbon_DA(炭素検証ナレッジグラフのデータアノテーションに関するガイドライン)、L.EnvImpServers(サーバの環境影響評価に関する要件)、L.impact_simplified(ICTソリューション利用のGHG排出量に関する簡易的な影響評価手法)、L.Suppl.CFA_BSE to ITU-T L.1410(5G基地局機器のカーボンフットプリント評価に向けたガイドライン)、L.Suppl.CE_Shared_BS to ITU-T L.1420(複数事業者の共用基地局におけるCO2排出量の配分方法)、L.TR MAP GHG(都市のGHG排出量予測のための評価方法)、L.TR GLC service(低炭素なICTサービス事業者の評価の一般原則)、ならびにL.TR GLC manufacturing(低炭素なICT製造事業者の評価の一般原則)の合計10件の検討開始が合意されました。また、各勧告案に対する議論が進められており、主なものとしてソフトウェア製品向けCO2排出量評価に関するガイドライン(L.CFSP)は初版ドラフトを作成、企業におけるICTのエネルギー消費およびGHG排出量に及ぼす影響評価手法(L.1420改訂)、多様性に関するICT企業のフットプリント評価に向けた方法(L.Biodiversity_footprint)、ならびにオンライン会議やイベントにおける温室効果ガス排出を推定する方法(L.VirtualMeetings)では最新ドラフトが更新されました。そのほか、SG開会プレナリにて課題9ラポータよりITU Green Digital Actionの活動状況についての報告とともに参加の呼びかけがありました。
(2)課題11(気候変動緩和およびスマートエネルギーソリューション)
本課題では、ICTとデジタル技術を使ったより効果的・効率的なエネルギー管理に向けたリアルタイムなエネルギーサービス・制御ソリューション、ならびにエネルギー効率向上およびCO2排出量削減をめざしたエネルギー管理改善を容易にする標準、フレームワーク、要求条件に関する勧告を策定しています。
今会合では、L.VMPS(L.1384)、L.GHG management(L.1490)が合意、L.Suppl.44改訂が同意されました。L.1384(通信基地局向け電力貯蔵システムを使った仮想マイクロ発電所方式)は通信基地局に設置された電力貯蔵システムを用いた仮想マイクロ発電所(VMPS)を実現するための技術仕様を提供する勧告です。L.1490(公的セクタ向けGHG排出量管理システムのフレームワークと機能要件)はビッグデータ、クラウドなどのICTを用いたGHG排出管理システムの構築によって地域の排出量をより正確に定量化し、監視・管理することで、公共セクタの意思決定を支援するための勧告です。このほか、新規にL.PS_HPC〔高性能コンピューティング(HPC)データセンタの分散電源アーキテクチャ〕、L.PV_base station(基地局サイトに設置された太陽光発電システムのスマート制御方法)、L.1203改訂(ICTシステム向けの400Vまでの直流給電におけるケーブル色による識別)、L.1210改訂(5Gネットワーク向けの持続可能な給電ソリューション)ならびにL.TR DG assessment(都市レベルの持続可能なデジタル移行の評価方法)3件が検討開始されることとなりました。また、各勧告案に対する議論が進められており、主なものとしてネットゼロ実現に向けた他のセクタ向けICT有効性指標とベストプラクティス(L.NZ_Indicator&BP)などについて最新ドラフトが更新されました。
(3)課題12(持続可能でレジリエントなデジタル技術を通じた気候変動適応)
本課題では、電力・空調システムの効率改善、400VDCまでの給電システムを使ったエネルギー効率の良いICTアーキテクチャの開発支援、ならびに気候変動に起因する事象に対する早期警報システム、スマート農業への応用、マイクロスマートグリッド、ビル最適化に関する勧告を策定しています。
今会合では合意された勧告はなかったものの、新規にL.low_DC(気候変動緩和に向けた低炭素データセンタの構築ガイドライン)、L.liquid_DC(データセンタ向けの高効率液体冷却ソリューション)ならびにL.Bio-Adapt(気候変動に対する生物多様性の適応)の合計3件の検討開始が合意されました。
(4)その他
今回のSG5会合期間中のWTSA-24アドホックセッションにて、次研究会期(2025~2028年)のSG5体制が議論され、図に示すように最終案が合意されました。最終案は2024年7月29日~8月2日のTSAG会合に提出され、2024年10月15~24日のWTSA-24会合で次会期のSG5体制として決定される予定です。

おわりに

今会合は、2022-2024会期での第5回会合として実施されました。今後の会合は新会期である2025年5月の開催が予定されています。
ITU-T SG5では、環境・廃棄物等とICT、電磁暴露、EMC等とICTに関する話題を取り扱っており、社会の安心・安全や持続可能な社会の実現に貢献する国際勧告の制改定を行う重要な国際標準化会議だと考えています。次会期においてもSDGsの実現に寄与できるよう、引き続き取り組んでいきます。

■参考文献
(1) 勧告K.20,K.21,K.45:“通信センタ内,宅内,屋外に設置される通信装置の過電圧・過電流に対する耐力,” 2022.