特集1
先端テクノロジー部における先端的な技術開発について
- 地域循環型社会
- 先端テクノロジー
- オープンイノベーション
NTT東日本グループ全体の研究開発組織として発足した先端テクノロジー部は、世の中の最先端技術をお客さまに使いやすいサービスとして提供するためのさまざまな技術開発に取り組むことで、地域のお客さまのイノベーションや価値創造に貢献します。本稿では、その中でも代表的な取り組みとして、既存アセットを有機的に連携したプラットフォームである次世代デジタル基盤の開発・AI技術の社内外活用・社外とのオープンイノベーションの3つについて、概要を紹介します。
海老原 孝(えびはら たかし)/山本 晋(やまもと すすむ)
NTT東日本 先端テクノロジー部
NTT東日本グループの方向性と先端テクノロジー部の位置付け
NTT東日本グループではこれまで、情報通信事業者として、光ファイバを利用したブロードバンドアクセスサービスなど高品質で安定した通信インフラを提供してきました。さらに昨今では、身近なICT企業として、地域の課題解決や価値創造に取り組んでいます。
こうした取り組みを加速させて、NTT東日本グループすべてのステークホルダーの方々の共感を得ながら、地域の皆様とともに持続可能な循環型の地域社会を実現していきたいという想いから、2023年5月には新たに「Purpose(存在意義)」を定義し、それに向けた「Vision(なりたい姿)」「Mission(使命)」「Value(価値観と行動基準)」を制定しました(1)(図1)。
これらを実現するため、同年10月には、業務運営体制の見直しを行い(2)、地域の新たな価値創造と多様なデジタルソリューションの機動的な提供に向けて取り組んでいます。
この再編の中で、最先端の技術をお客さまに使いやすいサービスとして提供する開発力を強化する観点から、NTT東日本グループ全体の研究開発を牽引する社長直結組織として新たに「先端テクノロジー部」を設置しました(図2)。
先端テクノロジー部の技術開発
近年、クラウドやAIに代表されるソフトウェア技術が発達し、それらの先端技術を活用した新しいビジネスモデルの構築や、既存業務の抜本的な効率化を行うデジタルトランスフォーメーションが進んでいます。しかし、現時点でそれらの先端技術を十分使いこなして恩恵を享受できるのは、一部のグローバル企業や新興企業などに限られており、必ずしも日本の地域のお客さまが先端技術を効果的に活用できる状況にはありません。
このような状況を踏まえ、先端テクノロジー部は、世界の先端技術を地域のお客さま向けに最適化し効果的に活用できる環境の整備を通じて、お客さまのイノベーション・価値創造の実現をめざしています。
具体的には、以下の4つの観点で技術開発に取り組んでいます(図3)。
① プラットフォームとオファリングの開発
先端技術を利便性高く安価に提供するネットワーク・クラウドの開発
② ガバナンス、リスクとコンプライアンスの確保
先端技術を安心・安全に活用するための技術支援の提供
③ カスタマーエンゲージメントの向上
イノベーションの価値を最大限持続できるようにするための運用支援
④ 技術の探索とユースケースの開拓
世界のさまざまな技術に対する調査・分析とユースケースの開拓
地域のお客さまの価値創造に向けた取り組み
NTT東日本グループは、地域のお客さまの価値創造に貢献するため、従来取り組んできた回線・ネットワーク事業をベースに、既存アセットを活用したビジネス創出によって、新規事業のスケール化やネットワーク事業のさらなる拡大に取り組んでいます(図4)。
先端テクノロジー部ではこうした取り組みを推進していくため、ネットワーク・クラウド・セキュリティ・デバイスなどの既存アセットを有機的に連携し、これらを最大限に活用する次世代デジタル基盤を中心として、地域のお客さまに新たな価値を創造するプラットフォームの開発に取り組んでいます。
以降では、上記を実現するために必要不可欠である、次世代デジタル基盤の開発・AI技術の社内外活用・社外とのオープンイノベーションという3つの取り組みについて、概要を紹介します。
■次世代デジタル基盤の開発
地域のお客さまが先端技術の活用されたハードウェア・ソフトウェアを効果的に使うためもっとも重要となるのが、用途ごとに最適に使い分けられるクラウド、およびそれらのクラウド・お客さま環境・インターネットなどを柔軟に接続し効果的に運用することを可能にするエッジクラウドとネットワークです。また、お客さま環境からクラウドに至る一連のシステムをエンド・ツー・エンドでワンストップかつシームレスに提供するとともに、アプリケーションのレイヤに至るまで価値創造が中断することなく維持・運用され、さらには活用経験が重なるに従ってより磨き上げられていくような保守・運用の仕組みも重要となります。
先端テクノロジー部では、こうした価値創造を実現するために、その土台となる次世代デジタル基盤の開発に取り組んでいます。
■AI技術の社内外活用
近年目覚ましい進化を遂げているソフトウェア技術の中でも、AIは特に世界中でもっとも注目されている技術の1つであり、次世代デジタル基盤の開発には欠かせない技術要素です。
先端テクノロジー部では、最先端のAI技術を社内で活用し、業務効率の大幅な向上およびノウハウの蓄積に取り組んでいます。また、社内で磨いた技術やノウハウを社外へ展開・実装することで、地域のお客さまのイノベーションや価値創造に貢献していきます。
■社外とのオープンイノベーション
地域の価値創造に向けたビジネス創出と事業の拡大を推進していくためには、社外の技術やノウハウを活用していく必要があり、技術開発手法の見直しも欠かせません。
従来取り組んできたネットワーク分野の技術開発は、訴求価値やビジネスモデルが比較的明確であり、また、技術サイクルの長い取り組みでした。しかし、今後はネットワークに限らず幅広い技術領域において、よりソフトウェア的かつ短い技術サイクルで、顧客価値に直結した技術開発も求められます。つまり、社内で技術を醸成してから市場に投入することに加え、社外の技術を積極的に取り入れ、さまざまなプレイヤーの持つ技術や強みとNTT東日本グループの持つ技術やアセットとを重ね合わせて、機動的に顧客価値を高める取り組みが必要となります。
先端テクノロジー部に設置したオープンイノベーションセンタでは、社会課題や技術進化のトレンドを把握し、さまざまな将来像を予見します。そして、社会に大きな影響を与える可能性のある技術領域を選び出し、戦略的に技術を蓄積しながら、地域社会の変革を先導していきます。また、NTT研究所、国内外のスタートアップ、大学・学術機関や地域のお客さまなどとの協業を通じ、従来の地域通信事業者の枠を超えて、グローバルな視点で技術ドリブンによる新たな価値創造に取り組みます。
■参考文献
(1) https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230512_03.html
(2) https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230905_03.html
(左から)海老原 孝/山本 晋
問い合わせ先
NTT東日本
先端テクノロジー部
TEL 03-5359-5222
E-mail kaiki-rdc-gm@east.ntt.co.jp
本稿では、NTT東日本グループが、地域の皆様とともに持続可能な循環型の地域社会を実現するために、より一層技術開発を加速するために設立した先端テクノロジー部とその活動の方向性について紹介しました。取り組みの詳しい内容は各記事に記載しておりますが、NTT東日本グループは、今まで以上に幅広い技術領域でさまざまな方々との協業を通じ、地域へ新たな価値を届けられるように、邁進していきます。